156 / 462
滅び行く大地
始まりの『アルファ』
しおりを挟む
転移魔法で呼び寄せた山小屋に、滞在四日目。
湖周辺の簡単な地図が出来ていた。
この湖に流れ込んでいる、山からの川は大きく分けて三ケ所。
その内のどれかが、当たりかもしれないし、どれでも無いかもしれない。
明日には、移動の魔方陣を貼り付け終わり、グオルクの本部と直接往き来出来るよう道が出来る。
そうすれば、ここの調査は別のグループに任せて、次の道へ進む。
憶測だが、この湖には、『人魚の湖』みたいな集落が三ケ所有ったと想定される。
それも、山に続く川の入江付近に、住宅跡が集中していた。
ココには、有効な植物や果物が育っていて、ココに暮らしていた者達が育て、放置され、そのまま野生化して多くの実を付けていた。
湖にも元、船乗り場だったのだろう、石垣が組まれている場所が有った。
湖の水質を調べていたスーサーによれば、魚が生息しているので、魚を捕って食していた可能性もあるとの事だ。
今の現状で分かっていることは、それくらいだ。
後は後続が調べてくれるだろう。
どの川を登って行くか…。
…なぜかそれは最初から決まっていた。
今いる山小屋の側を流れる川だ。
川を見れば、水量が少し減っているのは確実だが、それだけでなく、記憶の中に、ハッキリと見たことがある川だからだ。
ヒイロにはその事を告げた。
『記憶の図書館』で見たことが、有ると…。
この上に人々が、登って行くのを見ていると…。
ヒイロにはそれで伝わった。
他のメンバーは付き合いが浅いから、なんの事かは知らない。
…行き先は決まった。
もしかしたら、かつての道の跡が残っているかもしれない。
翌日。
移動魔法をグオルクと繋げ、魔方陣から、引き継ぎの六人がやって来た。
「…綺麗な所ですね」
「湖に魚もいて、土も肥えているなんて、いい土地ですね」
それぞれの担当と、全体の状況を説明する。
「住宅が有った集落跡を調査します。なぜ、これだけ豊かな地を離れたのか、気になりますから」
「そうだな、書物とかが出てくると少しは分かりそうだが…」
『記憶の図書館』に誰かを連れてはいけないから、調べる事は出来ない。
…助言するだけが、精一杯だ。
「俺達は次へ進む。…この山小屋を始まりの『アルファ』と名付けよう」
ヒイロがそう言って、山小屋に名前をつけた。
これから増えていく山小屋に、分かりやすい名前があった方が、管理もしやすい。
「そうだね。名前があった方が分かりやすい」
「そうですね。本部にも連絡しておきます。」
その日一日は、引き継ぎと、気付いたこと、疑問に思ったことを話し合った。
「…柵を作ったが、大型の獣が居ない」
ダグラスがそう言い出した。
「これだけ実がなるのだから、居てもおかしくないのに、小動物しか居ない…」
「…近寄らせないように、魔法が掛かっているのか?」
「そうかもしれないね」
小動物を狙って大型の動物が居てもおかしくないのだが、ココは食物連鎖から外れて、小動物がたくさん生息していた。
だから、食事には困らなかったが…。
「と、なると、ココからどこかに繋がっている道が有るかもしれないな」
「上に上がる道は、この側の川沿いに一つ有る。…降りる道がどこかに有るかも…」
リーンがそう言うと、ヒイロがチラリとこちらを見てきた。
『記憶の図書館』に行って、探してきてもいいが、時間がかかる。
今は、上へ向かうしかない。
優秀な彼らなら、調査をすれば見つけることが出来るだろう。
「降りる道か…」
「人族のカザンナ王国とか、ギザ王国とかに繋がっているかもしれないな」
「そもそも、ココには住んでいたのが、人族なのか獣人族なのかって事も分からないからな…」
「ソレ以外の、別の種族が、居たのかもしれないしな…」
これだけの人数が集まると、…想像は豊かだ。
違う、いろんな視点から、見ることが出来る。
今後が楽しみだ。
今夜でしばらくベッドとはお別れだ。
リーン達はベッドで眠り、後続の者達は、リビングで毛布を抱えて丸まって眠った。
リーンが目を閉じると、ふと、ルークの顔が浮かんだ。
…まだ、あれから十日ほどしか経っていないのに…。
今までだって、長期間離れていることが多かったのに…。
ルークの事が『好き』だと認めてしまった、からだろうか…。
また、遠くに行くと思うと、無性に会いたくなってしまった。
湖周辺の簡単な地図が出来ていた。
この湖に流れ込んでいる、山からの川は大きく分けて三ケ所。
その内のどれかが、当たりかもしれないし、どれでも無いかもしれない。
明日には、移動の魔方陣を貼り付け終わり、グオルクの本部と直接往き来出来るよう道が出来る。
そうすれば、ここの調査は別のグループに任せて、次の道へ進む。
憶測だが、この湖には、『人魚の湖』みたいな集落が三ケ所有ったと想定される。
それも、山に続く川の入江付近に、住宅跡が集中していた。
ココには、有効な植物や果物が育っていて、ココに暮らしていた者達が育て、放置され、そのまま野生化して多くの実を付けていた。
湖にも元、船乗り場だったのだろう、石垣が組まれている場所が有った。
湖の水質を調べていたスーサーによれば、魚が生息しているので、魚を捕って食していた可能性もあるとの事だ。
今の現状で分かっていることは、それくらいだ。
後は後続が調べてくれるだろう。
どの川を登って行くか…。
…なぜかそれは最初から決まっていた。
今いる山小屋の側を流れる川だ。
川を見れば、水量が少し減っているのは確実だが、それだけでなく、記憶の中に、ハッキリと見たことがある川だからだ。
ヒイロにはその事を告げた。
『記憶の図書館』で見たことが、有ると…。
この上に人々が、登って行くのを見ていると…。
ヒイロにはそれで伝わった。
他のメンバーは付き合いが浅いから、なんの事かは知らない。
…行き先は決まった。
もしかしたら、かつての道の跡が残っているかもしれない。
翌日。
移動魔法をグオルクと繋げ、魔方陣から、引き継ぎの六人がやって来た。
「…綺麗な所ですね」
「湖に魚もいて、土も肥えているなんて、いい土地ですね」
それぞれの担当と、全体の状況を説明する。
「住宅が有った集落跡を調査します。なぜ、これだけ豊かな地を離れたのか、気になりますから」
「そうだな、書物とかが出てくると少しは分かりそうだが…」
『記憶の図書館』に誰かを連れてはいけないから、調べる事は出来ない。
…助言するだけが、精一杯だ。
「俺達は次へ進む。…この山小屋を始まりの『アルファ』と名付けよう」
ヒイロがそう言って、山小屋に名前をつけた。
これから増えていく山小屋に、分かりやすい名前があった方が、管理もしやすい。
「そうだね。名前があった方が分かりやすい」
「そうですね。本部にも連絡しておきます。」
その日一日は、引き継ぎと、気付いたこと、疑問に思ったことを話し合った。
「…柵を作ったが、大型の獣が居ない」
ダグラスがそう言い出した。
「これだけ実がなるのだから、居てもおかしくないのに、小動物しか居ない…」
「…近寄らせないように、魔法が掛かっているのか?」
「そうかもしれないね」
小動物を狙って大型の動物が居てもおかしくないのだが、ココは食物連鎖から外れて、小動物がたくさん生息していた。
だから、食事には困らなかったが…。
「と、なると、ココからどこかに繋がっている道が有るかもしれないな」
「上に上がる道は、この側の川沿いに一つ有る。…降りる道がどこかに有るかも…」
リーンがそう言うと、ヒイロがチラリとこちらを見てきた。
『記憶の図書館』に行って、探してきてもいいが、時間がかかる。
今は、上へ向かうしかない。
優秀な彼らなら、調査をすれば見つけることが出来るだろう。
「降りる道か…」
「人族のカザンナ王国とか、ギザ王国とかに繋がっているかもしれないな」
「そもそも、ココには住んでいたのが、人族なのか獣人族なのかって事も分からないからな…」
「ソレ以外の、別の種族が、居たのかもしれないしな…」
これだけの人数が集まると、…想像は豊かだ。
違う、いろんな視点から、見ることが出来る。
今後が楽しみだ。
今夜でしばらくベッドとはお別れだ。
リーン達はベッドで眠り、後続の者達は、リビングで毛布を抱えて丸まって眠った。
リーンが目を閉じると、ふと、ルークの顔が浮かんだ。
…まだ、あれから十日ほどしか経っていないのに…。
今までだって、長期間離れていることが多かったのに…。
ルークの事が『好き』だと認めてしまった、からだろうか…。
また、遠くに行くと思うと、無性に会いたくなってしまった。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる