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神の宿り木
不安的中
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ヒイロに連絡が来たのは、山小屋『オメガ』から帰ってきて、三日目の事だった。
ヒイロもゆっくりと一日休み、翌日の午後からは仕事に出ていた。
どうしても、早急に処理をしなくてはいけないものがあったからだ。
調査のため、長期間不在になっても良いように、補佐官であるホムラが、処理してくれるが、判断の難しいものは後回しになっていた。
そんな仕事をこなしていると、リオナスに行っていた部下からの連絡が入った。
リオナスの役所で獣人達が、『何で紙に書かなくてはいけない!?』『出した書類はどうなっている!?』『早く来てくれ!?』と、詰めよっているそうだ。
獣人族と人族の、申し立てや小競り合いなどの、処理が滞っているらしい。
…やっぱりそうなったか…。
ヒイロの不安は的中した。
リーンを迎えに来たときは、冷静さを保っていたが、目の前で状況を目の当たりにして、仕事どころではない無いだろう。
分かってはいても、手に付かない状況になっているのだろう。
ヒイロは急ぎの連絡事項に一通り目を通し、ホムラに指示を出して、リオナスに向かった。
『移動』を使ったら直ぐにたどり着けるが、まだ、完全に魔力が回復したわけではないので、移動用の馬車を準備してもらい乗り込んだ。
馬車での移動時間は三時間ほど…。
そんな移動中も、ホムラに書類を渡させれいるので、目を通し、向こうに着いてから、ホムラに指示を出す予定だ。
それよりリオナスの方が心配だ。
側近のアオはまだ、声が出ないと言っていた。
魔力と身体の状態が元に戻れば、回復するだろうとは言われていたが、仕事に復帰するには時間は掛かりそうだ。
ジェスは戻って早々に、カザンナ王国からの呼び出しがあり、すぐさまカザンナ王国に戻っていったし、ルークの他の側近達もそれぞれに仕事を抱えている。
ヒイロは考えていた。
移住してリオナス来た獣人達は、ルークの事を知らない者が多いのだろう。
人族を信用しきれないから、試すような事をしているのだ。
人族の方は、カザンナ王国の第三王子と言うだけで、王族が関わっている事業なのだと理解しているから、それほど揉め事を起こしていない可能性もある。
どれだけルークを中心に、リオナスの町を動かしているのだと言うこを、移住してきたリオナスの獣人の住民達は知らないから、こんな事になっているのだろう。
そしてルークの魔力の番が、リーンなのだと言うことも…。
そして、そのリーンが眠ったまま、目覚めないと言うことも…。
ヒイロが役所前に着くと、獣人達と役所勤めの人族と獣人族が言い合いをしていた。
…厄介なことになっているな…。
ヒイロは裏口から役所内に入り、ルークの執務室へと向かっていった。
建物の中でも、獣人達が騒いでいる。
「…。」
この大事なときに、纏まるものも、纏まらなくなってしまうだろうが…。
ヒイロが執務室に入ると、アオとガーディがいた。
「ヒイロさん!!」
体格の良いガーディが泣きそうな顔をして、突進してくる。
「事情は分かっている。ルークは?」
アオが寝室の方をチラリと見る。
「…やっぱりな…。状況を報告してくれ。俺が出きることはする」
「ありがとうございます!!」
ガーディは役所内で騒いでいるもの達の、実情を話し出した。
…やはり、自分達で決着をつけれそうな問題でも、こちらの采配を確認していると、言うものが多い。
なので、それを伝えて、納得出来ないと言うのが、この騒ぎの発端だ。
「…ルークとリーンの事は、やはり話していないのか?」
「ええ、それ無しに獣人達の信頼を得たいと言うのがルーク様の考えでしたので…」
だが、そうも言っていられないだろう。
「…俺が話す。グオルクの、リーンの兄弟である俺が言った方が、納得するだろう」
「…お任せします」
ガーディがそう言うと、アオも頷いて、紙に何やら書き出す。
『ルーク様も頭では分かっているのですが、どうしても、リーンから離れられなくて…』
「番を得たらそうなる」
ヒイロは苦笑いして、立ち上がった。
そして役所内が一望できる、二階の階段上に向かった。
後をアオが付いてくる。
ヒイロは深呼吸して、大声を上げた。
「てめえら!!いい加減にしやがれ!!」
ヒイロの声が役所内に響き渡った。
ヒイロもゆっくりと一日休み、翌日の午後からは仕事に出ていた。
どうしても、早急に処理をしなくてはいけないものがあったからだ。
調査のため、長期間不在になっても良いように、補佐官であるホムラが、処理してくれるが、判断の難しいものは後回しになっていた。
そんな仕事をこなしていると、リオナスに行っていた部下からの連絡が入った。
リオナスの役所で獣人達が、『何で紙に書かなくてはいけない!?』『出した書類はどうなっている!?』『早く来てくれ!?』と、詰めよっているそうだ。
獣人族と人族の、申し立てや小競り合いなどの、処理が滞っているらしい。
…やっぱりそうなったか…。
ヒイロの不安は的中した。
リーンを迎えに来たときは、冷静さを保っていたが、目の前で状況を目の当たりにして、仕事どころではない無いだろう。
分かってはいても、手に付かない状況になっているのだろう。
ヒイロは急ぎの連絡事項に一通り目を通し、ホムラに指示を出して、リオナスに向かった。
『移動』を使ったら直ぐにたどり着けるが、まだ、完全に魔力が回復したわけではないので、移動用の馬車を準備してもらい乗り込んだ。
馬車での移動時間は三時間ほど…。
そんな移動中も、ホムラに書類を渡させれいるので、目を通し、向こうに着いてから、ホムラに指示を出す予定だ。
それよりリオナスの方が心配だ。
側近のアオはまだ、声が出ないと言っていた。
魔力と身体の状態が元に戻れば、回復するだろうとは言われていたが、仕事に復帰するには時間は掛かりそうだ。
ジェスは戻って早々に、カザンナ王国からの呼び出しがあり、すぐさまカザンナ王国に戻っていったし、ルークの他の側近達もそれぞれに仕事を抱えている。
ヒイロは考えていた。
移住してリオナス来た獣人達は、ルークの事を知らない者が多いのだろう。
人族を信用しきれないから、試すような事をしているのだ。
人族の方は、カザンナ王国の第三王子と言うだけで、王族が関わっている事業なのだと理解しているから、それほど揉め事を起こしていない可能性もある。
どれだけルークを中心に、リオナスの町を動かしているのだと言うこを、移住してきたリオナスの獣人の住民達は知らないから、こんな事になっているのだろう。
そしてルークの魔力の番が、リーンなのだと言うことも…。
そして、そのリーンが眠ったまま、目覚めないと言うことも…。
ヒイロが役所前に着くと、獣人達と役所勤めの人族と獣人族が言い合いをしていた。
…厄介なことになっているな…。
ヒイロは裏口から役所内に入り、ルークの執務室へと向かっていった。
建物の中でも、獣人達が騒いでいる。
「…。」
この大事なときに、纏まるものも、纏まらなくなってしまうだろうが…。
ヒイロが執務室に入ると、アオとガーディがいた。
「ヒイロさん!!」
体格の良いガーディが泣きそうな顔をして、突進してくる。
「事情は分かっている。ルークは?」
アオが寝室の方をチラリと見る。
「…やっぱりな…。状況を報告してくれ。俺が出きることはする」
「ありがとうございます!!」
ガーディは役所内で騒いでいるもの達の、実情を話し出した。
…やはり、自分達で決着をつけれそうな問題でも、こちらの采配を確認していると、言うものが多い。
なので、それを伝えて、納得出来ないと言うのが、この騒ぎの発端だ。
「…ルークとリーンの事は、やはり話していないのか?」
「ええ、それ無しに獣人達の信頼を得たいと言うのがルーク様の考えでしたので…」
だが、そうも言っていられないだろう。
「…俺が話す。グオルクの、リーンの兄弟である俺が言った方が、納得するだろう」
「…お任せします」
ガーディがそう言うと、アオも頷いて、紙に何やら書き出す。
『ルーク様も頭では分かっているのですが、どうしても、リーンから離れられなくて…』
「番を得たらそうなる」
ヒイロは苦笑いして、立ち上がった。
そして役所内が一望できる、二階の階段上に向かった。
後をアオが付いてくる。
ヒイロは深呼吸して、大声を上げた。
「てめえら!!いい加減にしやがれ!!」
ヒイロの声が役所内に響き渡った。
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