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カザンナ王国
キリトの子守り 2
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屋敷を離れ、離宮に来ると、また、勝手が違って大変だった。
連絡は伝わっていたが、屋敷のように気楽さはなく、始終、気を抜けなかった。
ルーク王子、御一行様の使用する部屋は三部屋。
説明を受けながら、使い方、使用する物、食事をする場所など、彼らが来るまでに覚えることはたくさん有った。
ルークが、使い勝手と場所を把握して欲しい、と、言っていた意味が分かった気がする。
キリトの部屋は、空いていた使用人部屋を借りた。
屋敷の部屋より広かったが、慣れないので落ち着きはしなかった。
数日後。
ルークがリーンと子供達を家族に会わせるため、離宮に来ると連絡が入った。
離宮内は慌ただしくなったが、俺はリーンと子供達に会えるのが楽しみだった。
…驚くだろうか。
ルーク王子、御一行様がたどり着いたのは、まだ少し明るい夕方だった。
リーンとルーク、ジーンはジェスに抱っこされ、ユーリはガーディに抱っこされて離宮内に入ってきた。
離宮の入口では執事達が出迎え、俺は中の広場で待っていて、リーン達を出迎えた。
「お待ちしておりました」
「キリト!」
穏やかに微笑んで出向かえると、リーンは目を丸くして驚いていた。
「ルーク!?」
ルークは楽しそうに微笑んでいた。
「…見知った者がいた方が安心だろ?一足先に、こっちに来てもらって、場所の把握をしてもらったんだ」
彼もリーンの為に、何が良いかを考えて行動する、良い奴なのだ。
「どうぞこちらへ」
キリトは二階の奥の部屋へと案内して、部屋の中に入っていくと、リーンが声をかけてきた。
「姿を見なかったから、用事があって、どこかに出掛けているのだとは思ったけれど…」
「…俺がリーンの為以外の事に、動くわけ無いだろ」
離宮の人目を気にしなくて良い部屋の中に入り、キリトはいつもの口調で言う。
「…子供達の側から離れなかったが、リーンの為に離宮に行って、身の回りの事をしてあげれるように、して欲しい。と、頼んだんだ」
「そうだったんだ…」
俺にとって『リーンの為に…』が、基準だからな…。
それより…。
「…子供達を風呂に入れようか?と、言うか、久しぶりに入れさせてくれ」
ほんの数日だが、やはり離れていて寂しかった。
後から入ってきたジェスがジーンを降ろし、ガーディがユーリを降ろしてくれ、キリトはしゃがみこんで両手を広げた。
「ジーン、ユーリ。お風呂入ろう」
そう言うと、二人はよちよち歩いて、笑みを浮かべて向かってきてくれた。
嬉しいぞ!ジーン!ユーリ!
二人がキリトの腕の中に到着すると、ギュッと抱き締めて温もりを感じ、両脇に二人を抱えて立ち上がり、バスルームに向かった。
「着替え、よろしく」
夕食が終わり、各自あてがわれた部屋に移動した。
久しぶりに会ったジーンとユーリは、嬉しいことに離れようとせず、一緒に寝ることになって、リーン達の隣の部屋へ連れて行って、大きなベッドに三人で寝転がった。
移動の疲れか、子供達は直ぐに寝入ってしまい、俺も寝かかった時に、隣の部屋から声が聞こえてきた。
「ああっ…んっ…あっあっ…んんっ…」
「……。」
二人とも、俺が隣の部屋にいることを忘れているだろう…。
久しぶりに会って、同じ部屋にいればそうなる気はしたが…。
「あああっ…いぃ…そこ…あああっ…あっあっ…ああっ…!!」
リーンの声が響き渡る。
「んっ…」
ジーンが寝返りをうつ。
おいおい、せっかく寝ているのに目が覚めてしまうだろ…。
キリトは仕方なく起き上がって、隣の部屋の扉をコンコンと、ノックした。
「チビ達が起きるから、もう少し、静かにヤってくれ…」
分かってくれたか?
部屋の中からクスクスと笑い声が聞こえた。
少しは、気を付けるだろう…。
キリトは部屋に戻り、ジーンとユーリの間に入って、川の字になって目を閉じた。
リーン達はきらびやかな服を着て、昼過ぎに王城に向かっていった。
今夜も泊まるので、帰ってくるまでに、離宮の使用人達と一緒に、部屋の掃除をした。
俺は言われるままに、シーツを替えたり、バスルームの掃除をしたり…。
やることはたくさん有った。
夕食後、リーンとルーク、ジェスとアオが街に出掛けていった。
リーンにカザンナ王国の夜の街を見てもらいたいからだと言っていた。
そうだな…一人では王都の街など歩けない。
きっと迷子になってしまう…。
幸いにも、ガーディとカズキは残ってくれるので、子供達の心配はない。
翌日の昼過ぎ、リーン達はお屋敷に向かって帰っていった。
本当は一緒に帰りたかったが、後始末が残っていた。
部屋の掃除と忘れ物がないかを確認して、遅れての出発だ。
そろそろ離宮を離れて帰ろうと、執事に挨拶をしていた時だった。
通信魔法が入り、呼ばれて行くと、苦笑いしたルークが『急いでお休みどころまで来て欲しい』と、言うのだ。
「何か有ったんですか?」
「…子供達が…泣き止まない…」
リーンが呼ばれて、森に入ったんだ!
キリトは直ぐに分かった。
「緊急用の魔法石を使って良いから…」
キリトは緊急用の魔法石をルークからもらっていた。
もし、何かあったとき、自分の持つ魔力だけでは対応仕切れない場合、使って良いと。
以前、リーンが加工してくれた魔法石なので、お守りみたいに持っていろと、渡されたものだった。
「分かりました」
キリトは急いで荷物を持って、ここへ来るとき一度寄ったお休み処まで『移動』の魔法を使った。
連絡は伝わっていたが、屋敷のように気楽さはなく、始終、気を抜けなかった。
ルーク王子、御一行様の使用する部屋は三部屋。
説明を受けながら、使い方、使用する物、食事をする場所など、彼らが来るまでに覚えることはたくさん有った。
ルークが、使い勝手と場所を把握して欲しい、と、言っていた意味が分かった気がする。
キリトの部屋は、空いていた使用人部屋を借りた。
屋敷の部屋より広かったが、慣れないので落ち着きはしなかった。
数日後。
ルークがリーンと子供達を家族に会わせるため、離宮に来ると連絡が入った。
離宮内は慌ただしくなったが、俺はリーンと子供達に会えるのが楽しみだった。
…驚くだろうか。
ルーク王子、御一行様がたどり着いたのは、まだ少し明るい夕方だった。
リーンとルーク、ジーンはジェスに抱っこされ、ユーリはガーディに抱っこされて離宮内に入ってきた。
離宮の入口では執事達が出迎え、俺は中の広場で待っていて、リーン達を出迎えた。
「お待ちしておりました」
「キリト!」
穏やかに微笑んで出向かえると、リーンは目を丸くして驚いていた。
「ルーク!?」
ルークは楽しそうに微笑んでいた。
「…見知った者がいた方が安心だろ?一足先に、こっちに来てもらって、場所の把握をしてもらったんだ」
彼もリーンの為に、何が良いかを考えて行動する、良い奴なのだ。
「どうぞこちらへ」
キリトは二階の奥の部屋へと案内して、部屋の中に入っていくと、リーンが声をかけてきた。
「姿を見なかったから、用事があって、どこかに出掛けているのだとは思ったけれど…」
「…俺がリーンの為以外の事に、動くわけ無いだろ」
離宮の人目を気にしなくて良い部屋の中に入り、キリトはいつもの口調で言う。
「…子供達の側から離れなかったが、リーンの為に離宮に行って、身の回りの事をしてあげれるように、して欲しい。と、頼んだんだ」
「そうだったんだ…」
俺にとって『リーンの為に…』が、基準だからな…。
それより…。
「…子供達を風呂に入れようか?と、言うか、久しぶりに入れさせてくれ」
ほんの数日だが、やはり離れていて寂しかった。
後から入ってきたジェスがジーンを降ろし、ガーディがユーリを降ろしてくれ、キリトはしゃがみこんで両手を広げた。
「ジーン、ユーリ。お風呂入ろう」
そう言うと、二人はよちよち歩いて、笑みを浮かべて向かってきてくれた。
嬉しいぞ!ジーン!ユーリ!
二人がキリトの腕の中に到着すると、ギュッと抱き締めて温もりを感じ、両脇に二人を抱えて立ち上がり、バスルームに向かった。
「着替え、よろしく」
夕食が終わり、各自あてがわれた部屋に移動した。
久しぶりに会ったジーンとユーリは、嬉しいことに離れようとせず、一緒に寝ることになって、リーン達の隣の部屋へ連れて行って、大きなベッドに三人で寝転がった。
移動の疲れか、子供達は直ぐに寝入ってしまい、俺も寝かかった時に、隣の部屋から声が聞こえてきた。
「ああっ…んっ…あっあっ…んんっ…」
「……。」
二人とも、俺が隣の部屋にいることを忘れているだろう…。
久しぶりに会って、同じ部屋にいればそうなる気はしたが…。
「あああっ…いぃ…そこ…あああっ…あっあっ…ああっ…!!」
リーンの声が響き渡る。
「んっ…」
ジーンが寝返りをうつ。
おいおい、せっかく寝ているのに目が覚めてしまうだろ…。
キリトは仕方なく起き上がって、隣の部屋の扉をコンコンと、ノックした。
「チビ達が起きるから、もう少し、静かにヤってくれ…」
分かってくれたか?
部屋の中からクスクスと笑い声が聞こえた。
少しは、気を付けるだろう…。
キリトは部屋に戻り、ジーンとユーリの間に入って、川の字になって目を閉じた。
リーン達はきらびやかな服を着て、昼過ぎに王城に向かっていった。
今夜も泊まるので、帰ってくるまでに、離宮の使用人達と一緒に、部屋の掃除をした。
俺は言われるままに、シーツを替えたり、バスルームの掃除をしたり…。
やることはたくさん有った。
夕食後、リーンとルーク、ジェスとアオが街に出掛けていった。
リーンにカザンナ王国の夜の街を見てもらいたいからだと言っていた。
そうだな…一人では王都の街など歩けない。
きっと迷子になってしまう…。
幸いにも、ガーディとカズキは残ってくれるので、子供達の心配はない。
翌日の昼過ぎ、リーン達はお屋敷に向かって帰っていった。
本当は一緒に帰りたかったが、後始末が残っていた。
部屋の掃除と忘れ物がないかを確認して、遅れての出発だ。
そろそろ離宮を離れて帰ろうと、執事に挨拶をしていた時だった。
通信魔法が入り、呼ばれて行くと、苦笑いしたルークが『急いでお休みどころまで来て欲しい』と、言うのだ。
「何か有ったんですか?」
「…子供達が…泣き止まない…」
リーンが呼ばれて、森に入ったんだ!
キリトは直ぐに分かった。
「緊急用の魔法石を使って良いから…」
キリトは緊急用の魔法石をルークからもらっていた。
もし、何かあったとき、自分の持つ魔力だけでは対応仕切れない場合、使って良いと。
以前、リーンが加工してくれた魔法石なので、お守りみたいに持っていろと、渡されたものだった。
「分かりました」
キリトは急いで荷物を持って、ここへ来るとき一度寄ったお休み処まで『移動』の魔法を使った。
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