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アリミネ火山~追憶のキース~
夜の光景
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キースが深い眠りから目覚めると、真っ暗な部屋でソファーに横たわって毛布を掛けられていた。
…そうだ。
あの時、あのまま気絶したのだ。
ぐっすりと眠れたからか、疲れも取れて魔力も戻っている。
それにしても『保冷石』の効果は切れている筈だが、部屋はまだ涼しい。
キースは身体を起こして、ほのかに明るい窓の外を見た。
ここからアリミネ火山が良く見える…。
蒸気で時々見えなくなるが、山頂だけが赤く染まって、暗闇に浮かび上がって…雲を赤く染めて…。
キースがいた森では、絶対に見ることの出来ない光景…。
「…綺麗だ…」
キースはぼんやりと、そんなことを呟いていた。
今に噴火してしまわないかと、不安でハラハラしている筈なのに、この光景がとても美しく見えた。
噴火するのは困るが、アリミネ火山周辺の信仰の象徴になるのかもしれない。
火山が有るからこの辺いったいは、お湯が涌き出て、ゆったりとしたお風呂に浸かることが出来る。
キースがいた森では水は有るが、これだけの量の水をお湯にしようと思うと、かなりの魔力なり燃料を消費する。
それに、地面が暖かいと言うことは、長期間、作物も育つのではないだろうか…。
それも全て、アリミネ火山が有るから…。
それを再認識してもらえば、そして炎の竜が我々のお願いを聞いてくれれば…出来るのではないだろうか…。
キースがそんなことを考えていると、声をかけられた。
「目が覚めたみたいだな」
キースが振り向くと、身体を起こしたイオがいた。
…気が付かなかった…。
見回せば、ここで何人もの人達が、イオの仲間達が毛布を被って眠っている。
「…『保冷石』に使った石を借りている。獣人族に『冷却』の得意な者がいて、この部屋の二つに『冷却』をして、残りはアリミネ火山の偵察に行っている者に持たせた」
「…使ってもらえば良いよ」
キースは微笑んだ。
これだけ強力な『冷却』が使えるなら、上手く連携できれば、炎の竜の側に近付ける。
「もう少し眠ると良い…。朝には再び彼らが強力な魔力を持つものを連れてくる」
「…どうして、ここに集まってきたんだろ…」
ふと、キースは思った。
いくつもの町があり、上空で出会って、それでここに来ることを選択した。
別の町でも良かったのに…。
「…煙が出ていた場所が、ここに近かったからだそうだ」
そう言えば有翼族のシバが、自分達の住む山から煙が見えたと…言っていた。
それに、私も風霊に呼ばれてここに来た…。
キースはさっき思った事をイオに言った。
アリミネ火山と炎の竜を崇めて、火山からマグマが溢れないようにお願いして、町を守ってもらいながら、共同生活が出来ないだろうかと…。
アリミネ火山の恩恵をもらっているのだから、周辺の町も同じ様な考えを持って、炎の竜を守り神として、崇めていってもらえたら…。
キースはそんな話をした。
「そうだな。だがまずは、炎の竜とどこまで会話出来て、理解してもらえるか…だな」
「そうだね…」
キースは苦笑いした。
少し先走ってしまったみたいだ。
「もう少し寝ろ。明日は炎の竜に会いに行こう」
「うん。お休み」
キースは再びソファーに身体を横たえた。
明日、炎の竜に会いに行く…。
…そうだ。
あの時、あのまま気絶したのだ。
ぐっすりと眠れたからか、疲れも取れて魔力も戻っている。
それにしても『保冷石』の効果は切れている筈だが、部屋はまだ涼しい。
キースは身体を起こして、ほのかに明るい窓の外を見た。
ここからアリミネ火山が良く見える…。
蒸気で時々見えなくなるが、山頂だけが赤く染まって、暗闇に浮かび上がって…雲を赤く染めて…。
キースがいた森では、絶対に見ることの出来ない光景…。
「…綺麗だ…」
キースはぼんやりと、そんなことを呟いていた。
今に噴火してしまわないかと、不安でハラハラしている筈なのに、この光景がとても美しく見えた。
噴火するのは困るが、アリミネ火山周辺の信仰の象徴になるのかもしれない。
火山が有るからこの辺いったいは、お湯が涌き出て、ゆったりとしたお風呂に浸かることが出来る。
キースがいた森では水は有るが、これだけの量の水をお湯にしようと思うと、かなりの魔力なり燃料を消費する。
それに、地面が暖かいと言うことは、長期間、作物も育つのではないだろうか…。
それも全て、アリミネ火山が有るから…。
それを再認識してもらえば、そして炎の竜が我々のお願いを聞いてくれれば…出来るのではないだろうか…。
キースがそんなことを考えていると、声をかけられた。
「目が覚めたみたいだな」
キースが振り向くと、身体を起こしたイオがいた。
…気が付かなかった…。
見回せば、ここで何人もの人達が、イオの仲間達が毛布を被って眠っている。
「…『保冷石』に使った石を借りている。獣人族に『冷却』の得意な者がいて、この部屋の二つに『冷却』をして、残りはアリミネ火山の偵察に行っている者に持たせた」
「…使ってもらえば良いよ」
キースは微笑んだ。
これだけ強力な『冷却』が使えるなら、上手く連携できれば、炎の竜の側に近付ける。
「もう少し眠ると良い…。朝には再び彼らが強力な魔力を持つものを連れてくる」
「…どうして、ここに集まってきたんだろ…」
ふと、キースは思った。
いくつもの町があり、上空で出会って、それでここに来ることを選択した。
別の町でも良かったのに…。
「…煙が出ていた場所が、ここに近かったからだそうだ」
そう言えば有翼族のシバが、自分達の住む山から煙が見えたと…言っていた。
それに、私も風霊に呼ばれてここに来た…。
キースはさっき思った事をイオに言った。
アリミネ火山と炎の竜を崇めて、火山からマグマが溢れないようにお願いして、町を守ってもらいながら、共同生活が出来ないだろうかと…。
アリミネ火山の恩恵をもらっているのだから、周辺の町も同じ様な考えを持って、炎の竜を守り神として、崇めていってもらえたら…。
キースはそんな話をした。
「そうだな。だがまずは、炎の竜とどこまで会話出来て、理解してもらえるか…だな」
「そうだね…」
キースは苦笑いした。
少し先走ってしまったみたいだ。
「もう少し寝ろ。明日は炎の竜に会いに行こう」
「うん。お休み」
キースは再びソファーに身体を横たえた。
明日、炎の竜に会いに行く…。
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