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カザンナ王国
初めての遠出
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リーンは子供達のはしゃぐ声で、目を覚ました。
ベッドの仕切りの、薄布は降りたままなので、向こう側は見えない。
リーンはベッドの足元に置かれているガウンを羽織ると、薄布を開けてベッドから降りた。
「おはよう」
こちらに気付いたルークが声を掛けてきて、ソファーに座ったまま、ユーリの持ってくる、ぬいぐるみを受け取っていた。
「…おはよう…」
リーンがルークに近付くと、リーンに気付いたユーリが足元に突進してくる。
「おはよう。ユーリ」
リーンはユーリを抱き上げて、ルークの座るソファーの横に座る。
ジーンは…絨毯の上で、自分で絵本を捲りながら、何を言っているのか分からないが、一人で話をしている。
「もうすぐ昼だが、何か食べるか?」
「…今はいい」
もうそんな時間なんだ…。
昨日は少しお酒が入って、高揚感が増して、久しぶりだったのもあるから、明け方まで貪りあって…。
リーンは思い出して、頬を染めていると、腕に抱いたユーリが不思議そうにリーンを覗き込んで、頬をぺちぺちと触る。
赤くなったのが面白いのかも…。
ルークがユーリに、さっき渡されたぬいぐるみを見せ、顔に近付けると、ユーリが手を伸ばして奪い取る。
そんな姿に和みながら、ルークが話し出した。
「リーン。急で悪いんだが、明日の昼から父上に会えることになった」
「明日!?」
本当に急だな。
「明日なら、皆の都合が付くらしい。今、兄上達も王城にいるみたいだから、久しぶりに全員が揃うんだ」
家族全員…心の準備が…。
「それで、昼食を食べたら王都に向かう。今日はあっちの離宮に泊まって、昼から面会することになった」
「…。」
「急ぎ過ぎたか?」
ルークが心配そうに問うてくる。
「…忙しい人達ばかりなんだろ?…会うよ」
ルークはホッとため息を付き、楽しそうに笑う。
「今、ガーディとカズキで馬車の内装をいじってるから、楽しみにしていてくれ」
「馬車で行くのか?」
馬車はガタガタするし、床も固い。
ずっと閉じた同じ空間にいて、大丈夫だろうか…。
「子供達にはちょっと遠出だが、遊んでいる内に着くさ」
ルークは呑気に微笑む。
まあ、ゆっくりと、休憩をしながら進んで行くのだろうが…。
昼食を食べ、少し休憩しながら、子供達の着替えやオモチャを馬車に運び込み、出発の準備が整った。
リーンがユーリを抱っこして、ルークがジーンを抱えて馬車に向かうと、準備を整え待っていたアオが微笑む。
「カズキとガーディの力作ですよ」
そう言われて、馬車の中を覗くと、内側全体に低めの柵が付けられ、床には厚地の絨毯が敷かれ、物入れ件、イスの角は布で覆われていた。
「靴を脱いでくださいね」
「…。」
「絨毯の上を子供達が裸足で歩くのだから、泥を入れたくないでしょ。あっ、靴箱がここです」
そう言ってアオは、馬車の入口付近にある縦長の箱を開ける。
「こうすれば、たくさん入るし、落ちないでしょ」
「想像以上に変わったな…」
「今回は夜営をしないから、テントを乗せてないので天井が高いし、快適だと思いますよ」
「アオ。自慢げに言っているが、お前が手伝ったのは荷物の詰め込みだけだ」
ガーディが、御者席から声を掛けてくる。
「え~っ。説明しないと、靴のまま中に上がっちゃいますよ。ささっ、ルーク様、中に入ってください」
ルークは促されるまま、靴を脱ぎ、馬車内に上がる。
リーンも続いて靴を脱いで中に入ると、絨毯が柔らかく、部屋に敷いてあるのと同じくらいだ。
興味深そうにユーリがキョロキョロしたので、絨毯の上に下ろすと、よちよちと歩き回る。
「ユーリは好奇心旺盛だな」
ジーンはルークの腕の中からキョロキョロ見るだけで、降りようとはしない。
性格は、正反対だ。
そこへ、ジェスが入ってくる。
「やっと今回は、御一緒できます」
「そうだな。『移動』ばかりも大変だろ。今日はゆっくり出来るといいな」
「何せ、離宮ですからね…。いつ呼び出しが来るか…」
ジェスがのんびりとルークと話ながら、柔らかい椅子に座ると、アオも乗ってきて柵を閉めた。
「お昼寝用のカゴも準備してあるので、いつ寝ても大丈夫ですよ」
そう言って、御者席と座席の間を指差す。
リーンが覗き込むと、大きいバスケットに毛布が何枚も敷き詰められ、二人がゆっくりと寝転がれるくらいあった。
出発の準備が整い、リーンがユーリを抱っこする。
…いつものメンバーに一人足りない。
今回は留守番?
リーンはふと、疑問に思ったので尋ねた。
「…そう言えば、カズキは?」
いっせいに苦笑いするので、リーンは首を傾げると、御者席から声がした。
「…すみません…昨日の…お酒が…まだ残って…」
ああ。二日酔い…。
なので運転はガーディなんだ。
「出発するか…」
ルークがそう言うと、ガーディが馬車を動かし始めた。
王城の離宮まで、子供達が大人しく、していてくれると良いけれど…。
夕方には着くらしいから、大丈夫かな…。
そんな心配をよそに、子供達を連れての初めての遠出が始まった。
ベッドの仕切りの、薄布は降りたままなので、向こう側は見えない。
リーンはベッドの足元に置かれているガウンを羽織ると、薄布を開けてベッドから降りた。
「おはよう」
こちらに気付いたルークが声を掛けてきて、ソファーに座ったまま、ユーリの持ってくる、ぬいぐるみを受け取っていた。
「…おはよう…」
リーンがルークに近付くと、リーンに気付いたユーリが足元に突進してくる。
「おはよう。ユーリ」
リーンはユーリを抱き上げて、ルークの座るソファーの横に座る。
ジーンは…絨毯の上で、自分で絵本を捲りながら、何を言っているのか分からないが、一人で話をしている。
「もうすぐ昼だが、何か食べるか?」
「…今はいい」
もうそんな時間なんだ…。
昨日は少しお酒が入って、高揚感が増して、久しぶりだったのもあるから、明け方まで貪りあって…。
リーンは思い出して、頬を染めていると、腕に抱いたユーリが不思議そうにリーンを覗き込んで、頬をぺちぺちと触る。
赤くなったのが面白いのかも…。
ルークがユーリに、さっき渡されたぬいぐるみを見せ、顔に近付けると、ユーリが手を伸ばして奪い取る。
そんな姿に和みながら、ルークが話し出した。
「リーン。急で悪いんだが、明日の昼から父上に会えることになった」
「明日!?」
本当に急だな。
「明日なら、皆の都合が付くらしい。今、兄上達も王城にいるみたいだから、久しぶりに全員が揃うんだ」
家族全員…心の準備が…。
「それで、昼食を食べたら王都に向かう。今日はあっちの離宮に泊まって、昼から面会することになった」
「…。」
「急ぎ過ぎたか?」
ルークが心配そうに問うてくる。
「…忙しい人達ばかりなんだろ?…会うよ」
ルークはホッとため息を付き、楽しそうに笑う。
「今、ガーディとカズキで馬車の内装をいじってるから、楽しみにしていてくれ」
「馬車で行くのか?」
馬車はガタガタするし、床も固い。
ずっと閉じた同じ空間にいて、大丈夫だろうか…。
「子供達にはちょっと遠出だが、遊んでいる内に着くさ」
ルークは呑気に微笑む。
まあ、ゆっくりと、休憩をしながら進んで行くのだろうが…。
昼食を食べ、少し休憩しながら、子供達の着替えやオモチャを馬車に運び込み、出発の準備が整った。
リーンがユーリを抱っこして、ルークがジーンを抱えて馬車に向かうと、準備を整え待っていたアオが微笑む。
「カズキとガーディの力作ですよ」
そう言われて、馬車の中を覗くと、内側全体に低めの柵が付けられ、床には厚地の絨毯が敷かれ、物入れ件、イスの角は布で覆われていた。
「靴を脱いでくださいね」
「…。」
「絨毯の上を子供達が裸足で歩くのだから、泥を入れたくないでしょ。あっ、靴箱がここです」
そう言ってアオは、馬車の入口付近にある縦長の箱を開ける。
「こうすれば、たくさん入るし、落ちないでしょ」
「想像以上に変わったな…」
「今回は夜営をしないから、テントを乗せてないので天井が高いし、快適だと思いますよ」
「アオ。自慢げに言っているが、お前が手伝ったのは荷物の詰め込みだけだ」
ガーディが、御者席から声を掛けてくる。
「え~っ。説明しないと、靴のまま中に上がっちゃいますよ。ささっ、ルーク様、中に入ってください」
ルークは促されるまま、靴を脱ぎ、馬車内に上がる。
リーンも続いて靴を脱いで中に入ると、絨毯が柔らかく、部屋に敷いてあるのと同じくらいだ。
興味深そうにユーリがキョロキョロしたので、絨毯の上に下ろすと、よちよちと歩き回る。
「ユーリは好奇心旺盛だな」
ジーンはルークの腕の中からキョロキョロ見るだけで、降りようとはしない。
性格は、正反対だ。
そこへ、ジェスが入ってくる。
「やっと今回は、御一緒できます」
「そうだな。『移動』ばかりも大変だろ。今日はゆっくり出来るといいな」
「何せ、離宮ですからね…。いつ呼び出しが来るか…」
ジェスがのんびりとルークと話ながら、柔らかい椅子に座ると、アオも乗ってきて柵を閉めた。
「お昼寝用のカゴも準備してあるので、いつ寝ても大丈夫ですよ」
そう言って、御者席と座席の間を指差す。
リーンが覗き込むと、大きいバスケットに毛布が何枚も敷き詰められ、二人がゆっくりと寝転がれるくらいあった。
出発の準備が整い、リーンがユーリを抱っこする。
…いつものメンバーに一人足りない。
今回は留守番?
リーンはふと、疑問に思ったので尋ねた。
「…そう言えば、カズキは?」
いっせいに苦笑いするので、リーンは首を傾げると、御者席から声がした。
「…すみません…昨日の…お酒が…まだ残って…」
ああ。二日酔い…。
なので運転はガーディなんだ。
「出発するか…」
ルークがそう言うと、ガーディが馬車を動かし始めた。
王城の離宮まで、子供達が大人しく、していてくれると良いけれど…。
夕方には着くらしいから、大丈夫かな…。
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