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神の宿り木
後退
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アレクの案内を便りに、リムナード山へと向かった。
人が通った事の無いような、荒れた山道を歩き、三日目に、見上げる視界から、茶色く変色したリムナード山の山肌を見る事になった。
「…枯れてるな」
「…一本処では無いぞ!」
「ああ、もう少し近付いてみないと、どれだけの範囲に及んでいるのか分からないな…」
「…急ごう」
六人は無言で足を動かした。
スーサーが、体調の異変を訴え、足を止めた。
「…ごめん…。なんか…気持ち悪い…」
こんな山の中に一人置いていくことも出来ず、少し戻ることにした。
スーサーの体調が落ち着く場所まで戻り、夜営のテントを張った。
「…大丈夫?」
「…少し、落ち着いた…」
スーサーは、ホットスープの入ってカップを手に取り、ため息をつく。
「…足引っ張って…ごめん…」
「大丈夫だって。それより、どんな感じで、気持ち悪かった?」
スーサーは頭を捻らせ、考え込む。
「…身体の中を、掻き回されるみたいな感じ…船酔いするみたいと、言うか…」
「…。」
身体の平衡感覚を失ってしまうような感じだろうか…。
「…身体が重くなって、力が抜けると言うか…」
「…。」
どちらにしろ、スーサーはここまでだ。
「ココに山小屋を転移させよう。もしかしたら、これ以上、進むのは危険かもしれない…」
ヒイロは真剣な眼差しで、リーンを見る。
リーンも頷き、目指していた山の方を見る。
「そうだね。一度、落ち着いた方が良いかもしれない。…アレク。ココからアノ山肌は見える?」
アレクは空に浮かび上がり、木々の上にまで一気に昇る。
「見えるよ」
アレクはそう言って、戻ってくる。
「ダグラス。この近くで山小屋を転移出来そうな場所、探してきて。少し木が邪魔だったら、木霊に話を付けるから…」
「わかった」
ダグラスはそう言って、森の中に入っていく。
「セスは本部に連絡をとって、転移の山小屋の手配を頼む」
「了解です」
そう言って、魔法を操出し始める。
「…スーサーは落ち着いたら、地下水の様子を探って。…これが、当たりかもしれない…」
「…分かりました」
そう言って、スーサーはマグカップを置くと、青い顔をして、夜営のテントに身体を横たえた。
まだ、少し辛いのかもしれない…。
地下水の水量を見れば、状態が分かる…。
スーサーは魚人と獣人の血を引いている。
…水が…体内を巡る水分が、何かに反応しているのかもしれない…。
どちらにしろ、一旦ココで休憩だ。
アレクとリーンは、何か食べれるモノがないかを探しに森の中へ入っていった。
「ねえ、リーン」
「何?」
「僕もココから先には行けないかも…」
「…。」
リーンが足を止めると、アレクも立ち止まった。
「…風をまとっているときは、大丈夫だけど…地上に降りると、力が抜けていく…」
リーンはアレクを見た。
よく見ると、身体全体に小さな風を纏わせて、ほんの少し浮いている。
「風を纏っていれば、大丈夫?」
「長時間はダメ。僕の魔力が持たない…」
アレクが、しょんぼりと項垂れる。
「もう少し、下へ降りようか…。山小屋の位置を下げよう」
リーンとアレクはすぐに夜営のテントまで戻り、ヒイロに事訳を話した。
「…セスは大丈夫なのか?」
「…取りあえずは、大丈夫ですが、通信にノイズが入ります。…これも、その影響でしょうか…」
…そうかもしれない。
未だ、夜営のテントで、スーサーは横たわっている。
「…ダグラスは…森の中に入ったままか…」
「探してくる」
リーンは足早に、ダグラスの後を追った。
「『風霊』ダグラスがどこにいるか、教えて…」
…返答が無い。
いや、ざわざわと風は動いているから、答えてくれているのだろうが、聞き取りにくくなっている。
すると、風が背中を押す。
時間はかかるが、一生懸命、教えてくれようとしている。
リーンは風の案内を頼りに、ダグラスを探した。
ダグラスは大きな身体を抱え、踞っていた。
「ダグラス!!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
呼吸困難になって、苦しそうに顔を歪めている。
「ダグラス。風を纏えるか?」
ダグラスはゆっくりと目を閉じ、小さな風を纏い始める。
「…少し…楽に…なった…」
そうは言うが、顔色は悪いまま…。
「戻るぞ」
ダグラスは頷いて、立ち上がり、ヒイロ達の元へ戻った。
そこから、さらに山を下り、アレクが地上に降りれる場所まで、後退した。
山小屋の転移は少し後になりそうだ。
皆の回復を待って、場所を探して、これが最後の山小屋になるのかもしれない。
最後を意味する『オメガ』。
ソレがこれから転移する山小屋の名前になるだろう…。
人が通った事の無いような、荒れた山道を歩き、三日目に、見上げる視界から、茶色く変色したリムナード山の山肌を見る事になった。
「…枯れてるな」
「…一本処では無いぞ!」
「ああ、もう少し近付いてみないと、どれだけの範囲に及んでいるのか分からないな…」
「…急ごう」
六人は無言で足を動かした。
スーサーが、体調の異変を訴え、足を止めた。
「…ごめん…。なんか…気持ち悪い…」
こんな山の中に一人置いていくことも出来ず、少し戻ることにした。
スーサーの体調が落ち着く場所まで戻り、夜営のテントを張った。
「…大丈夫?」
「…少し、落ち着いた…」
スーサーは、ホットスープの入ってカップを手に取り、ため息をつく。
「…足引っ張って…ごめん…」
「大丈夫だって。それより、どんな感じで、気持ち悪かった?」
スーサーは頭を捻らせ、考え込む。
「…身体の中を、掻き回されるみたいな感じ…船酔いするみたいと、言うか…」
「…。」
身体の平衡感覚を失ってしまうような感じだろうか…。
「…身体が重くなって、力が抜けると言うか…」
「…。」
どちらにしろ、スーサーはここまでだ。
「ココに山小屋を転移させよう。もしかしたら、これ以上、進むのは危険かもしれない…」
ヒイロは真剣な眼差しで、リーンを見る。
リーンも頷き、目指していた山の方を見る。
「そうだね。一度、落ち着いた方が良いかもしれない。…アレク。ココからアノ山肌は見える?」
アレクは空に浮かび上がり、木々の上にまで一気に昇る。
「見えるよ」
アレクはそう言って、戻ってくる。
「ダグラス。この近くで山小屋を転移出来そうな場所、探してきて。少し木が邪魔だったら、木霊に話を付けるから…」
「わかった」
ダグラスはそう言って、森の中に入っていく。
「セスは本部に連絡をとって、転移の山小屋の手配を頼む」
「了解です」
そう言って、魔法を操出し始める。
「…スーサーは落ち着いたら、地下水の様子を探って。…これが、当たりかもしれない…」
「…分かりました」
そう言って、スーサーはマグカップを置くと、青い顔をして、夜営のテントに身体を横たえた。
まだ、少し辛いのかもしれない…。
地下水の水量を見れば、状態が分かる…。
スーサーは魚人と獣人の血を引いている。
…水が…体内を巡る水分が、何かに反応しているのかもしれない…。
どちらにしろ、一旦ココで休憩だ。
アレクとリーンは、何か食べれるモノがないかを探しに森の中へ入っていった。
「ねえ、リーン」
「何?」
「僕もココから先には行けないかも…」
「…。」
リーンが足を止めると、アレクも立ち止まった。
「…風をまとっているときは、大丈夫だけど…地上に降りると、力が抜けていく…」
リーンはアレクを見た。
よく見ると、身体全体に小さな風を纏わせて、ほんの少し浮いている。
「風を纏っていれば、大丈夫?」
「長時間はダメ。僕の魔力が持たない…」
アレクが、しょんぼりと項垂れる。
「もう少し、下へ降りようか…。山小屋の位置を下げよう」
リーンとアレクはすぐに夜営のテントまで戻り、ヒイロに事訳を話した。
「…セスは大丈夫なのか?」
「…取りあえずは、大丈夫ですが、通信にノイズが入ります。…これも、その影響でしょうか…」
…そうかもしれない。
未だ、夜営のテントで、スーサーは横たわっている。
「…ダグラスは…森の中に入ったままか…」
「探してくる」
リーンは足早に、ダグラスの後を追った。
「『風霊』ダグラスがどこにいるか、教えて…」
…返答が無い。
いや、ざわざわと風は動いているから、答えてくれているのだろうが、聞き取りにくくなっている。
すると、風が背中を押す。
時間はかかるが、一生懸命、教えてくれようとしている。
リーンは風の案内を頼りに、ダグラスを探した。
ダグラスは大きな身体を抱え、踞っていた。
「ダグラス!!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
呼吸困難になって、苦しそうに顔を歪めている。
「ダグラス。風を纏えるか?」
ダグラスはゆっくりと目を閉じ、小さな風を纏い始める。
「…少し…楽に…なった…」
そうは言うが、顔色は悪いまま…。
「戻るぞ」
ダグラスは頷いて、立ち上がり、ヒイロ達の元へ戻った。
そこから、さらに山を下り、アレクが地上に降りれる場所まで、後退した。
山小屋の転移は少し後になりそうだ。
皆の回復を待って、場所を探して、これが最後の山小屋になるのかもしれない。
最後を意味する『オメガ』。
ソレがこれから転移する山小屋の名前になるだろう…。
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