157 / 462
滅び行く大地
リーンの記憶
しおりを挟む
ヒイロ達と川沿いに登り始め、かつて、道だっただろう跡を見つけた。
草が生え、樹木が繁り、倒木があって、なかなか前には進めなかったが、確実に整備された道だった。
この道はどこまで続いているのだろう。
そんなことを思いながら歩き続け、三日目に小さな滝と泉が姿を表した。
泉はそれほど大きくはないが、滝から流れ出る水が、泉に注がれ、泉には周囲を囲むように大きな石があり、水が流れるように並べられ、まるで石橋のようになっていた。
その石の隙間から流れ出る泉の水が、今、上ってきた川に流れ込んでいる。
「完全に人工的に作られたものだな」
ヒイロがそう言うと、
「すごく綺麗な場所…」
アレクは呆然とその滝を見ている。
流れてくる水は透明度も高く、時折水飛沫が風にのってこの場所まで届いてくる。
「ココは何か神聖な場所なのかも知れませんね…」
スーサーが水に手を入れ、水質を見る。
「…。」
リーンは、…目を見張って、動けないていた。
…ココも知っている。
ここは、御祓の場所…。
水霊と…遊んでいた…水場…。
初めて来たはずなのに、何で?
『記憶の図書館』で、見ただけでないのか?
…もし、あれが真実ならば…。
「ヒイロ…」
「どうした?」
ヒイロが心配そうに、リーンの顔を覗き込んでくる。
「…この滝の後ろに…道が続いていて、洞窟がある」
ヒイロはハッとして、リーンを見てくる。
「ソコに…居た…記憶が…ある…」
もう、それが、自分のモノか、『記憶の図書館』のモノなのかが、分からなくなってきた。
「…行ってみよう。…それが有るのならば、皆にも、リーンの『記憶の図書館』の事を話そう」
「…うん」
リーンは頷いていた。
もう、一人では…抱えきれないくらい、混乱してくる…。
…これは…なに…?
ヒイロは草に覆われて、見えなくなっていた細い道を見つけ、滝の裏側に続く道を進んでいった。
リーンもそれに続き、他のメンバーも黙って付いてきた。
道は平らな石が並べられ、水で濡れて滑りやすくなっていたが、明らかにこれも人工的に作られたものだ。
水飛沫を少し浴びながら、進んでいくと、滝を裏側から見ることが出来て、少し抉れて広くなっていた。
そして、その奥に洞窟があった。
「「…。」」
中に進んでいくと、かつて、誰かが住んでいたのであろう、な残りの布の切れ端や、朽ち果てた木材が散乱していた。
「…誰かが住んでいたんだな」
セスがそう呟くと、ヒイロが、
「今日はココへ泊まろう。少し早いが、夜営の準備をしよう」
「…そうですね。野宿よりましです」
「やった!今日はココまで!」
アレクはさっさと荷物を下ろして、洞窟を出ていった。
「あんまり遠くに行ってはダメですよ!」
「は~い」
アレクは上空へ飛び出して行った。
羽を伸ばしたいのだろう。
ダグラスは夜営の天幕を張り、夕食の下準備を始めた。
セスとスーサーは、薪を拾いに、洞窟を出て行った。
「「…。」」
ヒイロとリーンは、荷物を下ろして敷物を敷き、顔を見合わせた。
「…どう思う」
「…リーン。『記憶の図書館』事態が、リーンの過去の記憶なのかもしれない」
ヒイロは、リーンも思っていたことを口にする。
「…そんな気がしてきた…」
リーンは子供の頃と、言うものが無い。
気がついた時、森の魔素の強い聖域に存在していた。
それ以前の記憶が無いのだ。
「…今の私の…知らない…記憶」
リーンは不安しか無かった。
「リーンはリーンだ」
ヒイロがそう言う。
「今、ここに居るのがリーンだ。それで良い」
獣人族の私の家族…。
兄であり、親友でもあるヒイロが側に居てくれて良かった…。
「…その記憶は、物語で言う、前世みたいなモノかもしれないぞ」
ヒイロはそう言って、微笑む。
…少し心を軽くしてくれる。
「…皆にも話そう。リーンの『記憶の図書館』の事を。…少しでも先に進みたいし、もし、リーンの記憶の中にヒントが隠されているのなら、皆で話し合った方が良い」
「…うん。一人で悩むより、その方が気が楽だ」
信じてもらえないかも知れないけれど…。
「…ダグラスは知ってたよな。リーンの…」
少し離れた所で、夕食の下準備をしていたダグラスが、こちらを向く。
「…知っている。昔、村に来たときに、眠りっぱなしで、目覚めないのではないかと、不安になった事がある」
「そんな事も有ったな…」
リーンが熊族の村で、急に枯れ始めた果物の木の原因を探り、土壌改良と、水の流れを変えた事を思い出していると、
「あの時、眠っているリーンの警護をしていた。…おかげで村は助かった」
熊族のダグラスのいた村は、その果物の収穫で生活を支えていたから、死活問題だった。
今は、果物の種類を増やし、ある程度安定した収入を得ていると、聞いている。
「…『記憶の図書館』に、どうすれば枯れないか、書いてあったのか?」
「…映像だよ。同じような現象が起こった場所があって、その原因を調べ、改善していったのを見ていた…」
「「…。」」
「だから、それを伝えた…だけ…」
それが、前の、私の記憶なのかも知れないけれど…。
草が生え、樹木が繁り、倒木があって、なかなか前には進めなかったが、確実に整備された道だった。
この道はどこまで続いているのだろう。
そんなことを思いながら歩き続け、三日目に小さな滝と泉が姿を表した。
泉はそれほど大きくはないが、滝から流れ出る水が、泉に注がれ、泉には周囲を囲むように大きな石があり、水が流れるように並べられ、まるで石橋のようになっていた。
その石の隙間から流れ出る泉の水が、今、上ってきた川に流れ込んでいる。
「完全に人工的に作られたものだな」
ヒイロがそう言うと、
「すごく綺麗な場所…」
アレクは呆然とその滝を見ている。
流れてくる水は透明度も高く、時折水飛沫が風にのってこの場所まで届いてくる。
「ココは何か神聖な場所なのかも知れませんね…」
スーサーが水に手を入れ、水質を見る。
「…。」
リーンは、…目を見張って、動けないていた。
…ココも知っている。
ここは、御祓の場所…。
水霊と…遊んでいた…水場…。
初めて来たはずなのに、何で?
『記憶の図書館』で、見ただけでないのか?
…もし、あれが真実ならば…。
「ヒイロ…」
「どうした?」
ヒイロが心配そうに、リーンの顔を覗き込んでくる。
「…この滝の後ろに…道が続いていて、洞窟がある」
ヒイロはハッとして、リーンを見てくる。
「ソコに…居た…記憶が…ある…」
もう、それが、自分のモノか、『記憶の図書館』のモノなのかが、分からなくなってきた。
「…行ってみよう。…それが有るのならば、皆にも、リーンの『記憶の図書館』の事を話そう」
「…うん」
リーンは頷いていた。
もう、一人では…抱えきれないくらい、混乱してくる…。
…これは…なに…?
ヒイロは草に覆われて、見えなくなっていた細い道を見つけ、滝の裏側に続く道を進んでいった。
リーンもそれに続き、他のメンバーも黙って付いてきた。
道は平らな石が並べられ、水で濡れて滑りやすくなっていたが、明らかにこれも人工的に作られたものだ。
水飛沫を少し浴びながら、進んでいくと、滝を裏側から見ることが出来て、少し抉れて広くなっていた。
そして、その奥に洞窟があった。
「「…。」」
中に進んでいくと、かつて、誰かが住んでいたのであろう、な残りの布の切れ端や、朽ち果てた木材が散乱していた。
「…誰かが住んでいたんだな」
セスがそう呟くと、ヒイロが、
「今日はココへ泊まろう。少し早いが、夜営の準備をしよう」
「…そうですね。野宿よりましです」
「やった!今日はココまで!」
アレクはさっさと荷物を下ろして、洞窟を出ていった。
「あんまり遠くに行ってはダメですよ!」
「は~い」
アレクは上空へ飛び出して行った。
羽を伸ばしたいのだろう。
ダグラスは夜営の天幕を張り、夕食の下準備を始めた。
セスとスーサーは、薪を拾いに、洞窟を出て行った。
「「…。」」
ヒイロとリーンは、荷物を下ろして敷物を敷き、顔を見合わせた。
「…どう思う」
「…リーン。『記憶の図書館』事態が、リーンの過去の記憶なのかもしれない」
ヒイロは、リーンも思っていたことを口にする。
「…そんな気がしてきた…」
リーンは子供の頃と、言うものが無い。
気がついた時、森の魔素の強い聖域に存在していた。
それ以前の記憶が無いのだ。
「…今の私の…知らない…記憶」
リーンは不安しか無かった。
「リーンはリーンだ」
ヒイロがそう言う。
「今、ここに居るのがリーンだ。それで良い」
獣人族の私の家族…。
兄であり、親友でもあるヒイロが側に居てくれて良かった…。
「…その記憶は、物語で言う、前世みたいなモノかもしれないぞ」
ヒイロはそう言って、微笑む。
…少し心を軽くしてくれる。
「…皆にも話そう。リーンの『記憶の図書館』の事を。…少しでも先に進みたいし、もし、リーンの記憶の中にヒントが隠されているのなら、皆で話し合った方が良い」
「…うん。一人で悩むより、その方が気が楽だ」
信じてもらえないかも知れないけれど…。
「…ダグラスは知ってたよな。リーンの…」
少し離れた所で、夕食の下準備をしていたダグラスが、こちらを向く。
「…知っている。昔、村に来たときに、眠りっぱなしで、目覚めないのではないかと、不安になった事がある」
「そんな事も有ったな…」
リーンが熊族の村で、急に枯れ始めた果物の木の原因を探り、土壌改良と、水の流れを変えた事を思い出していると、
「あの時、眠っているリーンの警護をしていた。…おかげで村は助かった」
熊族のダグラスのいた村は、その果物の収穫で生活を支えていたから、死活問題だった。
今は、果物の種類を増やし、ある程度安定した収入を得ていると、聞いている。
「…『記憶の図書館』に、どうすれば枯れないか、書いてあったのか?」
「…映像だよ。同じような現象が起こった場所があって、その原因を調べ、改善していったのを見ていた…」
「「…。」」
「だから、それを伝えた…だけ…」
それが、前の、私の記憶なのかも知れないけれど…。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる