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蜜月
ヒイロの職場
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町の中心に来ると、ざわめきが溢れていた。
人族も、獣人族も変わらない…。
商店街があり、野菜や果物、日用品など、いろんな物が売られていた。
ここまで来ると、獣人でも、いろんな種族が溢れていて、気にしなくなるのも分かる気がした。
商店街を抜け、少し静かな場所に出ると、重厚な雰囲気の館のような建物が見えてきた。
中に入り受付を済ませると、リーンはその建物の奥へと入っていった。
「ここは?」
「ヒイロの職場。…人族で言うところの、役所?町を統括している場所だよ」
「…。」
そう言えば、この町の一族がどうとか言っていたな…。
リーンに連れられて奥の部屋に入っていくと、山積みにされた書類の中で、チイと同じ豹の耳が、チラリと見えた。
「ヒイロ。まだ、仕事、終わらないの?」
リーンが声をかけると、ガバリと顔が上がった。
「リーン!」
豹の族の金髪の、恰幅の良い青年だ。
どちらかと言えば、ガーディに近い体格だが、瞬発力が有りそうなしなやかさも持っている。
「…魔力の番を連れてきたのか…」
「そうだよ。会っておかないと、行き違いになりそうな気がして…」
「…。」
リーンの意味は分からないが、彼には何か分かったのかもしれない。
苦笑いして、こちらを向く。
「ヒイロだ。リーンの兄弟のような者だ」
「ルークです。…この書類の山は…」
ルークは側に有るものを一枚手に取り見ると、貯水槽の工事現場の場所の見積りと、図面が簡単に書かれていた。
「この町の、修繕や新手な貯水槽の計画の書類やら…」
「…一人でこれを?」
かなりの量がある。
「いつもなら、補佐が手伝ってくれるが、今、休暇中で…」
ルークはため息をついた。
今日の夜は、ヒイロとチイの家族と一緒に食事をする予定だが、この分では帰りが遅くなりそうだ。
見た感じ、自分が決裁している書類と似たり寄ったり。
これならば手伝えるか…。
「独断で良いなら、急ぎの物と、後回しでも良いものと分けるが…」
ヒイロの目がキラリと光る。
「ルーク?」
「…チイさんと、ルナちゃんが家で待っているんだろ。それに夕食一緒に食べるって言ってたし…。気持ちは分からないでも無いからな…」
ルーク自身も時折、カザナ街の書類の山と格闘している。
優秀な補佐が何人もいるから、最小限で済んでいるのだが…。
ヒイロが期待に満ちた目でこちらを見てくる。
リーンが肩をすくめ、ため息を付いた。
「分かったよ…」
ルークはリーンの承諾を得て、ヒイロの書類の仕分けを始めた。
「その代わり、2時間だけ!!…まだ、町の散策に行ってないし…」
リーンが寂しそうに言う。
…ああ。いわゆるデートと言うものか…。
ルークはアオに以前言われたことを思い出していた。
『リーンさんと一緒に買い物をしたり、食事をしたりする時間を作ってあげてください。いつ、長期間、会えなくなるか分からないんですよ!!』
…そうだ。
今は、こうして側にいてくれるが、この後、長期調査の為に離ればなれになる。
だから一緒にいる時間を増やして、こうして獣人の町まで来たのに…。
「…分かったよ。俺もリーンと一緒に散策にしたい」
そう言って微笑むと、物凄いスピードで、別のテーブルに書類分けを始めた。
視界に、リーンが照れ臭そうに笑うのが見え、ルークはドキドキした。
人族も、獣人族も変わらない…。
商店街があり、野菜や果物、日用品など、いろんな物が売られていた。
ここまで来ると、獣人でも、いろんな種族が溢れていて、気にしなくなるのも分かる気がした。
商店街を抜け、少し静かな場所に出ると、重厚な雰囲気の館のような建物が見えてきた。
中に入り受付を済ませると、リーンはその建物の奥へと入っていった。
「ここは?」
「ヒイロの職場。…人族で言うところの、役所?町を統括している場所だよ」
「…。」
そう言えば、この町の一族がどうとか言っていたな…。
リーンに連れられて奥の部屋に入っていくと、山積みにされた書類の中で、チイと同じ豹の耳が、チラリと見えた。
「ヒイロ。まだ、仕事、終わらないの?」
リーンが声をかけると、ガバリと顔が上がった。
「リーン!」
豹の族の金髪の、恰幅の良い青年だ。
どちらかと言えば、ガーディに近い体格だが、瞬発力が有りそうなしなやかさも持っている。
「…魔力の番を連れてきたのか…」
「そうだよ。会っておかないと、行き違いになりそうな気がして…」
「…。」
リーンの意味は分からないが、彼には何か分かったのかもしれない。
苦笑いして、こちらを向く。
「ヒイロだ。リーンの兄弟のような者だ」
「ルークです。…この書類の山は…」
ルークは側に有るものを一枚手に取り見ると、貯水槽の工事現場の場所の見積りと、図面が簡単に書かれていた。
「この町の、修繕や新手な貯水槽の計画の書類やら…」
「…一人でこれを?」
かなりの量がある。
「いつもなら、補佐が手伝ってくれるが、今、休暇中で…」
ルークはため息をついた。
今日の夜は、ヒイロとチイの家族と一緒に食事をする予定だが、この分では帰りが遅くなりそうだ。
見た感じ、自分が決裁している書類と似たり寄ったり。
これならば手伝えるか…。
「独断で良いなら、急ぎの物と、後回しでも良いものと分けるが…」
ヒイロの目がキラリと光る。
「ルーク?」
「…チイさんと、ルナちゃんが家で待っているんだろ。それに夕食一緒に食べるって言ってたし…。気持ちは分からないでも無いからな…」
ルーク自身も時折、カザナ街の書類の山と格闘している。
優秀な補佐が何人もいるから、最小限で済んでいるのだが…。
ヒイロが期待に満ちた目でこちらを見てくる。
リーンが肩をすくめ、ため息を付いた。
「分かったよ…」
ルークはリーンの承諾を得て、ヒイロの書類の仕分けを始めた。
「その代わり、2時間だけ!!…まだ、町の散策に行ってないし…」
リーンが寂しそうに言う。
…ああ。いわゆるデートと言うものか…。
ルークはアオに以前言われたことを思い出していた。
『リーンさんと一緒に買い物をしたり、食事をしたりする時間を作ってあげてください。いつ、長期間、会えなくなるか分からないんですよ!!』
…そうだ。
今は、こうして側にいてくれるが、この後、長期調査の為に離ればなれになる。
だから一緒にいる時間を増やして、こうして獣人の町まで来たのに…。
「…分かったよ。俺もリーンと一緒に散策にしたい」
そう言って微笑むと、物凄いスピードで、別のテーブルに書類分けを始めた。
視界に、リーンが照れ臭そうに笑うのが見え、ルークはドキドキした。
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