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神の宿り木~再生 2~
キリトとキラ 5
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資料の中に面に沿って杭を打ち込んで、岩を割ると言うモノがあった。
…割る…ではない。
…粉砕したいのだ。
だが、面に沿って…いくつも割っていけば、砕くことは出きるのではないか…?
へこみを付けて、同じ炎の結晶石を杭の代わりに使えば…それを雷のエネルギーと振動で衝撃を与えれば、割れるのではないか…?
その話を結界を作る青年達に話し、実験することにした。
昨日と同様に敷物の上に炎の結晶石を置き、へこみが付いた上に、なるべく細く尖った炎の結晶石を差し込み、動かないように左右を同じ炎の結晶石で支えた。
「やるぞ」
キリトが集中して雷を集めはじめると、青年達は結界を強化した。
バチンと一面にまばゆい光を放ち、炎の結晶石が真っ二つに割れた。
「…割れた…」
「…割れましたね…」
「だが、何回もできないぞ…」
キリトは手の痺れを感じて、ため息を付いた。
かなりの集中力と魔力を消耗する。
結界を張ってくれる青年達も、外に影響しないように同じだけの魔力を消耗しているはず…。
「…そうですね。…我々も、訓練よりキツいです…」
そう言って吹き出る汗を拭う。
「…キリトさんの雷を外に飛び出さないようにする方が、衝撃が強いです…」
もう一人もそう言って、その場にしゃがみこんだ。
「昨日よりも強めに放ったからな…」
だが、それでやっと真っ二つだ。
「…半分で良いよ…」
ずっと黙ってこちらの様子を見ていた炎の竜が言った。
「…大きいのを半分にしてくれれば、中に小さいのを押し込む」
…砕かなくても良いって事か?
「…三個から五個ぐらいは、割って欲しいけど…」
「…。」
…頑張っても一日、三回までだ。
まあ、何とかするしかないな…。
キリトはため息を付いて、声を掛けた。
「取りあえず、お昼にしよう。お腹が空いた…。午後から出来たら二個割ろう」
「…ははっ…」
座り込んだ青年は青い顔をして苦笑いしている。
「…ああ…体力が…回復していたら…」
もう一人の青年も苦笑いしている。
それとは反対に、炎の竜はニコニコと笑って小屋に向かう。
「…お昼が何か楽しみだな…」
そんな能天気な声が響いた。
一日、二個までが限界だった。
体力的にも魔力も…。
ふらふらになりながら、割れた炎の結晶石を部屋の角に置く。
明日、二個割って、リーン達の戻り具合によって、もう一個ぐらいは準備したい。
炎の竜は時々どこかに飛んで行っては、しばらくすると何も無かったかのように戻ってくる。
彼ら曰く、アリミネ火山の偵察に行っているそうだ。
時々、山の裂け目から熱風が吹き出し、溶岩が出てくる兆候が見える時があって、それを炎の結晶石にしたり、塞いだりしているらしい。
そこは真面目に取り組んでいるんだ…。
夕食後、疲れはてたキリトは、さっさとシャワーを浴びてソファーに寝転ぶと、ずしりと体重が増した気がした。
まだ、回復してこない…。
目蓋が落ちそうになってくると、炎の竜が近付いて来て毛布を捲った。
「…おい…」
炎の竜は毛布の中に潜り込んでくる。
「…自分の部屋で寝ろ」
「…寒い…」
…寒い…ではない。
キリトは身体を起こし、炎の竜を抱えて寝室のベッドの上に放り投げる。
「…眠れない…」
瞳を潤ませキリトを見上げる。
…ああ、そうだろう。
部屋全体を炎の結晶石で囲まれて、落ち着いて眠ることなど出来やしない。
俺だったら絶対に嫌だ。
「…リーンが戻ってくるまでだ」
…俺も甘いのだろう。
ジーンが眠れないと、一番最初に俺の部屋に来たときの事を思い出して、炎の竜と重ねてしまう…。
キリトは再びソファーに寝転ぶと、炎の竜が毛布を抱えて近付いてくる。
「…ほら」
キリトが手を出して呼ぶと、炎の竜は嬉しそうに笑ってキリトの腕の中に潜り込んだ。
「…お休み」
「…お…休み…なさい…」
炎の竜はキリトに聞こえるくらいの小さな声でそう言った。
…教えていないわけではないんだな…。
…ただ、それを使う事が無いから、使えないんだ…。
キリトはそんな事を思いながら、疲労に負けて眠りに付いた。
…割る…ではない。
…粉砕したいのだ。
だが、面に沿って…いくつも割っていけば、砕くことは出きるのではないか…?
へこみを付けて、同じ炎の結晶石を杭の代わりに使えば…それを雷のエネルギーと振動で衝撃を与えれば、割れるのではないか…?
その話を結界を作る青年達に話し、実験することにした。
昨日と同様に敷物の上に炎の結晶石を置き、へこみが付いた上に、なるべく細く尖った炎の結晶石を差し込み、動かないように左右を同じ炎の結晶石で支えた。
「やるぞ」
キリトが集中して雷を集めはじめると、青年達は結界を強化した。
バチンと一面にまばゆい光を放ち、炎の結晶石が真っ二つに割れた。
「…割れた…」
「…割れましたね…」
「だが、何回もできないぞ…」
キリトは手の痺れを感じて、ため息を付いた。
かなりの集中力と魔力を消耗する。
結界を張ってくれる青年達も、外に影響しないように同じだけの魔力を消耗しているはず…。
「…そうですね。…我々も、訓練よりキツいです…」
そう言って吹き出る汗を拭う。
「…キリトさんの雷を外に飛び出さないようにする方が、衝撃が強いです…」
もう一人もそう言って、その場にしゃがみこんだ。
「昨日よりも強めに放ったからな…」
だが、それでやっと真っ二つだ。
「…半分で良いよ…」
ずっと黙ってこちらの様子を見ていた炎の竜が言った。
「…大きいのを半分にしてくれれば、中に小さいのを押し込む」
…砕かなくても良いって事か?
「…三個から五個ぐらいは、割って欲しいけど…」
「…。」
…頑張っても一日、三回までだ。
まあ、何とかするしかないな…。
キリトはため息を付いて、声を掛けた。
「取りあえず、お昼にしよう。お腹が空いた…。午後から出来たら二個割ろう」
「…ははっ…」
座り込んだ青年は青い顔をして苦笑いしている。
「…ああ…体力が…回復していたら…」
もう一人の青年も苦笑いしている。
それとは反対に、炎の竜はニコニコと笑って小屋に向かう。
「…お昼が何か楽しみだな…」
そんな能天気な声が響いた。
一日、二個までが限界だった。
体力的にも魔力も…。
ふらふらになりながら、割れた炎の結晶石を部屋の角に置く。
明日、二個割って、リーン達の戻り具合によって、もう一個ぐらいは準備したい。
炎の竜は時々どこかに飛んで行っては、しばらくすると何も無かったかのように戻ってくる。
彼ら曰く、アリミネ火山の偵察に行っているそうだ。
時々、山の裂け目から熱風が吹き出し、溶岩が出てくる兆候が見える時があって、それを炎の結晶石にしたり、塞いだりしているらしい。
そこは真面目に取り組んでいるんだ…。
夕食後、疲れはてたキリトは、さっさとシャワーを浴びてソファーに寝転ぶと、ずしりと体重が増した気がした。
まだ、回復してこない…。
目蓋が落ちそうになってくると、炎の竜が近付いて来て毛布を捲った。
「…おい…」
炎の竜は毛布の中に潜り込んでくる。
「…自分の部屋で寝ろ」
「…寒い…」
…寒い…ではない。
キリトは身体を起こし、炎の竜を抱えて寝室のベッドの上に放り投げる。
「…眠れない…」
瞳を潤ませキリトを見上げる。
…ああ、そうだろう。
部屋全体を炎の結晶石で囲まれて、落ち着いて眠ることなど出来やしない。
俺だったら絶対に嫌だ。
「…リーンが戻ってくるまでだ」
…俺も甘いのだろう。
ジーンが眠れないと、一番最初に俺の部屋に来たときの事を思い出して、炎の竜と重ねてしまう…。
キリトは再びソファーに寝転ぶと、炎の竜が毛布を抱えて近付いてくる。
「…ほら」
キリトが手を出して呼ぶと、炎の竜は嬉しそうに笑ってキリトの腕の中に潜り込んだ。
「…お休み」
「…お…休み…なさい…」
炎の竜はキリトに聞こえるくらいの小さな声でそう言った。
…教えていないわけではないんだな…。
…ただ、それを使う事が無いから、使えないんだ…。
キリトはそんな事を思いながら、疲労に負けて眠りに付いた。
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