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アリミネ火山~追憶のキース~
言い伝え
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キースとイオが麓に戻ってくると、最初の広場の人数が増えていた。
それも、獣人族、有翼族までもがいる。
もしかして、アリミネ火山の周辺の町の者達なのか?
「イオ!戻ってきた!」
人族の男が駆け寄ってくる。
「上空に偵察に行ったら、彼らが居たんだ!人数が多い方が何か対策出来るだろ!!」
「ああ。俺達だけでは防ぎようがない…」
「初めまして。隣のロバロク山に住む有翼族のシバです。我々の領地から煙が見え、山頂が赤々と輝いて見えたものですから…」
そう言って白い翼をピクピクと動かしてイオに挨拶する。
「ワイトデのイオだ」
アリミネ火山周辺に有る、町の主だった者達が集まっているのかもしれない。
「我々は、伝えなくてはいけないと思い、ここまで来た」
有翼族のシバは、そう前置きをして話し出した。
「我ら有翼族は山の中腹を住みかとする。その山に伝わる言い伝えが有り、山が騒いで噴火するとき、炎の竜が生まれる。その竜は山の守り神。竜が暴れれば炎が立ち上ぼり町を滅ぼす。と…」
「…。」
キースとイオは顔を見合わせた。
「なので、何処かに炎の竜が出現している可能性があります。炎の竜にお願いして、噴火しないように、これ以上溶岩が流れ出ないように頼むしかないです」
「それが、一番の解決策と言うわけか…」
イオはため息をつく。
「この広大なアリミネ火山から炎の竜を探し出すのは、容易な事ではないですか…」
「…炎の竜なら見つけた」
キースはそう言うと、辺りがシンと静まり返った。
「ただ、近付けない…。鳴き叫んでいた…」
「何処に?!」
有翼族のシバがキースに距離を積めてやってくる。
「アリミネ火山の中腹だ。熱風と蒸気で視界が悪く、お願いするところでは無いぞ…」
イオもそう言って、キースを見てくる。
「まずは炎の竜に近付く為に、熱風と蒸気を防げる手だてを考えないと、身体中が水脹れになる」
そう言ってイオはズボンの裾を捲り、水脹れになった足を見せる。
「かなり痛い」
シバや仲間の人族の男達は痛々しいそうに、顔を歪ませる。
「…何か方法はないか?」
「それより、早く冷やしてください!」
蒼白な顔をして、小柄な人族の男がそう言ってきた。
さっき、風の魔法を使って飛び上がっていた彼の仲間の一人だ。
「…一旦、屋敷に行く。使用人や両親達はいないが、降り注ぐ灰の中で考えるよりは落ち着くだろう」
そう言って、イオはさっきの大きい建物に向かって歩き出した。
「良かったら、一緒に…」
その人族の男がその場に集まっている者達に声をかけ、頭を下げた。
「イオはワイトデ自治区の領主の御曹司です。町を守るために、協力をお願いします」
「…この町だけの問題ではない。我らの町にも灰が降り注ぎ、皆怯えている。あれを何とかしないと…」
そう言ってイオの後を追ったのが、獣人族の男達だった。
「一旦、避難しよう。時間は無いが、持ってる情報を集めて、炎の竜に近付く対策をとらないと!」
キースはそう言って、イオの後を追った。
他の集まっている者達は、ゾロゾロとイオの後を追い始め、小柄な男はイオに駆け寄り、少し話をして、足早ひ先に屋敷に向かっていった。
うっすらと町を覆いつくす灰の降りが少し収まってきた。
…風向きが変わっただけなのかもしれないが…。
屋敷に着くと、一旦玄関で灰を落とし、建物の中に入った。
入ってすぐに、広いロビーのような広場があり、ソファーやテーブルが点在していた。
小柄な男は何処からか出してきた、シーツをソファーや椅子に被せ、落ちる灰で汚れないように、保護しているのかもしれなかった。
キースはイオに案内され、風呂場に向かった。
「…ここは地下からお湯が涌き出ている。水を確保する方が困難なんなんだが…」
「水はどうやって確保しているんだ?」
「お湯を溜めて冷やす。…風呂場にお湯を調整するための水場があるから、そこで冷やすしかない」
「…さっきの『保冷石』を入れれば冷えるよ」
イオは立ち止まり、振り向いてキースを見る。
「お前は何者だ?」
「…森の奥に住む、森を守る者。と、思っているんだけど…名乗って無かったね。私はキース」
「…森を守る者、か…。助っ人、感謝する」
イオはそう言って歩き出した。
「…悪いんだけど、風呂に入らせてもらって良い?ずっと歩きっぱなしで、灰も被って、身体を洗いたいんだけど…」
「ああ、かまわない。…火傷はしてないのか?」
「…『保冷石』を作った後、身体中に冷気を纏わり付かせていたから、火照って熱くなっている程度だよ」
「…そうか…風で身体の回りを…。それを大きく展開できないか?炎の竜に近付く為に…」
「…それぞれ担当がいれば出来るかも…。魔法の組み合わせ次第かな…」
そんなことを言っている内に風呂場に付き、イオはズボンを捲り上げ水場に向かい『保冷石』入れて、足を冷やし始めた。
キースはカバンを下ろして服を脱ぎ、風呂場のお湯を桶にすくい頭から被った。
「ちょうど良い熱さだ」
キースが髪と身体を洗い追える頃、イオが茫然とこちらを見ている視線に気が付いた。
「どうした?」
キースが聞くと、イオは頬を染め横を向いた。
「…髪…長かったんだな…それも、漆黒」
「ああ、服の中に入れていたから。…これは私の時間を示すものだから、切れなくて…」
キースは苦笑いした。
時間の感覚がないキースにとって、髪が伸びる分だけ時間がたっているのだと、示すもの…。
「着替え、出しておいてやるから、それに着替えろ」
イオはそう言って、風呂場を出ていった。
それも、獣人族、有翼族までもがいる。
もしかして、アリミネ火山の周辺の町の者達なのか?
「イオ!戻ってきた!」
人族の男が駆け寄ってくる。
「上空に偵察に行ったら、彼らが居たんだ!人数が多い方が何か対策出来るだろ!!」
「ああ。俺達だけでは防ぎようがない…」
「初めまして。隣のロバロク山に住む有翼族のシバです。我々の領地から煙が見え、山頂が赤々と輝いて見えたものですから…」
そう言って白い翼をピクピクと動かしてイオに挨拶する。
「ワイトデのイオだ」
アリミネ火山周辺に有る、町の主だった者達が集まっているのかもしれない。
「我々は、伝えなくてはいけないと思い、ここまで来た」
有翼族のシバは、そう前置きをして話し出した。
「我ら有翼族は山の中腹を住みかとする。その山に伝わる言い伝えが有り、山が騒いで噴火するとき、炎の竜が生まれる。その竜は山の守り神。竜が暴れれば炎が立ち上ぼり町を滅ぼす。と…」
「…。」
キースとイオは顔を見合わせた。
「なので、何処かに炎の竜が出現している可能性があります。炎の竜にお願いして、噴火しないように、これ以上溶岩が流れ出ないように頼むしかないです」
「それが、一番の解決策と言うわけか…」
イオはため息をつく。
「この広大なアリミネ火山から炎の竜を探し出すのは、容易な事ではないですか…」
「…炎の竜なら見つけた」
キースはそう言うと、辺りがシンと静まり返った。
「ただ、近付けない…。鳴き叫んでいた…」
「何処に?!」
有翼族のシバがキースに距離を積めてやってくる。
「アリミネ火山の中腹だ。熱風と蒸気で視界が悪く、お願いするところでは無いぞ…」
イオもそう言って、キースを見てくる。
「まずは炎の竜に近付く為に、熱風と蒸気を防げる手だてを考えないと、身体中が水脹れになる」
そう言ってイオはズボンの裾を捲り、水脹れになった足を見せる。
「かなり痛い」
シバや仲間の人族の男達は痛々しいそうに、顔を歪ませる。
「…何か方法はないか?」
「それより、早く冷やしてください!」
蒼白な顔をして、小柄な人族の男がそう言ってきた。
さっき、風の魔法を使って飛び上がっていた彼の仲間の一人だ。
「…一旦、屋敷に行く。使用人や両親達はいないが、降り注ぐ灰の中で考えるよりは落ち着くだろう」
そう言って、イオはさっきの大きい建物に向かって歩き出した。
「良かったら、一緒に…」
その人族の男がその場に集まっている者達に声をかけ、頭を下げた。
「イオはワイトデ自治区の領主の御曹司です。町を守るために、協力をお願いします」
「…この町だけの問題ではない。我らの町にも灰が降り注ぎ、皆怯えている。あれを何とかしないと…」
そう言ってイオの後を追ったのが、獣人族の男達だった。
「一旦、避難しよう。時間は無いが、持ってる情報を集めて、炎の竜に近付く対策をとらないと!」
キースはそう言って、イオの後を追った。
他の集まっている者達は、ゾロゾロとイオの後を追い始め、小柄な男はイオに駆け寄り、少し話をして、足早ひ先に屋敷に向かっていった。
うっすらと町を覆いつくす灰の降りが少し収まってきた。
…風向きが変わっただけなのかもしれないが…。
屋敷に着くと、一旦玄関で灰を落とし、建物の中に入った。
入ってすぐに、広いロビーのような広場があり、ソファーやテーブルが点在していた。
小柄な男は何処からか出してきた、シーツをソファーや椅子に被せ、落ちる灰で汚れないように、保護しているのかもしれなかった。
キースはイオに案内され、風呂場に向かった。
「…ここは地下からお湯が涌き出ている。水を確保する方が困難なんなんだが…」
「水はどうやって確保しているんだ?」
「お湯を溜めて冷やす。…風呂場にお湯を調整するための水場があるから、そこで冷やすしかない」
「…さっきの『保冷石』を入れれば冷えるよ」
イオは立ち止まり、振り向いてキースを見る。
「お前は何者だ?」
「…森の奥に住む、森を守る者。と、思っているんだけど…名乗って無かったね。私はキース」
「…森を守る者、か…。助っ人、感謝する」
イオはそう言って歩き出した。
「…悪いんだけど、風呂に入らせてもらって良い?ずっと歩きっぱなしで、灰も被って、身体を洗いたいんだけど…」
「ああ、かまわない。…火傷はしてないのか?」
「…『保冷石』を作った後、身体中に冷気を纏わり付かせていたから、火照って熱くなっている程度だよ」
「…そうか…風で身体の回りを…。それを大きく展開できないか?炎の竜に近付く為に…」
「…それぞれ担当がいれば出来るかも…。魔法の組み合わせ次第かな…」
そんなことを言っている内に風呂場に付き、イオはズボンを捲り上げ水場に向かい『保冷石』入れて、足を冷やし始めた。
キースはカバンを下ろして服を脱ぎ、風呂場のお湯を桶にすくい頭から被った。
「ちょうど良い熱さだ」
キースが髪と身体を洗い追える頃、イオが茫然とこちらを見ている視線に気が付いた。
「どうした?」
キースが聞くと、イオは頬を染め横を向いた。
「…髪…長かったんだな…それも、漆黒」
「ああ、服の中に入れていたから。…これは私の時間を示すものだから、切れなくて…」
キースは苦笑いした。
時間の感覚がないキースにとって、髪が伸びる分だけ時間がたっているのだと、示すもの…。
「着替え、出しておいてやるから、それに着替えろ」
イオはそう言って、風呂場を出ていった。
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