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神の宿り木~再生 2~
熊族の果実
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熊族の領主の元にたどり着くと、トワイデ自治区から連絡が行っていたらしく、昼食を準備して待っていてくれた。
ルークはカザンナ王国の第三王子として挨拶し、領主と共に昼食を取り、キースの準魔法石の話になった。
リーンに差し出されたのは、また一冊の本とケースに入った準魔法石だった。
この本は、当時同行した町長の末っ子が、番を得てこの町を出ていくまで、書いたものだと言う。
…と、言うことはアヤメが…。
リーンはキースの記憶を探り当て、思い出していた。
ココでも本だけは受け取り、準魔法石の入ったケースだけは返した。
パラリと捲ると、最初のページに『キースさんが来たら渡して下さい。アヤメ』と、幼い文字で書かれていた。
そしてペラペラと後ろの方に行くにつれ、大人びた文字に変わって行く…。
アヤメの成長が文字だけで伝わるのが嬉しい。
リーンはアヤメの日記を抱き締めた。
落ち着いたところで領主に、熊族の町トワロの案内をお願いした。
来るときに見た、露天や市場などを見て見たかったし、時間があれば、栽培している場所も見てみたかった。
夕食までの間、熊族の領主の息子達、ショウタとリョウタが案内してくれることになった。
熊族の二人は双子で、まだ学生だが学業の合間に、新種の果樹作りや品種改良の研究に取り組んでいるらしい。
五人は歩いて市場に向かいながら、二人の話を聞いていた。
「甘いけど、固くて食べにくい果樹を柔らかく改良出来ないかなって…」
「酸味が強い果物をもう少し甘く出来ないかな…とか、まだ基礎の勉強中だけとね…」
それでも興味を持って、そういった研究を間近で見ることが出来れば、いずれ作り出せるかもしれない。
二人が楽しそうに話すので、あっという間に市場の側にまで来ていた。
いろんな種族の獣人が市場を出入りしている。
リーンは市場の入り口付近にある店の、握りこぶしくらいの楕円形の焦げ茶色の物体に目が止まった。
「アレは何?」
「マンゴンだよ。中はオレンジ色した甘い果物」
ジュンタがそう言うと、リョウタが試食用のマンゴンをもらってきてくれた。
「本当にオレンジ色をしている…」
リーンは一切れ口に入れる。
「独特の甘味だね」
ルークもカズキも口に入れた。
「…これって、ドライフルーツで食べたことがある味だ!」
カズキはそう言って驚いている。
「保存食用に作ってるよ」
ジュンタはそう言って微笑む。
ドライフルーツ…。
「宿でパンケーキを作るときに、刻んで入れていた覚えが有るんですよ」
カズキはそう言う。
カズキの実家はもともと、旅の休み処を家族ぐるみで経営している。
その時のおやつにでも出していたのかもしれない。
「…やはり、気候が暖かいから果物も違うね…」
「一日で周りきれないぞ」
まだ、市場の入口に入ったばかりだ。
奥に延々と続いている。
見たことの無い形をしているものとか、山積みにされた果物が、ちらほら見えて好奇心ばかりが先走る。
「ルーク様、リーン。…本来の目的とは違うことだけ忘れないで下さいね」
…そうだった。
今回は炎の魔法石をもらいに来たのだ。
そしてキースが居なくなった後の事を知りたくて、町を巡るのだった。
カズキはジュンタとリョウタの方を向いて言った。
「…この町のお勧めの果物と、食べ物などを案内してください。お二人の調子で進んでいくと、全く前に進めませんから…」
ジュンタとリョウタは苦笑いして、
「この奥に、いろんな果物を食べれる店が有るから、そこで食べてみて、気に入った物の店を案内するよ」
「それでよろしくお願いします」
カズキはそう言って、ルークとリーンを促す。
「さぁ、行きますよ。あまりよそ見しないで下さいね」
…カズキが居てくれて良かった。
たぶんルークと二人で歩いていたら、いつまででも屋敷に帰れそうにない。
…うん。それは自覚している…。
ルークはカザンナ王国の第三王子として挨拶し、領主と共に昼食を取り、キースの準魔法石の話になった。
リーンに差し出されたのは、また一冊の本とケースに入った準魔法石だった。
この本は、当時同行した町長の末っ子が、番を得てこの町を出ていくまで、書いたものだと言う。
…と、言うことはアヤメが…。
リーンはキースの記憶を探り当て、思い出していた。
ココでも本だけは受け取り、準魔法石の入ったケースだけは返した。
パラリと捲ると、最初のページに『キースさんが来たら渡して下さい。アヤメ』と、幼い文字で書かれていた。
そしてペラペラと後ろの方に行くにつれ、大人びた文字に変わって行く…。
アヤメの成長が文字だけで伝わるのが嬉しい。
リーンはアヤメの日記を抱き締めた。
落ち着いたところで領主に、熊族の町トワロの案内をお願いした。
来るときに見た、露天や市場などを見て見たかったし、時間があれば、栽培している場所も見てみたかった。
夕食までの間、熊族の領主の息子達、ショウタとリョウタが案内してくれることになった。
熊族の二人は双子で、まだ学生だが学業の合間に、新種の果樹作りや品種改良の研究に取り組んでいるらしい。
五人は歩いて市場に向かいながら、二人の話を聞いていた。
「甘いけど、固くて食べにくい果樹を柔らかく改良出来ないかなって…」
「酸味が強い果物をもう少し甘く出来ないかな…とか、まだ基礎の勉強中だけとね…」
それでも興味を持って、そういった研究を間近で見ることが出来れば、いずれ作り出せるかもしれない。
二人が楽しそうに話すので、あっという間に市場の側にまで来ていた。
いろんな種族の獣人が市場を出入りしている。
リーンは市場の入り口付近にある店の、握りこぶしくらいの楕円形の焦げ茶色の物体に目が止まった。
「アレは何?」
「マンゴンだよ。中はオレンジ色した甘い果物」
ジュンタがそう言うと、リョウタが試食用のマンゴンをもらってきてくれた。
「本当にオレンジ色をしている…」
リーンは一切れ口に入れる。
「独特の甘味だね」
ルークもカズキも口に入れた。
「…これって、ドライフルーツで食べたことがある味だ!」
カズキはそう言って驚いている。
「保存食用に作ってるよ」
ジュンタはそう言って微笑む。
ドライフルーツ…。
「宿でパンケーキを作るときに、刻んで入れていた覚えが有るんですよ」
カズキはそう言う。
カズキの実家はもともと、旅の休み処を家族ぐるみで経営している。
その時のおやつにでも出していたのかもしれない。
「…やはり、気候が暖かいから果物も違うね…」
「一日で周りきれないぞ」
まだ、市場の入口に入ったばかりだ。
奥に延々と続いている。
見たことの無い形をしているものとか、山積みにされた果物が、ちらほら見えて好奇心ばかりが先走る。
「ルーク様、リーン。…本来の目的とは違うことだけ忘れないで下さいね」
…そうだった。
今回は炎の魔法石をもらいに来たのだ。
そしてキースが居なくなった後の事を知りたくて、町を巡るのだった。
カズキはジュンタとリョウタの方を向いて言った。
「…この町のお勧めの果物と、食べ物などを案内してください。お二人の調子で進んでいくと、全く前に進めませんから…」
ジュンタとリョウタは苦笑いして、
「この奥に、いろんな果物を食べれる店が有るから、そこで食べてみて、気に入った物の店を案内するよ」
「それでよろしくお願いします」
カズキはそう言って、ルークとリーンを促す。
「さぁ、行きますよ。あまりよそ見しないで下さいね」
…カズキが居てくれて良かった。
たぶんルークと二人で歩いていたら、いつまででも屋敷に帰れそうにない。
…うん。それは自覚している…。
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