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神の宿り木~再生~
膝枕
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リーンが湖から浮上して岸辺に上がると、カズキが大きめのタオルを持ってきてくれて、ずぶ濡れの髪を拭いてくれた。
「少し拭いてから、風で乾かしてくださいね。着替えも準備してありますから…」
「ありがとう」
リーンはあらかた拭くと、風で乾かして服を着替えた。
子供達は興奮が収まらず、サラに見てきた事を一生懸命に話している。
ヒューストンも護衛の仲間達に、見てきたことを興奮げに伝えていた。
オーガストとベジョルカは、ヒイロの側でなにか話していて、リーンの着替えが終わる頃にこちらを向いた。
「山小屋に来てくれ。今後の話がしたい」
「分かったよ」
ヒイロとオーガスト、ベジョルカが先に山小屋に向かって歩き出す。
「俺達も行った方が良いのか?」
「うん。ルークは一緒に…先に行ってて…」
リーンはそう言って、ヒューストンの方に向かって歩き出した。
一応、念を押しておかなくてはいけない。
あの場所には、入れない事を伝えておかなくてはいけない。
「ヒューストン」
「はい!」
ヒューストンはまだ、興奮が収まっていないようで、頬を染めている。
「あの場所へは、もう入れないから…。入ってしまうと、出れなくなるからね…場所は秘密にしておいて欲しいんだ」
ヒューストンは顔を引き締めて頷き、そして落胆した表情で聞いてくる。
「…あの光景を、もう見れないのですか…」
「そうだよ。あそこは聖域だから…魔力を捧げる場所だから」
「…そうですか…残念です…」
ヒューストンはガックリと肩を落としたが、リーンに向き直って姿勢を正す。
「連れていってくれて、ありがとうございます。あの光景は俺の宝物です!」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
リーンは微笑むと、ヒューストンの側から離れて、ルークの後を追いかけて山小屋に向かった。
山小屋では社の扱いを、聖域に指定して、近づかないように決め、リーンは『結界』を張って、準魔法石を持ち出そうとすれば、裂け目から出られないように施してあると話した。
その話と一緒に伝われば、持ち出そうとはしないだろう。
もし、社に行く場合は、山小屋『アルファ』で許可をもらい、調査隊が同行するという条件付きにする事などを決めた。
「…時間も日が高い時間だけの方が良い。裂け目に光が入るのは、昼間だけだから…。方向が分からなくなる」
「そのようだな…」
ちょうど、潜り始めた時間帯だけが、光が届くのだ。
水中から浮上して帰る時には、弱い光がとどいていただけだ…。
「報告書にそう記しておくよ」
オーガストがそう言って、微笑んだ。
「休暇中だろ。…こっちの事はいいから、子供達と遊んでこいよ」
「そうさせてもらうよ」
ヒイロはそう言って笑った。
湖の側に戻ってくると、チイとサラ、ルナ、ユーリの四人は、草原に座り込んで花を摘んで花輪を作っていた。
ジーンとロベルトは、アオと一緒に湖の辺りで『水球』を…もしかしたら『水泡』を教わっているのかもしれなかった。
何度も水飛沫を上げている。
「ジェスとキリトは?」
湖に潜る前までいた、二人がいない。
「王都に一度、戻りましたよ。昼食の片付けに…」
木陰に待機しているカズキがそう言って、テントの方を指差す。
テントの下のテーブルには、昼食の食器は全て無くなっていて、飲み物とグラスだけが置かれていた。
そう言えば、側使えの者も二人居ない。
「後で、おやつを持ってくるそうです」
…なるほど。
ジェスの魔法で王城に戻って、昼食の食器を運び、再びおやつを持ってくるのだろう…。
…それにキリトも付いていったと…。
「…ジェスも大変だな」
リーンはそう言って苦笑いした。
この後おやつを持って来たとしても、再び全員を連れて王城に戻らなくてはいけない。
ジェスの苦労がしのばれる。
敷物を敷いた木陰の、子供達の様子が見える場所にルークが座り、リーンを見上げて膝を叩いた。
「泳ぎ疲れて、横になりたいんだろ」
…なんで分かるかな…。
「ほら、ここ。膝枕にしろよ」
ルークがそう言って再び膝を叩く。
「…。」
…皆のいる前で…。
なんか、恥ずかしいような気がするが…。
リーンが、カズキとヒイロの方を見ると、聞かなかったふりをして横を向いている。
「ほら、これは俺の特権だからな…」
ルークはニコニコと笑って、催促する。
「…。」
リーンはルークの横に座り、ルークの膝に頭を乗せ、身体を横たえた。
ちょっと固いが、高さはちょうど良い…。
しばらくじっとしていると、ルークの手がリーンの髪を撫で始めた。
サラサラと髪が流れる…。
触れたところから伝わる暖かい体温と、優しいルークの手がリーンを眠りに誘う。
穏やかな時間…。
遠くで子供達のはしゃぐ声が聞こえる。
湖を泳いで疲れたのと、社に魔力を込めて消耗したのとで、身体がどっと重く感じる。
いつまでも、この時間が続けば良いのに…。
リーンはそんなことを思いながら眠りについた。
「リーン。また、眠っちゃったね…」
ユーリの声が遠くでする。
「これ、お父様とリーンに」
ガサガサと音がして頭に何か乗せられ、花の香りが漂ってきた。
「ありがとう」
ルークがそう言って、ユーリがニコニコと嬉しそうに笑う声が聞こえる。
「リーンも喜んでくれるかな」
「嬉しいはずさ。ユーリが作ってくれたんだからな」
「うん」
ユーリは返事すると、足音が遠退いていった。
…私の為に…ユーリが作ってくれたのなら…嬉しいよ…。
リーンは夢の中で、そう返事していた。
「少し拭いてから、風で乾かしてくださいね。着替えも準備してありますから…」
「ありがとう」
リーンはあらかた拭くと、風で乾かして服を着替えた。
子供達は興奮が収まらず、サラに見てきた事を一生懸命に話している。
ヒューストンも護衛の仲間達に、見てきたことを興奮げに伝えていた。
オーガストとベジョルカは、ヒイロの側でなにか話していて、リーンの着替えが終わる頃にこちらを向いた。
「山小屋に来てくれ。今後の話がしたい」
「分かったよ」
ヒイロとオーガスト、ベジョルカが先に山小屋に向かって歩き出す。
「俺達も行った方が良いのか?」
「うん。ルークは一緒に…先に行ってて…」
リーンはそう言って、ヒューストンの方に向かって歩き出した。
一応、念を押しておかなくてはいけない。
あの場所には、入れない事を伝えておかなくてはいけない。
「ヒューストン」
「はい!」
ヒューストンはまだ、興奮が収まっていないようで、頬を染めている。
「あの場所へは、もう入れないから…。入ってしまうと、出れなくなるからね…場所は秘密にしておいて欲しいんだ」
ヒューストンは顔を引き締めて頷き、そして落胆した表情で聞いてくる。
「…あの光景を、もう見れないのですか…」
「そうだよ。あそこは聖域だから…魔力を捧げる場所だから」
「…そうですか…残念です…」
ヒューストンはガックリと肩を落としたが、リーンに向き直って姿勢を正す。
「連れていってくれて、ありがとうございます。あの光景は俺の宝物です!」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
リーンは微笑むと、ヒューストンの側から離れて、ルークの後を追いかけて山小屋に向かった。
山小屋では社の扱いを、聖域に指定して、近づかないように決め、リーンは『結界』を張って、準魔法石を持ち出そうとすれば、裂け目から出られないように施してあると話した。
その話と一緒に伝われば、持ち出そうとはしないだろう。
もし、社に行く場合は、山小屋『アルファ』で許可をもらい、調査隊が同行するという条件付きにする事などを決めた。
「…時間も日が高い時間だけの方が良い。裂け目に光が入るのは、昼間だけだから…。方向が分からなくなる」
「そのようだな…」
ちょうど、潜り始めた時間帯だけが、光が届くのだ。
水中から浮上して帰る時には、弱い光がとどいていただけだ…。
「報告書にそう記しておくよ」
オーガストがそう言って、微笑んだ。
「休暇中だろ。…こっちの事はいいから、子供達と遊んでこいよ」
「そうさせてもらうよ」
ヒイロはそう言って笑った。
湖の側に戻ってくると、チイとサラ、ルナ、ユーリの四人は、草原に座り込んで花を摘んで花輪を作っていた。
ジーンとロベルトは、アオと一緒に湖の辺りで『水球』を…もしかしたら『水泡』を教わっているのかもしれなかった。
何度も水飛沫を上げている。
「ジェスとキリトは?」
湖に潜る前までいた、二人がいない。
「王都に一度、戻りましたよ。昼食の片付けに…」
木陰に待機しているカズキがそう言って、テントの方を指差す。
テントの下のテーブルには、昼食の食器は全て無くなっていて、飲み物とグラスだけが置かれていた。
そう言えば、側使えの者も二人居ない。
「後で、おやつを持ってくるそうです」
…なるほど。
ジェスの魔法で王城に戻って、昼食の食器を運び、再びおやつを持ってくるのだろう…。
…それにキリトも付いていったと…。
「…ジェスも大変だな」
リーンはそう言って苦笑いした。
この後おやつを持って来たとしても、再び全員を連れて王城に戻らなくてはいけない。
ジェスの苦労がしのばれる。
敷物を敷いた木陰の、子供達の様子が見える場所にルークが座り、リーンを見上げて膝を叩いた。
「泳ぎ疲れて、横になりたいんだろ」
…なんで分かるかな…。
「ほら、ここ。膝枕にしろよ」
ルークがそう言って再び膝を叩く。
「…。」
…皆のいる前で…。
なんか、恥ずかしいような気がするが…。
リーンが、カズキとヒイロの方を見ると、聞かなかったふりをして横を向いている。
「ほら、これは俺の特権だからな…」
ルークはニコニコと笑って、催促する。
「…。」
リーンはルークの横に座り、ルークの膝に頭を乗せ、身体を横たえた。
ちょっと固いが、高さはちょうど良い…。
しばらくじっとしていると、ルークの手がリーンの髪を撫で始めた。
サラサラと髪が流れる…。
触れたところから伝わる暖かい体温と、優しいルークの手がリーンを眠りに誘う。
穏やかな時間…。
遠くで子供達のはしゃぐ声が聞こえる。
湖を泳いで疲れたのと、社に魔力を込めて消耗したのとで、身体がどっと重く感じる。
いつまでも、この時間が続けば良いのに…。
リーンはそんなことを思いながら眠りについた。
「リーン。また、眠っちゃったね…」
ユーリの声が遠くでする。
「これ、お父様とリーンに」
ガサガサと音がして頭に何か乗せられ、花の香りが漂ってきた。
「ありがとう」
ルークがそう言って、ユーリがニコニコと嬉しそうに笑う声が聞こえる。
「リーンも喜んでくれるかな」
「嬉しいはずさ。ユーリが作ってくれたんだからな」
「うん」
ユーリは返事すると、足音が遠退いていった。
…私の為に…ユーリが作ってくれたのなら…嬉しいよ…。
リーンは夢の中で、そう返事していた。
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