神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
132 / 462
カザンナ王国

離宮 *

しおりを挟む
 ルークに起こされて目が覚めると、馬車が止まり、木々で囲まれた、大きなお屋敷の前にいた。
「着いたよ。湯浴みして、夕食にしよう」
 リーンは促され、馬車を降りる。
 ジーンとユーリはすでに馬車から降りて、ガーディとジェスに抱っこされていた。
 目の前にある屋敷は、カザナのお屋敷とは比べ物になら無いくらい大きくて、部屋数もたくさん有りそうだ。
 中に入ると広場があり、左右に階段があって、魔女王の広場を思いださせる。
「お待ちしておりました」
 そう言って出迎えたのは…。
「キリト!」
 灰色がかった黒髪と、鋭い目を持つ狼の獣人のキリトは、使用人の服を着て、穏やかに微笑んで、リーンを出向かえてくれた。
「ルーク!?」
 リーンがルークを見ると、楽しそうに微笑んでいた。
「…見知った者がいた方が安心だろ?一足先に、こっちに来てもらって、場所の把握をしてもらったんだ」
 どこまでも、配慮してくれている。
「どうぞこちらへ」
 キリトに案内されて、二階の奥の部屋へと入っていく。
「姿を見なかったから、用事があって、どこかに出掛けているのだとは思ったけれど…」
「…俺がリーンの為以外の事に、動くわけ無いだろ」
 回りの人目が無くなり、キリトはいつもの口調で言う。
「…子供達の側から離れなかったのに、リーンの為に離宮に行って、身の回りの事をしてあげれるように、して欲しい。と、頼んだんだ」
「そうだったんだ…」
 んっ?て、事はいつかは離宮に来て、王城に連れていくつもりだったんだな…。
 用意周到…なのか…。
 まあ、それも、私や子供達の為なのだから。
 でも、よくキリトを納得させたよな…。
「…子供達を風呂に入れようか?と、言うか、久しぶりに入れさせてくれ」
 リーンも、ルークも笑った。
 子供好きなのは分かっていたが、面倒見が良い。
 後ろに付いてきていたジェスがジーンを降ろし、ガーディがユーリを降ろすと、キリトがしゃがみこんで両手を広げる。
「ジーン、ユーリ。お風呂入ろう」
 そう言うと、二人はよちよち歩いて、笑みを浮かべてキリトのもとに向かう。
 いつも入れてもらっていたんだ…。
 二人がキリトの腕の中に到着すると、キリトはギュッと抱き締めて、両手で二人を抱えて、立ち上がる。
「着替え、よろしく」
 そう言って、部屋のバスルームに消えていった。
 しばらくすると、キャッキャとはしゃぐ子供達の声が聞こえてくる。
「面倒見のいい従者になったな」
 苦笑いしながら、ぼそりとルークが言う。
 嬉しいの反面、自分が風呂に入れたくて、寂しいのかも知れない。
 そんなルークを微笑ましく思った。


 夕食が終わり、各自あてがわれた部屋に移動した。
 ジーンとユーリは久しぶりに会うキリトから離れず、一緒に寝ることになって、隣の部屋へと連れていってくれた。
「…あのさ、気になったんだけど、この部屋に『目』が有るんだけど…これって、防犯用?」
「…分かるのか?」
 リーンはベッドに横たわりながら、視線が気になって仕方がなかった。
「うん。『目』に見られる事に慣れてるけど…。視線を感じる」
「…。」
 この国の離宮に王子がいて、誰かに見られているのは、ちょっと問題かも…。
「壊して良い?」
「良いぞ」
 リーンは起き上がり、そちらに視線を向け、魔力の矢を放つと、パリンとガラスが砕けるような音が響く。
「あっ…」
 リーンは『耳』にも気付き、それも壊す。
 直ぐには修復してこないから、常時監視して作動しているわけではなさそうだ。
 けれど、さっきは視線を感じた。
 リーンはふわりと『風のカーテン』を作り出し、もし『目』が復活しても、見にくいように部屋に魔法をかけた。
「ふぅ…」
 リーンがため息をついて、肩の力を抜くと、ルークに身体が引き寄せられ、ふと、当たり前のように、同じベッドにいる事を意識して、頬が赤く染まった。
「リーン」
 ルークが背後から、首筋に口付けてくる。
「ダメだよ…」
「…明日、対面させるのを緊張している。…眠れる事をしよう」
 甘えるように、そう言って、ルークがリーンの身体をまさぐり始める。
 …実際、昼寝をしたからそんなに眠くはない。
「…んっ…」
 ルークが寝巻きの上からリーンの胸の突起を摘まんできて、身体に痺れが走り、くにくにと動かされ、固くなってきたのを感じる。
 こんなルークを知っているのは私だけだと思ったら、なんか、可愛く見えてしまい、微笑んだ。
「…少しだけ…隣にキリトもいるし…聞こえて…んんっ…」
 早急に頭が引き寄せられ、唇が重なる。
 唇が離されると、寝巻きが肩から引き降ろされ、直接胸の突起に触れながら、背中に口付けてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...