神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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名前

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 身体の火照りが少し収まり、荒い息を整えながら、寝そべっていた。
 程よい疲労感が気持ち良くて、隣で横たわるルークの体温が暖かくて、このまま眠ってしまいそうだ。
「…そうだ。子供達の名前の事だけど、やっぱり私が決めていい?」
 ルークがもぞもぞと動き、こちらを向く。
「…かまわないよ」
「ユーリと、ジーン。」
 何故か突然、名前が浮かんできた。 
 リーンに似た金髪の男の子がジーン。
 ルークに似た黒髪の女の子がユーリ。
「…何か意味が有るのか?」
「特には…。ただ、名前が突然浮かんできた…」
 名前を口にして、改めて考えるとジーンは、宿り木の核となったジンから来ているのかも知れない。
 ユーリは、ユキから…大切な人達の代わりではないが、彼らの分も生きてほしいのから、その名前が出てきたのかもしれなかった。
 そんな事を思っていると、ルークがおおかぶさってきて、口付けてきた。
「成長が楽しみだな」
 そう言って、微笑まれ耳が赤くなるのを感じた。
 …最近、おかしいのだ。
 ルークが可愛く見えてしまう。
 自分よりも、背も体格も大きく、腕の中に包まれるくらいなのに、どうしても時折見せる表情が、可愛くて仕方ない…。
 もっと抱きしめて、頭を撫でてやりたいなどと思うようになってしまった。
 子供を産んで、母性本能?に、目覚めたのか?
 リーンは、そんな風に思ったことを誤魔化すようにルークの頭を引き寄せ、口付けた。
 唇を離すと、ルークと目が合い、互いに何故か照れてしまって、リーンは目を背ける。
 ルークが再び首筋に口付けてきて、ぶるりと身体がる震えた。
 まだ、身体の中の熱は消えていない。
 さっきまでの、足りなくて、欲しくて、荒れ狂うのではないかと思うくらいの欲情は消えている。
 今度は、ゆるゆるとついばむように、たわむれるように、クスクスと笑いながら、触って確かめて、繋がって、離れていた分の補充をする。
「…リーン。好きだよ」
「…ありがとう」
 私には、そうとしか答えられない。
 ルークは答えが分かっていたかのように、笑いながら唇に触れてくる。
 リーンは目を閉じてルークの温もりに溺れた。


 一夜が開け、ルークは子供達の事を、父や兄達に話すかどうか、迷っていた。
 どういう経緯にしろ、カザンナ王国の王子の子供だ。
 いずれ、話さなくてはいけない。
 …それとなく、伝わっているかも知れないが…。
「報告はいいが、会わせるのは待ってほしい」
「何故だ?」
「…子供達の魔力が安定していないから…。ミーネの結界から出さないで欲しいから…」
「そんなに、不安定なのか?」
 リーンは頷く。
 ルークの母親が、ルークの魔力が高くて封じた気持ちが、今なら分かる。
 産まれてまだ、1ヶ月もたってないのに『風霊』を感じるらしい。
 回りをうろうろする『風霊』に、視線を向けて追いかけているからだ。
「会いに来るのなら良いんだな」
「それは大丈夫」
「いずれ、正式に紹介しないといけないが…住民登録もしないと…」
 ルークは黙ってリーンを見た。
「リーンはカザンナ王国の住民登録をしていない。するわけにも、いかないだろ?」
「うん。何処にも所属するわけにはいかない」
 それが、争いの種になると分かっているから。
「…だったら、所在不明としておく」
 ルークはそう言って微笑んだ。
 その辺、融通を聞いてくれるから、分かってくれるから、心地良いのかも知れない。

 
 我慢していた『風使い』が、辺りをうろうろとし始めた。
 かなり長い間、ここから動けなかった分、あちこちでいろんな事が起こっているのかも知れない。
 こちらの生活に慣れた獣人のキリトが残って、子供達を見てくれることになった。
 どうも、子供と遊ぶのが楽しいみたいだ。
 そう言えば、出会った時も、子獣人が拐われたのを助けようとして、怪我をしてたよな…。
 …少しずつ、森に戻ろう。
 ジーンとユーリを見ながら、何処まで行けるか…。
 …戻ってこれるか、確かめながら…。

 リーンがカザナのお屋敷を離れる日は近かった。



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