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神の宿り木~再生 2~
キリトとキラ 4
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キリトが目覚めると腕の中に、昨日眠っていた炎の竜は居なかった。
明け方には自分のベッドに戻ったのだろう。
キリトはため息を付いてソファーから降りると、キッチンに行き朝食を作り出した。
昨日、毛布と一緒に適当に食料も頼んであったからだ。
せっかくキッチンが有るので、自分で自由に好きなものを作ろうと思ったからだ。
リーン達は三ヶ所の町を巡ると言っていたから、戻ってくるのに、少なくとも三日から四日はかかるだろう。
その間に炎の魔法石を作らなくてはいけないが、息抜きも必要だ。
キリトは薄切りにしたベーコンを焼き、卵を焼いた。
スープは昨日の残りを温めて、生葉野菜を食べやすい大きさにちぎり皿に乗せ、焼けたベーコンと卵を乗せて、パンを軽く焼いた。
「調味料が無いな…」
塩は有るのだが、せめてバターが欲しい…。
後で頼もう…。
キリトがキッチンで朝食を作っていると、匂いに誘われてか、炎の竜が部屋から顔を覗かせ、じっとこちらを見てくる。
「おはよう。お前も食べるか?」
炎の竜はコクりと頷き部屋から出てきて、物珍しそうにキッチンで作業するキリトの側に来た。
「…朝の挨拶は、教わらなかったのか?」
キリトがそう訪ねると、炎の竜はうつ向いて小さな声で呟いた。
「…お…は…よう…」
…言い慣れていないのだ。
普段は…いつも一人だからか…。
キリトは苦笑いしてもう一人分の朝食を作った。
朝食を無言で食べ、キリトが食器を洗っていると炎の竜の視線が背中に突き刺さる。
…何か言いたいことが有るなら言ってくれ…。
炎の竜は黙って、キリトが食器を片付け終わるまで、じっとしていた。
沈黙に耐えられなくなったキリトが話しかけた。
「何か言いたい事が有るなら言ってくれ」
「…獣人…だったんだ…」
そう言われて、キリトはハッとした。
そうだ、昨日、変化を解いてそのままだった。
キリトは人族の姿に変化して、ため息を付いた。
「それが気になったのか?」
炎の竜はしばらく黙っていて、ボソボソっと言った。
「…の話を…聞かせてくれるって…」
ああ、リーンの話をするって約束だったな…。
「…何が知りたい」
「…子供がいるって…」
炎の竜は潤んだ瞳でキリトを見てくる。
「…一緒に来ていたカザンナ王国の王子ルーク様が、リーンの魔力の番だ。リーンが双子のジーンとユーリを産んで仲良く暮らしている」
「…リーンが子供を産んだ?」
「いろいろ有ったんだよ。詳しくは知らないが、リーンが双子を宿しているときから見ているから真実だ」
「…。」
炎の竜は黙ったまま…。
頭の中では混乱しているのかもしれない。
獣人族の間では、番になれば時間をかけて魔法で子供を宿せる身体にすることが出来る。
リーンは人族…とはちょっと違うかもしれないが、見た目は人族だ。
「…だから…同じ魔力を持っているんだ…」
炎の竜はボソリと言う。
…そうかもしれない。
だからではないが、時々二人は予想外の同じ行動をする。
例外かもしれないが、番とは、そう言うものなのかもしれない。
炎の竜はボソリボソリと質問を投げ掛けてきた。
普段は何しているのとか、子供はどんな子とか、どこで出会ったの…とか。
一生懸命、今のリーンと言う存在を理解しようとしているのだろう。
キリトも答えられることだけ伝えた。
それでリーンが帰ってくるまでに、少しは柔軟になって、名前を『リーン』と呼ぶようになれば良いのだが…。
「こんにちは。キラ様。キリトさん。今日は港町から干しイカを持ってきましたよ」
そう言って昨日の青年がニコニコと小屋にやってきた。
「やった!」
炎の竜は喜んで青年から受けとる。
キリトはため息を付いて、こう言う小さい所から言って、理解してもらわなくてはいけないと、声をかけた。
「…何かをもらったら、『ありがとう』だ」
それには持ってきた青年が驚いてキリトを見る。
「良いんですよ。我々は…もらってくれて嬉いんですから」
「それでもだ」
…そう言うところが、炎の竜を甘えん坊にさせている。
炎の竜は干しイカを手に持ってうつむく。
「…あ…りが…とう…」
青年達は驚いて、そして微笑んで炎の竜に言う。
「どういたしまして」
キリトは炎の竜の頭に手を乗せて、グリグリと撫でてあげる。
「ちゃんと言えたな。少しずつ覚えていくんだぞ」
「…。」
炎の竜は返事はしなかったが、頷いてくれた気がした。
結界を張ってくれた青年は、街道を作るときに岩や巨大な石を砕いて道を作ったと言う資料を持ってきてくれた。
昨日、ワイトデ自治区の領主の屋敷に帰ってから、報告をしたときに、参考になればといろいろな資料を準備してくれていたそうだ。
ありがたい。
何かヒントになることが書いてあれば、炎の結晶石を砕く事が出来る。
今日は、その資料を読む事に専念することにした。
明け方には自分のベッドに戻ったのだろう。
キリトはため息を付いてソファーから降りると、キッチンに行き朝食を作り出した。
昨日、毛布と一緒に適当に食料も頼んであったからだ。
せっかくキッチンが有るので、自分で自由に好きなものを作ろうと思ったからだ。
リーン達は三ヶ所の町を巡ると言っていたから、戻ってくるのに、少なくとも三日から四日はかかるだろう。
その間に炎の魔法石を作らなくてはいけないが、息抜きも必要だ。
キリトは薄切りにしたベーコンを焼き、卵を焼いた。
スープは昨日の残りを温めて、生葉野菜を食べやすい大きさにちぎり皿に乗せ、焼けたベーコンと卵を乗せて、パンを軽く焼いた。
「調味料が無いな…」
塩は有るのだが、せめてバターが欲しい…。
後で頼もう…。
キリトがキッチンで朝食を作っていると、匂いに誘われてか、炎の竜が部屋から顔を覗かせ、じっとこちらを見てくる。
「おはよう。お前も食べるか?」
炎の竜はコクりと頷き部屋から出てきて、物珍しそうにキッチンで作業するキリトの側に来た。
「…朝の挨拶は、教わらなかったのか?」
キリトがそう訪ねると、炎の竜はうつ向いて小さな声で呟いた。
「…お…は…よう…」
…言い慣れていないのだ。
普段は…いつも一人だからか…。
キリトは苦笑いしてもう一人分の朝食を作った。
朝食を無言で食べ、キリトが食器を洗っていると炎の竜の視線が背中に突き刺さる。
…何か言いたいことが有るなら言ってくれ…。
炎の竜は黙って、キリトが食器を片付け終わるまで、じっとしていた。
沈黙に耐えられなくなったキリトが話しかけた。
「何か言いたい事が有るなら言ってくれ」
「…獣人…だったんだ…」
そう言われて、キリトはハッとした。
そうだ、昨日、変化を解いてそのままだった。
キリトは人族の姿に変化して、ため息を付いた。
「それが気になったのか?」
炎の竜はしばらく黙っていて、ボソボソっと言った。
「…の話を…聞かせてくれるって…」
ああ、リーンの話をするって約束だったな…。
「…何が知りたい」
「…子供がいるって…」
炎の竜は潤んだ瞳でキリトを見てくる。
「…一緒に来ていたカザンナ王国の王子ルーク様が、リーンの魔力の番だ。リーンが双子のジーンとユーリを産んで仲良く暮らしている」
「…リーンが子供を産んだ?」
「いろいろ有ったんだよ。詳しくは知らないが、リーンが双子を宿しているときから見ているから真実だ」
「…。」
炎の竜は黙ったまま…。
頭の中では混乱しているのかもしれない。
獣人族の間では、番になれば時間をかけて魔法で子供を宿せる身体にすることが出来る。
リーンは人族…とはちょっと違うかもしれないが、見た目は人族だ。
「…だから…同じ魔力を持っているんだ…」
炎の竜はボソリと言う。
…そうかもしれない。
だからではないが、時々二人は予想外の同じ行動をする。
例外かもしれないが、番とは、そう言うものなのかもしれない。
炎の竜はボソリボソリと質問を投げ掛けてきた。
普段は何しているのとか、子供はどんな子とか、どこで出会ったの…とか。
一生懸命、今のリーンと言う存在を理解しようとしているのだろう。
キリトも答えられることだけ伝えた。
それでリーンが帰ってくるまでに、少しは柔軟になって、名前を『リーン』と呼ぶようになれば良いのだが…。
「こんにちは。キラ様。キリトさん。今日は港町から干しイカを持ってきましたよ」
そう言って昨日の青年がニコニコと小屋にやってきた。
「やった!」
炎の竜は喜んで青年から受けとる。
キリトはため息を付いて、こう言う小さい所から言って、理解してもらわなくてはいけないと、声をかけた。
「…何かをもらったら、『ありがとう』だ」
それには持ってきた青年が驚いてキリトを見る。
「良いんですよ。我々は…もらってくれて嬉いんですから」
「それでもだ」
…そう言うところが、炎の竜を甘えん坊にさせている。
炎の竜は干しイカを手に持ってうつむく。
「…あ…りが…とう…」
青年達は驚いて、そして微笑んで炎の竜に言う。
「どういたしまして」
キリトは炎の竜の頭に手を乗せて、グリグリと撫でてあげる。
「ちゃんと言えたな。少しずつ覚えていくんだぞ」
「…。」
炎の竜は返事はしなかったが、頷いてくれた気がした。
結界を張ってくれた青年は、街道を作るときに岩や巨大な石を砕いて道を作ったと言う資料を持ってきてくれた。
昨日、ワイトデ自治区の領主の屋敷に帰ってから、報告をしたときに、参考になればといろいろな資料を準備してくれていたそうだ。
ありがたい。
何かヒントになることが書いてあれば、炎の結晶石を砕く事が出来る。
今日は、その資料を読む事に専念することにした。
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