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アリミネ火山~追憶のキース~
冷却
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翌朝。
キースの屋敷に、有翼族と獣人族の魔力が強いとされるもの達が集結した。
有翼族はシバが、風を扱う者を三人連れてきていた。
獣人族は狼の獣人と、熊の獣人が二人づつ…。
中でも珍しいのは、深くフードを被っている、狼族の白狼…。
本来ならば、狼族の領地から出ずに暮らす、神官的存在の彼を連れてきたと、説明を受けた。
それだけ、窮地に至っているのだろう。
「風霊」
キースが呼ぶと長い髪がフワリと揺れ、ワイトデに来るよう案内をして騒いでいた風霊が、キースの回りをクルクルと回った。
「…キースが呼べば…来てくれるのですか…?」
隣にいたチハヤが茫然と風霊を見ている。
「チハヤは見える?」
「はい。こんなにハッキリと見たのは始めてですが…」
私の側にいるからハッキリと見えるのかも…。
「この子は、ここへ私を連れてきた子だから、側に居てくれるだけだよ」
キースはそう言って微笑む。
本来、気まぐれな風霊は、呼んでも来ないこともある。
風霊が有翼族と獣人族の方に行き、白狼の回りをクルクルと回る。
「白狼の…貴方も見えているよね」
「…はい。ハクと申します」
彼がそう言うと、風霊は有翼族のシバの元に向かってクルクルと回ると、急にチハヤの背中に隠れてシバをじっと見るので、キースは思わず笑ってしまった。
「…シバの事を、怖いって言ってる…」
「…声も聞こえるのですか?」
チハヤは驚いた表情でキースを見る。
「うん。片言だけどね。ここに来るときも、早く早く、しか言わなかったけれど…」
シバにもハクにも聞こえていたらしく、苦笑いしている。
「風霊はチハヤを気に入ったみたいだから、すぐに聞こえるようになるよ」
キースはそう言って微笑んだ。
そんなやり取りを呆然と見ていた他の者達は、戸惑っていた。
「…俺達には見えない…。魔力が足りないのか…?」
それを聞いたキースが答えた。
「魔力ではなくて、波長だよ。風を扱うものは風霊との波長が合えば、見えるし聞こえる。火を扱うものは炎霊、水を扱う者は水霊、それぞれの波長をどれだけ会わせれるか、だから…」
それが難しくて、上位の魔力を持っているものにしか見えないし聞こえない…。
「…。」
「今はその話しではなくで、炎の竜の場所に行く話だ」
そう言って話を戻してのはイオだった。
だが先にしておかないと、いけないことが有る。
「その前に、『冷却』は誰が出来るの?この部屋、これだけ長く冷やしていれるなら、一つで充分だよ」
名乗りを上げたのは、熊族の体格の大柄な男だった。
「ジュンタと申します。『冷却』しか出来ないのですが…」
それでも、この暑さから少しでも逃れられる。
「特化してれば最強だよ。まだあの石が有るから、『冷却』をして各町に一個づつ渡して。避難所の老人や子供、病人などに、この暑さは苦痛でしかない。町に『冷却』が出来るものがいれば、順番に魔法をかけて…維持して…」
キースはポーチから四つの石を取り出し、ジュンタに渡す。
ジュンタは戸惑って、キースと石を交互に見る。
「町の住民の事も心配だろ?それぞれの町で何とか灰を防いでも、暑さだけは防ぎ切れない…」
するとシバが、
「ジュンタ殿、『冷却』をかけてくれ。有翼族がそれぞれの町に運ぶのを手伝う。一緒に行った方が、事が早く出来るだろう」
「人族の方はトルチェに港町の領主の元に行ってもらう」
風を扱うトルチェは頷いた。
早速ジュンタが『冷却』を行い、獣人達は有翼族に連れられて、有翼族の元と、人族の元へとそれぞれに向かった。
「これでやっと本題に入れるな」
イオはそう言って苦笑いした。
キースの屋敷に、有翼族と獣人族の魔力が強いとされるもの達が集結した。
有翼族はシバが、風を扱う者を三人連れてきていた。
獣人族は狼の獣人と、熊の獣人が二人づつ…。
中でも珍しいのは、深くフードを被っている、狼族の白狼…。
本来ならば、狼族の領地から出ずに暮らす、神官的存在の彼を連れてきたと、説明を受けた。
それだけ、窮地に至っているのだろう。
「風霊」
キースが呼ぶと長い髪がフワリと揺れ、ワイトデに来るよう案内をして騒いでいた風霊が、キースの回りをクルクルと回った。
「…キースが呼べば…来てくれるのですか…?」
隣にいたチハヤが茫然と風霊を見ている。
「チハヤは見える?」
「はい。こんなにハッキリと見たのは始めてですが…」
私の側にいるからハッキリと見えるのかも…。
「この子は、ここへ私を連れてきた子だから、側に居てくれるだけだよ」
キースはそう言って微笑む。
本来、気まぐれな風霊は、呼んでも来ないこともある。
風霊が有翼族と獣人族の方に行き、白狼の回りをクルクルと回る。
「白狼の…貴方も見えているよね」
「…はい。ハクと申します」
彼がそう言うと、風霊は有翼族のシバの元に向かってクルクルと回ると、急にチハヤの背中に隠れてシバをじっと見るので、キースは思わず笑ってしまった。
「…シバの事を、怖いって言ってる…」
「…声も聞こえるのですか?」
チハヤは驚いた表情でキースを見る。
「うん。片言だけどね。ここに来るときも、早く早く、しか言わなかったけれど…」
シバにもハクにも聞こえていたらしく、苦笑いしている。
「風霊はチハヤを気に入ったみたいだから、すぐに聞こえるようになるよ」
キースはそう言って微笑んだ。
そんなやり取りを呆然と見ていた他の者達は、戸惑っていた。
「…俺達には見えない…。魔力が足りないのか…?」
それを聞いたキースが答えた。
「魔力ではなくて、波長だよ。風を扱うものは風霊との波長が合えば、見えるし聞こえる。火を扱うものは炎霊、水を扱う者は水霊、それぞれの波長をどれだけ会わせれるか、だから…」
それが難しくて、上位の魔力を持っているものにしか見えないし聞こえない…。
「…。」
「今はその話しではなくで、炎の竜の場所に行く話だ」
そう言って話を戻してのはイオだった。
だが先にしておかないと、いけないことが有る。
「その前に、『冷却』は誰が出来るの?この部屋、これだけ長く冷やしていれるなら、一つで充分だよ」
名乗りを上げたのは、熊族の体格の大柄な男だった。
「ジュンタと申します。『冷却』しか出来ないのですが…」
それでも、この暑さから少しでも逃れられる。
「特化してれば最強だよ。まだあの石が有るから、『冷却』をして各町に一個づつ渡して。避難所の老人や子供、病人などに、この暑さは苦痛でしかない。町に『冷却』が出来るものがいれば、順番に魔法をかけて…維持して…」
キースはポーチから四つの石を取り出し、ジュンタに渡す。
ジュンタは戸惑って、キースと石を交互に見る。
「町の住民の事も心配だろ?それぞれの町で何とか灰を防いでも、暑さだけは防ぎ切れない…」
するとシバが、
「ジュンタ殿、『冷却』をかけてくれ。有翼族がそれぞれの町に運ぶのを手伝う。一緒に行った方が、事が早く出来るだろう」
「人族の方はトルチェに港町の領主の元に行ってもらう」
風を扱うトルチェは頷いた。
早速ジュンタが『冷却』を行い、獣人達は有翼族に連れられて、有翼族の元と、人族の元へとそれぞれに向かった。
「これでやっと本題に入れるな」
イオはそう言って苦笑いした。
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