神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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蜜月

小さな魔法

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 ジーンとユーリの誕生日は賑やかだった。
 ルークの仲間達、アオ、カズキ、ガーディ、ジェスが揃い、キリトと、第一王子の妃サラ、その息子、ロバートも来ていた。
 以前は訓練生もいたのだか、王族が来るのなら俺たちは…と、遠慮してしまった。
 まあ、緊張して、美味しい料理を味わえないだろうし…。
 ジーンはシンプルなシルバー色のジャケットを着て、リーン譲りの黒髪に映え、夜の月を思わせる落ち着きさだ。
 ユーリは華やかなグリーンのドレスを着て、ルーク譲りの金髪が映え、太陽を思わせる賑やかさだ。
 この頃になると、性格もはっきりしていた。
 ジーンは、おとなしく、人見知りをしていつもユーリの後ろに隠れている。
 ユーリは好奇心旺盛で、『これ何』攻撃が各地で繰り出されている。
 そこはルーク譲りなのだろう、と、ジェスが言っていた。
 ジェスはルークの幼馴染みで、親が王城に出入りしている遠い親族になるらしく、同じ学校に通っていたらしい。
 だから、王族の『移動』をするとき、よく呼ばれて行くのだろう。
 学校か…。
 リーンは学校と言うものに行った事がない。
 たくさんの子供達が集められ、基礎知識を教わる場所だと言うことは知っている。
 能力に合わせて、専門の授業があり、もてる能力を伸ばし、苦手な科目は最低限度、覚える…だっただろうか…。
 その辺りは分からないので、ルークに任せてある。
 人族として、王族として、学ばなくてはいけないことを教えていくだろう。
 …私の生い立ちが特殊なのだ。
「リーン。ユーリが覚えたての花の魔法を、してくれるみたいだぞ」
 椅子に座って、物思いにふけっていたリーンをルークが呼びに来る。
 出会った頃に比べると、少し貫禄が付いてきた。
 魔法が使えるようになって、気持ち的にも自信がついたからだと思う。
 ルークの封じられていた魔力は、子供達の成長と共に、戻ってきていた。
 今では、基本的な全ての魔法を使うことが出来る。
 特化したのは『炎』、私と正反対だ。
 だから、いろんな面で相性が良いのかもしれないけれど。
「リーン。お父様、見ててね」
 ユーリに声をかけられ、慌ててユーリを囲むように見守る大人達の輪に加わる。 
「『お花いっぱい』」
 ユーリがそう言うと、屋敷の庭園に咲いているバラの花がポンポンと、五つその場に現れた。
「おおーつ」
 大人達はそれを見て、歓声を上げる。
「すごいぞユーリ!」
「出現できたぞ!」
 エヘヘっと、嬉しそうにユーリは笑う。
「次、ぼく!」
 そう言ってジーンが、ユーリの出現させたバラの花に触る。
「『お花ひらひら』」
 ジーンがそう言うと、バラの花が舞い上がり、ひらひらと花びらを風に乗せて降らせた。
「おおーつ」
 大人達はまた、歓声を上げる。
「綺麗だね」
 リーンがそう言うと、ジーンもエヘヘと嬉しそうに笑う。
 子供達も、少しづつ魔法が使えるようになっているが、魔力は抑制してある。
 心配した通り、魔力が強いのだ。
 その為、安定するまで、屋敷の敷地から出せなかったのだ。
 今は、魔法石のペンダントを付けさせ、屋敷の外にも出かけている。
 少しづつ、魔法を使えるようになって、魔力を制御できるようになってくれば、抑制しなくてもよくなるだろう。
 それまでは、様子を見るしかない。
 
 早く大きくなって欲しいような、まだ、このまま、無邪気に笑っていて欲しいような…複雑な気持ちだった。

 


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