神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
178 / 462
神の宿り木

途方にくれる

しおりを挟む
 ヒイロからリーンが目覚めなくなったと聞いて、リオナスを飛び出そうとしたのを、ガーディに取り押さえられ、しばらく頭に血が登って、冷静な行動が出来なかった。
 リーンは今までにも、ふらりと出ていって、ふらりと帰ってくる事はあった。
 ちゃんと俺のもとに帰ってきてくれたのだ。
 だが、目覚めないとは、どう言うことだ!!
 リオナスに作った執務室をウロウロと歩き回り、仕事どころではない。
 連絡がいったのか、青い顔をしたカズキが慌てて戻ってきた。
「ルーク様。落ち着きましょう。…リーンは眠っているだけです。以前に言っていた『記憶の図書館』に行っている状態なのだと…呼吸はしているので、生きています」
「…。」
 カズキにそう告げられて、その言葉を反芻して、少し落ち着きを取り戻すと、ソファーにドンと座り込んだ。
「…リーンは眠っているだけ…」
「そうです。だから、今の揉め事の処理をしたら迎えに行きましょう。それまで、ヒイロさんが守ってくれます」
 カズキが必死に説得に掛かっている。
「…。」
 今行って、戻ってきても、こちらの事が片付いていないと、側にはいれない…。
 仕事を放り出すわけにはいかない…。
「…わかった。さっさと始末をつけるぞ!」
 ルークは今までにない形相で、揉め事を起こしている獣人のもとに向かった。


 ヒイロから連絡が来て、翌々日にリーンを迎えに行った。
 グオルクの本部に行き、そこから魔方陣を連続してくぐり抜け、山小屋『オメガ』にたどり着いた。
 ココは他の場所に比べて、身体に掛かる重圧が重い。
 こんなところに長期間いるのは身体の負担になるだろう。
 ルークの表情は固く青ざめていた。
「ルーク様…」
 ジェスがルークに近付き、寝室の扉を開けてくれる。
 ルークは寝室に入り、ベッドで眠るリーンを両腕に抱き上げ、温もりを確かめた。
 いつもより体温は低いが、ほのかに暖かい…。
 ルークはそのまま寝室を出ると、ヒイロに頭を下げ、リーンを連れて魔方陣の中に入った。
 そして、来た時と逆の順番で魔方陣をくぐり抜け、本部へと戻ってきた。

 ルークは戻ってきたのは良いが、どうしたら良いのか分からなかった。
 カザンナ王国のカザナの屋敷に連れていくか…。
 でも、俺はリオナスでの仕事がある。
 一人リーンを置いておくと、また、どこかに消えてしまいそうで怖かった。 
 リオナスに連れていくか…。
 執務室の隣の俺の部屋に、リーンを連れていこう…。
 そこならば、いつでもリーンの様子を見ることが出きるし、目覚めれば、すぐに分かる…。
 ルークはリオナスに『移動』した。


 リオナスの役所の外に戻ってきたルークは、リーンを抱えたまま裏口から建物内に入っていった。
 リオナスの役所には、防犯のため、転移出来ないように、魔法が掛けられている。
 魔法陣で繋がっていれば、簡単に移動できるが、あの本部には多くの人が出入りするのと、山小屋同士を繋ぐため、魔法陣を使うので、個人的には張り付けていない。
 建物内に入ると、カズキが出迎えてくれて、扉を開けてくれる。
 ルークはその後を追いながら、執務室に戻っていった。

 執務室の隣の寝室のベッドにリーンを寝かせ、掛け布団を掛けると、ベッドの端に座り、リーンの髪を撫でる。
「…帰ってきたぞ。早く目覚めて、俺に笑い掛けてくれ…」
 ルークは悲痛な思いでリーンに囁き掛ける。
 目を覚ましてくれ…。
「…。」
 カズキは静かに寝室の扉を閉めて、出ていった。

  
 リーンはまだ、深い眠りの中にいた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...