219 / 462
アリミネ火山~追憶のキース~
夜の光景
しおりを挟む
キースが深い眠りから目覚めると、真っ暗な部屋でソファーに横たわって毛布を掛けられていた。
…そうだ。
あの時、あのまま気絶したのだ。
ぐっすりと眠れたからか、疲れも取れて魔力も戻っている。
それにしても『保冷石』の効果は切れている筈だが、部屋はまだ涼しい。
キースは身体を起こして、ほのかに明るい窓の外を見た。
ここからアリミネ火山が良く見える…。
蒸気で時々見えなくなるが、山頂だけが赤く染まって、暗闇に浮かび上がって…雲を赤く染めて…。
キースがいた森では、絶対に見ることの出来ない光景…。
「…綺麗だ…」
キースはぼんやりと、そんなことを呟いていた。
今に噴火してしまわないかと、不安でハラハラしている筈なのに、この光景がとても美しく見えた。
噴火するのは困るが、アリミネ火山周辺の信仰の象徴になるのかもしれない。
火山が有るからこの辺いったいは、お湯が涌き出て、ゆったりとしたお風呂に浸かることが出来る。
キースがいた森では水は有るが、これだけの量の水をお湯にしようと思うと、かなりの魔力なり燃料を消費する。
それに、地面が暖かいと言うことは、長期間、作物も育つのではないだろうか…。
それも全て、アリミネ火山が有るから…。
それを再認識してもらえば、そして炎の竜が我々のお願いを聞いてくれれば…出来るのではないだろうか…。
キースがそんなことを考えていると、声をかけられた。
「目が覚めたみたいだな」
キースが振り向くと、身体を起こしたイオがいた。
…気が付かなかった…。
見回せば、ここで何人もの人達が、イオの仲間達が毛布を被って眠っている。
「…『保冷石』に使った石を借りている。獣人族に『冷却』の得意な者がいて、この部屋の二つに『冷却』をして、残りはアリミネ火山の偵察に行っている者に持たせた」
「…使ってもらえば良いよ」
キースは微笑んだ。
これだけ強力な『冷却』が使えるなら、上手く連携できれば、炎の竜の側に近付ける。
「もう少し眠ると良い…。朝には再び彼らが強力な魔力を持つものを連れてくる」
「…どうして、ここに集まってきたんだろ…」
ふと、キースは思った。
いくつもの町があり、上空で出会って、それでここに来ることを選択した。
別の町でも良かったのに…。
「…煙が出ていた場所が、ここに近かったからだそうだ」
そう言えば有翼族のシバが、自分達の住む山から煙が見えたと…言っていた。
それに、私も風霊に呼ばれてここに来た…。
キースはさっき思った事をイオに言った。
アリミネ火山と炎の竜を崇めて、火山からマグマが溢れないようにお願いして、町を守ってもらいながら、共同生活が出来ないだろうかと…。
アリミネ火山の恩恵をもらっているのだから、周辺の町も同じ様な考えを持って、炎の竜を守り神として、崇めていってもらえたら…。
キースはそんな話をした。
「そうだな。だがまずは、炎の竜とどこまで会話出来て、理解してもらえるか…だな」
「そうだね…」
キースは苦笑いした。
少し先走ってしまったみたいだ。
「もう少し寝ろ。明日は炎の竜に会いに行こう」
「うん。お休み」
キースは再びソファーに身体を横たえた。
明日、炎の竜に会いに行く…。
…そうだ。
あの時、あのまま気絶したのだ。
ぐっすりと眠れたからか、疲れも取れて魔力も戻っている。
それにしても『保冷石』の効果は切れている筈だが、部屋はまだ涼しい。
キースは身体を起こして、ほのかに明るい窓の外を見た。
ここからアリミネ火山が良く見える…。
蒸気で時々見えなくなるが、山頂だけが赤く染まって、暗闇に浮かび上がって…雲を赤く染めて…。
キースがいた森では、絶対に見ることの出来ない光景…。
「…綺麗だ…」
キースはぼんやりと、そんなことを呟いていた。
今に噴火してしまわないかと、不安でハラハラしている筈なのに、この光景がとても美しく見えた。
噴火するのは困るが、アリミネ火山周辺の信仰の象徴になるのかもしれない。
火山が有るからこの辺いったいは、お湯が涌き出て、ゆったりとしたお風呂に浸かることが出来る。
キースがいた森では水は有るが、これだけの量の水をお湯にしようと思うと、かなりの魔力なり燃料を消費する。
それに、地面が暖かいと言うことは、長期間、作物も育つのではないだろうか…。
それも全て、アリミネ火山が有るから…。
それを再認識してもらえば、そして炎の竜が我々のお願いを聞いてくれれば…出来るのではないだろうか…。
キースがそんなことを考えていると、声をかけられた。
「目が覚めたみたいだな」
キースが振り向くと、身体を起こしたイオがいた。
…気が付かなかった…。
見回せば、ここで何人もの人達が、イオの仲間達が毛布を被って眠っている。
「…『保冷石』に使った石を借りている。獣人族に『冷却』の得意な者がいて、この部屋の二つに『冷却』をして、残りはアリミネ火山の偵察に行っている者に持たせた」
「…使ってもらえば良いよ」
キースは微笑んだ。
これだけ強力な『冷却』が使えるなら、上手く連携できれば、炎の竜の側に近付ける。
「もう少し眠ると良い…。朝には再び彼らが強力な魔力を持つものを連れてくる」
「…どうして、ここに集まってきたんだろ…」
ふと、キースは思った。
いくつもの町があり、上空で出会って、それでここに来ることを選択した。
別の町でも良かったのに…。
「…煙が出ていた場所が、ここに近かったからだそうだ」
そう言えば有翼族のシバが、自分達の住む山から煙が見えたと…言っていた。
それに、私も風霊に呼ばれてここに来た…。
キースはさっき思った事をイオに言った。
アリミネ火山と炎の竜を崇めて、火山からマグマが溢れないようにお願いして、町を守ってもらいながら、共同生活が出来ないだろうかと…。
アリミネ火山の恩恵をもらっているのだから、周辺の町も同じ様な考えを持って、炎の竜を守り神として、崇めていってもらえたら…。
キースはそんな話をした。
「そうだな。だがまずは、炎の竜とどこまで会話出来て、理解してもらえるか…だな」
「そうだね…」
キースは苦笑いした。
少し先走ってしまったみたいだ。
「もう少し寝ろ。明日は炎の竜に会いに行こう」
「うん。お休み」
キースは再びソファーに身体を横たえた。
明日、炎の竜に会いに行く…。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

兄のやり方には思うところがある!
野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m
■■■
特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。
無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟
コメディーです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる