神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
138 / 462
カザンナ王国

キリトの子守り 1

しおりを挟む
 ヒイロと共にリーンのもとへ来て、リーンが子供を産み、滞在中の屋敷からいなくなるリーンに頼まれて、子供達の世話を一緒にしていた。
 乳母のメアリーに習って、子供達の抱っこのし方、ミルクの飲ませ方、オムツ、着替え、お風呂など。
 未知の世界だった。
 もともと子供は好きだが、産まれて間もない赤ん坊の世話をするのは、始めてだ。
 交代で夜泣きの赤ん坊をあやしたり、一緒に昼寝したり。
 大変だが、リーンが側にいて、俺には至福の時間だった。

 俺は、この屋敷にとっては外部の人間だ。
 リーンの為にココにいるが、どうしても必要と言うわけではない。
 たが、リーンの身の回りの事をし始めて、一ヶ月が過ぎた頃、『給料だ』と、お金をもらった。
 俺は首輪を付けられた時から、リーンのモノだ。
 一度、外すか?と、言われたが、これがリーンとの繋がりのように思えて、外さないで欲しいと頼んだ。
 だから、リーンの為になることなら、なんでもする。
 だが、なぜ、『給料』をもらわなくてはいけない?
「キリト君は、この屋敷で雇われたんだよ。リーン様の身の回りの事をする、使用人として」
「…。」
 初めは意味が分からなかった。
 雇われれば、外部の人間ではなくなる。
 リーンの側に居るための名目上の、扱いなのだろう。
「だったら俺の部屋、使用人と同じ扱いをしてください」
 『給料』をもらう以上、今の客室を使うことは出来ない。
 しぶしぶ許可が出て、広めの屋根裏部屋に移動した。
 その後、使用人にも獣人がいて、買い物や食事を一緒にするようになり、この屋敷にも馴染んできた頃、リーンが森に入り出した。

 最初は短い時間。
 敷地内の薬草を取りに行って居たらしい。
 次第に、子供達の側に居る時間が減ってきた。
 そろそろなのだと…。
 この屋敷を離れるのだと…感じていた。
 明け方近く、リーンが屋根裏部屋の俺の部屋に来た。
 子供達の事を頼む。と…。
 そして、リーンは屋敷から姿を消した。

 数日は、メアリーと俺もいたし、子供達は気が付かなかったのか、おとなしかった。
 が、急に泣き出したのだ。
 …気が付いてしまったのだろう。
 泣いて、泣きつかれて、眠って、目を覚ますと辺りを見回して、また泣いて…。
 ミルクを飲んで、ふと思い出したかのように、また泣いて…。
 そんな日が、何日も続いた。
 リーンの相手のルークも、ほとんど屋敷には居らず、今まで三人で見てきた双子を、二人で見るのは大変だった。
 メアリーにも家族は居るから、家に帰ってしまうし、夜のほとんどは、俺が側に居た。
 仲良くなった使用人の仲間も手伝ってはくれたが、疲れはてていたのだろう。
 泣き疲れた子供達と一緒に身体を横たえた。
「…俺も…泣きたいよ…」
 そんな弱音が、ポロリと出ていた。
 この声に反応したのか、泣き疲れて眠ったはずのユーリが目を覚まして、頬に触れてきた。
「だーっ…」
 慰められているようで、涙がポロリとこぼれ落ちた。
「…ごめんな。…お前達の両親は忙しくて、…側に居れないんだ…」
 キリトはユーリを抱き締めた。
 すると、ジーンも目を覚まして、キリトの髪の毛に触れてくる。
 寂しく無いよう側に居るから…。
 お前達も側にいてくれ…。
 キリトはジーンも一緒に抱き締め、誓った。
 
 それからは、リーンを探して最初の頃のように、泣き出すことは無くなった。
 たまに子供達の顔を見にリーンが来ても、ほとんど眠っている事が多かったが、気配を感じるのか目を覚まし、甘えて抱きついて、眠ってしまう事もあった。
 
 ルークと一緒にいる、体格の良いガーディと細身のカズキは、屋敷にいるとき、よく子供達と遊んでくれた。
 兄弟が多いらしく、子供の頃から、家でよく赤ん坊の世話をしていたらしい。
 彼らがいるときは、少し休ませてもらった。

 そんなある日、ルークに、離宮に行って欲しいと言われた。
 近々、子供達の誕生日を向かえる。
 それまでにはリーンが戻って来るだろうから、カザンナ王国の王に、父親や家族に、子供達を会わせるため、離宮に行って、内部を把握して欲しい。と、言われた。
 使い勝手がわからない場所に行くから、突然行っても、戸惑うだけだろうし、離宮にいる使用人との接触をなるべく避けたいらしい。
 リーンの事はなるべく秘密裏に進めることになるだろうし、離宮の使用人から余計なことを知られてしまうのも困るからだろう。
 子供達と離れるのは嫌だったが、子供達の世話を出来る、ガーディかカズキがいることを条件にした。が、彼らも隣国との小競り合いを止めに行くらしく、ダメだった。
 だったら、メアリーに屋敷に滞在してもらって、双子達を見てもらえるようにしてくれてば、考えると、条件を出した。
 数日後、メアリーが子供を連れてきても良いのならばと、了解を得た。
 双子達の誕生日を祝えないのは寂しいが、誕生日の三日前、俺は、双子を置いて離宮に向かった。
 その時、初めて、リーンの気持ちがわかった。
 離れたくない、でも、行かなくてはいけない。
 離宮に来たら、遊んでやるからな…。
 そんな思いを胸に、キリトは離宮に向かった。
 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...