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アリミネ火山~追憶のキース~

魔法の掛かりやすい石

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「あっあの!報告が有ります!」
 部屋の中で、休憩していた有翼族の一人が声を放ち、視線がそちらに向く。
 確かシバが一緒に連れてきていた、魔力の強い仲間の一人…。
「サシュと申します」
 そう言ってソファーから立ち上がり、頭を下げた。
「お借りしていた『保冷石』の石の事なのですが、…町中に…同じものがたくさん有りました…」
 …町中に有った?
「どういう事だ?」
 シバは首を傾げる。
「…町中の公園や、一般家庭の庭石が…あの…魔法の掛かりやすい石…なんです…」
「…。」
 室内か沈黙する。
 …本当に…身近な所に有った…。
「…ただの岩石だと思っていたのだが…」
 シバが言うと、
「シバ様の館の…昔、アリミネ火山が噴火したときに飛んで来たと言われる、…祀られている石にも含まれているんです…」
 サシュは興奮した状態で言葉を続けた。
「今まで石に魔法を掛けて使うなどと、考えなかったのも有ると思うのですが…石にも魔法の掛かる部分と、掛からない部分が有って、皆で試しまくりました!」
 もしかして、ありとあらゆる物に掛けてみたのかもしれない。
 そしてその結果、町中に転がっているのだと分かったのだろう。
「『冷却』を使える者を集めて、各家を回って、魔法を掛けているので、暑さからは解放されています!」
 …それだけでも、気分的に身体を休めることは出来るだろう。
「…俺の所も…」
 熊族の男が話しかけた。
「…子供達が川から拾ってきた綺麗な石が…あの石だった…」
 戸惑いながらそう言う。
「こんなに身近な所に有ったなんて…。熊族の方も『冷却』が出来る者達を集めて、魔法を掛けまくってる…」
 …川から拾ってきた…綺麗な石…。
 山から流れてくる間に、研磨されて来たのか…。
「…狼族の方は、あまり無くてな…。有翼族の方から分けてもらって、涼ませてもらっている」
 狼族の男は苦笑いしていた。
 今朝、見せてもらった、アリミネ火山周辺の地図によれば、アリミネ火山から流れている川が、熊族の町を横切っているのに対し、狼族の達の町は反対側の山から流れてくる川を使っている…と、言うことか…。
 もしかすると、アリミネ火山の昔流れ出た溶岩の中に、含まれているのかもしれない…。
 それが、永い年月の間に細かく砕けて、川の水と一緒に流れてきた。
 …それにあの洞窟も、もしかしたら有翼族に有るように、噴火で飛んで来た溶岩で作られた物なのかもしれない…。
「…地域によって違うのかも…。それを調べていけば、何か法則が見つかるかもしれない…」
「…そうだな」
 だが、それは、今の現状をなんとか打開して、町に皆が戻ってこれてからだ。

「ジュンタ『冷却』を頼む」
 キースはジュンタに石を二つ渡して、『冷却』をしてもらった。
 キースよりも『冷却』が強力だから、補佐程度の魔力で維持できるからだ。
「もう一度、行こう!」
 キースは、シバとイオとシロと共に再びアリミネ火山の中腹に向かった。




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