神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
198 / 462
神の宿り木~再生~

新しい橋

しおりを挟む
 ダレスに水中都市への連絡をお願いして、リーンとカズキは新しく建て直された、集落の家々を見て回った。
 以前は、どうせ飛ばされるからと、簡単な木造の家だったが、今はしっかりとした壁の、平屋の家々が建ち並んでいた。
「ローレンス様が、王都の建築家にお願いして、風や嵐に強い家を考案してくれたんです。わざわざ、どれだけの強風がどちら側から来るとか、調べてくれたみたいで。ソレからは、家の中の方が安心だと住民の方達は言ってくれてますから…」
「…詳しいな」
「ここは、僕が担当でしたから」
 カズキはそう言って微笑む。
「住民と王都側との仲介に入ってました」
 カズキなら、住民達の意見と王都側が言っていることを、分かりやすく説明してくれるだろうし、物腰も優しく、第三王子の側近として、王都側も信頼してくれている。
「意志疎通が出きるまでは、大変でしたけどね」
 思い出してか、カズキか楽しそうに微笑む。
「リーンさんの部屋はそのまま残して有りますよ。…そう言えば、あの絵画を、見せてもらいました」
「…。」
「あの絵を見たら、リーンさんの事、水人族の方は皆、崇拝しますよ」
 水上集落の神殿にある、私の意識が無いときに描かれたモノだ。
 絵画の中で、竜の姿になったフールシアが愛しそうに、眠っている青年の姿を見て、微笑んでいる。
 それだけの加護を、竜人が与えた者なのだと伝える絵画。
 ソレが自分なのだと言うことが信じられなかった。
 それは昔の事…。
 ルークと出会う前の出来事…。
「カズキさんと、リーン様だ!」
「リーン様!」
 住民達が家から出てきて、崇め始める。
「…あの、崇めないでくれませんか…」
 戸惑いながらリーンがそう言うと、カズキが囁きかける。
「出会った、始めだけです。後は、普通に接してくれるように言ってありますから」
「…始めだけ…?」
「崇拝は、竜人族の加護を受けた者として、諦めてください。その後もそのままだと、居ずらいので止めるように話は付けてあります」
「…助かるよ…」
 さすがにそう言うところは抜け目無い。
 水人族の意向と、リーンの思いを汲んでくれている。
 しばらくリーンは崇められながら、集落の中を見学して歩き、果実や干しものを、差し入れられた。
 カズキがそれを持ってくれて、地上集落から水上集落に向かう桟橋に付くと、見違えるほどに、川に架かっているような普通の橋がかかっていた。
 そして、水上集落も家の作りは昔のままだが、太い柱が何本も水中に刺さり、上の集落を支えていた。
「ここはあまり変わっていませんよ。その代わり、防波堤を湖に作りました。湖側から強い風が高波を運んできても、軽減できるように…それでいて、水人族の生活をあまり変えないように…」
 よく見れば、水上集落の向こう側に岩がいくつも見える。
 ここにたどり着くまでに、波の威力を押さえてくれるために…。
「カザンナ王国の海側の街では、場所によって高波が強いので、こんな風に防波堤を作っているんです。ここは風景を変えすぎないように、洪水で流れてきた岩や石を積み上げて、魔法で固定させてます。…ここの獣人の方達はすごいですね。説明して場所を教えたら、いかだを組んで、岩を抱えて運んできて、次々と水中に沈めていく…意欲的な方達ばかりですよ」
 まあ、そうだろう。
 彼らのほとんどの伴侶が水人族で、一緒に暮らすと言うことがどういう事か、よく分かっている。
「リーン様。『水中都市』と繋がりました。フールシア様がお待ちです」
 ダレスが水上集落の神殿の方から声をかけてくる。
 リーンとカズキは足早に、新しい橋を渡り始めた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...