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滅び行く大地
始まりの『アルファ』
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転移魔法で呼び寄せた山小屋に、滞在四日目。
湖周辺の簡単な地図が出来ていた。
この湖に流れ込んでいる、山からの川は大きく分けて三ケ所。
その内のどれかが、当たりかもしれないし、どれでも無いかもしれない。
明日には、移動の魔方陣を貼り付け終わり、グオルクの本部と直接往き来出来るよう道が出来る。
そうすれば、ここの調査は別のグループに任せて、次の道へ進む。
憶測だが、この湖には、『人魚の湖』みたいな集落が三ケ所有ったと想定される。
それも、山に続く川の入江付近に、住宅跡が集中していた。
ココには、有効な植物や果物が育っていて、ココに暮らしていた者達が育て、放置され、そのまま野生化して多くの実を付けていた。
湖にも元、船乗り場だったのだろう、石垣が組まれている場所が有った。
湖の水質を調べていたスーサーによれば、魚が生息しているので、魚を捕って食していた可能性もあるとの事だ。
今の現状で分かっていることは、それくらいだ。
後は後続が調べてくれるだろう。
どの川を登って行くか…。
…なぜかそれは最初から決まっていた。
今いる山小屋の側を流れる川だ。
川を見れば、水量が少し減っているのは確実だが、それだけでなく、記憶の中に、ハッキリと見たことがある川だからだ。
ヒイロにはその事を告げた。
『記憶の図書館』で見たことが、有ると…。
この上に人々が、登って行くのを見ていると…。
ヒイロにはそれで伝わった。
他のメンバーは付き合いが浅いから、なんの事かは知らない。
…行き先は決まった。
もしかしたら、かつての道の跡が残っているかもしれない。
翌日。
移動魔法をグオルクと繋げ、魔方陣から、引き継ぎの六人がやって来た。
「…綺麗な所ですね」
「湖に魚もいて、土も肥えているなんて、いい土地ですね」
それぞれの担当と、全体の状況を説明する。
「住宅が有った集落跡を調査します。なぜ、これだけ豊かな地を離れたのか、気になりますから」
「そうだな、書物とかが出てくると少しは分かりそうだが…」
『記憶の図書館』に誰かを連れてはいけないから、調べる事は出来ない。
…助言するだけが、精一杯だ。
「俺達は次へ進む。…この山小屋を始まりの『アルファ』と名付けよう」
ヒイロがそう言って、山小屋に名前をつけた。
これから増えていく山小屋に、分かりやすい名前があった方が、管理もしやすい。
「そうだね。名前があった方が分かりやすい」
「そうですね。本部にも連絡しておきます。」
その日一日は、引き継ぎと、気付いたこと、疑問に思ったことを話し合った。
「…柵を作ったが、大型の獣が居ない」
ダグラスがそう言い出した。
「これだけ実がなるのだから、居てもおかしくないのに、小動物しか居ない…」
「…近寄らせないように、魔法が掛かっているのか?」
「そうかもしれないね」
小動物を狙って大型の動物が居てもおかしくないのだが、ココは食物連鎖から外れて、小動物がたくさん生息していた。
だから、食事には困らなかったが…。
「と、なると、ココからどこかに繋がっている道が有るかもしれないな」
「上に上がる道は、この側の川沿いに一つ有る。…降りる道がどこかに有るかも…」
リーンがそう言うと、ヒイロがチラリとこちらを見てきた。
『記憶の図書館』に行って、探してきてもいいが、時間がかかる。
今は、上へ向かうしかない。
優秀な彼らなら、調査をすれば見つけることが出来るだろう。
「降りる道か…」
「人族のカザンナ王国とか、ギザ王国とかに繋がっているかもしれないな」
「そもそも、ココには住んでいたのが、人族なのか獣人族なのかって事も分からないからな…」
「ソレ以外の、別の種族が、居たのかもしれないしな…」
これだけの人数が集まると、…想像は豊かだ。
違う、いろんな視点から、見ることが出来る。
今後が楽しみだ。
今夜でしばらくベッドとはお別れだ。
リーン達はベッドで眠り、後続の者達は、リビングで毛布を抱えて丸まって眠った。
リーンが目を閉じると、ふと、ルークの顔が浮かんだ。
…まだ、あれから十日ほどしか経っていないのに…。
今までだって、長期間離れていることが多かったのに…。
ルークの事が『好き』だと認めてしまった、からだろうか…。
また、遠くに行くと思うと、無性に会いたくなってしまった。
湖周辺の簡単な地図が出来ていた。
この湖に流れ込んでいる、山からの川は大きく分けて三ケ所。
その内のどれかが、当たりかもしれないし、どれでも無いかもしれない。
明日には、移動の魔方陣を貼り付け終わり、グオルクの本部と直接往き来出来るよう道が出来る。
そうすれば、ここの調査は別のグループに任せて、次の道へ進む。
憶測だが、この湖には、『人魚の湖』みたいな集落が三ケ所有ったと想定される。
それも、山に続く川の入江付近に、住宅跡が集中していた。
ココには、有効な植物や果物が育っていて、ココに暮らしていた者達が育て、放置され、そのまま野生化して多くの実を付けていた。
湖にも元、船乗り場だったのだろう、石垣が組まれている場所が有った。
湖の水質を調べていたスーサーによれば、魚が生息しているので、魚を捕って食していた可能性もあるとの事だ。
今の現状で分かっていることは、それくらいだ。
後は後続が調べてくれるだろう。
どの川を登って行くか…。
…なぜかそれは最初から決まっていた。
今いる山小屋の側を流れる川だ。
川を見れば、水量が少し減っているのは確実だが、それだけでなく、記憶の中に、ハッキリと見たことがある川だからだ。
ヒイロにはその事を告げた。
『記憶の図書館』で見たことが、有ると…。
この上に人々が、登って行くのを見ていると…。
ヒイロにはそれで伝わった。
他のメンバーは付き合いが浅いから、なんの事かは知らない。
…行き先は決まった。
もしかしたら、かつての道の跡が残っているかもしれない。
翌日。
移動魔法をグオルクと繋げ、魔方陣から、引き継ぎの六人がやって来た。
「…綺麗な所ですね」
「湖に魚もいて、土も肥えているなんて、いい土地ですね」
それぞれの担当と、全体の状況を説明する。
「住宅が有った集落跡を調査します。なぜ、これだけ豊かな地を離れたのか、気になりますから」
「そうだな、書物とかが出てくると少しは分かりそうだが…」
『記憶の図書館』に誰かを連れてはいけないから、調べる事は出来ない。
…助言するだけが、精一杯だ。
「俺達は次へ進む。…この山小屋を始まりの『アルファ』と名付けよう」
ヒイロがそう言って、山小屋に名前をつけた。
これから増えていく山小屋に、分かりやすい名前があった方が、管理もしやすい。
「そうだね。名前があった方が分かりやすい」
「そうですね。本部にも連絡しておきます。」
その日一日は、引き継ぎと、気付いたこと、疑問に思ったことを話し合った。
「…柵を作ったが、大型の獣が居ない」
ダグラスがそう言い出した。
「これだけ実がなるのだから、居てもおかしくないのに、小動物しか居ない…」
「…近寄らせないように、魔法が掛かっているのか?」
「そうかもしれないね」
小動物を狙って大型の動物が居てもおかしくないのだが、ココは食物連鎖から外れて、小動物がたくさん生息していた。
だから、食事には困らなかったが…。
「と、なると、ココからどこかに繋がっている道が有るかもしれないな」
「上に上がる道は、この側の川沿いに一つ有る。…降りる道がどこかに有るかも…」
リーンがそう言うと、ヒイロがチラリとこちらを見てきた。
『記憶の図書館』に行って、探してきてもいいが、時間がかかる。
今は、上へ向かうしかない。
優秀な彼らなら、調査をすれば見つけることが出来るだろう。
「降りる道か…」
「人族のカザンナ王国とか、ギザ王国とかに繋がっているかもしれないな」
「そもそも、ココには住んでいたのが、人族なのか獣人族なのかって事も分からないからな…」
「ソレ以外の、別の種族が、居たのかもしれないしな…」
これだけの人数が集まると、…想像は豊かだ。
違う、いろんな視点から、見ることが出来る。
今後が楽しみだ。
今夜でしばらくベッドとはお別れだ。
リーン達はベッドで眠り、後続の者達は、リビングで毛布を抱えて丸まって眠った。
リーンが目を閉じると、ふと、ルークの顔が浮かんだ。
…まだ、あれから十日ほどしか経っていないのに…。
今までだって、長期間離れていることが多かったのに…。
ルークの事が『好き』だと認めてしまった、からだろうか…。
また、遠くに行くと思うと、無性に会いたくなってしまった。
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