131 / 462
カザンナ王国
噂
しおりを挟む
「…実は、一年前、カザナのお屋敷で子供が産まれたと言う噂が立ちまして…」
アオが言いにくそうに、話し出した。
「それって、ジーンとユーリの事だよね?」
「まあ、カザナのお屋敷で産まれたと、言うことは、ルーク様の子供だと言うことで…」
そうだよね…ルークのお屋敷なんだから…。
「お相手がどんな方なのか、色々と噂が飛び交いまして…」
「…。」
それって、私の事か?
「誕生の正式な発表もないし、結婚や婚約の話も無いし…カズキがルーク様の側に使えているから、何か聞いていないかと、ミズキさんに問い合わせが殺到したり…してまして…」
「…。」
「今日、裏口から入ったのも、近所にルーク様とご一行様が来たのが、分からないようにするためでして…」
その為に、裏口から…。
「来てるのが分かったら、質問攻めにあう可能性が…」
「…。」
…そう言えば、ルークは王子なんだよな…。
ルークの家族に会う…と、思っていたけど、カザンナ王国の王と、王子達に会うって事だよな…。
で、産まれたこの子達は、この国の王子の子供…と、言うことになる。
「…なんか大変な事になってない?」
振り向いてルークに問うと、肩をすくめた。
「今更だろ。…外交的な発表の仕方は、父上や兄上に相談してからだ。…リーンの事を表沙汰にしたくないし…」
「…ごめんね」
私の存在を表沙汰には出来ない。
争いを起こして欲しく無かったら、秘匿とする。
ヒイロ達からも、散々言われてきたこと。
「謝ることではない。…その辺は、父上達も分かってくれると思うが」
ルークがそう言って微笑む。
「それで、最近よく出入りしているリーンが、相手ではないかと…」
アオが続きを話し出す。
まあ、そうなんだけど…。
「いつもフードを被っているので、女性にも見えるし、男性にも見える…可愛らしいかただと、噂が…」
「…。」
「真相を確かめたくても、お屋敷の人間は口が固いし、ましてや、王子のお相手の話になるので、モヤモヤしていると…噂が出てまして…」
「それで、まあ、いい加減、承認をもらわないと、いけなくなった…訳だが…」
ルークは、苦笑いしている。
「なのでミズキさんは、直接リーンにあって、興奮していたのかと」
町中で噂になっている当人と、私と会えたから、なのか…。
「その話はここまでで、おやつにしましょう」
今まで黙っていたジェスが、ジーンを胡座をかいた足の上で遊ばせながら、そう言って話を切り上げさせる。
「まだ、先は長いですから」
「そうだな」
そこへカズキが戻って来た。
「すみません。姉が騒いで…しっかり口止めしておきましたから」
カズキは苦笑いしながらリーンに謝る。
「もういいよ。それより、子供達の食べれるものある?」
「果物を小さくカットして、持ってきますね」
そう言って再び部屋を出ていった。
離宮まで、残りの半分の馬車の中は、遊び疲れた子供達がお昼寝していて、静かだった。
時折寝息と、一人言を話ながら、馬車の揺れにも慣れたのか、全く起きる気配は無かった。
時折、蹴飛ばす毛布をかけ直してあげるくらいで、大人しく寝ていてくれた。
リーンも眠くなって、ルークに膝枕してもらって、うとうとし始める。
「そう言えば、初めてリーンとあった時も、こんな風に膝枕していたな…」
ルークが思い出したかのように、微笑む。
「そうでしたね。カザナのお屋敷に戻る途中、リーンを拾ったんですよね…」
アオも思い出して言う。
「その時に、その耳飾りが見えて、見覚えがあって…。兄を助けてくれた人だって、わかって…」
「…その話は初耳だぞ」
ルークもジェスも、目を丸くしてアオを見る。
「…もう、話しても良いですよね」
アオがリーンに確認してくる。
「…良いよ…」
もう、あの頃とは違って、こちらの事情も分かっているし、今更、隠すことでもない。
「兄が山で怪我をして、動けなくなっていた所に、リーンが来てくれて、麓まで連れて帰ってくれて…」
アオが話す声が、子守唄のように聞こえて、眠気を誘う。
ルークとジェスは真剣に話を聞き入っていて、きっと前にいる、ガーディとカズキも聞き耳を立てて聞いているだろう。
穏やかで気持ちの良い、時間だ。
…このまま、ずっとこうして居れたら良いのに…。
そんな事を思いながら、リーンは目を閉じた。
アオが言いにくそうに、話し出した。
「それって、ジーンとユーリの事だよね?」
「まあ、カザナのお屋敷で産まれたと、言うことは、ルーク様の子供だと言うことで…」
そうだよね…ルークのお屋敷なんだから…。
「お相手がどんな方なのか、色々と噂が飛び交いまして…」
「…。」
それって、私の事か?
「誕生の正式な発表もないし、結婚や婚約の話も無いし…カズキがルーク様の側に使えているから、何か聞いていないかと、ミズキさんに問い合わせが殺到したり…してまして…」
「…。」
「今日、裏口から入ったのも、近所にルーク様とご一行様が来たのが、分からないようにするためでして…」
その為に、裏口から…。
「来てるのが分かったら、質問攻めにあう可能性が…」
「…。」
…そう言えば、ルークは王子なんだよな…。
ルークの家族に会う…と、思っていたけど、カザンナ王国の王と、王子達に会うって事だよな…。
で、産まれたこの子達は、この国の王子の子供…と、言うことになる。
「…なんか大変な事になってない?」
振り向いてルークに問うと、肩をすくめた。
「今更だろ。…外交的な発表の仕方は、父上や兄上に相談してからだ。…リーンの事を表沙汰にしたくないし…」
「…ごめんね」
私の存在を表沙汰には出来ない。
争いを起こして欲しく無かったら、秘匿とする。
ヒイロ達からも、散々言われてきたこと。
「謝ることではない。…その辺は、父上達も分かってくれると思うが」
ルークがそう言って微笑む。
「それで、最近よく出入りしているリーンが、相手ではないかと…」
アオが続きを話し出す。
まあ、そうなんだけど…。
「いつもフードを被っているので、女性にも見えるし、男性にも見える…可愛らしいかただと、噂が…」
「…。」
「真相を確かめたくても、お屋敷の人間は口が固いし、ましてや、王子のお相手の話になるので、モヤモヤしていると…噂が出てまして…」
「それで、まあ、いい加減、承認をもらわないと、いけなくなった…訳だが…」
ルークは、苦笑いしている。
「なのでミズキさんは、直接リーンにあって、興奮していたのかと」
町中で噂になっている当人と、私と会えたから、なのか…。
「その話はここまでで、おやつにしましょう」
今まで黙っていたジェスが、ジーンを胡座をかいた足の上で遊ばせながら、そう言って話を切り上げさせる。
「まだ、先は長いですから」
「そうだな」
そこへカズキが戻って来た。
「すみません。姉が騒いで…しっかり口止めしておきましたから」
カズキは苦笑いしながらリーンに謝る。
「もういいよ。それより、子供達の食べれるものある?」
「果物を小さくカットして、持ってきますね」
そう言って再び部屋を出ていった。
離宮まで、残りの半分の馬車の中は、遊び疲れた子供達がお昼寝していて、静かだった。
時折寝息と、一人言を話ながら、馬車の揺れにも慣れたのか、全く起きる気配は無かった。
時折、蹴飛ばす毛布をかけ直してあげるくらいで、大人しく寝ていてくれた。
リーンも眠くなって、ルークに膝枕してもらって、うとうとし始める。
「そう言えば、初めてリーンとあった時も、こんな風に膝枕していたな…」
ルークが思い出したかのように、微笑む。
「そうでしたね。カザナのお屋敷に戻る途中、リーンを拾ったんですよね…」
アオも思い出して言う。
「その時に、その耳飾りが見えて、見覚えがあって…。兄を助けてくれた人だって、わかって…」
「…その話は初耳だぞ」
ルークもジェスも、目を丸くしてアオを見る。
「…もう、話しても良いですよね」
アオがリーンに確認してくる。
「…良いよ…」
もう、あの頃とは違って、こちらの事情も分かっているし、今更、隠すことでもない。
「兄が山で怪我をして、動けなくなっていた所に、リーンが来てくれて、麓まで連れて帰ってくれて…」
アオが話す声が、子守唄のように聞こえて、眠気を誘う。
ルークとジェスは真剣に話を聞き入っていて、きっと前にいる、ガーディとカズキも聞き耳を立てて聞いているだろう。
穏やかで気持ちの良い、時間だ。
…このまま、ずっとこうして居れたら良いのに…。
そんな事を思いながら、リーンは目を閉じた。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる