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神の宿り木~再生 2~
キリトとキラ 2
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モモの実を皿に乗せて差し出され、炎の竜は手掴みで食べ始めた。
キリトの手伝いで結界を作りに来た青年達は、炎の竜が美味しそうに食べるのを見て微笑んでいた。
…甘やかし過ぎだ…。
キリトは青年達に、炎の結晶石を砕く時に敷いておく物がないか聞くと、隣の小屋に有るので取ってくると言って一人、出ていった。
その間に、本人を目の前にしてキリトは聞いた。
「甘やかし過ぎではないのか?」
キリトがそう言うと、青年は微笑んで言った。
「キラ様の望むようにして差し上げよ。と、直接お会いできることは滅多に無いですから、貴重なんです」
…それが、甘やかし過ぎなのだが…。
隣の小屋から敷物を持って青年が戻ってくると、これからの段取りを二人に説明した。
敷物の上に炎の結晶石を置いて、稲妻で砕くから外に飛び出さないように結界を強化して欲しいと。
一度で砕けるとは限らないし、どれだけ魔力を使うか分からない事も話した。
青年達は頷いて、小屋から少し離れた場所に敷物を敷いて、結界の準備し始めた。
すると、モモの実を食べ終わった炎の竜は、皿をそのままテーブルの上に置きっぱなしにして、服を脱ぎ捨て、外に飛び出すと竜の姿になって飛んでいってしまった。
「…。」
…あいつ…気まぐれ過ぎるだろ!
キリトは皿をキッチンに持っていき、脱ぎ散らかした服を拾ってソファーの上に放り投げた。
…片付けないと気が済まない…。
「…いつもああなのか?!」
キリトは青年達に聞くと、苦笑いして答えてくれた。
「はい。長年そうやって来てしまっているので、我々には普通なんですが…」
「…。」
これが普通だと?!
…ジーンやユーリの方がもっと大人だぞ!
食器は片付けるし、服も脱ぎ散らかさない!
「誰も、教えなかったのか…」
「…キラ様はこの地の守り神ですから…」
それにしたって、酷すぎる。
詳しくは聞かなかったが、誰も躾をしなかったと言うこと…。
リーンと出会った頃の、はぐれだった頃の自分と重ねてしまってキリトは苦笑いした。
…俺もああ、だったのだろうか…。
「準備できましたよ」
彼らに呼ばれて、キリトはさっき炎の竜がポイ捨てされた炎の結晶石を拾って、リーンの為に…炎の魔法石を作っても為に砕くことに専念した。
大きな炎の魔法石は、炎の竜が言っていたみたいに固かった。
噴火したときの炎や熱量を結晶化させたものだから、かなり凝固されていることもあるだろう。
普通に雷を一点集中させたくらいでは、欠けるくらいで砕けてはくれない。
何度か試したが、魔力を消耗させるだけ…。
どれくらい魔力を集中させればいい…。
ちょっと一息付いて、炎の竜の事について二人に聞いた。
「炎の竜が産まれてからどれくらいの年月が過ぎているんだ?」
「今年の生誕祭が二百五十年目だから…二百五十才です」
…二百五十年。
…その間、待っていたのか…。
リーンが来るのを…。
…甘やかしたくなる気持ちも分からないではないが…。
…時間の感覚が無くなって、中身が成長していない。
今さらだが、何とかならないものか…。
「キラ様は寂しがりやなんですよ」
そう言って青年が微笑む。
「ここに出入りする人々を代々見送って来て、取り残されたみたいに思っているのかもしれません」
「…産まれた当初の事を知る方も一人しかいませんし、普段は領主のお屋敷に入り浸りになっていますし…」
そして二人は顔を見合わせて言う。
「時々、思い出したかのように、アリミネ火山の山頂で鳴き声を上げていますから…」
「…。」
竜種族が長寿なのは仕方ない。
…だが、それでも…依存し過ぎだ。
「食事は、どうなっている?」
「キラ様は炎の結晶石を食べています。なので、我々が食べるものをあまり必要としません。でも、興味はあるようで、甘い果実系はお好きですよ」
だったら、この炎の結晶石はあいつの食料だと言うことか?
「…だったら良いのか?これをもらって…」
青年は微笑んで言う。
「心配してくれるんですね。大丈夫ですよ。火山は時々、熱風を起こして町を襲います。それをキラ様が食べてくれるので、安心して暮らせます」
「これは、食べきれない分を結晶化したものですから、使っても大丈夫なんですよ」
「それなら良いが…」
キリトは複雑な気持ちだった。
みんな大切にしてくれるし、優しいけれど、いつか置いていかれてしまう…そんな思いを抱いているのか…?
特に人族は獣人族に比べて寿命は短い。
…炎の竜を残して去っていく方の不安な気持ちは、きっと伝わらない…。
きっと…リーンも…。
キリトはため息を付いた。
今、俺にやれることをやるだけだ!
リーンが帰ってくるまでに、なんとしても炎の竜に炎の魔法石を作ってもらうぞ!
「さて、気合いを入れるか!」
キリトは再び炎の結晶石を砕く事に集中した。
キリトの手伝いで結界を作りに来た青年達は、炎の竜が美味しそうに食べるのを見て微笑んでいた。
…甘やかし過ぎだ…。
キリトは青年達に、炎の結晶石を砕く時に敷いておく物がないか聞くと、隣の小屋に有るので取ってくると言って一人、出ていった。
その間に、本人を目の前にしてキリトは聞いた。
「甘やかし過ぎではないのか?」
キリトがそう言うと、青年は微笑んで言った。
「キラ様の望むようにして差し上げよ。と、直接お会いできることは滅多に無いですから、貴重なんです」
…それが、甘やかし過ぎなのだが…。
隣の小屋から敷物を持って青年が戻ってくると、これからの段取りを二人に説明した。
敷物の上に炎の結晶石を置いて、稲妻で砕くから外に飛び出さないように結界を強化して欲しいと。
一度で砕けるとは限らないし、どれだけ魔力を使うか分からない事も話した。
青年達は頷いて、小屋から少し離れた場所に敷物を敷いて、結界の準備し始めた。
すると、モモの実を食べ終わった炎の竜は、皿をそのままテーブルの上に置きっぱなしにして、服を脱ぎ捨て、外に飛び出すと竜の姿になって飛んでいってしまった。
「…。」
…あいつ…気まぐれ過ぎるだろ!
キリトは皿をキッチンに持っていき、脱ぎ散らかした服を拾ってソファーの上に放り投げた。
…片付けないと気が済まない…。
「…いつもああなのか?!」
キリトは青年達に聞くと、苦笑いして答えてくれた。
「はい。長年そうやって来てしまっているので、我々には普通なんですが…」
「…。」
これが普通だと?!
…ジーンやユーリの方がもっと大人だぞ!
食器は片付けるし、服も脱ぎ散らかさない!
「誰も、教えなかったのか…」
「…キラ様はこの地の守り神ですから…」
それにしたって、酷すぎる。
詳しくは聞かなかったが、誰も躾をしなかったと言うこと…。
リーンと出会った頃の、はぐれだった頃の自分と重ねてしまってキリトは苦笑いした。
…俺もああ、だったのだろうか…。
「準備できましたよ」
彼らに呼ばれて、キリトはさっき炎の竜がポイ捨てされた炎の結晶石を拾って、リーンの為に…炎の魔法石を作っても為に砕くことに専念した。
大きな炎の魔法石は、炎の竜が言っていたみたいに固かった。
噴火したときの炎や熱量を結晶化させたものだから、かなり凝固されていることもあるだろう。
普通に雷を一点集中させたくらいでは、欠けるくらいで砕けてはくれない。
何度か試したが、魔力を消耗させるだけ…。
どれくらい魔力を集中させればいい…。
ちょっと一息付いて、炎の竜の事について二人に聞いた。
「炎の竜が産まれてからどれくらいの年月が過ぎているんだ?」
「今年の生誕祭が二百五十年目だから…二百五十才です」
…二百五十年。
…その間、待っていたのか…。
リーンが来るのを…。
…甘やかしたくなる気持ちも分からないではないが…。
…時間の感覚が無くなって、中身が成長していない。
今さらだが、何とかならないものか…。
「キラ様は寂しがりやなんですよ」
そう言って青年が微笑む。
「ここに出入りする人々を代々見送って来て、取り残されたみたいに思っているのかもしれません」
「…産まれた当初の事を知る方も一人しかいませんし、普段は領主のお屋敷に入り浸りになっていますし…」
そして二人は顔を見合わせて言う。
「時々、思い出したかのように、アリミネ火山の山頂で鳴き声を上げていますから…」
「…。」
竜種族が長寿なのは仕方ない。
…だが、それでも…依存し過ぎだ。
「食事は、どうなっている?」
「キラ様は炎の結晶石を食べています。なので、我々が食べるものをあまり必要としません。でも、興味はあるようで、甘い果実系はお好きですよ」
だったら、この炎の結晶石はあいつの食料だと言うことか?
「…だったら良いのか?これをもらって…」
青年は微笑んで言う。
「心配してくれるんですね。大丈夫ですよ。火山は時々、熱風を起こして町を襲います。それをキラ様が食べてくれるので、安心して暮らせます」
「これは、食べきれない分を結晶化したものですから、使っても大丈夫なんですよ」
「それなら良いが…」
キリトは複雑な気持ちだった。
みんな大切にしてくれるし、優しいけれど、いつか置いていかれてしまう…そんな思いを抱いているのか…?
特に人族は獣人族に比べて寿命は短い。
…炎の竜を残して去っていく方の不安な気持ちは、きっと伝わらない…。
きっと…リーンも…。
キリトはため息を付いた。
今、俺にやれることをやるだけだ!
リーンが帰ってくるまでに、なんとしても炎の竜に炎の魔法石を作ってもらうぞ!
「さて、気合いを入れるか!」
キリトは再び炎の結晶石を砕く事に集中した。
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