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神の宿り木
集落跡
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新たなメンバー、六人で再びリムナード山に向かい始めた。
数日前に、一度途中まで進んでいるので、歩いた道はまだ残ったままだ。
そこから先へと進んでいく。
リーンは歩きながら、ふと、気付いたことがあった。
「…気のせいかも知れないけど、鳥とか小動物…見かけなくなったような…」
「…そう言えば、鳥の声がしない…」
しばらく沈黙が続き、六人の足音だけが響く。
「…風が…止まっている…」
アレクがふと、そう言い出した。
「…この辺の木は弱っていますね…」
ジェスは辺りを見回して、空を見上げる。
この時期、緑の葉っぱが覆い繁るのだが、隙間が多く、時折落ち葉が舞い落ちてくる。
「…どうなっているんだ…」
このままでは、この辺り一帯の木が枯れてしまい、大地がむき出しになってしまう。
アオは立ち止まり、目を閉じて、大地に手をかざす。
「…水が上がってきていない…。木の根が水分を吸うことが出来ずに、立ち枯れになってきている…」
「…やはり水が無いせいか…」
「そうだね。…人だけでなく、植物にも動物にも、生きていくためには必要だからね…」
その原因が何かを突き止めなくては…。
山小屋『オメガ』を出発して、半日が過ぎようとしていた。
日はだいぶん傾いてきたが、今日は天気が良いのでとても明るい。
だが、気分は暗く足取りも重くなってきていた。
「…この辺の…立ち枯れしているよね…」
「ああ。急に身体も重くなってきた」
さっきとは違い、完全に葉っぱが無く、まるで冬の落葉樹の中を歩いているようだ。
サクサクと落ち葉を踏む音が響く。
「…僕、そろそろ限界かも…」
アレクが青い顔をして、歩むスピードも落ちてきていた。
「…でも、もう少しで、上空から見えたモノが見えてくるはず…」
そう言って、必死に足を前へと進めていく。
アレクが見たもの…。
何度か上空から、向かっている方向が合っているか、確認してもらっていたとき、奥の方に気になるモノが見えた。と、言っていたのだ。
まだ、離れていたのもあるし、風を纏うのだけでも魔力を使うので、少しでも温存するために、空をなるべく飛ばないでいた。
アレクは、ソレをどう説明して、どう言って良いのか、わからないそうだ。
だったら進むしかない。
…何か有るのは確かなのだから…。
立ち枯れがまばらになり、森を抜け、目の前に平地が姿を表した。
かつて集落が有ったのだろう、家の土台の残骸が、あちらこちらに点在していた。
「…ごめん…ココから先は…無理…」
そう言って立ち止まったのは、青ざめたアレクだった。
「…俺も…無理そう…」
そう言ったのは冷や汗を拭うアオだった。
無理しない方が良い。
「…戻れるだけの魔力は有るよね」
「うん。ギリギリ…」
「…何とか…」
二人は、元来た道を戻り始めた。
足取りは重そうだが、ココから離れれば、少しは楽になるだろう。
そんな二人を見送り、リーンとヒイロ、セス、ジェスは集落跡に足を踏み入れた。
「…かなり昔の建物のだよね…」
石が積み上げられ、囲むような跡があり、一本の道の左右に点在している。
朽ち果てた木材が散らばり、この場所だけ、時間が止まってしまったような静けさだ。
「ああ。それにしても、草で覆われていないのが不思議だ」
年数が経てば、手入れされない土地は、山に帰ると言われている。
草が生え、木の根が張り巡らされて、木が生えて…。
開拓されて作られた土地は、すぐに木々に覆われ、元の姿に戻ってしまう。
始まりの山小屋『アルファ』のように、その場所に魔法をかけて、山に帰らないようになっていれば別だが…。
ココにはその形跡もなく、家が有った跡だけが残っているのだ。
「…ココ…知っている…奧に…」
リーンの脳裏に、ココと重なる風景が、時折写し出されては消えていった。
「…。」
ヒイロとセス、ジェスは頷き、フラフラと歩き出したリーンを追いかけ始めた。
この先に…確か…。
リーンは集落から少し離れ、丘を登り始めた。
大切な何かが…有ったはず…。
記憶は途切れ途切れで、思い出せない。
そして、目の前に現れた木に…木だったモノを目にして、リーンは立ち止まった。
目を見開き、ソレを凝視する。
「…あぁ…始まりの…宿り…木…」
それが合図のように、リーンの脳裏に、たくさんの情報と記憶と映像が溢れ出す。
それに頭が付いていかず、リーンはその場に崩れ落ち、意識を失った。
数日前に、一度途中まで進んでいるので、歩いた道はまだ残ったままだ。
そこから先へと進んでいく。
リーンは歩きながら、ふと、気付いたことがあった。
「…気のせいかも知れないけど、鳥とか小動物…見かけなくなったような…」
「…そう言えば、鳥の声がしない…」
しばらく沈黙が続き、六人の足音だけが響く。
「…風が…止まっている…」
アレクがふと、そう言い出した。
「…この辺の木は弱っていますね…」
ジェスは辺りを見回して、空を見上げる。
この時期、緑の葉っぱが覆い繁るのだが、隙間が多く、時折落ち葉が舞い落ちてくる。
「…どうなっているんだ…」
このままでは、この辺り一帯の木が枯れてしまい、大地がむき出しになってしまう。
アオは立ち止まり、目を閉じて、大地に手をかざす。
「…水が上がってきていない…。木の根が水分を吸うことが出来ずに、立ち枯れになってきている…」
「…やはり水が無いせいか…」
「そうだね。…人だけでなく、植物にも動物にも、生きていくためには必要だからね…」
その原因が何かを突き止めなくては…。
山小屋『オメガ』を出発して、半日が過ぎようとしていた。
日はだいぶん傾いてきたが、今日は天気が良いのでとても明るい。
だが、気分は暗く足取りも重くなってきていた。
「…この辺の…立ち枯れしているよね…」
「ああ。急に身体も重くなってきた」
さっきとは違い、完全に葉っぱが無く、まるで冬の落葉樹の中を歩いているようだ。
サクサクと落ち葉を踏む音が響く。
「…僕、そろそろ限界かも…」
アレクが青い顔をして、歩むスピードも落ちてきていた。
「…でも、もう少しで、上空から見えたモノが見えてくるはず…」
そう言って、必死に足を前へと進めていく。
アレクが見たもの…。
何度か上空から、向かっている方向が合っているか、確認してもらっていたとき、奥の方に気になるモノが見えた。と、言っていたのだ。
まだ、離れていたのもあるし、風を纏うのだけでも魔力を使うので、少しでも温存するために、空をなるべく飛ばないでいた。
アレクは、ソレをどう説明して、どう言って良いのか、わからないそうだ。
だったら進むしかない。
…何か有るのは確かなのだから…。
立ち枯れがまばらになり、森を抜け、目の前に平地が姿を表した。
かつて集落が有ったのだろう、家の土台の残骸が、あちらこちらに点在していた。
「…ごめん…ココから先は…無理…」
そう言って立ち止まったのは、青ざめたアレクだった。
「…俺も…無理そう…」
そう言ったのは冷や汗を拭うアオだった。
無理しない方が良い。
「…戻れるだけの魔力は有るよね」
「うん。ギリギリ…」
「…何とか…」
二人は、元来た道を戻り始めた。
足取りは重そうだが、ココから離れれば、少しは楽になるだろう。
そんな二人を見送り、リーンとヒイロ、セス、ジェスは集落跡に足を踏み入れた。
「…かなり昔の建物のだよね…」
石が積み上げられ、囲むような跡があり、一本の道の左右に点在している。
朽ち果てた木材が散らばり、この場所だけ、時間が止まってしまったような静けさだ。
「ああ。それにしても、草で覆われていないのが不思議だ」
年数が経てば、手入れされない土地は、山に帰ると言われている。
草が生え、木の根が張り巡らされて、木が生えて…。
開拓されて作られた土地は、すぐに木々に覆われ、元の姿に戻ってしまう。
始まりの山小屋『アルファ』のように、その場所に魔法をかけて、山に帰らないようになっていれば別だが…。
ココにはその形跡もなく、家が有った跡だけが残っているのだ。
「…ココ…知っている…奧に…」
リーンの脳裏に、ココと重なる風景が、時折写し出されては消えていった。
「…。」
ヒイロとセス、ジェスは頷き、フラフラと歩き出したリーンを追いかけ始めた。
この先に…確か…。
リーンは集落から少し離れ、丘を登り始めた。
大切な何かが…有ったはず…。
記憶は途切れ途切れで、思い出せない。
そして、目の前に現れた木に…木だったモノを目にして、リーンは立ち止まった。
目を見開き、ソレを凝視する。
「…あぁ…始まりの…宿り…木…」
それが合図のように、リーンの脳裏に、たくさんの情報と記憶と映像が溢れ出す。
それに頭が付いていかず、リーンはその場に崩れ落ち、意識を失った。
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