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ギザ王国
因縁の屋敷
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『魔女の森』からの援軍の『魔男』達が、四人やって来た。
彼らは、魔女を親に持ち、魔力が優れていて、魔女と同じ訓練と知識を受け持つ事が出きた、優秀な男達だ。
監視付きの収監所をも、管理する彼らが来たのには、意味があった。
収監所に入る者達には、見えない印がつけられている。
それを、最近村を襲った盗賊に付けてあるので、彼らのたまり場、逃げた隠れ家が分かると言うのだ。
それを、まとめて捕らえて、収監所に送ると言う。
その為に、『転移』を使える者と一緒に来たのだと説明された。
「リーン様。その場所は、貴方の因縁のある場所だと、ソフィア様が、言ってましたが…」
四人の『魔男』のリーダーが、そう言ってきた。
「…だったら、あそこしか無いよね…」
リーンは、どこか思い当たって、嫌な顔をした。
ギザ王国の因縁のある場所と言えば、思い出したくもない、最悪の領主の館。
「…何があったか言いたくはない」
森に入られないよう、『閉じた森』にした原因の領主。
カザンナ王国のルーク達と、『魔女の森』の『魔男』、ギザ王国の精鋭の騎士達、そして『森の管理者』であるリーンとの、共同捕獲作戦が始まった。
ルーク達とギザ王国の精鋭達は、『魔男』に教えてもらった見方で、印を付けた盗賊を見つけ、領主の館に追い込んでいった。
ギザ王国の精鋭の騎士の中には、『閉じた森』へ、ルキヤと共に逃れてきた者が二人いた。
彼らはルキヤの護衛達で、幼馴染みでも有るらしく、一人は獣人だが、人族の姿を維持してこの作戦に参加していた。
『魔男』とリーンは、収監所への『転移』の為の準備をしていた。
館一帯の周囲四ヶ所に、魔法石を埋め込んだ杭を打ち込み、館ごと収監所に送るため、各自魔方陣を張り付け出していた。
その方が、一時的でも、屋根がある場所で暮らせるし、リーンにとっても、見たくない館を一掃できるなら、それに越したことはないのだ。
号令が有れば直ぐにでも、魔法を発動できるようにして、残党の追い込みを待っていた。
ギザ王国の騎士達が、現在分かっているだけの、残党を館に追い込むと、突然、館から領主、元領主が姿を現した。
体格のガッチリとした大男で、相変わら嫌な気持ち悪い笑みを浮かべている。
「我々が、何をしたと言うのだ?私はギザ王国の王弟だぞ。貴様らは国家反逆罪だ!」
「…現在の王の兄君とは言え、人を物のように扱い、命を奪う権利はない」
ギザ王国の騎士は冷静にそう答える。
「私がそのような扱いをした証拠でも有るのか?」
…ほとんどの証拠となる者は、命を落としている。
「…。」
騎士達は、黙ったまま。
あいつの前に姿を現したくないが、ソフィアは分かっていて、『因縁のある』と、言ってきたのだ。
…証拠は私自身。
「…相変わらず、気色悪いな、お前は…」
リーンは嫌な顔をして、ギザ王国の騎士の後ろから、姿を現した。
元領主は目を見開き驚いて、嬉しそうに笑い出した。
「やはり生きていたか」
「…勝手に殺すな」
本当なら話をするのも嫌なくらいだ。
「…これはお前の仕業か?」
「あんたは、やり過ぎた。ギザ王国も、カザンナ王国も、魔女も、森も、いらないと判断した」
さらに言えば、水中都市も、獣人族も…。
手当たり次第に、ちょっかいを出し、都合が悪くなったら全てを壊して無に返す。
物も人も、無限に有ると勘違いしている。
「…私を捕まえることなど出来ないぞ。我らは…」
館周辺に張られた『魔男』の魔方陣が発動し、辺りが淡く輝き出す。
「…何をした!?」
元領主は慌てて辺りを見回す。
もう、彼らは魔法を使って逃げる事は出来ない。
「『転移』してもらうよ。魔女の収監所に…」
「魔女の収監所だと!?」
青い顔をして、必死に魔法を作り出そうとしているみたいだが、もう遅い。
館から、事態が悪化しているのだと思って、裏口から逃げだそうと人が出てくるが、光の壁に阻まれて、一定以上、外には出れない。
私が話をして時間を稼いでいる間に、全ての準備が整った。
「…これだけの巨大な魔法を使うとは…やはり古の一族なのだな…」
元領主は、こちらを睨み付けてくる。
「さぁ…。勝手にそう呼んでいるだけだろ?」
古の一族なんて知らない。
「私は、私だ」
リーンは元領主を睨み付け、右手を掲げた。
「『転移』」
リーンがそう呼ぶと、『魔男』の魔方陣が輝きを増し、光が館一帯全てを包み込み、その存在を消した。
さっきまで、有った館の建物じたいが姿を消して、地下室が顔を覗かせ、痕跡だけが残っていた。
「…。」
ギザ王国の騎士達は、呆然とその状況を眺めている。
そこへ『魔男』の男達が、魔法石の杭を抱えて、集まって来た。
「リーン様。無事、収監所に『転移』しました。我々は戻ります」
「ありがとう」
リーンが微笑むと、彼らは頭を下げて『魔女の森』へと、戻っていった。
そして、リーンはギザ王国の騎士達に伝える。
「旧ギザ王国の悪事を働いていた、元領主は『魔女の収監所』に送りました。当分出てこれないと思うから、新しいギザ王国の王と共に、より良い国を目指すようルキヤにも伝えてください」
ギザ王国の騎士達は慌てて、身なりを正す。
「…困った事があったら、カザンナ王国に、相談するよう伝えてね」
リーンは苦笑いして、緊張している騎士達に微笑んだ。
そこへアオとガーディがやってくる。
「さすがにすごいですね。館ごと『転移』するなんて…」
「俺達では、思い付かないし、出来ないよな…」
二人は感心したように跡地を見て、頷いている。
「ルークの様子はどう?」
作戦会議の時、まだ、動けなさそうなルークを見ていたので心配でたまらなかった。
「歩けるぐらいには、だいぶん回復してますよ」
「これで、カザンナに帰れますね」
アオは嬉しそうに、微笑む。
そう、子供達の初めての誕生日までには、カザナのお屋敷には戻りたかった。
そして、皆でお祝いする事が、リーンの憧れでもあった。
リーンは気が付いたら、魔素の強い『聖域』と呼ばれる場所に存在していたので、誕生日と言う概念が無かった。
なので、獣人の家族のヒイロに、誕生日の話を聞いて、憧れたのだ。
それが自分が産んだ子供となると、何がなんでも帰って、お祝いしたい。と、思っていた。
もう少し、後始末に時間はかかるが、まだ、間に合う。
皆で帰って、ジーンとユーリの誕生日のお祝いをしよう。
それは、リーンにとって、新たな楽しみになっていた。
彼らは、魔女を親に持ち、魔力が優れていて、魔女と同じ訓練と知識を受け持つ事が出きた、優秀な男達だ。
監視付きの収監所をも、管理する彼らが来たのには、意味があった。
収監所に入る者達には、見えない印がつけられている。
それを、最近村を襲った盗賊に付けてあるので、彼らのたまり場、逃げた隠れ家が分かると言うのだ。
それを、まとめて捕らえて、収監所に送ると言う。
その為に、『転移』を使える者と一緒に来たのだと説明された。
「リーン様。その場所は、貴方の因縁のある場所だと、ソフィア様が、言ってましたが…」
四人の『魔男』のリーダーが、そう言ってきた。
「…だったら、あそこしか無いよね…」
リーンは、どこか思い当たって、嫌な顔をした。
ギザ王国の因縁のある場所と言えば、思い出したくもない、最悪の領主の館。
「…何があったか言いたくはない」
森に入られないよう、『閉じた森』にした原因の領主。
カザンナ王国のルーク達と、『魔女の森』の『魔男』、ギザ王国の精鋭の騎士達、そして『森の管理者』であるリーンとの、共同捕獲作戦が始まった。
ルーク達とギザ王国の精鋭達は、『魔男』に教えてもらった見方で、印を付けた盗賊を見つけ、領主の館に追い込んでいった。
ギザ王国の精鋭の騎士の中には、『閉じた森』へ、ルキヤと共に逃れてきた者が二人いた。
彼らはルキヤの護衛達で、幼馴染みでも有るらしく、一人は獣人だが、人族の姿を維持してこの作戦に参加していた。
『魔男』とリーンは、収監所への『転移』の為の準備をしていた。
館一帯の周囲四ヶ所に、魔法石を埋め込んだ杭を打ち込み、館ごと収監所に送るため、各自魔方陣を張り付け出していた。
その方が、一時的でも、屋根がある場所で暮らせるし、リーンにとっても、見たくない館を一掃できるなら、それに越したことはないのだ。
号令が有れば直ぐにでも、魔法を発動できるようにして、残党の追い込みを待っていた。
ギザ王国の騎士達が、現在分かっているだけの、残党を館に追い込むと、突然、館から領主、元領主が姿を現した。
体格のガッチリとした大男で、相変わら嫌な気持ち悪い笑みを浮かべている。
「我々が、何をしたと言うのだ?私はギザ王国の王弟だぞ。貴様らは国家反逆罪だ!」
「…現在の王の兄君とは言え、人を物のように扱い、命を奪う権利はない」
ギザ王国の騎士は冷静にそう答える。
「私がそのような扱いをした証拠でも有るのか?」
…ほとんどの証拠となる者は、命を落としている。
「…。」
騎士達は、黙ったまま。
あいつの前に姿を現したくないが、ソフィアは分かっていて、『因縁のある』と、言ってきたのだ。
…証拠は私自身。
「…相変わらず、気色悪いな、お前は…」
リーンは嫌な顔をして、ギザ王国の騎士の後ろから、姿を現した。
元領主は目を見開き驚いて、嬉しそうに笑い出した。
「やはり生きていたか」
「…勝手に殺すな」
本当なら話をするのも嫌なくらいだ。
「…これはお前の仕業か?」
「あんたは、やり過ぎた。ギザ王国も、カザンナ王国も、魔女も、森も、いらないと判断した」
さらに言えば、水中都市も、獣人族も…。
手当たり次第に、ちょっかいを出し、都合が悪くなったら全てを壊して無に返す。
物も人も、無限に有ると勘違いしている。
「…私を捕まえることなど出来ないぞ。我らは…」
館周辺に張られた『魔男』の魔方陣が発動し、辺りが淡く輝き出す。
「…何をした!?」
元領主は慌てて辺りを見回す。
もう、彼らは魔法を使って逃げる事は出来ない。
「『転移』してもらうよ。魔女の収監所に…」
「魔女の収監所だと!?」
青い顔をして、必死に魔法を作り出そうとしているみたいだが、もう遅い。
館から、事態が悪化しているのだと思って、裏口から逃げだそうと人が出てくるが、光の壁に阻まれて、一定以上、外には出れない。
私が話をして時間を稼いでいる間に、全ての準備が整った。
「…これだけの巨大な魔法を使うとは…やはり古の一族なのだな…」
元領主は、こちらを睨み付けてくる。
「さぁ…。勝手にそう呼んでいるだけだろ?」
古の一族なんて知らない。
「私は、私だ」
リーンは元領主を睨み付け、右手を掲げた。
「『転移』」
リーンがそう呼ぶと、『魔男』の魔方陣が輝きを増し、光が館一帯全てを包み込み、その存在を消した。
さっきまで、有った館の建物じたいが姿を消して、地下室が顔を覗かせ、痕跡だけが残っていた。
「…。」
ギザ王国の騎士達は、呆然とその状況を眺めている。
そこへ『魔男』の男達が、魔法石の杭を抱えて、集まって来た。
「リーン様。無事、収監所に『転移』しました。我々は戻ります」
「ありがとう」
リーンが微笑むと、彼らは頭を下げて『魔女の森』へと、戻っていった。
そして、リーンはギザ王国の騎士達に伝える。
「旧ギザ王国の悪事を働いていた、元領主は『魔女の収監所』に送りました。当分出てこれないと思うから、新しいギザ王国の王と共に、より良い国を目指すようルキヤにも伝えてください」
ギザ王国の騎士達は慌てて、身なりを正す。
「…困った事があったら、カザンナ王国に、相談するよう伝えてね」
リーンは苦笑いして、緊張している騎士達に微笑んだ。
そこへアオとガーディがやってくる。
「さすがにすごいですね。館ごと『転移』するなんて…」
「俺達では、思い付かないし、出来ないよな…」
二人は感心したように跡地を見て、頷いている。
「ルークの様子はどう?」
作戦会議の時、まだ、動けなさそうなルークを見ていたので心配でたまらなかった。
「歩けるぐらいには、だいぶん回復してますよ」
「これで、カザンナに帰れますね」
アオは嬉しそうに、微笑む。
そう、子供達の初めての誕生日までには、カザナのお屋敷には戻りたかった。
そして、皆でお祝いする事が、リーンの憧れでもあった。
リーンは気が付いたら、魔素の強い『聖域』と呼ばれる場所に存在していたので、誕生日と言う概念が無かった。
なので、獣人の家族のヒイロに、誕生日の話を聞いて、憧れたのだ。
それが自分が産んだ子供となると、何がなんでも帰って、お祝いしたい。と、思っていた。
もう少し、後始末に時間はかかるが、まだ、間に合う。
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