神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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蜜月

カザナの小屋

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 カザンナ王国の、カザナお屋敷の小屋の寝室には、獣人の町グオルクへの直通の魔方陣が張り付けてある。
 普段は封印して、使えないようにしてあるが、魔力をほとんど使わず、簡単には移動できる。
 それは、誰にも言っていない。
 言ったら、ルークや子供達が、付いて来てしまいそうだから…。
 移動用の魔方陣は、主要な場所に張り付けてある。
 だから、魔方陣から出たとき、目の前に、ベットで眠るジーンとユーリがいるとは思わなかった。
 二人はもうすぐ三歳になる。
 気持ち良さそうに手足を伸ばして、ベットですやすやとお昼寝をしていた。
 思わず笑みが浮かぶ。
 ガチャリと音がして、寝室の扉が開いた。
「…起きた…リーン!」
 扉を開けたのは、獣人のキリトだった。
 産まれた時から子供達の守役をしていて、長い時間、子供達と一緒に居てくれ、私より懐いているのではないだろうか。
「しーっ」
 驚くキリトに、微笑みかけた。
「…。」
 リーンはキリトと寝室を出て、隣の部屋に行き、そっと扉を閉め、ソファーに座り、キリトを見上げると、キリトはため息をついて、質問してきた。
「あの魔方陣は、封じられていたのでは…」
 やっぱり魔方陣には気付いていたんだ。
「そうだよ。…当分グオルクの私の部屋に、繋がったままにしておくから、何かあったら使って…」
 きっと家に、チイはいるだろうから、緊急用に行き来して連絡が取れる。
「…。いつまで、ここに居れるんだ?」
「しばらくは居るよ」
 子供達の誕生日と、それから少しは…。
 一ヶ月後の満月まで…。
「…そして、しばらく帰れないのか?」
「…そうだね…」
 察しの良いキリトには隠し事は出来ない。
 きっとルークにも、分かってしまうだろう。
 …今後の事が有るから、現状を話して措いた方が、安全なのかも知れない。
 近いうちに、皆を集めて話をしよう。
「ヒイロ達と、ちょっと遠くに行く…。その前の、休暇だよ」
「…。」
 急に寝室の扉が開いた。
「…キリ…ト…?」
 寝ぼけたジーンが目を擦りながら、扉の向こうに立っていた。
「…リーン…?」
 ジーンの視線がリーンの前で止まる。
「まだ、お昼寝の途中だろ。…一緒に寝ようか?」
「うん!」
 ジーンは目を輝かせ、リーンを見てくる。
 リーンはソファーから立ち上がり、上着を脱ぎ、ソファーに置くと寝室に向かう。
「お昼寝しよう」
 リーンは微笑みながらジーンの頭を撫でて、共にベットにもぐ仕込み、ユーリを起こさないように横になった。
 ジーンは嬉しそうにリーンの腕の中に潜り込む。
「さあ、目を閉じて…。起きたら一緒に、おやつを食べよう」
 リーンは目を閉じたジーンの髪を撫でる。
 しばらくすると、ジーンの寝息が聞こえてきて、リーンも一緒に目を閉じた。
 可愛いな…。
 この子達の未来の為にも、原因を突き止めなくてはいけない。
 たとえ時間がかかっても…。
 寂しい思いをさせてしまっても…。
 大切な人達の生活を守るために…。



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