256 / 462
神の宿り木~再生 2~
雨の午後
しおりを挟む
雨が降りだした。
炎の魔法石を作るのに発生する熱風を、無理やり上昇気流にさせたから、雲が出き、そこから雨が降りだした。
協力してくれたテオ達は、雨が降りだす前に帰れただろうか…。
叩きつけるように降る雨は、熱風の強さと多さを意味する。
さて、これからどうしよう。
ワイトデ自治区に戻るには、『移動』を使うか徒歩で山を下りるかだが、ここからワイトデ自治区への『移動』は出来ない。
夕食までには時間はあるし、かといって、この雨の中、山を下りるのは危険だ。
「ここには、連絡用の通信網は付いていないのか?」
「有るよ。向こうから連絡が来るだけで、使ったこと無いけど…」
そう言ってキラは寝室に案内してくれ、壁にかけてある鏡を指差した。
…寝室が綺麗に片付いている。
目映いばかりの炎の結晶石が、ほんの少しインテリアとして置かれているくらいだ。
この部屋に有った炎の結晶石をほとんど使ったのか…。
「綺麗に片付いているな」
一緒に付いてきたルークがそう言う。
「本当ですね。この方が部屋らしいし、落ち着いて眠れますよ」
カズキも一緒に部屋を覗いて微笑む。
カズキが『通信鏡』を使って最初に開いたのは、カザンナ王国のリオナス。
アオがルークの後を任されて、仕事をしているはず…。
鏡に映ったのは青ざめて、やつれたアオの姿だった。
「…そろそろ帰ってきてください」
「炎の魔法石は手に入れたから、そろそろ帰路につくよ」
カズキがそう言うと、アオが珍しくこちらを睨んできた。
…うわ、ストレスたまってそう…。
「ワイトデ自治区の領主にお願いして、固定の『転移移動』の魔法陣を作ってもらって下さい」
「…急ぎか」
ルークが顔をしかめてアオを見る。
「王都からの手紙を送ります。カズキ、この『通信網』に『物質転移』は付いているか?」
「付いてない。少し待ってくれ」
カズキは右手を掲げ、鏡の上に作り出した魔法を被せ青い光を放つ。
「…繋がったはずだが」
カズキがそう言うと、アオがペンを差し出し、鏡を通り抜け、カズキがペンを受けとる。
「大丈夫みたいだ」
「急ぎで見てもらいたい書類を準備します。先に手紙に目を通してください」
そう言ってアオは、王都からの手紙を差し出してきて、カズキは受けとるとルークに渡した。
ルークはため息を付きながら手紙を読みはじめる。
その間に鏡の『通信網』は画面が切り替わり、ワイトデ自治区の領主の元に繋がった。
カズキが事の説明をして、『転移移動』を何処かに作れるように手配し、明日の昼には使用出来るようお願いしている。
…そう簡単に作れる魔法ではないし、最終座標はカズキが組み込まなくてはいけない。
…リオナスの執務室に繋げるつもりなのだろうか…。
…後で聞いてみよう。
キラは、そんなカズキの後ろ姿を見ながら、キリトに説明を受けていた。
『物質転移』を使って手紙を送ってくるのを始めて見たらしく、興奮気味に『転移移動』って、いつもの『移動』とは違うの?とか、どうなってるの?と、横でキリトを質問攻めにしていた。
…キラにとって『移動』は、飛んでいける距離だから、『転移移動』が長距離の移動だと、説明した方が分かるだろう。
今後のために、新しい魔法ではないが、進化している魔法を使えるように、キラに教えておいた方が良いのかもしれない…。
ルークが手紙を読み終わる頃、カズキはアオから送られてきた書類の束を、炎の魔法石が置いてあるリビングのテーブルの上に置いた。
それを見て、ルークが顔をしかめる。
「…多いぞ」
「アオの判断で決めれない書類です。手伝いますから、今日中に終わらせて下さいね」
「…。」
ルークは諦めて椅子に座り、準備された書類を手にした。
リーンはカズキにお願いして、馬車からチハヤの日記を取り寄せてもらった。
カズキが管理する馬車は、カズキの魔法がかけてあるので、馬車内のモノだったら魔法で取り寄せられるからだ。
リーンはソファーに座ってチハヤの日記を読み出した。
キラはキリトに教えてもらいなから、『通信網』『物質転移』の使い方を習っていた。
これが使えれば、離れていてもカズキやリーンとも話が出来ると聞いて、やる気になったのだ。
練習として、ワイトデ自治区のテオが向こう側で相手をしてくれているようだ。
…離れていても…。
もうすぐ帰るのだと言うことはキラも分かっているから、必死なのだろう。
『転移移動』が繋がれば、子供達をキラに会わせてあげても良いのかもしれない。
さすがにまだ、竜は見たことが無いだろうから…。
雨はまだ降り続いている。
…もうしばらくの休憩だ。
炎の魔法石を作るのに発生する熱風を、無理やり上昇気流にさせたから、雲が出き、そこから雨が降りだした。
協力してくれたテオ達は、雨が降りだす前に帰れただろうか…。
叩きつけるように降る雨は、熱風の強さと多さを意味する。
さて、これからどうしよう。
ワイトデ自治区に戻るには、『移動』を使うか徒歩で山を下りるかだが、ここからワイトデ自治区への『移動』は出来ない。
夕食までには時間はあるし、かといって、この雨の中、山を下りるのは危険だ。
「ここには、連絡用の通信網は付いていないのか?」
「有るよ。向こうから連絡が来るだけで、使ったこと無いけど…」
そう言ってキラは寝室に案内してくれ、壁にかけてある鏡を指差した。
…寝室が綺麗に片付いている。
目映いばかりの炎の結晶石が、ほんの少しインテリアとして置かれているくらいだ。
この部屋に有った炎の結晶石をほとんど使ったのか…。
「綺麗に片付いているな」
一緒に付いてきたルークがそう言う。
「本当ですね。この方が部屋らしいし、落ち着いて眠れますよ」
カズキも一緒に部屋を覗いて微笑む。
カズキが『通信鏡』を使って最初に開いたのは、カザンナ王国のリオナス。
アオがルークの後を任されて、仕事をしているはず…。
鏡に映ったのは青ざめて、やつれたアオの姿だった。
「…そろそろ帰ってきてください」
「炎の魔法石は手に入れたから、そろそろ帰路につくよ」
カズキがそう言うと、アオが珍しくこちらを睨んできた。
…うわ、ストレスたまってそう…。
「ワイトデ自治区の領主にお願いして、固定の『転移移動』の魔法陣を作ってもらって下さい」
「…急ぎか」
ルークが顔をしかめてアオを見る。
「王都からの手紙を送ります。カズキ、この『通信網』に『物質転移』は付いているか?」
「付いてない。少し待ってくれ」
カズキは右手を掲げ、鏡の上に作り出した魔法を被せ青い光を放つ。
「…繋がったはずだが」
カズキがそう言うと、アオがペンを差し出し、鏡を通り抜け、カズキがペンを受けとる。
「大丈夫みたいだ」
「急ぎで見てもらいたい書類を準備します。先に手紙に目を通してください」
そう言ってアオは、王都からの手紙を差し出してきて、カズキは受けとるとルークに渡した。
ルークはため息を付きながら手紙を読みはじめる。
その間に鏡の『通信網』は画面が切り替わり、ワイトデ自治区の領主の元に繋がった。
カズキが事の説明をして、『転移移動』を何処かに作れるように手配し、明日の昼には使用出来るようお願いしている。
…そう簡単に作れる魔法ではないし、最終座標はカズキが組み込まなくてはいけない。
…リオナスの執務室に繋げるつもりなのだろうか…。
…後で聞いてみよう。
キラは、そんなカズキの後ろ姿を見ながら、キリトに説明を受けていた。
『物質転移』を使って手紙を送ってくるのを始めて見たらしく、興奮気味に『転移移動』って、いつもの『移動』とは違うの?とか、どうなってるの?と、横でキリトを質問攻めにしていた。
…キラにとって『移動』は、飛んでいける距離だから、『転移移動』が長距離の移動だと、説明した方が分かるだろう。
今後のために、新しい魔法ではないが、進化している魔法を使えるように、キラに教えておいた方が良いのかもしれない…。
ルークが手紙を読み終わる頃、カズキはアオから送られてきた書類の束を、炎の魔法石が置いてあるリビングのテーブルの上に置いた。
それを見て、ルークが顔をしかめる。
「…多いぞ」
「アオの判断で決めれない書類です。手伝いますから、今日中に終わらせて下さいね」
「…。」
ルークは諦めて椅子に座り、準備された書類を手にした。
リーンはカズキにお願いして、馬車からチハヤの日記を取り寄せてもらった。
カズキが管理する馬車は、カズキの魔法がかけてあるので、馬車内のモノだったら魔法で取り寄せられるからだ。
リーンはソファーに座ってチハヤの日記を読み出した。
キラはキリトに教えてもらいなから、『通信網』『物質転移』の使い方を習っていた。
これが使えれば、離れていてもカズキやリーンとも話が出来ると聞いて、やる気になったのだ。
練習として、ワイトデ自治区のテオが向こう側で相手をしてくれているようだ。
…離れていても…。
もうすぐ帰るのだと言うことはキラも分かっているから、必死なのだろう。
『転移移動』が繋がれば、子供達をキラに会わせてあげても良いのかもしれない。
さすがにまだ、竜は見たことが無いだろうから…。
雨はまだ降り続いている。
…もうしばらくの休憩だ。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる