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神の宿り木~再生~
ソフィアの引出し
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翌日、リーンはカザンナ王国のカザナのルークのお屋敷の小屋にいた。
グオルクのリーンの部屋から魔法陣で繋がっているので、直ぐにたどり着ける。
そしてミーネのもとに向かった。
「『宿り木』の苗木が欲しいんだ…。頼めるかな…」
ミーネは過去の『私』キュイが作った『宿り木』
そして長い時間のなかで、木霊としての自我を持ち、この地域一帯を守る守護神。
『少し時間をください』
「ありがとう」
リーンは微笑んでミーネの側を離れた。
ルークの屋敷に戻ると、緊張した様子で執事が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。リーン様。お客様がお待ちです」
「お客?」
誰だろう…。
執事に部屋を案内され中に入ると、見知った人がいた。
「…サラ?」
「リーン様!」
彼女は立ち上がり駆け寄ってきた。
サラはカザンナ王国の第一王子ローレンスのお妃様であり、魔女の森の元魔女でもある女性だ。
そして彼女が少女の頃、魔女の森で会ったことがある為、見知っているのだ。
「眠ったままだとお聞きしていて…目覚められて良かったです」
「心配をかけてごめんね」
サラは涙ぐんで微笑んだ。
取りあえず落ち着いてテーブルに付くと、執事がお茶を持ってきてくれた。
「二人にして頂けますか」
サラはそう言って執事に退室を申し出ると、頭を下げて部屋を出ていった。
そしてサラは真剣な眼差しでリーンを見る。
「ソフィア様からの伝言です。『右下の引出しを開けなさい』だそうです」
「…。」
右下の引出し…。
リーンはハッとした。
『物質保管庫』の一番右下…ソフィアが、何かあった時の為に一つだけ使わないように言われていた引き出しの事だ。
リーンは右手をかざした。
「『物質保管庫』」
リーンがそう言うと、ドーナツ状態の魔方陣が現れる。
その中心が引き出しになっていて、いろんなモノを保管しておくのだが…。
引き出しを引かなくても、そこに何が入っているのかわかった。
それくらい、魔力に溢れている。
「…伝言されて、直接伝えなくてはと思い、ここまで連れてきてもらいました」
「…ありがとう、サラ。…どうやって会いに行こうかと迷っていたところだ…」
リーンは『物質保管庫』をしまい、ほっとため息をつく。
魔女の森に行かなくても、よくなった…。
「これで、子供たちとの約束が守れそうだ」
「子供達との約束?」
リーンは苦笑いする。
「ユーリが、ピクニックがしたいと言い出して、週末までにリオナスに帰ってくるよう念を押されているんだ」
キラリとサラの目が光る。
「…あんまり我が儘いわないし、それくらいの約束は守ってあげたくて…」
「それ、私たちも御一緒しても良いかしら?」
「サラ?」
リーンはキョトンとした。
「…あの子も気晴らしが有った方が良いと思って…。ジーンとユーリが一緒なら、気も緩むだろうし…」
サラの息子のロバート、ジーンとユーリのいとこの事だ。
「ルナ達も来るよ。…獣人には慣れたかな…」
ロバートは初めて会った獣人ヒイロに驚いて、物影からじっと見ているばかりだった。
サラがクスリと笑う。
「ソレはね、恥ずかしかったのよ」
「恥ずかしい?」
「あの子、動物好きでね、ふわふわした耳としっぽに触りたかったみたい。でも、獣人は親しい人にしか触らせないと聞いているから、触りたくてムズムズしていたの…」
「はあ…」
一応、獣人族については簡単な知識が人族にも伝わっている。
「ソレも、カッコいいヒイロさんに緊張して、あの子の中ではいろんな葛藤があったみたいよ…」
…それで物影から見ていたのか…。
羨望と、触りたいけどダメだからと…。
「ちゃんと本人に許可をもらえれば、大丈夫だよ。…ルナなら、触らしてくれるかな…」
聞いてみないと分からないが、知らない人だと嫌がるかも…。
ジーンとユーリには触らせているが…。
「週末、ロバートも行きたいと言ったら、同行しても良いかしら」
「…いいけど、最小限の人数でお願いします」
リーンはそう言って笑った。
…大変な事になってきたぞ。
カザンナ王国の第一王子の、第一子ロバートと、お妃様が来るとなると、警護がいっぱい付いてくるんじゃないのか?
うちの子達も第三王子の子供達だ。
それに獣人の町グオルクの跡継ぎヒイロと、チイ、子供のルナとなると、ユーリの思い描いたピクニックとは違ってきてしまうかも知れないな…。
グオルクのリーンの部屋から魔法陣で繋がっているので、直ぐにたどり着ける。
そしてミーネのもとに向かった。
「『宿り木』の苗木が欲しいんだ…。頼めるかな…」
ミーネは過去の『私』キュイが作った『宿り木』
そして長い時間のなかで、木霊としての自我を持ち、この地域一帯を守る守護神。
『少し時間をください』
「ありがとう」
リーンは微笑んでミーネの側を離れた。
ルークの屋敷に戻ると、緊張した様子で執事が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。リーン様。お客様がお待ちです」
「お客?」
誰だろう…。
執事に部屋を案内され中に入ると、見知った人がいた。
「…サラ?」
「リーン様!」
彼女は立ち上がり駆け寄ってきた。
サラはカザンナ王国の第一王子ローレンスのお妃様であり、魔女の森の元魔女でもある女性だ。
そして彼女が少女の頃、魔女の森で会ったことがある為、見知っているのだ。
「眠ったままだとお聞きしていて…目覚められて良かったです」
「心配をかけてごめんね」
サラは涙ぐんで微笑んだ。
取りあえず落ち着いてテーブルに付くと、執事がお茶を持ってきてくれた。
「二人にして頂けますか」
サラはそう言って執事に退室を申し出ると、頭を下げて部屋を出ていった。
そしてサラは真剣な眼差しでリーンを見る。
「ソフィア様からの伝言です。『右下の引出しを開けなさい』だそうです」
「…。」
右下の引出し…。
リーンはハッとした。
『物質保管庫』の一番右下…ソフィアが、何かあった時の為に一つだけ使わないように言われていた引き出しの事だ。
リーンは右手をかざした。
「『物質保管庫』」
リーンがそう言うと、ドーナツ状態の魔方陣が現れる。
その中心が引き出しになっていて、いろんなモノを保管しておくのだが…。
引き出しを引かなくても、そこに何が入っているのかわかった。
それくらい、魔力に溢れている。
「…伝言されて、直接伝えなくてはと思い、ここまで連れてきてもらいました」
「…ありがとう、サラ。…どうやって会いに行こうかと迷っていたところだ…」
リーンは『物質保管庫』をしまい、ほっとため息をつく。
魔女の森に行かなくても、よくなった…。
「これで、子供たちとの約束が守れそうだ」
「子供達との約束?」
リーンは苦笑いする。
「ユーリが、ピクニックがしたいと言い出して、週末までにリオナスに帰ってくるよう念を押されているんだ」
キラリとサラの目が光る。
「…あんまり我が儘いわないし、それくらいの約束は守ってあげたくて…」
「それ、私たちも御一緒しても良いかしら?」
「サラ?」
リーンはキョトンとした。
「…あの子も気晴らしが有った方が良いと思って…。ジーンとユーリが一緒なら、気も緩むだろうし…」
サラの息子のロバート、ジーンとユーリのいとこの事だ。
「ルナ達も来るよ。…獣人には慣れたかな…」
ロバートは初めて会った獣人ヒイロに驚いて、物影からじっと見ているばかりだった。
サラがクスリと笑う。
「ソレはね、恥ずかしかったのよ」
「恥ずかしい?」
「あの子、動物好きでね、ふわふわした耳としっぽに触りたかったみたい。でも、獣人は親しい人にしか触らせないと聞いているから、触りたくてムズムズしていたの…」
「はあ…」
一応、獣人族については簡単な知識が人族にも伝わっている。
「ソレも、カッコいいヒイロさんに緊張して、あの子の中ではいろんな葛藤があったみたいよ…」
…それで物影から見ていたのか…。
羨望と、触りたいけどダメだからと…。
「ちゃんと本人に許可をもらえれば、大丈夫だよ。…ルナなら、触らしてくれるかな…」
聞いてみないと分からないが、知らない人だと嫌がるかも…。
ジーンとユーリには触らせているが…。
「週末、ロバートも行きたいと言ったら、同行しても良いかしら」
「…いいけど、最小限の人数でお願いします」
リーンはそう言って笑った。
…大変な事になってきたぞ。
カザンナ王国の第一王子の、第一子ロバートと、お妃様が来るとなると、警護がいっぱい付いてくるんじゃないのか?
うちの子達も第三王子の子供達だ。
それに獣人の町グオルクの跡継ぎヒイロと、チイ、子供のルナとなると、ユーリの思い描いたピクニックとは違ってきてしまうかも知れないな…。
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