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アリミネ火山~追憶のキース~
炎の竜
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シバの『移動』の魔法で三人はアリミネ火山の中腹までやって来た。
ムッツとした暑さが…熱が伝わってくる。
「私はここまでです」
そう言ってシバは風のシールドを纏った。
「ここで待機していますから、無理をせず炎の竜の元に行ってください」
三人は頷き、白狼のシロが風のシールドで三人を包む。
そしてイオがシールドの回りの熱風を退け、キースがシールド内を『冷却』で冷やし、昨日見た陥没した場所に向かった。
それぞれが役目を持って魔法を使っているから、身体の負担も無く目的地に進める。
しばらく進むと、シールドをしていても、じんわりと暑さが伝わってきて、キースは『冷却』を強めた。
「確かこの辺り…」
イオがそう言うと、蒸気の向こう側にえぐれた窪みが見えた。
「…炎の竜は…」
昨日見た窪みの中には居ない。
…移動しているのかもしれない。
三人は目を凝らし、視界の悪い蒸気の中を探した。
…居ない。
どこに…。
視界が悪すぎて、何も見えなくなってきた…。
「…風で一度、蒸気を押し流しましょう。ほんの少しの時間だけれど、見つかるかもしれない」
「しかし、風のシールドから出ないと…」
「イオもシロも、一瞬だけ緩めてください。穴を開けて風を送り込みます」
「…わかった。やろう」
キースは左手に『保冷石』を持ち、右手を窪みの有る外に向かって付き出した。
「行きますよ」
「ああ」
「『送風』!」
キースは風のシールドを突き破り、窪みに風を送り込む。
するとみるみる蒸気が流れて移動していき、巨大なゴツゴツとした窪みが姿を表した。
「…いた」
イオが炎の竜を視界にとらえる。
巨大な窪みから、かなり上の方…地表に近い場所に有った、少しの出っ張りが出ている場所に座っていた。
呆然と窪みを見ている…。
昨日と違って様子がおかしい…。
泣いているわけでは無いが、なぜここにいるのか分からず、呆けているようだ。
辺りを包んでいた蒸気が移動して…こちらに気付いただろうか…?
…炎の竜が顔をこちらに向けた。
…金色に輝く瞳…。
遠目にだが、視線が合ったような気がした。
「どうする。少し近付いてみるか?」
イオがそう言って、キースとシロは頷いた。
ゆっくりと近付いて行くに連れ熱気が強まり、『保冷石』の一つ目の魔法が切れた。
キースは慌てもう一つを取り出す。
その間に蒸気が戻ってきて、再び辺りを白く染め視界が悪くなってしまう。
場所はわかったから、目を凝らし炎の竜がいた場所を見るが、出っ張りは見えても炎の竜は居なかった。
…移動してしまったのか…?
そう思っていると、急に熱量が増しキースは『保冷』を強めた。
このままでは、あまり魔法がもたない…。
急に前方蒸気が動いて視界が開け、二、三メール目の前に赤い炎の竜がいて、こちらを見ている。
…いつの間に…。
急に熱量が増したのは、炎の竜が近付いて来たからか…。
互いに探り合うように、相手を見ていた。
炎の竜は燃えるような赤色の鱗を纏い、金色に輝く瞳で、背中に小さな翼が有り、大きさは両腕で抱えられるくらい…。
まだ生まれて直ぐなのだろうかと思うくらい小さかった。
炎の竜が一歩近づくに連れて、キース達は一歩後退した。
これ以上近付けない…。
「魔力を押さえてくれ…」
そう言ってみるが伝わっているだろうか…。
「…魔力の押さえ方がわからないのか?」
イオがそう呟いた。
そうなのかもしれない。
…目覚めたばかりで、何も知らないのなら教えていくしかない…。
「俺が片手だけシールドから出して『圧縮』をする。熱には耐性が有るから短時間ならなんとかなる」
…どういう事か見せてあげれば分かってくれるかもしれない。
「…三十秒だけだ。ソレ以上は火傷する」
イオは頷いてシールドの端に近付き、シールドの外に右手を出した。
「『圧縮』!!」
イオがそう言うと、回りの水蒸気がグルグルと回りだし、イオの右手に集まっていく。
少しづつイオの右手の中に吸い込まれていって、透明な結晶を作り出し、周囲に有った水蒸気が全て無くなり、炎の竜の姿がハッキリと見え始める。
が、キースはイオの身体をシールド内に引っ張り込んだ。
「時間だ!」
これ以上はイオの手が火傷してしまう…。
キースは熱くなっているイオの手を冷やした。
そして右手に握られていたのは、水蒸気を『圧縮』したもの…。
「…水の球なのか…」
「…そうだ。多少風も扱えるから、水蒸気を集めて熱を奪って、集めれば水になる。…ただ、飲み水として使えるほど精度は良くないが…」
「それでも、水を扱う者に頼めば分離することは出来る。その魔法は貴重だよ」
キースはそう思った。
これを確立すれば、空気中の水分を飲み水として利用出来る。
全てが終わったら、教えてもらおう…。
「それより、炎の竜の様子は?」
「まだ、こちらを見ている…。そろそろ限界だ…」
シロがそう答えて、冷や汗を拭う。
「…一旦、戻ろう…」
三人は頷き、後退すると、炎の竜も付いてきた。
…まずい。
このまま付いてこられると、熱風が町まで届いてしまう。
キースは思いきって、手を炎の竜に向かって付きだし、「待て!」と、言った。
すると、炎の竜は歩みを止める。
…伝わっているのだろうか…。
「その熱を押さえてくれないと、近付けないんだ。さっきイオが見せたみたいに、押さえて制御してくれないか…」
炎の竜は首を傾げている。
「キース…限界だ…。飛ぶぞ!」
シロはそう言って、風のシールドに『移動』の魔法掛ける。
「また、来るから…」
キースがそう伝えると、その場から三人の姿が消えた。
ムッツとした暑さが…熱が伝わってくる。
「私はここまでです」
そう言ってシバは風のシールドを纏った。
「ここで待機していますから、無理をせず炎の竜の元に行ってください」
三人は頷き、白狼のシロが風のシールドで三人を包む。
そしてイオがシールドの回りの熱風を退け、キースがシールド内を『冷却』で冷やし、昨日見た陥没した場所に向かった。
それぞれが役目を持って魔法を使っているから、身体の負担も無く目的地に進める。
しばらく進むと、シールドをしていても、じんわりと暑さが伝わってきて、キースは『冷却』を強めた。
「確かこの辺り…」
イオがそう言うと、蒸気の向こう側にえぐれた窪みが見えた。
「…炎の竜は…」
昨日見た窪みの中には居ない。
…移動しているのかもしれない。
三人は目を凝らし、視界の悪い蒸気の中を探した。
…居ない。
どこに…。
視界が悪すぎて、何も見えなくなってきた…。
「…風で一度、蒸気を押し流しましょう。ほんの少しの時間だけれど、見つかるかもしれない」
「しかし、風のシールドから出ないと…」
「イオもシロも、一瞬だけ緩めてください。穴を開けて風を送り込みます」
「…わかった。やろう」
キースは左手に『保冷石』を持ち、右手を窪みの有る外に向かって付き出した。
「行きますよ」
「ああ」
「『送風』!」
キースは風のシールドを突き破り、窪みに風を送り込む。
するとみるみる蒸気が流れて移動していき、巨大なゴツゴツとした窪みが姿を表した。
「…いた」
イオが炎の竜を視界にとらえる。
巨大な窪みから、かなり上の方…地表に近い場所に有った、少しの出っ張りが出ている場所に座っていた。
呆然と窪みを見ている…。
昨日と違って様子がおかしい…。
泣いているわけでは無いが、なぜここにいるのか分からず、呆けているようだ。
辺りを包んでいた蒸気が移動して…こちらに気付いただろうか…?
…炎の竜が顔をこちらに向けた。
…金色に輝く瞳…。
遠目にだが、視線が合ったような気がした。
「どうする。少し近付いてみるか?」
イオがそう言って、キースとシロは頷いた。
ゆっくりと近付いて行くに連れ熱気が強まり、『保冷石』の一つ目の魔法が切れた。
キースは慌てもう一つを取り出す。
その間に蒸気が戻ってきて、再び辺りを白く染め視界が悪くなってしまう。
場所はわかったから、目を凝らし炎の竜がいた場所を見るが、出っ張りは見えても炎の竜は居なかった。
…移動してしまったのか…?
そう思っていると、急に熱量が増しキースは『保冷』を強めた。
このままでは、あまり魔法がもたない…。
急に前方蒸気が動いて視界が開け、二、三メール目の前に赤い炎の竜がいて、こちらを見ている。
…いつの間に…。
急に熱量が増したのは、炎の竜が近付いて来たからか…。
互いに探り合うように、相手を見ていた。
炎の竜は燃えるような赤色の鱗を纏い、金色に輝く瞳で、背中に小さな翼が有り、大きさは両腕で抱えられるくらい…。
まだ生まれて直ぐなのだろうかと思うくらい小さかった。
炎の竜が一歩近づくに連れて、キース達は一歩後退した。
これ以上近付けない…。
「魔力を押さえてくれ…」
そう言ってみるが伝わっているだろうか…。
「…魔力の押さえ方がわからないのか?」
イオがそう呟いた。
そうなのかもしれない。
…目覚めたばかりで、何も知らないのなら教えていくしかない…。
「俺が片手だけシールドから出して『圧縮』をする。熱には耐性が有るから短時間ならなんとかなる」
…どういう事か見せてあげれば分かってくれるかもしれない。
「…三十秒だけだ。ソレ以上は火傷する」
イオは頷いてシールドの端に近付き、シールドの外に右手を出した。
「『圧縮』!!」
イオがそう言うと、回りの水蒸気がグルグルと回りだし、イオの右手に集まっていく。
少しづつイオの右手の中に吸い込まれていって、透明な結晶を作り出し、周囲に有った水蒸気が全て無くなり、炎の竜の姿がハッキリと見え始める。
が、キースはイオの身体をシールド内に引っ張り込んだ。
「時間だ!」
これ以上はイオの手が火傷してしまう…。
キースは熱くなっているイオの手を冷やした。
そして右手に握られていたのは、水蒸気を『圧縮』したもの…。
「…水の球なのか…」
「…そうだ。多少風も扱えるから、水蒸気を集めて熱を奪って、集めれば水になる。…ただ、飲み水として使えるほど精度は良くないが…」
「それでも、水を扱う者に頼めば分離することは出来る。その魔法は貴重だよ」
キースはそう思った。
これを確立すれば、空気中の水分を飲み水として利用出来る。
全てが終わったら、教えてもらおう…。
「それより、炎の竜の様子は?」
「まだ、こちらを見ている…。そろそろ限界だ…」
シロがそう答えて、冷や汗を拭う。
「…一旦、戻ろう…」
三人は頷き、後退すると、炎の竜も付いてきた。
…まずい。
このまま付いてこられると、熱風が町まで届いてしまう。
キースは思いきって、手を炎の竜に向かって付きだし、「待て!」と、言った。
すると、炎の竜は歩みを止める。
…伝わっているのだろうか…。
「その熱を押さえてくれないと、近付けないんだ。さっきイオが見せたみたいに、押さえて制御してくれないか…」
炎の竜は首を傾げている。
「キース…限界だ…。飛ぶぞ!」
シロはそう言って、風のシールドに『移動』の魔法掛ける。
「また、来るから…」
キースがそう伝えると、その場から三人の姿が消えた。
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