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神の宿り木~再生 2~
領主の息子テオ
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キースの記憶が曖昧だから、チハヤの顔をはっきりと覚えていない。
キラは急いで着替えるとカズキに向かって突進していった。
「チハヤ!」
背後からキラに抱きつかれ、カズキは驚いて振り向き、困惑しながら尋ねた。
「…ルーク様。こちらは…」
「炎の竜だ。…おい、カズキから離れろ」
ルークはキラを睨み付けるが、カズキの腰に抱きついて離れようとしない。
カズキも困ってキラに言う。
「申し訳ないですが人違いです」
それでもキラはカズキから離れず首を振るだけ。
リーンはキラに近付き、優しく言う。
「彼はカザンナ王国のルークの側近カズキだ。…チハヤとは違うよ」
「でも、この顔をはチハヤだ!」
「…。」
三人は顔を見合わした。
…それって、カズキの祖先がチハヤって事なのかもしれない。
「ほら、困ってるだろ。離れてやれ」
キリトがそう言ってキラの腕を引っ張り、引き離してくれ、キラは膨れっ面のままキリトの服のはしっこを掴んでいる。
…いつの間にかキラが、キリトに懐いてる…。
この数日間で何があったんだ…?
「立ち話もなんですし、キラ様の小屋に戻りませんか」
そう言ったのはここへ連れてきてくれた青年。
「ご挨拶が遅れました。ワイトデ自治区の領主の息子テオと申します」
そう言って微笑んでキラのもとに向かい、膝を付けてキラを見上げる。
「キラ様。チハヤ様が居なくなって、永い年月が経っています。彼の子孫ではないかと思いますよ」
「…。」
キラはじっとテオを見ている。
「…あの後の事をお話なさった方が、理解してもらえると思います」
…あの後の事…。
まだ、日記は読んでいない。
テオは領主の息子だから、あの日記を読んで、昔何があったのかを知っている…。
「…わかった…。先に戻る…」
キラは素直に頷いて、キリトを引っ張りながら小屋へ向かって歩き出した。
キリトは困惑しながらリーンの方を振り向いて、リーンが頷くとキリトも頷いて、キラと共に小屋に向かっていった。
二人を見送ると、テオが言った。
「…チハヤ様はキース様を探しに、この町を出ていったのです。それで…一度も帰ってこなかったらしくて…寂しい思いをされたのだと思います」
「…。」
そう言えば、キラは人族ではチハヤに懐いていた。
…キースを…探しに…。
詳しいことはやはり日記を読むしかないのだろうが、今はキラからの話を聞くしかない。
「分かりました。キラの話を聞きます」
リーンがそう言うとテオは微笑んで辺りを見回した。
「こちらの後の処理はしておきます」
…そうだ。
『炎の竜の温泉』の側には、少し離れて魔法石を作るために結界を作っていてくれた者達が、その場に座り込んだり寝そべったりして、息も絶え絶えに休憩している。
彼らを介抱して、ワイトデ自治区に戻らなくてはいけない。
それに、無理に熱風を上昇気流にさせたから、雲が発生し、もうすぐ雨が降りだすだろう…。
「キラ様の憂いを無くしてあげて下さい」
テオはそう言って、仲間達の元に向かった。
キラは急いで着替えるとカズキに向かって突進していった。
「チハヤ!」
背後からキラに抱きつかれ、カズキは驚いて振り向き、困惑しながら尋ねた。
「…ルーク様。こちらは…」
「炎の竜だ。…おい、カズキから離れろ」
ルークはキラを睨み付けるが、カズキの腰に抱きついて離れようとしない。
カズキも困ってキラに言う。
「申し訳ないですが人違いです」
それでもキラはカズキから離れず首を振るだけ。
リーンはキラに近付き、優しく言う。
「彼はカザンナ王国のルークの側近カズキだ。…チハヤとは違うよ」
「でも、この顔をはチハヤだ!」
「…。」
三人は顔を見合わした。
…それって、カズキの祖先がチハヤって事なのかもしれない。
「ほら、困ってるだろ。離れてやれ」
キリトがそう言ってキラの腕を引っ張り、引き離してくれ、キラは膨れっ面のままキリトの服のはしっこを掴んでいる。
…いつの間にかキラが、キリトに懐いてる…。
この数日間で何があったんだ…?
「立ち話もなんですし、キラ様の小屋に戻りませんか」
そう言ったのはここへ連れてきてくれた青年。
「ご挨拶が遅れました。ワイトデ自治区の領主の息子テオと申します」
そう言って微笑んでキラのもとに向かい、膝を付けてキラを見上げる。
「キラ様。チハヤ様が居なくなって、永い年月が経っています。彼の子孫ではないかと思いますよ」
「…。」
キラはじっとテオを見ている。
「…あの後の事をお話なさった方が、理解してもらえると思います」
…あの後の事…。
まだ、日記は読んでいない。
テオは領主の息子だから、あの日記を読んで、昔何があったのかを知っている…。
「…わかった…。先に戻る…」
キラは素直に頷いて、キリトを引っ張りながら小屋へ向かって歩き出した。
キリトは困惑しながらリーンの方を振り向いて、リーンが頷くとキリトも頷いて、キラと共に小屋に向かっていった。
二人を見送ると、テオが言った。
「…チハヤ様はキース様を探しに、この町を出ていったのです。それで…一度も帰ってこなかったらしくて…寂しい思いをされたのだと思います」
「…。」
そう言えば、キラは人族ではチハヤに懐いていた。
…キースを…探しに…。
詳しいことはやはり日記を読むしかないのだろうが、今はキラからの話を聞くしかない。
「分かりました。キラの話を聞きます」
リーンがそう言うとテオは微笑んで辺りを見回した。
「こちらの後の処理はしておきます」
…そうだ。
『炎の竜の温泉』の側には、少し離れて魔法石を作るために結界を作っていてくれた者達が、その場に座り込んだり寝そべったりして、息も絶え絶えに休憩している。
彼らを介抱して、ワイトデ自治区に戻らなくてはいけない。
それに、無理に熱風を上昇気流にさせたから、雲が発生し、もうすぐ雨が降りだすだろう…。
「キラ様の憂いを無くしてあげて下さい」
テオはそう言って、仲間達の元に向かった。
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