神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
220 / 462
アリミネ火山~追憶のキース~

冷却

しおりを挟む
 翌朝。
 キースの屋敷に、有翼族と獣人族の魔力が強いとされるもの達が集結した。
 有翼族はシバが、風を扱う者を三人連れてきていた。
 獣人族は狼の獣人と、熊の獣人が二人づつ…。
 中でも珍しいのは、深くフードを被っている、狼族の白狼はくろう…。
 本来ならば、狼族の領地から出ずに暮らす、神官的存在の彼を連れてきたと、説明を受けた。
 それだけ、窮地に至っているのだろう。
「風霊」
 キースが呼ぶと長い髪がフワリと揺れ、ワイトデに来るよう案内をして騒いでいた風霊が、キースの回りをクルクルと回った。
「…キースが呼べば…来てくれるのですか…?」
 隣にいたチハヤが茫然と風霊を見ている。
「チハヤは見える?」
「はい。こんなにハッキリと見たのは始めてですが…」
 私の側にいるからハッキリと見えるのかも…。
「この子は、ここへ私を連れてきた子だから、側に居てくれるだけだよ」
 キースはそう言って微笑む。
 本来、気まぐれな風霊は、呼んでも来ないこともある。
 風霊が有翼族と獣人族の方に行き、白狼はくろうの回りをクルクルと回る。
白狼はくろうの…貴方も見えているよね」
「…はい。ハクと申します」
 彼がそう言うと、風霊は有翼族のシバの元に向かってクルクルと回ると、急にチハヤの背中に隠れてシバをじっと見るので、キースは思わず笑ってしまった。
「…シバの事を、怖いって言ってる…」
「…声も聞こえるのですか?」
 チハヤは驚いた表情でキースを見る。
「うん。片言だけどね。ここに来るときも、早く早く、しか言わなかったけれど…」
 シバにもハクにも聞こえていたらしく、苦笑いしている。
「風霊はチハヤを気に入ったみたいだから、すぐに聞こえるようになるよ」
 キースはそう言って微笑んだ。

 そんなやり取りを呆然と見ていた他の者達は、戸惑っていた。
「…俺達には見えない…。魔力が足りないのか…?」
 それを聞いたキースが答えた。
「魔力ではなくて、波長だよ。風を扱うものは風霊との波長が合えば、見えるし聞こえる。火を扱うものは炎霊、水を扱う者は水霊、それぞれの波長をどれだけ会わせれるか、だから…」
 それが難しくて、上位の魔力を持っているものにしか見えないし聞こえない…。
「…。」
「今はその話しではなくで、炎の竜の場所に行く話だ」
 そう言って話を戻してのはイオだった。
 だが先にしておかないと、いけないことが有る。
「その前に、『冷却』は誰が出来るの?この部屋、これだけ長く冷やしていれるなら、一つで充分だよ」
 名乗りを上げたのは、熊族の体格の大柄な男だった。
「ジュンタと申します。『冷却』しか出来ないのですが…」
 それでも、この暑さから少しでも逃れられる。
「特化してれば最強だよ。まだあの石が有るから、『冷却』をして各町に一個づつ渡して。避難所の老人や子供、病人などに、この暑さは苦痛でしかない。町に『冷却』が出来るものがいれば、順番に魔法をかけて…維持して…」
 キースはポーチから四つの石を取り出し、ジュンタに渡す。
 ジュンタは戸惑って、キースと石を交互に見る。
「町の住民の事も心配だろ?それぞれの町で何とか灰を防いでも、暑さだけは防ぎ切れない…」
 するとシバが、
「ジュンタ殿、『冷却』をかけてくれ。有翼族がそれぞれの町に運ぶのを手伝う。一緒に行った方が、事が早く出来るだろう」
「人族の方はトルチェに港町の領主の元に行ってもらう」
 風を扱うトルチェは頷いた。
 早速ジュンタが『冷却』を行い、獣人達は有翼族に連れられて、有翼族の元と、人族の元へとそれぞれに向かった。
「これでやっと本題に入れるな」
 イオはそう言って苦笑いした。

  
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

処理中です...