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神の宿り木~遡る時間~
遡る時間
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リーンは過去の自分と対面していた。
一つ前の名前は『キュイ』
彼らは何も答えてくれないが、見せてくれた。
『キュイ』は、植物を育てるのが好きだった。
ほとんど森から出ず、獣人達が持ってくる植物を育てたり、もらった果物を種から育てたり、魔法で改良して、新しい品種を作って獣人達に分けたり、樹木の様子がおかしいから見てほしいと呼ばれていったり…。
いくつかの『宿り木』の苗を育てたのは『キュイ』だった。
グオルクの獣人の所に、見下ろす大地を守ってもらうため、丘の上に崇めるシンボルが欲しいと頼まれたのだと。
『キュイ』はどんな場所なのか、『風使い』に連れていってもらって、大地の様子と風向き、日当たりを確認して、新しい苗木を育てて、そこに植えた。
苗木は魔法ですくすく育ち、丘から大地を守る守護神、御神木となった。
それが、獣人族であろうと、人族であろうと、『キュイ』には関係なかった。
『宿り木』を、大切にしてくれれば…。
その一つが、カザンナ王国のカザナに有る『ミーネ』だった。
それ以外に、信仰によっても『宿り木』は生まれた。
人々の祈りが木霊に届き、普通の木に守り神が宿るのだ。
そして大地を守り、森を守り、人々の生活を守っていく…。
それが、かつて切り倒され、『宿り木』を復活させるために、ジンが眠った『宿り木』…。
あの時は、『宿り木』を育てるために、多くの魔力を必要として、皆が少しずつ協力して魔力を与え、復活させた…。
『キュイ』は魔素が濃い森に、果樹園を作り、そこに来る獣人や動物達に、喜んでもらうのが楽しかった。
…あの果樹園…『キュイ』が、作ったんだ…。
草原に有る小屋から森までの間に、いろんな果物の木が生えていた。
獣人達が時々、世話をしに来たり、収穫して持ってきてくれていた。
その頃から、植えられていたんだ…。
だけど『キュイ』が何故、眠りについたのかは、分からなかった。
その一つ前の『ピット』は魔素の濃さに耐えれなくて、ほとんど森にいなかった。
『ピット』は熊の獣人が保護していたが、熊族の村では魔素が足りなくて、身体が衰弱していった。
魔素の濃さと、魔力の供給のバランスが取れなくて、『ピット』は熊族の獣人の町を転々として眠りについた。
…いろんな、私がいる。
不思議な感じだった。
見たことの有る場所は、やはり過去の自分が歩んできた場所…。
暮らしてきた場所…。
…そう思うと、今の私は、森を出て、自由にいろんな場所を行き来して、いろんな人と出会っている…。
誰よりも、いろんな事を経験している…。
そうやって、リーンは少しずつ、過去の自分と対面しながら、『始まりの宿り木』周辺をどうすれば良いか考えて行った。
始まりの『私』に近付くに連れて、映像と言葉が戸切だした。
かなり古いものだからなのか、記憶が薄れてしまっているのか…。
…そして気が付いた。
何も無かった地に『宿り木』が宿ると、大地から溢れ出る魔素が、そこから放たれていた。
…再び『宿り木』を植えることが出来れば、もしかして、大地は元に戻る…?
ただ、反転してしまった場所だから、まずは、植える場所だけでも確保して…『宿り木の苗木』を準備して…魔力の塊である強力な魔法石を準備して…乾いた大地にたくさんの水を放って…。
そう思いながら、リーンは苦笑いした。
…全部どこに有るのか分かっていて、持っているモノばかりなのだ。
リーンが巡って、出会ってきた場所に有るのだ…。
…もしかして、私が、…リーンが歩んできた時間は、この為に有るのか…?
そんな風に思えるくらい、リーンの側に全て有るのだ…。
大切な人達を守るため…。
…リーンの覚悟は決まった。
一つ前の名前は『キュイ』
彼らは何も答えてくれないが、見せてくれた。
『キュイ』は、植物を育てるのが好きだった。
ほとんど森から出ず、獣人達が持ってくる植物を育てたり、もらった果物を種から育てたり、魔法で改良して、新しい品種を作って獣人達に分けたり、樹木の様子がおかしいから見てほしいと呼ばれていったり…。
いくつかの『宿り木』の苗を育てたのは『キュイ』だった。
グオルクの獣人の所に、見下ろす大地を守ってもらうため、丘の上に崇めるシンボルが欲しいと頼まれたのだと。
『キュイ』はどんな場所なのか、『風使い』に連れていってもらって、大地の様子と風向き、日当たりを確認して、新しい苗木を育てて、そこに植えた。
苗木は魔法ですくすく育ち、丘から大地を守る守護神、御神木となった。
それが、獣人族であろうと、人族であろうと、『キュイ』には関係なかった。
『宿り木』を、大切にしてくれれば…。
その一つが、カザンナ王国のカザナに有る『ミーネ』だった。
それ以外に、信仰によっても『宿り木』は生まれた。
人々の祈りが木霊に届き、普通の木に守り神が宿るのだ。
そして大地を守り、森を守り、人々の生活を守っていく…。
それが、かつて切り倒され、『宿り木』を復活させるために、ジンが眠った『宿り木』…。
あの時は、『宿り木』を育てるために、多くの魔力を必要として、皆が少しずつ協力して魔力を与え、復活させた…。
『キュイ』は魔素が濃い森に、果樹園を作り、そこに来る獣人や動物達に、喜んでもらうのが楽しかった。
…あの果樹園…『キュイ』が、作ったんだ…。
草原に有る小屋から森までの間に、いろんな果物の木が生えていた。
獣人達が時々、世話をしに来たり、収穫して持ってきてくれていた。
その頃から、植えられていたんだ…。
だけど『キュイ』が何故、眠りについたのかは、分からなかった。
その一つ前の『ピット』は魔素の濃さに耐えれなくて、ほとんど森にいなかった。
『ピット』は熊の獣人が保護していたが、熊族の村では魔素が足りなくて、身体が衰弱していった。
魔素の濃さと、魔力の供給のバランスが取れなくて、『ピット』は熊族の獣人の町を転々として眠りについた。
…いろんな、私がいる。
不思議な感じだった。
見たことの有る場所は、やはり過去の自分が歩んできた場所…。
暮らしてきた場所…。
…そう思うと、今の私は、森を出て、自由にいろんな場所を行き来して、いろんな人と出会っている…。
誰よりも、いろんな事を経験している…。
そうやって、リーンは少しずつ、過去の自分と対面しながら、『始まりの宿り木』周辺をどうすれば良いか考えて行った。
始まりの『私』に近付くに連れて、映像と言葉が戸切だした。
かなり古いものだからなのか、記憶が薄れてしまっているのか…。
…そして気が付いた。
何も無かった地に『宿り木』が宿ると、大地から溢れ出る魔素が、そこから放たれていた。
…再び『宿り木』を植えることが出来れば、もしかして、大地は元に戻る…?
ただ、反転してしまった場所だから、まずは、植える場所だけでも確保して…『宿り木の苗木』を準備して…魔力の塊である強力な魔法石を準備して…乾いた大地にたくさんの水を放って…。
そう思いながら、リーンは苦笑いした。
…全部どこに有るのか分かっていて、持っているモノばかりなのだ。
リーンが巡って、出会ってきた場所に有るのだ…。
…もしかして、私が、…リーンが歩んできた時間は、この為に有るのか…?
そんな風に思えるくらい、リーンの側に全て有るのだ…。
大切な人達を守るため…。
…リーンの覚悟は決まった。
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