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滅び行く大地
リーンの記憶
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ヒイロ達と川沿いに登り始め、かつて、道だっただろう跡を見つけた。
草が生え、樹木が繁り、倒木があって、なかなか前には進めなかったが、確実に整備された道だった。
この道はどこまで続いているのだろう。
そんなことを思いながら歩き続け、三日目に小さな滝と泉が姿を表した。
泉はそれほど大きくはないが、滝から流れ出る水が、泉に注がれ、泉には周囲を囲むように大きな石があり、水が流れるように並べられ、まるで石橋のようになっていた。
その石の隙間から流れ出る泉の水が、今、上ってきた川に流れ込んでいる。
「完全に人工的に作られたものだな」
ヒイロがそう言うと、
「すごく綺麗な場所…」
アレクは呆然とその滝を見ている。
流れてくる水は透明度も高く、時折水飛沫が風にのってこの場所まで届いてくる。
「ココは何か神聖な場所なのかも知れませんね…」
スーサーが水に手を入れ、水質を見る。
「…。」
リーンは、…目を見張って、動けないていた。
…ココも知っている。
ここは、御祓の場所…。
水霊と…遊んでいた…水場…。
初めて来たはずなのに、何で?
『記憶の図書館』で、見ただけでないのか?
…もし、あれが真実ならば…。
「ヒイロ…」
「どうした?」
ヒイロが心配そうに、リーンの顔を覗き込んでくる。
「…この滝の後ろに…道が続いていて、洞窟がある」
ヒイロはハッとして、リーンを見てくる。
「ソコに…居た…記憶が…ある…」
もう、それが、自分のモノか、『記憶の図書館』のモノなのかが、分からなくなってきた。
「…行ってみよう。…それが有るのならば、皆にも、リーンの『記憶の図書館』の事を話そう」
「…うん」
リーンは頷いていた。
もう、一人では…抱えきれないくらい、混乱してくる…。
…これは…なに…?
ヒイロは草に覆われて、見えなくなっていた細い道を見つけ、滝の裏側に続く道を進んでいった。
リーンもそれに続き、他のメンバーも黙って付いてきた。
道は平らな石が並べられ、水で濡れて滑りやすくなっていたが、明らかにこれも人工的に作られたものだ。
水飛沫を少し浴びながら、進んでいくと、滝を裏側から見ることが出来て、少し抉れて広くなっていた。
そして、その奥に洞窟があった。
「「…。」」
中に進んでいくと、かつて、誰かが住んでいたのであろう、な残りの布の切れ端や、朽ち果てた木材が散乱していた。
「…誰かが住んでいたんだな」
セスがそう呟くと、ヒイロが、
「今日はココへ泊まろう。少し早いが、夜営の準備をしよう」
「…そうですね。野宿よりましです」
「やった!今日はココまで!」
アレクはさっさと荷物を下ろして、洞窟を出ていった。
「あんまり遠くに行ってはダメですよ!」
「は~い」
アレクは上空へ飛び出して行った。
羽を伸ばしたいのだろう。
ダグラスは夜営の天幕を張り、夕食の下準備を始めた。
セスとスーサーは、薪を拾いに、洞窟を出て行った。
「「…。」」
ヒイロとリーンは、荷物を下ろして敷物を敷き、顔を見合わせた。
「…どう思う」
「…リーン。『記憶の図書館』事態が、リーンの過去の記憶なのかもしれない」
ヒイロは、リーンも思っていたことを口にする。
「…そんな気がしてきた…」
リーンは子供の頃と、言うものが無い。
気がついた時、森の魔素の強い聖域に存在していた。
それ以前の記憶が無いのだ。
「…今の私の…知らない…記憶」
リーンは不安しか無かった。
「リーンはリーンだ」
ヒイロがそう言う。
「今、ここに居るのがリーンだ。それで良い」
獣人族の私の家族…。
兄であり、親友でもあるヒイロが側に居てくれて良かった…。
「…その記憶は、物語で言う、前世みたいなモノかもしれないぞ」
ヒイロはそう言って、微笑む。
…少し心を軽くしてくれる。
「…皆にも話そう。リーンの『記憶の図書館』の事を。…少しでも先に進みたいし、もし、リーンの記憶の中にヒントが隠されているのなら、皆で話し合った方が良い」
「…うん。一人で悩むより、その方が気が楽だ」
信じてもらえないかも知れないけれど…。
「…ダグラスは知ってたよな。リーンの…」
少し離れた所で、夕食の下準備をしていたダグラスが、こちらを向く。
「…知っている。昔、村に来たときに、眠りっぱなしで、目覚めないのではないかと、不安になった事がある」
「そんな事も有ったな…」
リーンが熊族の村で、急に枯れ始めた果物の木の原因を探り、土壌改良と、水の流れを変えた事を思い出していると、
「あの時、眠っているリーンの警護をしていた。…おかげで村は助かった」
熊族のダグラスのいた村は、その果物の収穫で生活を支えていたから、死活問題だった。
今は、果物の種類を増やし、ある程度安定した収入を得ていると、聞いている。
「…『記憶の図書館』に、どうすれば枯れないか、書いてあったのか?」
「…映像だよ。同じような現象が起こった場所があって、その原因を調べ、改善していったのを見ていた…」
「「…。」」
「だから、それを伝えた…だけ…」
それが、前の、私の記憶なのかも知れないけれど…。
草が生え、樹木が繁り、倒木があって、なかなか前には進めなかったが、確実に整備された道だった。
この道はどこまで続いているのだろう。
そんなことを思いながら歩き続け、三日目に小さな滝と泉が姿を表した。
泉はそれほど大きくはないが、滝から流れ出る水が、泉に注がれ、泉には周囲を囲むように大きな石があり、水が流れるように並べられ、まるで石橋のようになっていた。
その石の隙間から流れ出る泉の水が、今、上ってきた川に流れ込んでいる。
「完全に人工的に作られたものだな」
ヒイロがそう言うと、
「すごく綺麗な場所…」
アレクは呆然とその滝を見ている。
流れてくる水は透明度も高く、時折水飛沫が風にのってこの場所まで届いてくる。
「ココは何か神聖な場所なのかも知れませんね…」
スーサーが水に手を入れ、水質を見る。
「…。」
リーンは、…目を見張って、動けないていた。
…ココも知っている。
ここは、御祓の場所…。
水霊と…遊んでいた…水場…。
初めて来たはずなのに、何で?
『記憶の図書館』で、見ただけでないのか?
…もし、あれが真実ならば…。
「ヒイロ…」
「どうした?」
ヒイロが心配そうに、リーンの顔を覗き込んでくる。
「…この滝の後ろに…道が続いていて、洞窟がある」
ヒイロはハッとして、リーンを見てくる。
「ソコに…居た…記憶が…ある…」
もう、それが、自分のモノか、『記憶の図書館』のモノなのかが、分からなくなってきた。
「…行ってみよう。…それが有るのならば、皆にも、リーンの『記憶の図書館』の事を話そう」
「…うん」
リーンは頷いていた。
もう、一人では…抱えきれないくらい、混乱してくる…。
…これは…なに…?
ヒイロは草に覆われて、見えなくなっていた細い道を見つけ、滝の裏側に続く道を進んでいった。
リーンもそれに続き、他のメンバーも黙って付いてきた。
道は平らな石が並べられ、水で濡れて滑りやすくなっていたが、明らかにこれも人工的に作られたものだ。
水飛沫を少し浴びながら、進んでいくと、滝を裏側から見ることが出来て、少し抉れて広くなっていた。
そして、その奥に洞窟があった。
「「…。」」
中に進んでいくと、かつて、誰かが住んでいたのであろう、な残りの布の切れ端や、朽ち果てた木材が散乱していた。
「…誰かが住んでいたんだな」
セスがそう呟くと、ヒイロが、
「今日はココへ泊まろう。少し早いが、夜営の準備をしよう」
「…そうですね。野宿よりましです」
「やった!今日はココまで!」
アレクはさっさと荷物を下ろして、洞窟を出ていった。
「あんまり遠くに行ってはダメですよ!」
「は~い」
アレクは上空へ飛び出して行った。
羽を伸ばしたいのだろう。
ダグラスは夜営の天幕を張り、夕食の下準備を始めた。
セスとスーサーは、薪を拾いに、洞窟を出て行った。
「「…。」」
ヒイロとリーンは、荷物を下ろして敷物を敷き、顔を見合わせた。
「…どう思う」
「…リーン。『記憶の図書館』事態が、リーンの過去の記憶なのかもしれない」
ヒイロは、リーンも思っていたことを口にする。
「…そんな気がしてきた…」
リーンは子供の頃と、言うものが無い。
気がついた時、森の魔素の強い聖域に存在していた。
それ以前の記憶が無いのだ。
「…今の私の…知らない…記憶」
リーンは不安しか無かった。
「リーンはリーンだ」
ヒイロがそう言う。
「今、ここに居るのがリーンだ。それで良い」
獣人族の私の家族…。
兄であり、親友でもあるヒイロが側に居てくれて良かった…。
「…その記憶は、物語で言う、前世みたいなモノかもしれないぞ」
ヒイロはそう言って、微笑む。
…少し心を軽くしてくれる。
「…皆にも話そう。リーンの『記憶の図書館』の事を。…少しでも先に進みたいし、もし、リーンの記憶の中にヒントが隠されているのなら、皆で話し合った方が良い」
「…うん。一人で悩むより、その方が気が楽だ」
信じてもらえないかも知れないけれど…。
「…ダグラスは知ってたよな。リーンの…」
少し離れた所で、夕食の下準備をしていたダグラスが、こちらを向く。
「…知っている。昔、村に来たときに、眠りっぱなしで、目覚めないのではないかと、不安になった事がある」
「そんな事も有ったな…」
リーンが熊族の村で、急に枯れ始めた果物の木の原因を探り、土壌改良と、水の流れを変えた事を思い出していると、
「あの時、眠っているリーンの警護をしていた。…おかげで村は助かった」
熊族のダグラスのいた村は、その果物の収穫で生活を支えていたから、死活問題だった。
今は、果物の種類を増やし、ある程度安定した収入を得ていると、聞いている。
「…『記憶の図書館』に、どうすれば枯れないか、書いてあったのか?」
「…映像だよ。同じような現象が起こった場所があって、その原因を調べ、改善していったのを見ていた…」
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