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神の宿り木~再生 2~
キリトとキラ 1
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リーンに同行するよう誘われて、ルーク王子と共にアリミネ火山のあるワイトデ自治区へ来たのはいいが、炎の魔法石が必要だからと、何故、俺は、炎の竜を子守りをしなくてはいけないのだと、キリトは自問していた。
リーンがかつてこの地に来て、キース言う名で土地の者達と共に、炎の竜にお願いしてアリミネ火山の噴火を押さえたと言うことは、彼らの会話からなんとなく察した。
出会った頃から変わらない姿のリーン。
そして不思議な魔法や知識などをどこかから探してきて、俺たちをいつも驚かす…。
ルーク王子に出会って、双子のジーンとユーリが産まれて、リーンの歩みが少しゆっくりになった気がする。
いつもは用事や事が済むと、次の場所に移動していたリーンは、帰る場所にルーク王子の元を選んだ。
だから長期間会うことが無くても、必ずルーク王子の元には帰っているみたいだし、ジーンやユーリが週末にリオナス行くようになってからは、なるべく週末に戻ってきているみたいだった。
俺にとってのリーンは、行き倒れていたところを助けてくれた恩人でもあり、はぐれ獣人だった俺に初めて正しい魔力の使い方を教えてくれた人であり、番になって欲しいと思った人だ。
…今思えば、何も知らなかったとはいえ、恥ずかしいばかりだ。
ジーンとユーリか学校に行き初めて、子供達の身の回りを世話するために一緒に王都に来て、王都の屋敷で暮らすようになってからはリーンに会う機会が無くなってしまった。
王族とは言え、普通一般家庭でする事を覚えさせ、王族にふさわしい振る舞いは、別の者がマナーや所作を教えていた。
…リオナスにいるときの、リーンとルーク王子、ジーン、ユーリの姿は、よく見かける家族そのものだった。
…俺は…。
戸惑いながらも、ルーク王子の側近達が友人の様に話し、時には主の様に接するのを見て、リーンは俺の主なのだと自覚し、真似て友人の様に主の様に接した。
今回の同行も使用人はいないし、初めての土地だから安全の確認のためだと思っていた。
実際、秘密裏に諜報活動をしているし、ルーク王子もそれを分かっていて許可したのだと思っていた。
なのに、このわがまま放題な炎の竜は、気まぐれで、リーンが居なくなったとたん態度を変え、無理難題を押し付けてくる…。
やってやろうじゃないか!
と、意地になってしまう俺も大概だが…。
「炎の結晶石、大きいのを壊せたら炎の魔法石を作るの簡単だよ」
リーンがワイトデ自治区に戻っていって、置いていかれたキリトは炎の竜がそう言ったのを聞き逃さなかった。
「でも、あんたに壊せないだろうけど」
「…。」
さっきの態度と違う…。
「どれだ、大きいのは」
カチンときたキリトは炎の竜を睨み付けた。
小屋の扉を明け、寝室側の扉を開くと、目映いばかりの炎の結晶石が部屋中に置かれていた。
こんな大量に置いてあるのは見たことがない…。
キリトは目を丸くして部屋の中を眺めた。
もとはシンプルなベッドがあるだけの部屋なのだろうが、壁一面に棚があり、無造作に飾ると言うよりは放り込まれている。
窓際にもびっしりと並んでいて、ベッドの側の足下にも大きな炎の結晶石がいくつも置かれていた。
よく床が抜けないな…と心配になるくらいだ。
「ベッドの横にある大きいのは、噴火したときの炎の結晶石だから、重たいし固いよ」
炎の竜を見ると、やれるものならやってみろ。と、挑発的な眼差しでこちらを見ている。
キリトはため息を付いて、大きな炎の結晶石に触れ、持ち上げようとするが持ち上がらない。
ああ、ここから試されているわけだ…。
キリトは軽減魔法を炎の結晶石に掛け、持ち上げてリビングに運んだ。
これだけのモノを砕こうとすると、結界内でなければ、かなりの被害が出てしまう。
拾うのも大変だから、下に敷くモノを準備してもらって、結界を作れる者が来るまでに段取りを考えていると、炎の竜がリビングに運んだ炎の結晶石をヒョイと持って寝室に持っていこうとした。
「おい!それを砕けばいいんじゃないのか?」
「…面白くない…」
面白くないだと?!
「炎の魔法石を作ってくれないのか?!」
「…と、約束したから…作るけど…」
…リーンが居ないから、ふて腐れている。
と、そこへワイトデ自治区から結界を作るために二人派遣されてきた。
彼らは、二人の様子を見るなり苦笑いして、一緒に持ってきた袋を炎の竜に見せる。
「キラ様。熊族から収穫したばかりのモモの実を頂きましたよ」
「食べる!」
炎の竜は嬉しそうに笑って、炎の結晶石をポイと置き、ソファーに座って待ち構えている。
…どういう状況だ?
それに今、ポイっと投げ捨てなかったか?
キリトの戸惑いをよそに、派遣されてきた青年は、キッチンに向かい、袋の中からモモの実を取り出して皮を剥き始めた。
…剥き終わるのを待っているのか…。
もう一人の青年は洗い場に置いてある、さっき使ったコップを洗いだし、片付け始めた。
そこまでする…?
甘やかし過ぎでないか…?
当たり前のようにする青年達を、キリトは呆然と見て、ため息を付いた。
リーンがかつてこの地に来て、キース言う名で土地の者達と共に、炎の竜にお願いしてアリミネ火山の噴火を押さえたと言うことは、彼らの会話からなんとなく察した。
出会った頃から変わらない姿のリーン。
そして不思議な魔法や知識などをどこかから探してきて、俺たちをいつも驚かす…。
ルーク王子に出会って、双子のジーンとユーリが産まれて、リーンの歩みが少しゆっくりになった気がする。
いつもは用事や事が済むと、次の場所に移動していたリーンは、帰る場所にルーク王子の元を選んだ。
だから長期間会うことが無くても、必ずルーク王子の元には帰っているみたいだし、ジーンやユーリが週末にリオナス行くようになってからは、なるべく週末に戻ってきているみたいだった。
俺にとってのリーンは、行き倒れていたところを助けてくれた恩人でもあり、はぐれ獣人だった俺に初めて正しい魔力の使い方を教えてくれた人であり、番になって欲しいと思った人だ。
…今思えば、何も知らなかったとはいえ、恥ずかしいばかりだ。
ジーンとユーリか学校に行き初めて、子供達の身の回りを世話するために一緒に王都に来て、王都の屋敷で暮らすようになってからはリーンに会う機会が無くなってしまった。
王族とは言え、普通一般家庭でする事を覚えさせ、王族にふさわしい振る舞いは、別の者がマナーや所作を教えていた。
…リオナスにいるときの、リーンとルーク王子、ジーン、ユーリの姿は、よく見かける家族そのものだった。
…俺は…。
戸惑いながらも、ルーク王子の側近達が友人の様に話し、時には主の様に接するのを見て、リーンは俺の主なのだと自覚し、真似て友人の様に主の様に接した。
今回の同行も使用人はいないし、初めての土地だから安全の確認のためだと思っていた。
実際、秘密裏に諜報活動をしているし、ルーク王子もそれを分かっていて許可したのだと思っていた。
なのに、このわがまま放題な炎の竜は、気まぐれで、リーンが居なくなったとたん態度を変え、無理難題を押し付けてくる…。
やってやろうじゃないか!
と、意地になってしまう俺も大概だが…。
「炎の結晶石、大きいのを壊せたら炎の魔法石を作るの簡単だよ」
リーンがワイトデ自治区に戻っていって、置いていかれたキリトは炎の竜がそう言ったのを聞き逃さなかった。
「でも、あんたに壊せないだろうけど」
「…。」
さっきの態度と違う…。
「どれだ、大きいのは」
カチンときたキリトは炎の竜を睨み付けた。
小屋の扉を明け、寝室側の扉を開くと、目映いばかりの炎の結晶石が部屋中に置かれていた。
こんな大量に置いてあるのは見たことがない…。
キリトは目を丸くして部屋の中を眺めた。
もとはシンプルなベッドがあるだけの部屋なのだろうが、壁一面に棚があり、無造作に飾ると言うよりは放り込まれている。
窓際にもびっしりと並んでいて、ベッドの側の足下にも大きな炎の結晶石がいくつも置かれていた。
よく床が抜けないな…と心配になるくらいだ。
「ベッドの横にある大きいのは、噴火したときの炎の結晶石だから、重たいし固いよ」
炎の竜を見ると、やれるものならやってみろ。と、挑発的な眼差しでこちらを見ている。
キリトはため息を付いて、大きな炎の結晶石に触れ、持ち上げようとするが持ち上がらない。
ああ、ここから試されているわけだ…。
キリトは軽減魔法を炎の結晶石に掛け、持ち上げてリビングに運んだ。
これだけのモノを砕こうとすると、結界内でなければ、かなりの被害が出てしまう。
拾うのも大変だから、下に敷くモノを準備してもらって、結界を作れる者が来るまでに段取りを考えていると、炎の竜がリビングに運んだ炎の結晶石をヒョイと持って寝室に持っていこうとした。
「おい!それを砕けばいいんじゃないのか?」
「…面白くない…」
面白くないだと?!
「炎の魔法石を作ってくれないのか?!」
「…と、約束したから…作るけど…」
…リーンが居ないから、ふて腐れている。
と、そこへワイトデ自治区から結界を作るために二人派遣されてきた。
彼らは、二人の様子を見るなり苦笑いして、一緒に持ってきた袋を炎の竜に見せる。
「キラ様。熊族から収穫したばかりのモモの実を頂きましたよ」
「食べる!」
炎の竜は嬉しそうに笑って、炎の結晶石をポイと置き、ソファーに座って待ち構えている。
…どういう状況だ?
それに今、ポイっと投げ捨てなかったか?
キリトの戸惑いをよそに、派遣されてきた青年は、キッチンに向かい、袋の中からモモの実を取り出して皮を剥き始めた。
…剥き終わるのを待っているのか…。
もう一人の青年は洗い場に置いてある、さっき使ったコップを洗いだし、片付け始めた。
そこまでする…?
甘やかし過ぎでないか…?
当たり前のようにする青年達を、キリトは呆然と見て、ため息を付いた。
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