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カザンナ王国
噂
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「…実は、一年前、カザナのお屋敷で子供が産まれたと言う噂が立ちまして…」
アオが言いにくそうに、話し出した。
「それって、ジーンとユーリの事だよね?」
「まあ、カザナのお屋敷で産まれたと、言うことは、ルーク様の子供だと言うことで…」
そうだよね…ルークのお屋敷なんだから…。
「お相手がどんな方なのか、色々と噂が飛び交いまして…」
「…。」
それって、私の事か?
「誕生の正式な発表もないし、結婚や婚約の話も無いし…カズキがルーク様の側に使えているから、何か聞いていないかと、ミズキさんに問い合わせが殺到したり…してまして…」
「…。」
「今日、裏口から入ったのも、近所にルーク様とご一行様が来たのが、分からないようにするためでして…」
その為に、裏口から…。
「来てるのが分かったら、質問攻めにあう可能性が…」
「…。」
…そう言えば、ルークは王子なんだよな…。
ルークの家族に会う…と、思っていたけど、カザンナ王国の王と、王子達に会うって事だよな…。
で、産まれたこの子達は、この国の王子の子供…と、言うことになる。
「…なんか大変な事になってない?」
振り向いてルークに問うと、肩をすくめた。
「今更だろ。…外交的な発表の仕方は、父上や兄上に相談してからだ。…リーンの事を表沙汰にしたくないし…」
「…ごめんね」
私の存在を表沙汰には出来ない。
争いを起こして欲しく無かったら、秘匿とする。
ヒイロ達からも、散々言われてきたこと。
「謝ることではない。…その辺は、父上達も分かってくれると思うが」
ルークがそう言って微笑む。
「それで、最近よく出入りしているリーンが、相手ではないかと…」
アオが続きを話し出す。
まあ、そうなんだけど…。
「いつもフードを被っているので、女性にも見えるし、男性にも見える…可愛らしいかただと、噂が…」
「…。」
「真相を確かめたくても、お屋敷の人間は口が固いし、ましてや、王子のお相手の話になるので、モヤモヤしていると…噂が出てまして…」
「それで、まあ、いい加減、承認をもらわないと、いけなくなった…訳だが…」
ルークは、苦笑いしている。
「なのでミズキさんは、直接リーンにあって、興奮していたのかと」
町中で噂になっている当人と、私と会えたから、なのか…。
「その話はここまでで、おやつにしましょう」
今まで黙っていたジェスが、ジーンを胡座をかいた足の上で遊ばせながら、そう言って話を切り上げさせる。
「まだ、先は長いですから」
「そうだな」
そこへカズキが戻って来た。
「すみません。姉が騒いで…しっかり口止めしておきましたから」
カズキは苦笑いしながらリーンに謝る。
「もういいよ。それより、子供達の食べれるものある?」
「果物を小さくカットして、持ってきますね」
そう言って再び部屋を出ていった。
離宮まで、残りの半分の馬車の中は、遊び疲れた子供達がお昼寝していて、静かだった。
時折寝息と、一人言を話ながら、馬車の揺れにも慣れたのか、全く起きる気配は無かった。
時折、蹴飛ばす毛布をかけ直してあげるくらいで、大人しく寝ていてくれた。
リーンも眠くなって、ルークに膝枕してもらって、うとうとし始める。
「そう言えば、初めてリーンとあった時も、こんな風に膝枕していたな…」
ルークが思い出したかのように、微笑む。
「そうでしたね。カザナのお屋敷に戻る途中、リーンを拾ったんですよね…」
アオも思い出して言う。
「その時に、その耳飾りが見えて、見覚えがあって…。兄を助けてくれた人だって、わかって…」
「…その話は初耳だぞ」
ルークもジェスも、目を丸くしてアオを見る。
「…もう、話しても良いですよね」
アオがリーンに確認してくる。
「…良いよ…」
もう、あの頃とは違って、こちらの事情も分かっているし、今更、隠すことでもない。
「兄が山で怪我をして、動けなくなっていた所に、リーンが来てくれて、麓まで連れて帰ってくれて…」
アオが話す声が、子守唄のように聞こえて、眠気を誘う。
ルークとジェスは真剣に話を聞き入っていて、きっと前にいる、ガーディとカズキも聞き耳を立てて聞いているだろう。
穏やかで気持ちの良い、時間だ。
…このまま、ずっとこうして居れたら良いのに…。
そんな事を思いながら、リーンは目を閉じた。
アオが言いにくそうに、話し出した。
「それって、ジーンとユーリの事だよね?」
「まあ、カザナのお屋敷で産まれたと、言うことは、ルーク様の子供だと言うことで…」
そうだよね…ルークのお屋敷なんだから…。
「お相手がどんな方なのか、色々と噂が飛び交いまして…」
「…。」
それって、私の事か?
「誕生の正式な発表もないし、結婚や婚約の話も無いし…カズキがルーク様の側に使えているから、何か聞いていないかと、ミズキさんに問い合わせが殺到したり…してまして…」
「…。」
「今日、裏口から入ったのも、近所にルーク様とご一行様が来たのが、分からないようにするためでして…」
その為に、裏口から…。
「来てるのが分かったら、質問攻めにあう可能性が…」
「…。」
…そう言えば、ルークは王子なんだよな…。
ルークの家族に会う…と、思っていたけど、カザンナ王国の王と、王子達に会うって事だよな…。
で、産まれたこの子達は、この国の王子の子供…と、言うことになる。
「…なんか大変な事になってない?」
振り向いてルークに問うと、肩をすくめた。
「今更だろ。…外交的な発表の仕方は、父上や兄上に相談してからだ。…リーンの事を表沙汰にしたくないし…」
「…ごめんね」
私の存在を表沙汰には出来ない。
争いを起こして欲しく無かったら、秘匿とする。
ヒイロ達からも、散々言われてきたこと。
「謝ることではない。…その辺は、父上達も分かってくれると思うが」
ルークがそう言って微笑む。
「それで、最近よく出入りしているリーンが、相手ではないかと…」
アオが続きを話し出す。
まあ、そうなんだけど…。
「いつもフードを被っているので、女性にも見えるし、男性にも見える…可愛らしいかただと、噂が…」
「…。」
「真相を確かめたくても、お屋敷の人間は口が固いし、ましてや、王子のお相手の話になるので、モヤモヤしていると…噂が出てまして…」
「それで、まあ、いい加減、承認をもらわないと、いけなくなった…訳だが…」
ルークは、苦笑いしている。
「なのでミズキさんは、直接リーンにあって、興奮していたのかと」
町中で噂になっている当人と、私と会えたから、なのか…。
「その話はここまでで、おやつにしましょう」
今まで黙っていたジェスが、ジーンを胡座をかいた足の上で遊ばせながら、そう言って話を切り上げさせる。
「まだ、先は長いですから」
「そうだな」
そこへカズキが戻って来た。
「すみません。姉が騒いで…しっかり口止めしておきましたから」
カズキは苦笑いしながらリーンに謝る。
「もういいよ。それより、子供達の食べれるものある?」
「果物を小さくカットして、持ってきますね」
そう言って再び部屋を出ていった。
離宮まで、残りの半分の馬車の中は、遊び疲れた子供達がお昼寝していて、静かだった。
時折寝息と、一人言を話ながら、馬車の揺れにも慣れたのか、全く起きる気配は無かった。
時折、蹴飛ばす毛布をかけ直してあげるくらいで、大人しく寝ていてくれた。
リーンも眠くなって、ルークに膝枕してもらって、うとうとし始める。
「そう言えば、初めてリーンとあった時も、こんな風に膝枕していたな…」
ルークが思い出したかのように、微笑む。
「そうでしたね。カザナのお屋敷に戻る途中、リーンを拾ったんですよね…」
アオも思い出して言う。
「その時に、その耳飾りが見えて、見覚えがあって…。兄を助けてくれた人だって、わかって…」
「…その話は初耳だぞ」
ルークもジェスも、目を丸くしてアオを見る。
「…もう、話しても良いですよね」
アオがリーンに確認してくる。
「…良いよ…」
もう、あの頃とは違って、こちらの事情も分かっているし、今更、隠すことでもない。
「兄が山で怪我をして、動けなくなっていた所に、リーンが来てくれて、麓まで連れて帰ってくれて…」
アオが話す声が、子守唄のように聞こえて、眠気を誘う。
ルークとジェスは真剣に話を聞き入っていて、きっと前にいる、ガーディとカズキも聞き耳を立てて聞いているだろう。
穏やかで気持ちの良い、時間だ。
…このまま、ずっとこうして居れたら良いのに…。
そんな事を思いながら、リーンは目を閉じた。
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