神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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滅び行く大地

休暇

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 あっという間の一日だった。
 ルークは用意周到に、食料もちゃんと準備していた。
 小屋に帰って来たとき、テーブルの上に置かれた荷物は、全て数日分の食料だった。
 サンドイッチ、リンゴパイ、唐揚げ、ハム、パン、果物、リンゴジュース。
 鍋にシチューとコーンスープ。
 どれだけこもるつもりなんだよ!
 リーンはソレを見て、頬を染めるしかなかった。
 抱き合って、食事して、また、抱き合って眠って。
 朝、目覚めて、シャワーを浴びながら抱き合って、食事して、抱き合って…。
 二人だけしか居ない、濃密な蜜月。
 …飢えていたのと…充電しすぎだろ…。
 と、思うくらいだ。
 そして、今になって気が付いた。
 この小屋の回りに、人避けの魔法が掛けられていることに…。
 …ルーク。
 リーンは頬を染めた。
「…どうした?」
 ルークがリビングに置いてあった、皿に乗ったシャインを持って、寝室に戻ってきた。
「…別に」
 リーンがそう言うと、ルークがシャインを一粒手に取り、リーンの口許に運んでくる。 
 リーンは口を開け、食べさせてもらうと、口の中一杯に広がる甘くて美味しい果実に頬が緩む。
「…美味しい」
 ルークがベッドに座り、再び一粒手に取り口許に運んでくる。
 …なんか、餌付けされているみたい…。
 リーンは頬を染め、再び口を開け、シャインを食べた。
 そして、お返しとばかりに、リーンも一粒シャインを手に取ると、ルークの口許に運び、ルークは口を開けて食べてくれた。 
 …こんなやり取りが、楽しい…。
 互いに交互に食べさせ合うと、再び口付けた。 
 シャインの味がする、口付け…。
 二人は再び身体を寄せ会った。


 翌朝。
 ルークを言い聞かせ、昼過ぎには、屋敷に向かった。
 丸々二日間、ルークと二人だけで過ごしていたのだ。
 残り少ない休暇を、二人だけで過ごすのも悪くはないが、身体も心も満たされて、冷静になってきたリーンは、ジーンとユーリの事が気になって、仕方がなかった。
 二人はもうすぐ、カザンナ王国の魔法学校、小等科に進む。
 なので、カザナのお屋敷からてはなく、王城内のルークの屋敷から通うことになっている。
 だから、カザナの屋敷にいる時間は少なくなり、会いに来ても居ないことが多くなるのだ。
 成長していくのは嬉しいが、少し寂しくもある。
 …王城まで、会いに行けば良いのだが…。
 
 
 その日は久しぶりに、大きなベットで四人で眠った。
 ジーンもユーリも、ベッタリとくっついてきて、離してくれなかった。
 …甘えて来てくれるのだと思うと、嬉しくて、ジーンとユーリに挟まれて眠った。
 後から部屋に入ってきたルークは、苦笑いして、二人を起こさないように、そっとベッドに潜り込んで、身体を横たえていた。

  
 翌日の昼過ぎ。
 リーンは再び、グオルクに戻った。
 明日から、また、カザンナ王国とギザ王国の間にある山間の、前回とは違うルートを進む。
 その準備と、段取りの確認に早めに戻ってきたのだ。
 山小屋の『アルファ』までは、魔方陣で移動できるから、ソレだけは時間短縮になる。 
 どれが探している水源かは分からないが、一つずつ確実に調査していくしかなかった。
 ひとつ気がかりは、子供達の事だった。
 …ジーンとユーリが、駄々をこね、グオルクに戻る前に、隠れてしまって会えなかったのだ。
 見つけようと思えば、魔法で簡単に探せるのだが、ルークがそこまでしなくて良いと言った。
 分かってはいるのどけれど、寂しくて、自分達の思い通りにならなくて、駄々をこねているだけだからと…。
 …隠れてしまって、後で後悔するのも、経験の勉強だからと…。
 そう言われて、リーンは苦笑いした。
 自分も、子離れの練習なのだと、子供達と一緒に経験していくのだと、実感していた。
 …ルーク、良いお父さんになってるね。
 リーンは、そんな事を思いながら、しばしの別れを告げてきた。
 …自分はどうなのだろう…。
 二人を産んだのは自分だが、そう言うのとは、ちょっと違う気がした。
 …リーンはリーンだ。
 そう言ってくれるルークが側に居てくれれば、形式の名前など必要無いのかもしれない…。
 …大切な家族なのだから…。

 

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