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カザンナ王国
お休み所
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予想に反して、子供達を連れて、王城の離宮までの馬車内は賑やかだった。
ガタガタと動く床にユーリが座り、揺れる度にコロコロ転がって、それが楽しいのか、キャッキャ言いながら皆の足元に転がる。
回りを大人四人が囲んでいるので、柵にぶつかりそうになると、受け止めて座らせる。で、また転の繰り返し。
ジーンは一度転がって、びっくりしたのか、ルークの足にしがみついている。
時折、そっと手を離すのだが、ガタガタ揺れると再びしがみつく。の、繰り返しで、なかなか離れようとしない。
そんな二人を見ながら、四人で楽しく笑う。
こんなに笑いながら馬車に乗るのは初めてだ。
気を付けないと、舌を噛んでしまう。
時間が経つのを忘れて気が付けば、馬車のスピードが落ち、横道に入った。
途中休憩をするのだろう。
そろそろ子供達のオムツも変えないと、いけない頃だ。
馬車が一軒の家の横で止まった。
「久しぶりですね。ここに来るのも」
「ここは?」
「顔見知りの、お休み所。…カズキの実家」
「そうなんだ」
カズキが御者席から降りて、家の中に入っていく。
アオが柵を外して馬車を降りた。
アオにユーリを渡すと、リーンも馬車を降り靴を履いてユーリを受け取る。
ルークもアオにジーンを渡して馬車から降りた。
二人とも初めての来る場所に辺りをキョロキョロと見回している。
カズキが家から出てきて裏口へと手招きする。
「すみません。表からだと凄く目立ってしまうので、裏口から入ってください」
家の中に入り、靴を脱いで廊下を歩き、カズキが扉を開けた。
明るくて広い部屋。
絨毯が敷かれ、低いテーブルがあるだけのシンプルな部屋。
「ここなら、子供達が歩き回っても大丈夫でしょう」
そう言って微笑む。
きっとこの部屋にあっただろう、ソファーやテーブル、椅子を片付けたのだろう。
その辺融通が聞くのはありがたい。
リーンがユーリを降ろすと、興味深げによちよちと歩き出す。
ルークもジーンを降ろすと、ジーンはハイハイしてユーリの後を追いかける。
そんな様子を和んで見ていると、アオがカバンを持ってきてくれた。
「これでよかったですよね。子供達の着替え」
「ありがとう」
リーンは部屋の角の方に、着替えようのマットを敷くと子供達に声をかけた。
「ジーン、ユーリおいで」
その声に真っ先に反応したのはジーン。
ハイハイしながら、勢いよく突進してくる。
リーンはジーンを抱き上げ、オムツを履き替えさせた。
「…だいぶん慣れたな」
ルークが声を掛けてくる。
「まあね。でも、カズキとガーディの方が上手いよ」
そう言って微笑んだ。
二人は下の兄弟達の面倒みていたらしく、手慣れていた。
どうしても変えなくてはいけないとき、二人が変えていてくれたらしい。
何でも出来る人達だなと、感心したものだ。
そこへカズキと共に、カズキに似た女性が一人、飲物とお菓子を持って入ってきて、テーブルに置いた。
そして、目をキラキラと輝かせ、こちらをじっと見てくる。
どうしたんだろう?
「…姉のミズキです」
カズキが紹介すると、ペコリと頭を下げて緊張した様子で、リーンを見上げてきた。
「初めまして。カズキの姉のミズキです。…噂以上に、可愛い美人さんですね。お会いするのを楽しみにしていました」
「姉さん!余計なこと言わないの!」
カズキが慌てて、ミズキを制する。
「…初めまして…リーンです。…噂って?」
何の噂なのだろう。
「リーン。気にしないで!ほら姉さん、仕事に戻って!」
カズキがミズキを促して外へ出そうとすると、ミズキの足元にユーリがぶつかってきた。
ミズキはびっくりして、ユーリを見下ろす。
ユーリは笑顔で見上げたが、直後、顔が硬直するのが見えた。
あっ。知らない人にぶつかって、ビックリしている!
リーンは慌ててユーリを抱き上げた。
よしよし、泣くなよ…。
「可愛い!!」
ユーリがその声にビクンと反応すると、ユーリを見たミズキの目が再びキラキラと輝き出す。
「ほら、姉さんこっち!」
カズキがミズキを引っ張って部屋の外に引きずり出していく。
「…ちょっと!もっと眺めさせて!可愛い!」
カズキが部屋の外に連れ出し、戸を閉める。
「…。」
「…カズキのお姉さん…ちょっと変わってる…?」
「…気にしなくて良いですよ」
アオがため息をついて苦笑いする。
「…噂って?気になるんだけど…」
アオがルークを見て、ルークが頷く。
何?ルークに確認を取らないといけないような事なのか?
「…実は、一年前、カザナのお屋敷で子供が産まれたと言う噂が立ちまして…」
アオが言いにくそうに、話し出した。
ガタガタと動く床にユーリが座り、揺れる度にコロコロ転がって、それが楽しいのか、キャッキャ言いながら皆の足元に転がる。
回りを大人四人が囲んでいるので、柵にぶつかりそうになると、受け止めて座らせる。で、また転の繰り返し。
ジーンは一度転がって、びっくりしたのか、ルークの足にしがみついている。
時折、そっと手を離すのだが、ガタガタ揺れると再びしがみつく。の、繰り返しで、なかなか離れようとしない。
そんな二人を見ながら、四人で楽しく笑う。
こんなに笑いながら馬車に乗るのは初めてだ。
気を付けないと、舌を噛んでしまう。
時間が経つのを忘れて気が付けば、馬車のスピードが落ち、横道に入った。
途中休憩をするのだろう。
そろそろ子供達のオムツも変えないと、いけない頃だ。
馬車が一軒の家の横で止まった。
「久しぶりですね。ここに来るのも」
「ここは?」
「顔見知りの、お休み所。…カズキの実家」
「そうなんだ」
カズキが御者席から降りて、家の中に入っていく。
アオが柵を外して馬車を降りた。
アオにユーリを渡すと、リーンも馬車を降り靴を履いてユーリを受け取る。
ルークもアオにジーンを渡して馬車から降りた。
二人とも初めての来る場所に辺りをキョロキョロと見回している。
カズキが家から出てきて裏口へと手招きする。
「すみません。表からだと凄く目立ってしまうので、裏口から入ってください」
家の中に入り、靴を脱いで廊下を歩き、カズキが扉を開けた。
明るくて広い部屋。
絨毯が敷かれ、低いテーブルがあるだけのシンプルな部屋。
「ここなら、子供達が歩き回っても大丈夫でしょう」
そう言って微笑む。
きっとこの部屋にあっただろう、ソファーやテーブル、椅子を片付けたのだろう。
その辺融通が聞くのはありがたい。
リーンがユーリを降ろすと、興味深げによちよちと歩き出す。
ルークもジーンを降ろすと、ジーンはハイハイしてユーリの後を追いかける。
そんな様子を和んで見ていると、アオがカバンを持ってきてくれた。
「これでよかったですよね。子供達の着替え」
「ありがとう」
リーンは部屋の角の方に、着替えようのマットを敷くと子供達に声をかけた。
「ジーン、ユーリおいで」
その声に真っ先に反応したのはジーン。
ハイハイしながら、勢いよく突進してくる。
リーンはジーンを抱き上げ、オムツを履き替えさせた。
「…だいぶん慣れたな」
ルークが声を掛けてくる。
「まあね。でも、カズキとガーディの方が上手いよ」
そう言って微笑んだ。
二人は下の兄弟達の面倒みていたらしく、手慣れていた。
どうしても変えなくてはいけないとき、二人が変えていてくれたらしい。
何でも出来る人達だなと、感心したものだ。
そこへカズキと共に、カズキに似た女性が一人、飲物とお菓子を持って入ってきて、テーブルに置いた。
そして、目をキラキラと輝かせ、こちらをじっと見てくる。
どうしたんだろう?
「…姉のミズキです」
カズキが紹介すると、ペコリと頭を下げて緊張した様子で、リーンを見上げてきた。
「初めまして。カズキの姉のミズキです。…噂以上に、可愛い美人さんですね。お会いするのを楽しみにしていました」
「姉さん!余計なこと言わないの!」
カズキが慌てて、ミズキを制する。
「…初めまして…リーンです。…噂って?」
何の噂なのだろう。
「リーン。気にしないで!ほら姉さん、仕事に戻って!」
カズキがミズキを促して外へ出そうとすると、ミズキの足元にユーリがぶつかってきた。
ミズキはびっくりして、ユーリを見下ろす。
ユーリは笑顔で見上げたが、直後、顔が硬直するのが見えた。
あっ。知らない人にぶつかって、ビックリしている!
リーンは慌ててユーリを抱き上げた。
よしよし、泣くなよ…。
「可愛い!!」
ユーリがその声にビクンと反応すると、ユーリを見たミズキの目が再びキラキラと輝き出す。
「ほら、姉さんこっち!」
カズキがミズキを引っ張って部屋の外に引きずり出していく。
「…ちょっと!もっと眺めさせて!可愛い!」
カズキが部屋の外に連れ出し、戸を閉める。
「…。」
「…カズキのお姉さん…ちょっと変わってる…?」
「…気にしなくて良いですよ」
アオがため息をついて苦笑いする。
「…噂って?気になるんだけど…」
アオがルークを見て、ルークが頷く。
何?ルークに確認を取らないといけないような事なのか?
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アオが言いにくそうに、話し出した。
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