神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
134 / 462
カザンナ王国

サラ

しおりを挟む
 翌日。
 昼食を食べ、服を着替えさせられて、豪華な馬車に乗せられて、王城に向かった。
 王城までは、ほんの数分の距離らしく、歩いてでも行けるそうだ。 
 着せられた服は柔らかい絹で出来ていて、シンプルだけど豪華さを演出してくれる。
 子供達に着せられた服にもヒラヒラとレースが付いていたり、飾り石がさりげなく付けられていた。
「…豪華すぎない?」
「…これでも、最小限にしてもらったんだぞ」
「…。」
 水人族の衣装と一緒で、着なれないから、落ち着かない。
「…似合ってるよ」
 ルークはさりげなく囁いてくる。
 そう言うのに、相変わらず慣れなくて、耳を赤くする。
 膝の上にはユーリがフリフリのドレス姿でいて、ルークの膝の上にはジーンが、何処へ行くのかとキョロキョロとしている。 
「子供達の服を選んだのはジェスですよ」
 隣にいるアオが、やはりシルクの柔らかく光沢のある服を着て、そう言ってきた。
「普段、シンプルな服ばかりだから、ユーリにフリフリを着せたかったみたいです」
「こらアオ!告げ口するな!」
 ルークの隣に座るジェスは、もう一つ華やかな服を着て、怒鳴っていた。
 服装が違うだけで、いつもと変わらない二人にリーンは微笑んだ。


 ルークとリーンは双子を連れて、王城の大きな中庭に案内された。
 アオやジェス達は、別の場所へ行く予定らしい。
 中庭は、色とりどりの花が咲き乱れ、休憩用のテーブルとイスが何脚もあり、庭を眺めながらお茶するには、気持ち良さそうだ。
 そう、ルークの家族との対面でなければ、こんな緊張せず、花を楽しめるのに…。
 そう思っていると、ルークの父、カザンナ王国の王。
 顔見知りの第一王子ローレンスと、お妃様と、子供。
 第二王子の確か騎士だと言っていた五人が姿を表した。
「お久しぶりです。父上」
「ああ。やっと連れてきてくれたな…」
「…色々と有りまして…」
 そんなやり取りをルークがしている時、ローレンスのお妃を、どこかで見たような気がした。
 どこでだっただろう…。
「彼が俺の子供を産んでくれたリーン」
 ルークが紹介し始める。
 リーンはペコリと頭を下げる。
「で、この子がジーンで、ユーリです」
 二人は慣れないのか、しがみついたまま、顔を埋めている。
「…家族だけなんだから、もう少し気楽に話しましょう」
 そう言ってきたのは第一王子のローレンス。
「まあ、そうだな…」
 ルークは苦笑いする。 
 そこへ、助け船をだしてくれてのは、第一王子のお妃様だった。
「ローレンスの妃、サラです。こちらが息子のロバート。ほら…」
 彼女がそう言うと、五歳くらいのルークに似た金髪の子供が、モジモジしながらリーンを見上げてくる。
「カザンナ王国第一王子の息子、ロバートです。ようこそお出でくださいました」
 ロバートは緊張した顔で、練習しただろう台詞を一生懸命に話す。
 その声にユーリとジーンが反応して、ロバートの方を向く。
「私達は、お庭を散歩してきますので、ゆっくりとお話なさってください」
 お妃のサラがそう言って、庭園に誘ってくる。
「ルーク。彼女と行ってくるよ」
 そう言うと、ルークはジーンを降ろし、リーンもユーリを降ろすと、しゃがみこんで子供達と視線を合わせる。
「お花、見に行こうか」
 リーンがそう言うと、二人はよちよちと歩きだしたので、リーンは立ち上がり、後を付いていった。
 
 少し先に庭園にいたお妃のサラとロバートは、よちよちと歩く二人を見ていた。
「…可愛い」
「あなたも小さい頃は、あんな感じだったのよ」
「いえ、あの子達の方が可愛いです」
 そんな親子のやり取りが聞こえてきて、リーンは微笑んだ。
 名前を聞いて思い出した。
 彼女は『魔女の森』シラミネの薬師のサラだ。
 あの頃はまだ、少女で、ソフィアと一緒に『物質保管庫』を作ったときに、いた女の子だ。
 どんな縁が有って、お妃になったのかちょっと気になるが…。
 人の事、言えないか…。
 ジーンとユーリが、よちよちとロバートに近付いて、しがみつかれて、ロバートが硬直している。
 自分達より少し大きい子供に会うことがないから、興味深々なのだろう。
「…は、母上。どうすれば良いですか」
 それは、ロバートも一緒らしい。
 王城にいて、子供と接する機会が少ないのかも知れない。
「良い子、良い子と、頭を撫でて上げてください」
 リーンがそう言うと、ぎこちなく、ユーリの頭を撫でる。
 すると、ユーリがロバートの方を見て、満面の笑みを浮かべた。
「は、母上。可愛すぎます」
 ロバートはサラに助けを求める。
「ユーリだけでなくジーンも、撫でて上げて」
 リーンがそういうと、ロバートは意を決して、ジーンの頭も撫でてあげる。
 ジーンはロバートを見上げて、恥ずかしそうに顔をロバートの服に擦り付ける。
「こっちも、可愛すぎます。母上、助けてください」
 ロバートの慌てる姿に、サラとリーンは笑った。


 ロバートは、ジーンとユーリに気に入られ、ロバートの後をよちよちと歩いて付いていく。
 ロバートも、ゆっくりと歩き、二人が来るのを待っている。
 そんな三人を見守りながら、リーンはサラに、声をかけた。
「男性恐怖症は治ったのか?」
 サラが驚いたように、まじまじとリーンを見てくる。
「…リーン様…」
 サラ驚いて目を丸くする。
「…確か…ソフィア様の…確か…男の方…でしたよね…」
「そうなんだ。色々有って…」
 リーンは苦笑いする。
「今、幸せ?」
「はい。ローレンスも優しいし、ロバートも産まれて…。大変ですけど、ローレンスに会えて良かったと思ってます」
 サラは幸せそうに微笑んだ。
「リーン様は、ルーク様と…」
「…ずっとは側に居れない。でも、なるべく側にいると約束したから…。…何かあったら、二人の事、お願いね」
 側に見知った人がいるのは安心だ。
 『魔女の森』出身なら、尚更。
 何かあれば、直ぐにソフィアに連絡が出来る。
 何かある予定は無いが、頼んでおくのに越したことはない。
 いつまで、側にいれるだろうか…。 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして

ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。

処理中です...