197 / 462
神の宿り木~再生~
カズキのお願い
しおりを挟む
翌日、リーンは馬車を出してもらい、人魚の湖フールシアに向かった。
いつもなら歩いて行くのだが、時間がかかりすぎると、帰れなくなるからだ。
馬車をの運転は、カズキがしてくれた。
ちょうど、実家に帰っていて、カザナの屋敷に戻ってきたところだったので、ルークに連絡して同行してもらった。
「週末までにリオナスに帰ってくるように言われてましたから。家の用事は済ませましたし、少し早く戻ってきて良かったです」
カズキは今朝、カザナの屋敷に戻ってきて、明日にはリオナスに向かう予定だったそうだ。
休みなしに、フールシアに向かう事になってしまったが、申し訳ないなと思いながらも、約束までに帰ろうと思ったら、馬車を出してくれて助かったのだ。
なのでフールシアに向かい、そのままカズキと馬車でリオナスに向かうことにした。
いつも魔法陣で移動ばかりだから、馬車の移動だと時間はかかるが、少し楽しみでもある。
リーンはカズキと人魚の湖に向かいながら話をしていた。
「時間があったらで良いのですが、たまに、ルーク様を誘ってお出掛けになりませんか」
カズキが苦笑いして、そんなことを言ってきた。
「リオナスが出きるまでは、よく皆で旅をしていたんです。…最近はルーク様も忙しくて、ほとんどリオナスから出ませんし、気晴らしがあると良いかと…」
そう言えば、ルーク達に拾われたのも旅の途中だった…。
外にいる方がイキイキしているのは確かだ。
でも、その分の負担は側近達にのし掛かってくる。
「カズキ達も忙しだろう?」
「あま、そうですが、リーンさんから誘ってもらえると、ルーク様も動きやすいのかな…と、思いまして…」
働き過ぎのルークを休ませたいのも分かる。
「…確かに。執務室の隣に部屋か有るから、休日でも仕事をしていたし…」
「俺達は交代で休みをもらっています。…最近は慣れてきたのもあるのか、役所の方も落ち着いてきましたし、…長期は困りますが、ルーク様に休日を取ってもらいたくて…」
「そうだね。…一応、アリミネ火山に行くのを誘ってはある。…けれど、休日…とはいかないかな…」
リーンは苦笑いする。
ルークの身体を休めるためでなく、『炎の魔法石』をもらいに行くのだから…。
「…アリミネ火山ですか…」
「普通に馬車で向かっても、三日はかかる…帰りは『移動』を使えば、早く帰ってはこれると思うけれど…」
「何が起こるか分かりませんからね…」
カズキはそう言って笑う。
ルークと一緒に旅をすると、寄り道ばかりだとアオが楽しそうに言っていた。
気になったモノや、気になる事に足を止め、自ら見に行ってしまうのだと…。
…分かる気がした。
その好奇心がルークを作っている。
だから、たまには遠出をさせたいのだと…。
そんな話をしているうちに、人魚の湖への検問にたどり着いた。
以前ここに来た時は、道がガタガタで、馬車に乗っているのがつらかった覚えがある。
しかし今は整備され、普通の街道と同じくらいの乗り心地だ。
検問所の前でカズキが馬車を止めると、中から制服を着た男が二人出てきて、カズキが通行証を見せると、一礼して、チラリとこちらを見た。
リーンも視線が合ってしまったので、ペコリと頭を下げると、制服の男達は頬を染めてこちらにも一礼してきた。
…通行証は第三王子の側近のモノだから、すんなりと通れたんだよな…。
「…。」
きっと一人で来ていたら通してもらえず、森から入らなくては行けなかったかもしれない…。
そう思っていると、人魚の湖へのバリケードが開けられ、カズキは馬車を動かした。
「…そう言えば、集落の生活を守るために、検問を作るように言っていたんだった…」
自分達が言い出した事だと思い出す。
「ええ、多少変わりましたが、今も静かに暮らしていますよ」
カズキはそう言って微笑んだ。
「…良かった」
「でも『塩』の生産のおかげで、家は立派になってますよ」
「そうなんだ…」
海水から『塩』と『水』を分離させる魔法を教え、その『塩』で財をなして、少しでも生活が豊かになれば良いと思っていた。
雨風がきつい場所の為、よく家が飛ばされたり、倒壊していたと言っていたから、そうならない家を建てているのかもしれない。
程なくして、集落の広場にたどり着くと、見覚えのある水人が近づいてきた。
「ようこそ、カズキさん」
「こんにちは、ダレスさん。今日はお客さんを連れてきたよ」
リーンは馬車から顔を覗かせ、声をかけた。
「久しぶりだな、ダレス」
「リーン様!」
ダレスは目を丸くして、驚いている。
森の調査の方に、ずっと携わっていたから、ここへ来るのはルークと一緒に来たとき以来だ。
「ちょっと急ぎで『水中都市』のフールシアと繋いでもらえないか」
『水中都市』と、唯一連絡が取れる場所がここだけなのだ。
「はい。直ぐに!」
「…ああ。フールシアには、来なくて良いと、言っといてくれ」
リーンは忘れずにそう伝える。
…来れば、面倒事が起きる。
「…直ぐに泳いで来てしまいそうですからね…」
ダレスは苦笑いしている。
だいぶ、フールシアの性格が分かってきているようだ。
「それまで、カズキと新しくなった集落を見て回るから…」
「そうしてください。皆も喜びます」
ダレスはそう言って、水上集落の方に向かっていった。
いつもなら歩いて行くのだが、時間がかかりすぎると、帰れなくなるからだ。
馬車をの運転は、カズキがしてくれた。
ちょうど、実家に帰っていて、カザナの屋敷に戻ってきたところだったので、ルークに連絡して同行してもらった。
「週末までにリオナスに帰ってくるように言われてましたから。家の用事は済ませましたし、少し早く戻ってきて良かったです」
カズキは今朝、カザナの屋敷に戻ってきて、明日にはリオナスに向かう予定だったそうだ。
休みなしに、フールシアに向かう事になってしまったが、申し訳ないなと思いながらも、約束までに帰ろうと思ったら、馬車を出してくれて助かったのだ。
なのでフールシアに向かい、そのままカズキと馬車でリオナスに向かうことにした。
いつも魔法陣で移動ばかりだから、馬車の移動だと時間はかかるが、少し楽しみでもある。
リーンはカズキと人魚の湖に向かいながら話をしていた。
「時間があったらで良いのですが、たまに、ルーク様を誘ってお出掛けになりませんか」
カズキが苦笑いして、そんなことを言ってきた。
「リオナスが出きるまでは、よく皆で旅をしていたんです。…最近はルーク様も忙しくて、ほとんどリオナスから出ませんし、気晴らしがあると良いかと…」
そう言えば、ルーク達に拾われたのも旅の途中だった…。
外にいる方がイキイキしているのは確かだ。
でも、その分の負担は側近達にのし掛かってくる。
「カズキ達も忙しだろう?」
「あま、そうですが、リーンさんから誘ってもらえると、ルーク様も動きやすいのかな…と、思いまして…」
働き過ぎのルークを休ませたいのも分かる。
「…確かに。執務室の隣に部屋か有るから、休日でも仕事をしていたし…」
「俺達は交代で休みをもらっています。…最近は慣れてきたのもあるのか、役所の方も落ち着いてきましたし、…長期は困りますが、ルーク様に休日を取ってもらいたくて…」
「そうだね。…一応、アリミネ火山に行くのを誘ってはある。…けれど、休日…とはいかないかな…」
リーンは苦笑いする。
ルークの身体を休めるためでなく、『炎の魔法石』をもらいに行くのだから…。
「…アリミネ火山ですか…」
「普通に馬車で向かっても、三日はかかる…帰りは『移動』を使えば、早く帰ってはこれると思うけれど…」
「何が起こるか分かりませんからね…」
カズキはそう言って笑う。
ルークと一緒に旅をすると、寄り道ばかりだとアオが楽しそうに言っていた。
気になったモノや、気になる事に足を止め、自ら見に行ってしまうのだと…。
…分かる気がした。
その好奇心がルークを作っている。
だから、たまには遠出をさせたいのだと…。
そんな話をしているうちに、人魚の湖への検問にたどり着いた。
以前ここに来た時は、道がガタガタで、馬車に乗っているのがつらかった覚えがある。
しかし今は整備され、普通の街道と同じくらいの乗り心地だ。
検問所の前でカズキが馬車を止めると、中から制服を着た男が二人出てきて、カズキが通行証を見せると、一礼して、チラリとこちらを見た。
リーンも視線が合ってしまったので、ペコリと頭を下げると、制服の男達は頬を染めてこちらにも一礼してきた。
…通行証は第三王子の側近のモノだから、すんなりと通れたんだよな…。
「…。」
きっと一人で来ていたら通してもらえず、森から入らなくては行けなかったかもしれない…。
そう思っていると、人魚の湖へのバリケードが開けられ、カズキは馬車を動かした。
「…そう言えば、集落の生活を守るために、検問を作るように言っていたんだった…」
自分達が言い出した事だと思い出す。
「ええ、多少変わりましたが、今も静かに暮らしていますよ」
カズキはそう言って微笑んだ。
「…良かった」
「でも『塩』の生産のおかげで、家は立派になってますよ」
「そうなんだ…」
海水から『塩』と『水』を分離させる魔法を教え、その『塩』で財をなして、少しでも生活が豊かになれば良いと思っていた。
雨風がきつい場所の為、よく家が飛ばされたり、倒壊していたと言っていたから、そうならない家を建てているのかもしれない。
程なくして、集落の広場にたどり着くと、見覚えのある水人が近づいてきた。
「ようこそ、カズキさん」
「こんにちは、ダレスさん。今日はお客さんを連れてきたよ」
リーンは馬車から顔を覗かせ、声をかけた。
「久しぶりだな、ダレス」
「リーン様!」
ダレスは目を丸くして、驚いている。
森の調査の方に、ずっと携わっていたから、ここへ来るのはルークと一緒に来たとき以来だ。
「ちょっと急ぎで『水中都市』のフールシアと繋いでもらえないか」
『水中都市』と、唯一連絡が取れる場所がここだけなのだ。
「はい。直ぐに!」
「…ああ。フールシアには、来なくて良いと、言っといてくれ」
リーンは忘れずにそう伝える。
…来れば、面倒事が起きる。
「…直ぐに泳いで来てしまいそうですからね…」
ダレスは苦笑いしている。
だいぶ、フールシアの性格が分かってきているようだ。
「それまで、カズキと新しくなった集落を見て回るから…」
「そうしてください。皆も喜びます」
ダレスはそう言って、水上集落の方に向かっていった。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる