神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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神の宿り木~再生 2~

日記

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 炎の竜のもとに案内される前に、領主のもとに呼ばれ、昨日ルークが言っていた、応接室に飾られた絵画を見せられた。
 黒髪の青年が椅子に座り、両腕に幼い炎の竜を抱いて微笑んでいる姿。
 …キースだ。
「キラ様が最初に懐いた方です。この方が居なければ、町はこれ程発展しなかったでしょう。…各町を巡り、すぐに元の森に帰ってしまったそうですが、再び訪れることを約束したそうです」
 領主はそう言ってリーンを見る。
「…貴方の事ではないでしょうか?」
「…私ではない」
「では、彼を知っていますか?」
「…キースだ」
 領主は目を見開き、リーンを凝視する。
 驚いているような、安堵しているような気がした。
「では、こちらを貴方に…」
 そう言って、部屋の戸棚の中から古くて分厚い本を一冊取り出し、リーンに差し出された。
「これは当時の領主の側近が書いた日記です」
 リーンは差し出された日記をじっと見る。
「…どうして私に…」
「…彼の名前は、あの時一緒に行動した者達しか知らないのです。…代々この日記と一緒にその名前が伝えられる…」
 キースがココに居たのは数日間。
 存在事態を町民達は知らない…。
「彼が帰った後の事が書かれています。…また来ると言っていたので、あの後の事を知りたいだろうからと、記録したそうです」
「…。」
 リーンは受けとるか迷っていた。
 私は『キース』ではない。
 受け取って良いのか、どうか…。
「…リーンは、彼が森に帰った後の、町の事を知りたいか?」
 それまで黙って側にいたルークが、声をかけてきた。
 昨日、見た夢の後の事を…知りたい…。
 炎の竜はどうなったのか…。
 町はどうなったのか…。
 イオやチハヤ、アヤメ達はどうなったのか…知りたい…。
「知りたかったら、受け取った方が良い。…その方が領主も肩の荷が下りるだろうから…」
 …そうだ。
 これをキースに渡すために、代々ずっと保管してくれていたのだ。
 リーンは差し出された日記を受け取った。
 領主もほっとした顔をして、もう一つ棚からケースを取り出した。
「こちらも…彼に借りていた魔法の掛かりやすい石だそうです。…今で言う、準魔法石です」
 律儀にそれも保管していたのか…。
 リーンは驚いていた。
 あれからどれだけの時間が流れているのか分からないが、その間、ずっと置いて有ったのだと…。
「…それは、ココに置いておいて下さい。キースがかつて存在した証ですから…」
 何があったのか、知っている者はもういないだろう…。
 せめて、それがココに有ることで、当時の事を語り、伝えるものになれば良い…。
「分かりました。こちらは、我々で保管させて頂きます」
 領主はケースを再び棚に片付け、リーンに言ってきた。
「…その旨を、各町の領主にお伝えください」
 …それって…。
「皆様、同じ様に保管されています」
「…。」
 炎の竜…キラに会って、炎の魔法石をもらうだけでは終わらないんだな…。
 リーンはため息を付いた。
「…ルーク、ちょっと滞在長くなるけど…良いかな…」
「良いに決まってるだろ。…のんびりしようぜ」
 ルークはそう言って微笑んだ。

 リーンが、もらった古い日記をペラペラと捲ると、最初に名前が書いてあった。
 ソコには『いつか訪れるキースへ。チハヤ』
 イオの側近…幼馴染みで使用人だと言っていたチハヤの日記だ。
 …だけど、今、読む余裕はない…。
 後でゆっくりと読もう。
 日記はカズキに預け、炎の竜の住みか、アリミネ火山の中腹に有る山小屋に向かう事になった。
 ソコからは領主の息子が案内してくれるそうだ。
 時折様子を見に行くので『移動』を使って山小屋のすぐ側に、たどり着けるのだと言う。
 大人数は無理なので、リーンとルーク、キリトの三人が一緒に行く事になった。
 領主の息子の『移動』の魔法で、四人は炎の竜の元に向かった。


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