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アリミネ火山~追憶のキース~
町を巡って 3
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翌日、狼族に別れを告げ、迎えに来た有翼族のシバと共に有翼族の住む隣の山、ロバロク山に向かった。
ロバロク山の中腹にある有翼族の町は、レンガ造りの家で、山に沿って斜面に家が建っていた。
町中から真っ直ぐに伸びた一本の道の突き当たりが、シバの住む宮殿のようなお屋敷で、そこには町の外からでも見える塔が建っていた。
キース達はシバに連れられて、町の中心を進んで行き、道路際にはキラを拝めるように、人々が集まっていた。
…これって。
…シバは炎の竜キラを人々に見せるために、屋敷までの道を歩いて登っているな…と、感じていた。
キラを抱いたまま進むキースは注目されて、視線が痛かった。
「あれは光の塔。…町の目印だ」
シバは歩きながらそう言って、前方に建つ塔の説明してくれた。
「山の中腹は、夕暮れや夜に飛行すると町の場所が分かりにくいだろ。どこからでもココに帰ってこれるように、塔の先端を魔法石を輝かせているんだ」
なるほど、暗くなってしまうと、山の中腹は影になり場所の把握がしずらい。
目印があれば、それに向かって飛ぶ事が出来、塔に近づけば町の灯りも見えて、家に帰ることが出来ると言うこと…。
「なので、キラ様の炎の結晶石を使わせてもらおうと思ってね」
隣の山とは言え、アリミネ火山を信仰してもらっているのなら、炎の結晶石を大切に使ってもらえそうだ。
「キラ様、後で飛びかたの練習しましょう。空を飛ぶのは気持ち良いですよ」
シバはそう言って微笑み、屋敷への山道を登っていった。
キラが炎の結晶石を作り出し、シバが光の塔に納めると、赤い光を放って町を照らした。
…狼族の様に、この町の結界も兼ねているのか、目には見にくい幕が張られている。
そういえば、熊族や人族には無かった装置だ。
…何か意味があるのだろうか?
キース達はシバに連れられて、近くの広場に向かった。
…もしかして学校。
そこには熊族のアヤメより小さい有翼族の子供達が、土手からジャンプして遊んでいた。
「ああやって、ジャンプして翼を動かす練習をしているんです」
シバはそう言って説明してくれた。
遊びを兼ねて、飛ぶことを教えるのは子供達にとって、とても楽しいことだろう。
「キラ様も一緒に練習しましょう」
そう言ってシバが微笑む。
「アヤメは飛べないの?」
「翼が無いですから。でも、一緒にジャンプして遊べますよ」
アヤメは目を輝かせて、キラの目の前に来ると、ニコニコと笑って、キラの手を取る。
「キラ様。一緒にジャンプして遊ぼう」
キラは一度キースの方を向いて、キースの腕の中から降りると足を動かして合図した。
キースはキラを地面に降ろし、アヤメに手を引かれて、ジャンプ台の方に歩きだした。
その隙に、シバはジャンプ台で練習している子供達を見ている大人に話をつけに行って、一緒に練習する許可をもらっているみたいだ。
アヤメとキラが子供達に近くと、子供達は練習を止めて、じっと二人を見ていた。
キース達はハラハラしながら少し離れて後を付いてきていて、成り行きを見守っていた。
こういう時は、大人は見守るだけ…。
「アヤメ達も練習させてください」
アヤメはキラの手をキュウっと握り、緊張した声で精一杯の声をあげた。
「…翼…無いだろ…」
一人の男の子がそう言った。
「キラ様には有るよ。アヤメもジャンプしたい!」
アヤメの思いが通じたのか、その子が手招きしたのでアヤメとキラは子供達に混じって、ジャンプすることになった。
「最初は一番低いところからだ」
声をかけてきた、有翼族の男の子はイオリと言って、面倒見がよかった。
階段一段分をジャンプして飛び、慣れてきたら、その段数を増やした場所からジャンプしていくものだった。
キラはアヤメの真似をしてジャンプし、少しづつ高さを増していった。
キースとジュンタ、イオ達は遠目に二人の様子を眺めている。
「アヤメを連れてきて良かった」
「そうだね。キラだけでは、あの中に混じって練習は出来ないだろう…」
途中から、シバと子供達を見ていた大人が指導に加わって、色々と教えてもらっているみたいだ。
翼を持っていないキース達には分からない分野になってしまうから、有翼族のシバが来てくれて良かったと思った。
「楽しかったね」
キースかキラの頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細め、キュイーっと鳴いた。
明日は再び狼族の町に寄って、熊族の町に寄り、人族の町、ワイトデ自治区へと戻っていく。
これからキラはイオの屋敷で暮らし、人族の暮らしを見ながら、いずれアリミネ火山に戻っていかなくてはいけない。
覚えるのも早いし、今だけかもしれないが、成長速度も早い。
キラを見つけたとき、両腕に閉じ込めて抱えられる程小さかったのに、今では何とか両腕で抱えられるが、重くて長時間抱えているのは無理になってきた。
キースはキラから離れるのが少し寂しかった。
…そろそろ、戻らなくてはいけない…。
ここへ来てから、かなり時間が過ぎてしまった。
『風霊』が、呼びに来ないと言うことは、ココにいるより大変なことが起こってないと言うこと…。
それでも、自分の守護するエリアはここではない。
「キラ。皆と仲良く暮らしてね。たまに遊びに来るから」
うまく伝わっているのか分からないが、キースはそう呟いていた。
ロバロク山の中腹にある有翼族の町は、レンガ造りの家で、山に沿って斜面に家が建っていた。
町中から真っ直ぐに伸びた一本の道の突き当たりが、シバの住む宮殿のようなお屋敷で、そこには町の外からでも見える塔が建っていた。
キース達はシバに連れられて、町の中心を進んで行き、道路際にはキラを拝めるように、人々が集まっていた。
…これって。
…シバは炎の竜キラを人々に見せるために、屋敷までの道を歩いて登っているな…と、感じていた。
キラを抱いたまま進むキースは注目されて、視線が痛かった。
「あれは光の塔。…町の目印だ」
シバは歩きながらそう言って、前方に建つ塔の説明してくれた。
「山の中腹は、夕暮れや夜に飛行すると町の場所が分かりにくいだろ。どこからでもココに帰ってこれるように、塔の先端を魔法石を輝かせているんだ」
なるほど、暗くなってしまうと、山の中腹は影になり場所の把握がしずらい。
目印があれば、それに向かって飛ぶ事が出来、塔に近づけば町の灯りも見えて、家に帰ることが出来ると言うこと…。
「なので、キラ様の炎の結晶石を使わせてもらおうと思ってね」
隣の山とは言え、アリミネ火山を信仰してもらっているのなら、炎の結晶石を大切に使ってもらえそうだ。
「キラ様、後で飛びかたの練習しましょう。空を飛ぶのは気持ち良いですよ」
シバはそう言って微笑み、屋敷への山道を登っていった。
キラが炎の結晶石を作り出し、シバが光の塔に納めると、赤い光を放って町を照らした。
…狼族の様に、この町の結界も兼ねているのか、目には見にくい幕が張られている。
そういえば、熊族や人族には無かった装置だ。
…何か意味があるのだろうか?
キース達はシバに連れられて、近くの広場に向かった。
…もしかして学校。
そこには熊族のアヤメより小さい有翼族の子供達が、土手からジャンプして遊んでいた。
「ああやって、ジャンプして翼を動かす練習をしているんです」
シバはそう言って説明してくれた。
遊びを兼ねて、飛ぶことを教えるのは子供達にとって、とても楽しいことだろう。
「キラ様も一緒に練習しましょう」
そう言ってシバが微笑む。
「アヤメは飛べないの?」
「翼が無いですから。でも、一緒にジャンプして遊べますよ」
アヤメは目を輝かせて、キラの目の前に来ると、ニコニコと笑って、キラの手を取る。
「キラ様。一緒にジャンプして遊ぼう」
キラは一度キースの方を向いて、キースの腕の中から降りると足を動かして合図した。
キースはキラを地面に降ろし、アヤメに手を引かれて、ジャンプ台の方に歩きだした。
その隙に、シバはジャンプ台で練習している子供達を見ている大人に話をつけに行って、一緒に練習する許可をもらっているみたいだ。
アヤメとキラが子供達に近くと、子供達は練習を止めて、じっと二人を見ていた。
キース達はハラハラしながら少し離れて後を付いてきていて、成り行きを見守っていた。
こういう時は、大人は見守るだけ…。
「アヤメ達も練習させてください」
アヤメはキラの手をキュウっと握り、緊張した声で精一杯の声をあげた。
「…翼…無いだろ…」
一人の男の子がそう言った。
「キラ様には有るよ。アヤメもジャンプしたい!」
アヤメの思いが通じたのか、その子が手招きしたのでアヤメとキラは子供達に混じって、ジャンプすることになった。
「最初は一番低いところからだ」
声をかけてきた、有翼族の男の子はイオリと言って、面倒見がよかった。
階段一段分をジャンプして飛び、慣れてきたら、その段数を増やした場所からジャンプしていくものだった。
キラはアヤメの真似をしてジャンプし、少しづつ高さを増していった。
キースとジュンタ、イオ達は遠目に二人の様子を眺めている。
「アヤメを連れてきて良かった」
「そうだね。キラだけでは、あの中に混じって練習は出来ないだろう…」
途中から、シバと子供達を見ていた大人が指導に加わって、色々と教えてもらっているみたいだ。
翼を持っていないキース達には分からない分野になってしまうから、有翼族のシバが来てくれて良かったと思った。
「楽しかったね」
キースかキラの頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細め、キュイーっと鳴いた。
明日は再び狼族の町に寄って、熊族の町に寄り、人族の町、ワイトデ自治区へと戻っていく。
これからキラはイオの屋敷で暮らし、人族の暮らしを見ながら、いずれアリミネ火山に戻っていかなくてはいけない。
覚えるのも早いし、今だけかもしれないが、成長速度も早い。
キラを見つけたとき、両腕に閉じ込めて抱えられる程小さかったのに、今では何とか両腕で抱えられるが、重くて長時間抱えているのは無理になってきた。
キースはキラから離れるのが少し寂しかった。
…そろそろ、戻らなくてはいけない…。
ここへ来てから、かなり時間が過ぎてしまった。
『風霊』が、呼びに来ないと言うことは、ココにいるより大変なことが起こってないと言うこと…。
それでも、自分の守護するエリアはここではない。
「キラ。皆と仲良く暮らしてね。たまに遊びに来るから」
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