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神の宿り木~再生 2~
有翼族の町ナシャール
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翌日、ロバロク山の有翼族の元に向かった。
有翼族は山の斜面に町を作っているので、専用の馬車でないと斜面は上がれないらしい。
なので、狼族のシロガネの屋敷に馬車を置いて、歩いて登ることにした。
有翼族の町ナシャールの入口までは、固定の『移動』が備えられていて、狼族のシロガネの屋敷から少しは慣れた場所に固定の『移動』用の小屋が建てられていた。
早速連絡を取ってもらって、ナシャールまで『移動』の許可をもらう。
山小屋アルファの側に作った『移動』用の魔法陣と同じやり方だ。
シロガネによると、各町にナシャールへ行く『移動』用の魔法陣が備え付けられていて、基本有料で使わせてくれるらしい。
…有料なんだ。
まあ、小屋の管理や魔力を持った常駐者が必要だし、無料にして管理できなくなるのも困るからだろう。
三人が『移動』の魔法陣の中に入るとシロガネが微笑んで挨拶をしてきた。
「行ってらっしゃいませ」
それと同時に『移動』して、有翼族の町ナシャールにたどり着いていた。
「ようこそおいでくださいました」
そう言って出迎えてくれたのは有翼族ではなく、熊族の青年だった。
ふと、背後を見るとレンガ造りのナシャールの町が山に張り付くように建てられている。
変わらない景色…けれど、町のふもとにこんな住宅は無かった…はず…。
『移動』用の小屋を挟んでナシャールとは反対側の平地に小規模な集落があった。
熊族の青年が微笑んで説明してくれた。
「ここもナシャールの一部です。アヤメ地区と言って主に有翼族と獣人族の家族が住んでいます」
…アヤメ…。
夢で見た、キラと仲良くなった熊族の子供を思い出す。
「私の祖先のアヤメがこの地に住み始めた事から名付けられたそうです。では、ご案内します」
…それって…。
リーンの戸惑いをよそに、青年はナシャールへ向かって歩きだした。
変わらない町…。
リーンはナシャールの長い道を見てそう思った。
「この真っ直ぐの道だが、専用の馬車でないと登れないと言っていたのが、これは無理だぞ」
ルークがそう言うと、青年は答えてくれた。
「山に沿って緩やかな蛇行した道があります。町の端から端までを何度も行き来して少しづつ登っていくので時間がかかります」
それだったら真っ直ぐの登った方が近い。
「この交差点が、馬車道ですよ」
丁度、十字路に差し掛かり左右を見比べると、なんとなく坂道になっている。
「有翼族の方達は、ほとんど飛んで移動するので、荷物の運搬用としての馬車道になってます」
…なるほど…。
だから町中を端から端まで移動しながら進んでいくのだ。
あの時はそんな余裕もなく、気が付かなかった…。
町を見上げると、光の塔がそびえ立っている…。
町中から真っ直ぐに伸びた一本の道の突き当たりが、確かシバの住む宮殿のようなお屋敷だったはず…。
今は別の有翼族が住んでいるのだろうけれど…。
四人は黙々と上り坂を上がっていった。
山歩きに慣れているから気にしなかったが、カズキの歩みが段々と遅れてはじめた。
「…さすがに…はぁはぁ…足が…上がらなく…はぁはぁ…なってきました…」
息切れしながらカズキがそう言って、必死に付いてくる。
ルークは最近、書類に埋もれてデスクワークが多かったが、普段から野山を駆け回っているので平気なようだ。
「リーンは大丈夫なのか?」
「綺麗に整備された道だから、歩きやすいよ」
「…。」
山道は石や岩があったり、でこぼこととしてバランスを取りにくいが、整えられた道は安心して歩けるので支障はない。
「…はぁ…もう少し…体力付けないと…いけないですね…」
カズキは苦笑いしながら足を動かす。
「もう少しでたどり着きます。頑張って下さい」
熊族の青年に励まされて、カズキは必死に歩く。
突き当たりのお屋敷の門が見えてきた時、入口に有翼族の者が立っていて、出迎えに来ているようだ。
その姿が見え初めて、リーンは目を疑った。
「初めまして、と、言うべきか、久しぶり、と、言うべきか迷ったのですが…再び会えて嬉しいですよ。キース」
そこにいたのは夢で見た、有翼族の領主シバだった。
有翼族は山の斜面に町を作っているので、専用の馬車でないと斜面は上がれないらしい。
なので、狼族のシロガネの屋敷に馬車を置いて、歩いて登ることにした。
有翼族の町ナシャールの入口までは、固定の『移動』が備えられていて、狼族のシロガネの屋敷から少しは慣れた場所に固定の『移動』用の小屋が建てられていた。
早速連絡を取ってもらって、ナシャールまで『移動』の許可をもらう。
山小屋アルファの側に作った『移動』用の魔法陣と同じやり方だ。
シロガネによると、各町にナシャールへ行く『移動』用の魔法陣が備え付けられていて、基本有料で使わせてくれるらしい。
…有料なんだ。
まあ、小屋の管理や魔力を持った常駐者が必要だし、無料にして管理できなくなるのも困るからだろう。
三人が『移動』の魔法陣の中に入るとシロガネが微笑んで挨拶をしてきた。
「行ってらっしゃいませ」
それと同時に『移動』して、有翼族の町ナシャールにたどり着いていた。
「ようこそおいでくださいました」
そう言って出迎えてくれたのは有翼族ではなく、熊族の青年だった。
ふと、背後を見るとレンガ造りのナシャールの町が山に張り付くように建てられている。
変わらない景色…けれど、町のふもとにこんな住宅は無かった…はず…。
『移動』用の小屋を挟んでナシャールとは反対側の平地に小規模な集落があった。
熊族の青年が微笑んで説明してくれた。
「ここもナシャールの一部です。アヤメ地区と言って主に有翼族と獣人族の家族が住んでいます」
…アヤメ…。
夢で見た、キラと仲良くなった熊族の子供を思い出す。
「私の祖先のアヤメがこの地に住み始めた事から名付けられたそうです。では、ご案内します」
…それって…。
リーンの戸惑いをよそに、青年はナシャールへ向かって歩きだした。
変わらない町…。
リーンはナシャールの長い道を見てそう思った。
「この真っ直ぐの道だが、専用の馬車でないと登れないと言っていたのが、これは無理だぞ」
ルークがそう言うと、青年は答えてくれた。
「山に沿って緩やかな蛇行した道があります。町の端から端までを何度も行き来して少しづつ登っていくので時間がかかります」
それだったら真っ直ぐの登った方が近い。
「この交差点が、馬車道ですよ」
丁度、十字路に差し掛かり左右を見比べると、なんとなく坂道になっている。
「有翼族の方達は、ほとんど飛んで移動するので、荷物の運搬用としての馬車道になってます」
…なるほど…。
だから町中を端から端まで移動しながら進んでいくのだ。
あの時はそんな余裕もなく、気が付かなかった…。
町を見上げると、光の塔がそびえ立っている…。
町中から真っ直ぐに伸びた一本の道の突き当たりが、確かシバの住む宮殿のようなお屋敷だったはず…。
今は別の有翼族が住んでいるのだろうけれど…。
四人は黙々と上り坂を上がっていった。
山歩きに慣れているから気にしなかったが、カズキの歩みが段々と遅れてはじめた。
「…さすがに…はぁはぁ…足が…上がらなく…はぁはぁ…なってきました…」
息切れしながらカズキがそう言って、必死に付いてくる。
ルークは最近、書類に埋もれてデスクワークが多かったが、普段から野山を駆け回っているので平気なようだ。
「リーンは大丈夫なのか?」
「綺麗に整備された道だから、歩きやすいよ」
「…。」
山道は石や岩があったり、でこぼこととしてバランスを取りにくいが、整えられた道は安心して歩けるので支障はない。
「…はぁ…もう少し…体力付けないと…いけないですね…」
カズキは苦笑いしながら足を動かす。
「もう少しでたどり着きます。頑張って下さい」
熊族の青年に励まされて、カズキは必死に歩く。
突き当たりのお屋敷の門が見えてきた時、入口に有翼族の者が立っていて、出迎えに来ているようだ。
その姿が見え初めて、リーンは目を疑った。
「初めまして、と、言うべきか、久しぶり、と、言うべきか迷ったのですが…再び会えて嬉しいですよ。キース」
そこにいたのは夢で見た、有翼族の領主シバだった。
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