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神の宿り木~再生~
カズキのお願い
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翌日、リーンは馬車を出してもらい、人魚の湖フールシアに向かった。
いつもなら歩いて行くのだが、時間がかかりすぎると、帰れなくなるからだ。
馬車をの運転は、カズキがしてくれた。
ちょうど、実家に帰っていて、カザナの屋敷に戻ってきたところだったので、ルークに連絡して同行してもらった。
「週末までにリオナスに帰ってくるように言われてましたから。家の用事は済ませましたし、少し早く戻ってきて良かったです」
カズキは今朝、カザナの屋敷に戻ってきて、明日にはリオナスに向かう予定だったそうだ。
休みなしに、フールシアに向かう事になってしまったが、申し訳ないなと思いながらも、約束までに帰ろうと思ったら、馬車を出してくれて助かったのだ。
なのでフールシアに向かい、そのままカズキと馬車でリオナスに向かうことにした。
いつも魔法陣で移動ばかりだから、馬車の移動だと時間はかかるが、少し楽しみでもある。
リーンはカズキと人魚の湖に向かいながら話をしていた。
「時間があったらで良いのですが、たまに、ルーク様を誘ってお出掛けになりませんか」
カズキが苦笑いして、そんなことを言ってきた。
「リオナスが出きるまでは、よく皆で旅をしていたんです。…最近はルーク様も忙しくて、ほとんどリオナスから出ませんし、気晴らしがあると良いかと…」
そう言えば、ルーク達に拾われたのも旅の途中だった…。
外にいる方がイキイキしているのは確かだ。
でも、その分の負担は側近達にのし掛かってくる。
「カズキ達も忙しだろう?」
「あま、そうですが、リーンさんから誘ってもらえると、ルーク様も動きやすいのかな…と、思いまして…」
働き過ぎのルークを休ませたいのも分かる。
「…確かに。執務室の隣に部屋か有るから、休日でも仕事をしていたし…」
「俺達は交代で休みをもらっています。…最近は慣れてきたのもあるのか、役所の方も落ち着いてきましたし、…長期は困りますが、ルーク様に休日を取ってもらいたくて…」
「そうだね。…一応、アリミネ火山に行くのを誘ってはある。…けれど、休日…とはいかないかな…」
リーンは苦笑いする。
ルークの身体を休めるためでなく、『炎の魔法石』をもらいに行くのだから…。
「…アリミネ火山ですか…」
「普通に馬車で向かっても、三日はかかる…帰りは『移動』を使えば、早く帰ってはこれると思うけれど…」
「何が起こるか分かりませんからね…」
カズキはそう言って笑う。
ルークと一緒に旅をすると、寄り道ばかりだとアオが楽しそうに言っていた。
気になったモノや、気になる事に足を止め、自ら見に行ってしまうのだと…。
…分かる気がした。
その好奇心がルークを作っている。
だから、たまには遠出をさせたいのだと…。
そんな話をしているうちに、人魚の湖への検問にたどり着いた。
以前ここに来た時は、道がガタガタで、馬車に乗っているのがつらかった覚えがある。
しかし今は整備され、普通の街道と同じくらいの乗り心地だ。
検問所の前でカズキが馬車を止めると、中から制服を着た男が二人出てきて、カズキが通行証を見せると、一礼して、チラリとこちらを見た。
リーンも視線が合ってしまったので、ペコリと頭を下げると、制服の男達は頬を染めてこちらにも一礼してきた。
…通行証は第三王子の側近のモノだから、すんなりと通れたんだよな…。
「…。」
きっと一人で来ていたら通してもらえず、森から入らなくては行けなかったかもしれない…。
そう思っていると、人魚の湖へのバリケードが開けられ、カズキは馬車を動かした。
「…そう言えば、集落の生活を守るために、検問を作るように言っていたんだった…」
自分達が言い出した事だと思い出す。
「ええ、多少変わりましたが、今も静かに暮らしていますよ」
カズキはそう言って微笑んだ。
「…良かった」
「でも『塩』の生産のおかげで、家は立派になってますよ」
「そうなんだ…」
海水から『塩』と『水』を分離させる魔法を教え、その『塩』で財をなして、少しでも生活が豊かになれば良いと思っていた。
雨風がきつい場所の為、よく家が飛ばされたり、倒壊していたと言っていたから、そうならない家を建てているのかもしれない。
程なくして、集落の広場にたどり着くと、見覚えのある水人が近づいてきた。
「ようこそ、カズキさん」
「こんにちは、ダレスさん。今日はお客さんを連れてきたよ」
リーンは馬車から顔を覗かせ、声をかけた。
「久しぶりだな、ダレス」
「リーン様!」
ダレスは目を丸くして、驚いている。
森の調査の方に、ずっと携わっていたから、ここへ来るのはルークと一緒に来たとき以来だ。
「ちょっと急ぎで『水中都市』のフールシアと繋いでもらえないか」
『水中都市』と、唯一連絡が取れる場所がここだけなのだ。
「はい。直ぐに!」
「…ああ。フールシアには、来なくて良いと、言っといてくれ」
リーンは忘れずにそう伝える。
…来れば、面倒事が起きる。
「…直ぐに泳いで来てしまいそうですからね…」
ダレスは苦笑いしている。
だいぶ、フールシアの性格が分かってきているようだ。
「それまで、カズキと新しくなった集落を見て回るから…」
「そうしてください。皆も喜びます」
ダレスはそう言って、水上集落の方に向かっていった。
いつもなら歩いて行くのだが、時間がかかりすぎると、帰れなくなるからだ。
馬車をの運転は、カズキがしてくれた。
ちょうど、実家に帰っていて、カザナの屋敷に戻ってきたところだったので、ルークに連絡して同行してもらった。
「週末までにリオナスに帰ってくるように言われてましたから。家の用事は済ませましたし、少し早く戻ってきて良かったです」
カズキは今朝、カザナの屋敷に戻ってきて、明日にはリオナスに向かう予定だったそうだ。
休みなしに、フールシアに向かう事になってしまったが、申し訳ないなと思いながらも、約束までに帰ろうと思ったら、馬車を出してくれて助かったのだ。
なのでフールシアに向かい、そのままカズキと馬車でリオナスに向かうことにした。
いつも魔法陣で移動ばかりだから、馬車の移動だと時間はかかるが、少し楽しみでもある。
リーンはカズキと人魚の湖に向かいながら話をしていた。
「時間があったらで良いのですが、たまに、ルーク様を誘ってお出掛けになりませんか」
カズキが苦笑いして、そんなことを言ってきた。
「リオナスが出きるまでは、よく皆で旅をしていたんです。…最近はルーク様も忙しくて、ほとんどリオナスから出ませんし、気晴らしがあると良いかと…」
そう言えば、ルーク達に拾われたのも旅の途中だった…。
外にいる方がイキイキしているのは確かだ。
でも、その分の負担は側近達にのし掛かってくる。
「カズキ達も忙しだろう?」
「あま、そうですが、リーンさんから誘ってもらえると、ルーク様も動きやすいのかな…と、思いまして…」
働き過ぎのルークを休ませたいのも分かる。
「…確かに。執務室の隣に部屋か有るから、休日でも仕事をしていたし…」
「俺達は交代で休みをもらっています。…最近は慣れてきたのもあるのか、役所の方も落ち着いてきましたし、…長期は困りますが、ルーク様に休日を取ってもらいたくて…」
「そうだね。…一応、アリミネ火山に行くのを誘ってはある。…けれど、休日…とはいかないかな…」
リーンは苦笑いする。
ルークの身体を休めるためでなく、『炎の魔法石』をもらいに行くのだから…。
「…アリミネ火山ですか…」
「普通に馬車で向かっても、三日はかかる…帰りは『移動』を使えば、早く帰ってはこれると思うけれど…」
「何が起こるか分かりませんからね…」
カズキはそう言って笑う。
ルークと一緒に旅をすると、寄り道ばかりだとアオが楽しそうに言っていた。
気になったモノや、気になる事に足を止め、自ら見に行ってしまうのだと…。
…分かる気がした。
その好奇心がルークを作っている。
だから、たまには遠出をさせたいのだと…。
そんな話をしているうちに、人魚の湖への検問にたどり着いた。
以前ここに来た時は、道がガタガタで、馬車に乗っているのがつらかった覚えがある。
しかし今は整備され、普通の街道と同じくらいの乗り心地だ。
検問所の前でカズキが馬車を止めると、中から制服を着た男が二人出てきて、カズキが通行証を見せると、一礼して、チラリとこちらを見た。
リーンも視線が合ってしまったので、ペコリと頭を下げると、制服の男達は頬を染めてこちらにも一礼してきた。
…通行証は第三王子の側近のモノだから、すんなりと通れたんだよな…。
「…。」
きっと一人で来ていたら通してもらえず、森から入らなくては行けなかったかもしれない…。
そう思っていると、人魚の湖へのバリケードが開けられ、カズキは馬車を動かした。
「…そう言えば、集落の生活を守るために、検問を作るように言っていたんだった…」
自分達が言い出した事だと思い出す。
「ええ、多少変わりましたが、今も静かに暮らしていますよ」
カズキはそう言って微笑んだ。
「…良かった」
「でも『塩』の生産のおかげで、家は立派になってますよ」
「そうなんだ…」
海水から『塩』と『水』を分離させる魔法を教え、その『塩』で財をなして、少しでも生活が豊かになれば良いと思っていた。
雨風がきつい場所の為、よく家が飛ばされたり、倒壊していたと言っていたから、そうならない家を建てているのかもしれない。
程なくして、集落の広場にたどり着くと、見覚えのある水人が近づいてきた。
「ようこそ、カズキさん」
「こんにちは、ダレスさん。今日はお客さんを連れてきたよ」
リーンは馬車から顔を覗かせ、声をかけた。
「久しぶりだな、ダレス」
「リーン様!」
ダレスは目を丸くして、驚いている。
森の調査の方に、ずっと携わっていたから、ここへ来るのはルークと一緒に来たとき以来だ。
「ちょっと急ぎで『水中都市』のフールシアと繋いでもらえないか」
『水中都市』と、唯一連絡が取れる場所がここだけなのだ。
「はい。直ぐに!」
「…ああ。フールシアには、来なくて良いと、言っといてくれ」
リーンは忘れずにそう伝える。
…来れば、面倒事が起きる。
「…直ぐに泳いで来てしまいそうですからね…」
ダレスは苦笑いしている。
だいぶ、フールシアの性格が分かってきているようだ。
「それまで、カズキと新しくなった集落を見て回るから…」
「そうしてください。皆も喜びます」
ダレスはそう言って、水上集落の方に向かっていった。
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