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神の宿り木
山小屋『オメガ』
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リムナード山の山肌が見え、ある程度の平地を確保出来る場所にたどり着くと、セスは魔方陣を大地に写し出し、基盤を整えた。
本来ならダグラスが平地にしてくれるのだが、今の様子では、魔法を使うのが困難だ。
転移魔法を発動させるにも、四人の魔力が必要になる。
リーンとヒイロ、セス、三人では、魔力の消費も激しくなってしまうから、三人のうち、誰かの回復を待つしかなかった。
最初に回復したのは、アレクだった。
風を纏うのに、魔力を使うが、纏っていれさえすれば、身体の影響は無いらしい。
それなら回復しているうちに、転移魔法で山小屋を転移させれば、他のメンバーもゆっくりと休めるだろうと、言うことで、すぐに準備が整えられた。
リーンとヒイロ、セス、アレクが転移魔法を発動させた。
平地に、魔方陣が写し出され、強い光を放ち、いままで何もなかった場所に、突如、山小屋が出現する。
魔方陣の光が収まると、ヒイロはすぐさま、支障が無いか確認を始めた。
山小屋の歪みや破損が無いかを確認し終えると、扉を開けて、ヒイロは小屋の中から杭とハンマーを取り出し、山小屋を固定し始めた。
いつもなら、ダグラスがしてくれるのだが、誰でもやれないことはない。
ただ、腕力が違いすぎるので、少し時間がかかって仕舞うだけだ。
リーンとアレクは、山小屋の中に、スーサーとダグラスを連れていき、ベッドに寝かせる。
重いダグラスは二人がかりで、運んだ。
ぐったりと横たわる二人を寝かせておいて、リーンとアレクは、一緒に運ばれた食料や物資の確認を始め、セスは、山小屋内に取り付けてある通信用の鏡を起動させ、本部へ転移完了の報告と、現在の状況を報告し始めた。
固定の終わったヒイロは、夜営のテントの回収をして、山小屋に戻ってくる。
そして、全員がホッと一息出来たのだ。
山小屋には、いろんなモノの防御魔法が掛けられているので、しばらく休憩して、再度、リムナード山へ向かう予定だ。
リーンとヒイロ、セス、アレクの四人は、ダイニングルームで暖かいコーンスープを飲みなから、現状の整頓をしていた。
「…思ったんだけど、魔力が奪われているのも…」
ふと、アレクがそう言った。
「…魔力酔いか…」
予定無く、急激に魔力を奪われ、身体が付いていかなくなり、体内循環を狂わせて仕舞う現象だ。
訓練などで事前に分かっていれば、奪われる意識が有るので、最小限の魔力で身体のバランスを保つことが出来るのだが…。
「アレクはどれくらいなら、風を纏って進める?」
「…魔力が持つ限り…。でも、帰りの事を思ったら、ある程度、予備の魔力を残しておかないと、動けなくなる」
ふと、アレクはリーンを見る。
「リーンは、大丈夫なの?」
「…無意識に、自動的に、防御の魔法が発動しているみたいで、あまり分からないんだ」
だから、魔力酔いになったことが無い。
症状の出方は個人差があると言う、知識だけはある。
「ヒイロと、セスも?」
「まあ、そうだな」
ヒイロは苦笑いする。
「昔、リーンといろんな魔法の実験をしたから、その名残で、いろんな魔法のモノが、掛けられているんだ」
リーンも思い出して、苦笑いする。
どこまで、魔法を身体に刻み込んで、身体を強化できるか…。
そんなことを一時、二人で実験した事が有る。
…あれは、森の聖域だから出来たことであって、今、そんなことをしようものなら、魔力の枯渇現象が起き、動けなくなってしまう。
「セスは?」
「…俺はアレクと一緒で、風を纏っていれば、防御魔法と一緒の状態になる。…長い年月のうちに、無意識に纏っているから、あまり実感がない」
セスも、かつては各地を回っていた。
今はダグラスに落ち着いて暮らしているだけで、実践経験は豊富だ。
「…実践が有るから…皆、無意識に防御魔法を使っているんだ…」
アレクはため息をつく。
そこは、仕方ない。
「アレクはこれから、経験を積んでいけば良い。…調査隊に加わったことで、同級生よりも、一歩先に出てるよ」
「そうそう、経験を積んでも、実践出来ないヤツもいるから…」
「そうだね…」
四人は見合って、改めて頷く。
「スーサーとダグラスの回復ぐわいを見て、リムナード山へ行くかどうか決めよう」
ヒイロが真剣な眼差しで言うと、セスが、提案をしてきた。
「本部の方から、風を纏って魔力酔いを防げて、体力の有る者を呼び寄せよう。…あまり期待はしていないが…」
「そうだね。…スーサーが回復すれば分かるだろうけれど、地下水が気になる…」
「ああ、アレが影響を及ぼしている可能性は有る」
四人は再び頷く。
「しばらく休憩だ。…リーン、なんか美味しいもの作って…」
ヒイロがそう言って、兄弟に戻り甘えてくる。
リーンはクスッと笑って伝える。
「…チイの手料理が恋しい?…有るよ。焼いたり暖めれば良いように下準備して、食料の中に入ってた」
「何?!」
ヒイロは驚いて、リーンを見てくる。
「本部に連絡が行って、転移までに時間が有ったから、入れてくれたんじゃないかな…」
「…やったぁ!!」
ヒイロは子供のように喜ぶ。
「…それ、俺達も食べれるんですよね…」
「大丈夫だよ。たくさん有るから…」
そう言ってリーンは微笑んだ。
しっかり者のチイは、ヒイロの事をよく分かっている。
ご褒美の嬉しいことが有れば、後は冷静に判断して、良い選択を導いてくれる。
先へ進むために…。
本来ならダグラスが平地にしてくれるのだが、今の様子では、魔法を使うのが困難だ。
転移魔法を発動させるにも、四人の魔力が必要になる。
リーンとヒイロ、セス、三人では、魔力の消費も激しくなってしまうから、三人のうち、誰かの回復を待つしかなかった。
最初に回復したのは、アレクだった。
風を纏うのに、魔力を使うが、纏っていれさえすれば、身体の影響は無いらしい。
それなら回復しているうちに、転移魔法で山小屋を転移させれば、他のメンバーもゆっくりと休めるだろうと、言うことで、すぐに準備が整えられた。
リーンとヒイロ、セス、アレクが転移魔法を発動させた。
平地に、魔方陣が写し出され、強い光を放ち、いままで何もなかった場所に、突如、山小屋が出現する。
魔方陣の光が収まると、ヒイロはすぐさま、支障が無いか確認を始めた。
山小屋の歪みや破損が無いかを確認し終えると、扉を開けて、ヒイロは小屋の中から杭とハンマーを取り出し、山小屋を固定し始めた。
いつもなら、ダグラスがしてくれるのだが、誰でもやれないことはない。
ただ、腕力が違いすぎるので、少し時間がかかって仕舞うだけだ。
リーンとアレクは、山小屋の中に、スーサーとダグラスを連れていき、ベッドに寝かせる。
重いダグラスは二人がかりで、運んだ。
ぐったりと横たわる二人を寝かせておいて、リーンとアレクは、一緒に運ばれた食料や物資の確認を始め、セスは、山小屋内に取り付けてある通信用の鏡を起動させ、本部へ転移完了の報告と、現在の状況を報告し始めた。
固定の終わったヒイロは、夜営のテントの回収をして、山小屋に戻ってくる。
そして、全員がホッと一息出来たのだ。
山小屋には、いろんなモノの防御魔法が掛けられているので、しばらく休憩して、再度、リムナード山へ向かう予定だ。
リーンとヒイロ、セス、アレクの四人は、ダイニングルームで暖かいコーンスープを飲みなから、現状の整頓をしていた。
「…思ったんだけど、魔力が奪われているのも…」
ふと、アレクがそう言った。
「…魔力酔いか…」
予定無く、急激に魔力を奪われ、身体が付いていかなくなり、体内循環を狂わせて仕舞う現象だ。
訓練などで事前に分かっていれば、奪われる意識が有るので、最小限の魔力で身体のバランスを保つことが出来るのだが…。
「アレクはどれくらいなら、風を纏って進める?」
「…魔力が持つ限り…。でも、帰りの事を思ったら、ある程度、予備の魔力を残しておかないと、動けなくなる」
ふと、アレクはリーンを見る。
「リーンは、大丈夫なの?」
「…無意識に、自動的に、防御の魔法が発動しているみたいで、あまり分からないんだ」
だから、魔力酔いになったことが無い。
症状の出方は個人差があると言う、知識だけはある。
「ヒイロと、セスも?」
「まあ、そうだな」
ヒイロは苦笑いする。
「昔、リーンといろんな魔法の実験をしたから、その名残で、いろんな魔法のモノが、掛けられているんだ」
リーンも思い出して、苦笑いする。
どこまで、魔法を身体に刻み込んで、身体を強化できるか…。
そんなことを一時、二人で実験した事が有る。
…あれは、森の聖域だから出来たことであって、今、そんなことをしようものなら、魔力の枯渇現象が起き、動けなくなってしまう。
「セスは?」
「…俺はアレクと一緒で、風を纏っていれば、防御魔法と一緒の状態になる。…長い年月のうちに、無意識に纏っているから、あまり実感がない」
セスも、かつては各地を回っていた。
今はダグラスに落ち着いて暮らしているだけで、実践経験は豊富だ。
「…実践が有るから…皆、無意識に防御魔法を使っているんだ…」
アレクはため息をつく。
そこは、仕方ない。
「アレクはこれから、経験を積んでいけば良い。…調査隊に加わったことで、同級生よりも、一歩先に出てるよ」
「そうそう、経験を積んでも、実践出来ないヤツもいるから…」
「そうだね…」
四人は見合って、改めて頷く。
「スーサーとダグラスの回復ぐわいを見て、リムナード山へ行くかどうか決めよう」
ヒイロが真剣な眼差しで言うと、セスが、提案をしてきた。
「本部の方から、風を纏って魔力酔いを防げて、体力の有る者を呼び寄せよう。…あまり期待はしていないが…」
「そうだね。…スーサーが回復すれば分かるだろうけれど、地下水が気になる…」
「ああ、アレが影響を及ぼしている可能性は有る」
四人は再び頷く。
「しばらく休憩だ。…リーン、なんか美味しいもの作って…」
ヒイロがそう言って、兄弟に戻り甘えてくる。
リーンはクスッと笑って伝える。
「…チイの手料理が恋しい?…有るよ。焼いたり暖めれば良いように下準備して、食料の中に入ってた」
「何?!」
ヒイロは驚いて、リーンを見てくる。
「本部に連絡が行って、転移までに時間が有ったから、入れてくれたんじゃないかな…」
「…やったぁ!!」
ヒイロは子供のように喜ぶ。
「…それ、俺達も食べれるんですよね…」
「大丈夫だよ。たくさん有るから…」
そう言ってリーンは微笑んだ。
しっかり者のチイは、ヒイロの事をよく分かっている。
ご褒美の嬉しいことが有れば、後は冷静に判断して、良い選択を導いてくれる。
先へ進むために…。
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