175 / 462
神の宿り木
アオとアレク 1
しおりを挟む
六人でココまで来たが、アオは限界を感じていた。
急激に体温が下がり始め、冷や汗が流れ始める。
これ以上、近付くなと、身体が拒否反応を起こしている。
立ち枯れがまばらになり、森が開け、集落跡が見えると、いっそうソレが強くなった。
遠目にも、家の土台の残骸が、あちらこちらに点在しているのが見え、背筋が震えた。
「…ごめん…ココから先は…無理…」
そう言って先に立ち止まったのは、青ざめたアレクだった。
最年少ながら、良くココまで付いてこれたよな…。
…俺も一緒にギブアップだ。
「…俺も…無理そう…」
アオはそう言って、冷や汗を拭った。
無理をして付いていっても、足手まといにしかならない。
何か有ったとき、皆にも迷惑をかける…。
アレクと一緒に戻ろう…。
…二人一組行動が基本だから、ちょうどいい。
「…戻れるだけの魔力は有るよね」
リーンが心配そうに声を掛けてくる。
「うん。ギリギリ…」
「…何とか…」
いざとなったら、あまり使いたくないが魔法石がある。
出来たら使わないよう、急いで戻るしかない。
アオはアレクと共に、四人に背を向け歩き出した。
足取りは重いが、ココから離れれば、少しは楽になるだろう。
二人は黙々と歩いて、元来た道を戻り始めた。
二人の荒い息と、落ち葉を踏む足音だけが響く。
日はだいぶん傾いているから、急がなくてはいけない。
日が落ちて、辺り一面が暗くなってしまうと、今、来た道が見えなくなってしまい、下手をすれば迷子になってしまう。
…アレクの歩くペースが落ちてきている。
「少し休憩するか?」
「…はぁ…はぁ…だい…丈夫…」
かなりの疲労がまたっているようだ。
…大丈夫と言うなら仕方ない。
進めるところまで進もう。
そして日が沈む前に、『瞬脚移動』短い距離を連続して飛ぶ『移動』に切り替えて、森の中を走ろう。
少しでも山小屋に近付いていないと、本当に帰れなくなってしまう…。
…『魔法石』を使うしかないか…。
アオはそんな事を考えながら、切り開いた道を進んでいた。
「…アレクは『瞬脚移動』を使えるか?」
必死に後を付いてくるアレクに声をかける。
日が山に掛かった。
…ココがギリギリラインだ。
「はぁ…はぁ…俺は…有翼族だ。…空を…飛んで…移動…するから…はぁ…はぁ…」
…愚問だった。
つい、有翼族だと言うことを忘れていた。
「少しは飛べるな」
「…魔力を…使い切ってしまう…」
体力的にも、長距離は飛べないだろう…。
「…このまま歩くのと、飛ぶのと、どちらが山小屋まで近付ける?」
「…飛ぶ」
「…だったら、行くぞ!」
アオはチラリと疲労困憊しているアレクを見る。
これから、こう言う決断力もアレクには必要になるだろう。
「…わかった」
アオは進む方向に狙いを定めて、魔法を発動した。
「『瞬脚移動』!」
「『跳躍』!」
二人は急いで、移動し始めた。
だんだんと日が山に隠れ、辺りが薄暗くなっていく。
アオは時折アレクが付いてきているか、確認しながら『瞬脚移動』を使っていた。
アレクの飛行高度がどんどんと、下がってきているからだ。
…どこまで飛べる!
辺りが暗くなり、視界にアレクを捉えにくくなってきた。
ザサッと滑るような音がして、アオは足を止め振り向いた。
アレクが墜落して、地面にへばり付いている。
直ぐにアオはアレクの元に戻り、身体を起こした。
「はぁ…はぁはぁ…はぁ…はぁ…」
苦しそうに息をするのが、やっとのようだ。
アオは胸元から鎖を引っ張り、いつも身に付けているペンダントを取り出す。
深い青色をした魔法石が嵌め込まれているペンダント。
これは、リーンと出会った頃、リーンが研磨し、その中から選んだ魔法石。
今まで一度も使ったことのなかった、最終手段の宝物。
アオはアレクを背中に担ぎ、フラりとよろける。
まだ、アレクが小柄な方で良かった。
これがダグラスだったら、絶対に俺が潰れてる。
「アレク、俺の首に捕まるだけの腕の力はあるか?」
「…はぁ…はぁ…はぁ…」
返事は無いがアオの首ともで、アレクの両手と両腕が重なり合い、しっかりと結ばれる。
「落ちるなよ」
アオは両手でペンダントの魔法石を包み込み、同調する。
…魔法石、俺に魔力を分けてくれ!
すると、魔法石が淡く青色に輝きだし、アオを包み込む。
「『瞬脚移動』!」
アオはアレクの両足を支えて、薄暗森の中を移動し始めた。
…遠くに、ほのかな明かりが見えた。
多分あれが山小屋だ。
あそこまで、たどり着けるだろうか…。
森は既に真っ暗で、時折、月明かりが足元を照らしてくれるくらいだ。
後少し…もう少し…。
アオは必死に『瞬脚移動』を繰り返した。
山小屋の姿を視界に捉えたとき、魔法石の淡い光が弱まり始めた。
…もう少し、もってくれ…。
アオは祈りを込めて願ったが、だんだんと弱くなっていく。
後、数回が限界か…。
そう思ったとき、足がガクンと崩れ、地面に膝をついて、倒れ込みそうになった。
背中にアレクを背負っているから、地面との激突は避けられたようだ。
「…はぁ…はぁ…」
魔法石より俺の体力の方が先に限界に来てしまった。
足が震えて、力が入らない…。
…山小屋は見えている。
身体を引きずってでも、たどり着けないことはない…。
「…アオさんは、休んでて…」
背中に背負っていたアレクが声を掛けてくる。
「…歩けるくらい、回復したから…僕が…スーサーを呼んでくる」
そう言って、アレクはアオの背中から降りて立ち上がり、アオの身体を支えて、側にある木に寄りかからせてくれた。
「…待ってて…くださいね…」
アレクはそう言って微笑み、まだ重い身体を引きずるように山小屋に向かって歩き出す。
アオはソレを見送りながら、ほのかな光を放つペンダントを握りしめる。
…魔法石を使った反動が来はじめた。
身体が重くて、動かない…。
「…。」
アオはそのまま意識を失った。
急激に体温が下がり始め、冷や汗が流れ始める。
これ以上、近付くなと、身体が拒否反応を起こしている。
立ち枯れがまばらになり、森が開け、集落跡が見えると、いっそうソレが強くなった。
遠目にも、家の土台の残骸が、あちらこちらに点在しているのが見え、背筋が震えた。
「…ごめん…ココから先は…無理…」
そう言って先に立ち止まったのは、青ざめたアレクだった。
最年少ながら、良くココまで付いてこれたよな…。
…俺も一緒にギブアップだ。
「…俺も…無理そう…」
アオはそう言って、冷や汗を拭った。
無理をして付いていっても、足手まといにしかならない。
何か有ったとき、皆にも迷惑をかける…。
アレクと一緒に戻ろう…。
…二人一組行動が基本だから、ちょうどいい。
「…戻れるだけの魔力は有るよね」
リーンが心配そうに声を掛けてくる。
「うん。ギリギリ…」
「…何とか…」
いざとなったら、あまり使いたくないが魔法石がある。
出来たら使わないよう、急いで戻るしかない。
アオはアレクと共に、四人に背を向け歩き出した。
足取りは重いが、ココから離れれば、少しは楽になるだろう。
二人は黙々と歩いて、元来た道を戻り始めた。
二人の荒い息と、落ち葉を踏む足音だけが響く。
日はだいぶん傾いているから、急がなくてはいけない。
日が落ちて、辺り一面が暗くなってしまうと、今、来た道が見えなくなってしまい、下手をすれば迷子になってしまう。
…アレクの歩くペースが落ちてきている。
「少し休憩するか?」
「…はぁ…はぁ…だい…丈夫…」
かなりの疲労がまたっているようだ。
…大丈夫と言うなら仕方ない。
進めるところまで進もう。
そして日が沈む前に、『瞬脚移動』短い距離を連続して飛ぶ『移動』に切り替えて、森の中を走ろう。
少しでも山小屋に近付いていないと、本当に帰れなくなってしまう…。
…『魔法石』を使うしかないか…。
アオはそんな事を考えながら、切り開いた道を進んでいた。
「…アレクは『瞬脚移動』を使えるか?」
必死に後を付いてくるアレクに声をかける。
日が山に掛かった。
…ココがギリギリラインだ。
「はぁ…はぁ…俺は…有翼族だ。…空を…飛んで…移動…するから…はぁ…はぁ…」
…愚問だった。
つい、有翼族だと言うことを忘れていた。
「少しは飛べるな」
「…魔力を…使い切ってしまう…」
体力的にも、長距離は飛べないだろう…。
「…このまま歩くのと、飛ぶのと、どちらが山小屋まで近付ける?」
「…飛ぶ」
「…だったら、行くぞ!」
アオはチラリと疲労困憊しているアレクを見る。
これから、こう言う決断力もアレクには必要になるだろう。
「…わかった」
アオは進む方向に狙いを定めて、魔法を発動した。
「『瞬脚移動』!」
「『跳躍』!」
二人は急いで、移動し始めた。
だんだんと日が山に隠れ、辺りが薄暗くなっていく。
アオは時折アレクが付いてきているか、確認しながら『瞬脚移動』を使っていた。
アレクの飛行高度がどんどんと、下がってきているからだ。
…どこまで飛べる!
辺りが暗くなり、視界にアレクを捉えにくくなってきた。
ザサッと滑るような音がして、アオは足を止め振り向いた。
アレクが墜落して、地面にへばり付いている。
直ぐにアオはアレクの元に戻り、身体を起こした。
「はぁ…はぁはぁ…はぁ…はぁ…」
苦しそうに息をするのが、やっとのようだ。
アオは胸元から鎖を引っ張り、いつも身に付けているペンダントを取り出す。
深い青色をした魔法石が嵌め込まれているペンダント。
これは、リーンと出会った頃、リーンが研磨し、その中から選んだ魔法石。
今まで一度も使ったことのなかった、最終手段の宝物。
アオはアレクを背中に担ぎ、フラりとよろける。
まだ、アレクが小柄な方で良かった。
これがダグラスだったら、絶対に俺が潰れてる。
「アレク、俺の首に捕まるだけの腕の力はあるか?」
「…はぁ…はぁ…はぁ…」
返事は無いがアオの首ともで、アレクの両手と両腕が重なり合い、しっかりと結ばれる。
「落ちるなよ」
アオは両手でペンダントの魔法石を包み込み、同調する。
…魔法石、俺に魔力を分けてくれ!
すると、魔法石が淡く青色に輝きだし、アオを包み込む。
「『瞬脚移動』!」
アオはアレクの両足を支えて、薄暗森の中を移動し始めた。
…遠くに、ほのかな明かりが見えた。
多分あれが山小屋だ。
あそこまで、たどり着けるだろうか…。
森は既に真っ暗で、時折、月明かりが足元を照らしてくれるくらいだ。
後少し…もう少し…。
アオは必死に『瞬脚移動』を繰り返した。
山小屋の姿を視界に捉えたとき、魔法石の淡い光が弱まり始めた。
…もう少し、もってくれ…。
アオは祈りを込めて願ったが、だんだんと弱くなっていく。
後、数回が限界か…。
そう思ったとき、足がガクンと崩れ、地面に膝をついて、倒れ込みそうになった。
背中にアレクを背負っているから、地面との激突は避けられたようだ。
「…はぁ…はぁ…」
魔法石より俺の体力の方が先に限界に来てしまった。
足が震えて、力が入らない…。
…山小屋は見えている。
身体を引きずってでも、たどり着けないことはない…。
「…アオさんは、休んでて…」
背中に背負っていたアレクが声を掛けてくる。
「…歩けるくらい、回復したから…僕が…スーサーを呼んでくる」
そう言って、アレクはアオの背中から降りて立ち上がり、アオの身体を支えて、側にある木に寄りかからせてくれた。
「…待ってて…くださいね…」
アレクはそう言って微笑み、まだ重い身体を引きずるように山小屋に向かって歩き出す。
アオはソレを見送りながら、ほのかな光を放つペンダントを握りしめる。
…魔法石を使った反動が来はじめた。
身体が重くて、動かない…。
「…。」
アオはそのまま意識を失った。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる