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実を結ぶ
久しぶりの帰還
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カザナの屋敷にリーンを連れていってから、ルークの回りは忙しくなった。
もちろん『人魚の湖』の集落関係だ。
始は、住民登録をだけだったが、中には医者に行けず体調が悪化している者や、学校が無く、大人が知っている知識を教えているだけで、正しいものと不正解のものが入り交じっていた。
なので、病人の事をどうするとか、教育をどうするとか、その他、考えることと、やることが有りすぎた。
それが、集落十ヶ所分と、点在している住宅分。
時折、屋敷に戻るが、深夜だったり、早朝には出発したりと、リーンとすら会話できていなかった。
リーンは魔力の迷走で、体調を崩してから、だいぶん良くなったものの、小屋で暮らしている。
取りあえずは、リーンの寝顔を見て、まだ、ここにいてくれると、実感して、髪を撫でて癒されて、出掛けていた。
リーンを、カザナの屋敷に連れていってから、三ヶ月が過ぎようとしていた。
リーンに会えない!
『人魚の湖』の集落の事がだいたいうまく回り始めた頃、王城から召集がかかった。
今回の報告や経緯などを、改めて報告会が開かれ、今後の対応などを決めていくそうだ。
今まで、それらから避けて、兄に任せっきりにしていたが、今回は『海の魔法石』の事もあって、逃げられない。
リーンに会いたい…。
こんなに誰かを欲して、会いたいなど思ったことはなかった。
報告会が終わったら会いに行こう。
ジェスは相変わらず、兄に連れ回されているし、ガーディは書類作成、カズキとアオは集落回りをしていて、あまり屋敷には戻っていないらしい。
今までも旅に出ると、長い間、屋敷に帰らないことはあったが、そこにリーンが居ると言うだけで、早く帰りたかった。
やっと報告会が終わって、カザナの屋敷に戻ることになった。
その頃には、書類作成に追われたガーディは燃え尽き、一緒に帰る事になっていた。
カズキとアオもそろそろ、屋敷に戻れるらしい。
ジェスは、今度、真ん中の兄の元へ連れていかれた。
何でも、王国警備隊長をやっている兄の、幼馴染みの神官が、行方不明になったらしい。
俺も幼い頃、よく遊んでもらった覚えがある。
早く見つかると良いが…。
早朝に王城を出て、昼過ぎには、カザナの屋敷に到着した。
何故か屋敷中がソワソワして、落ち着きがない。
何かあったのか?
執事はいつも通り落ち着いていて、
「リーン様は小屋に居られます」
と、告げてきた。
早く会いたい、と、顔に出ていてのか?
ルークは顔を赤らめ、小屋へと向かった。
小屋へ行くと、リーンはベッドに横たわり、眠っているようだ。
「リーン」
声をかけ、リーンの髪を久しぶりに撫でていると、目蓋がほんの少し開いた。
「…お帰り。…ルークに…伝えたい事…がたくさん有って、…でも、…夜泣きで…寝不足で…交代で…見てくれて…」
まだ眠いのか、リーンの目蓋が閉じていく。
いま、何て言った?
「夜泣きで寝不足?」
何の話をしている?!
「おい!起きろ!説明しろ!」
ルークはリーンの身体を揺さぶり、身体を起こさせて、何とか目覚めさせる。
「んっ…」
このままでは、話にならない。
ルークは、まだ寝ぼけているリーンの身体を抱き上げ、屋敷の方に戻り始めた。
ルークがリーンを抱えて、屋敷の中へ入ると、やはり皆ソワソワしている。
屋敷中で、何を隠している!?
ルークがリーンの部屋に行くと、知らない女性とメイドが、絨毯の敷かれた床に座って、何かを揺らしていた。
「ルーク様!」
驚いたメイドの子が立ち上がり、一礼する。
「…ありがとう。…私から…話すから…」
リーンがそう言うと、メイドと女性は部屋を出ていった。
ルークがリーンをベッドの端に下ろすと、ガーディと、カズキ、アオが部屋に入ってきた。
「リーン。これはどういう事だ?」
彼女達が揺らしていたのは揺りかご。
それも、赤子が二人、眠っている。
「…私が産んだ…ルークの子供だ」
「…!」
いま、何て言った!
俺とリーンの子供!?
チラリと仲間達を見ると、アオ以外が硬直して固まっている。
「リーンが産んだ…俺の…子供…」
リーンは、子供を産むことが出来る身体だったのか?
「嬉しくないのか?」
「嬉しいに決まっているだろ!ただ…、まだ…、頭がついていかない」
俺はリーンの事が好きだから、リーンが子供を産んでくれたのは嬉しいに決まってる!
絶対に無理だと思っていたから、よけいに嬉しい。
…て、事は『魔女の森』での、あの時に出来たのか?
体調が悪かったのは、…子供が出来たから魔力の迷走が起きたのか?
に、しても、ルークはチラリと三人を見る。
ガーディ青い顔をして、首を降る。
「俺は知りませんでしたよ。屋敷で子供が産まれたって話は聞いたけど、まさかリーンが…」
そうだろう。
王城で、一緒に書類と戯れていたのだから。
視線をカズキに向ける。
カズキは、ちょこちょこ屋敷に戻っていた筈。
「ミーネ様からは今はいつもと体調が違うから、気お付けて欲しい。とは、言われましたが。いえ、まあ、少し太ったのかと思ってはいたのですが…」
何となくは、気付いていたな…。
「アオ」
アオは知っていたから、驚きもしなかったのだ。
「うっ。リーンさんに口止めされていて…。満月に『人魚の湖』に、放り込まれたくないですし…。なかなか、ルーク様、帰って来られないし…」
アオはしどろもどろで答える。
「なかなか帰ってこないルークが悪いんたぞ!」
リーンは照れ笑いして、言う。
「名前、まだ、決めてないんだ」
「俺が、決めても良いのか?」
「当たり前だろ!それくらい考えろよ!」
「あ~、俺たちはそろそろ…」
そう言って、ガーディと、カズキ、アオは部屋を出ていった。
「抱いてやってくれ」
リーンはすやすやと眠る赤子を抱き上げ、黒髪の赤子をルークに手渡してきた。
「…双子…リーン…」
ルークは目をキョロキョロさせ、慌てふためいた。
いきなり二人の父親になるのか…。
リーンはもう一人の金髪の赤子を抱き上げる。
「なぁ、この子達、ここで育ててくれないか」
ルークはハッとして、リーンを見る。
「長くいすぎて、森に帰っていない。でも、この子達を連れていくわけにもいかない」
「出ていくのか?」
俺たちを置いて…。
「…帰ってくるよ。…なるべく。この子達の成長も見たいし、ルークもいるし…」
リーンは頬を染めて、言う。
「もう少ししたら、少しづつ、森に入るよ…」
もちろん『人魚の湖』の集落関係だ。
始は、住民登録をだけだったが、中には医者に行けず体調が悪化している者や、学校が無く、大人が知っている知識を教えているだけで、正しいものと不正解のものが入り交じっていた。
なので、病人の事をどうするとか、教育をどうするとか、その他、考えることと、やることが有りすぎた。
それが、集落十ヶ所分と、点在している住宅分。
時折、屋敷に戻るが、深夜だったり、早朝には出発したりと、リーンとすら会話できていなかった。
リーンは魔力の迷走で、体調を崩してから、だいぶん良くなったものの、小屋で暮らしている。
取りあえずは、リーンの寝顔を見て、まだ、ここにいてくれると、実感して、髪を撫でて癒されて、出掛けていた。
リーンを、カザナの屋敷に連れていってから、三ヶ月が過ぎようとしていた。
リーンに会えない!
『人魚の湖』の集落の事がだいたいうまく回り始めた頃、王城から召集がかかった。
今回の報告や経緯などを、改めて報告会が開かれ、今後の対応などを決めていくそうだ。
今まで、それらから避けて、兄に任せっきりにしていたが、今回は『海の魔法石』の事もあって、逃げられない。
リーンに会いたい…。
こんなに誰かを欲して、会いたいなど思ったことはなかった。
報告会が終わったら会いに行こう。
ジェスは相変わらず、兄に連れ回されているし、ガーディは書類作成、カズキとアオは集落回りをしていて、あまり屋敷には戻っていないらしい。
今までも旅に出ると、長い間、屋敷に帰らないことはあったが、そこにリーンが居ると言うだけで、早く帰りたかった。
やっと報告会が終わって、カザナの屋敷に戻ることになった。
その頃には、書類作成に追われたガーディは燃え尽き、一緒に帰る事になっていた。
カズキとアオもそろそろ、屋敷に戻れるらしい。
ジェスは、今度、真ん中の兄の元へ連れていかれた。
何でも、王国警備隊長をやっている兄の、幼馴染みの神官が、行方不明になったらしい。
俺も幼い頃、よく遊んでもらった覚えがある。
早く見つかると良いが…。
早朝に王城を出て、昼過ぎには、カザナの屋敷に到着した。
何故か屋敷中がソワソワして、落ち着きがない。
何かあったのか?
執事はいつも通り落ち着いていて、
「リーン様は小屋に居られます」
と、告げてきた。
早く会いたい、と、顔に出ていてのか?
ルークは顔を赤らめ、小屋へと向かった。
小屋へ行くと、リーンはベッドに横たわり、眠っているようだ。
「リーン」
声をかけ、リーンの髪を久しぶりに撫でていると、目蓋がほんの少し開いた。
「…お帰り。…ルークに…伝えたい事…がたくさん有って、…でも、…夜泣きで…寝不足で…交代で…見てくれて…」
まだ眠いのか、リーンの目蓋が閉じていく。
いま、何て言った?
「夜泣きで寝不足?」
何の話をしている?!
「おい!起きろ!説明しろ!」
ルークはリーンの身体を揺さぶり、身体を起こさせて、何とか目覚めさせる。
「んっ…」
このままでは、話にならない。
ルークは、まだ寝ぼけているリーンの身体を抱き上げ、屋敷の方に戻り始めた。
ルークがリーンを抱えて、屋敷の中へ入ると、やはり皆ソワソワしている。
屋敷中で、何を隠している!?
ルークがリーンの部屋に行くと、知らない女性とメイドが、絨毯の敷かれた床に座って、何かを揺らしていた。
「ルーク様!」
驚いたメイドの子が立ち上がり、一礼する。
「…ありがとう。…私から…話すから…」
リーンがそう言うと、メイドと女性は部屋を出ていった。
ルークがリーンをベッドの端に下ろすと、ガーディと、カズキ、アオが部屋に入ってきた。
「リーン。これはどういう事だ?」
彼女達が揺らしていたのは揺りかご。
それも、赤子が二人、眠っている。
「…私が産んだ…ルークの子供だ」
「…!」
いま、何て言った!
俺とリーンの子供!?
チラリと仲間達を見ると、アオ以外が硬直して固まっている。
「リーンが産んだ…俺の…子供…」
リーンは、子供を産むことが出来る身体だったのか?
「嬉しくないのか?」
「嬉しいに決まっているだろ!ただ…、まだ…、頭がついていかない」
俺はリーンの事が好きだから、リーンが子供を産んでくれたのは嬉しいに決まってる!
絶対に無理だと思っていたから、よけいに嬉しい。
…て、事は『魔女の森』での、あの時に出来たのか?
体調が悪かったのは、…子供が出来たから魔力の迷走が起きたのか?
に、しても、ルークはチラリと三人を見る。
ガーディ青い顔をして、首を降る。
「俺は知りませんでしたよ。屋敷で子供が産まれたって話は聞いたけど、まさかリーンが…」
そうだろう。
王城で、一緒に書類と戯れていたのだから。
視線をカズキに向ける。
カズキは、ちょこちょこ屋敷に戻っていた筈。
「ミーネ様からは今はいつもと体調が違うから、気お付けて欲しい。とは、言われましたが。いえ、まあ、少し太ったのかと思ってはいたのですが…」
何となくは、気付いていたな…。
「アオ」
アオは知っていたから、驚きもしなかったのだ。
「うっ。リーンさんに口止めされていて…。満月に『人魚の湖』に、放り込まれたくないですし…。なかなか、ルーク様、帰って来られないし…」
アオはしどろもどろで答える。
「なかなか帰ってこないルークが悪いんたぞ!」
リーンは照れ笑いして、言う。
「名前、まだ、決めてないんだ」
「俺が、決めても良いのか?」
「当たり前だろ!それくらい考えろよ!」
「あ~、俺たちはそろそろ…」
そう言って、ガーディと、カズキ、アオは部屋を出ていった。
「抱いてやってくれ」
リーンはすやすやと眠る赤子を抱き上げ、黒髪の赤子をルークに手渡してきた。
「…双子…リーン…」
ルークは目をキョロキョロさせ、慌てふためいた。
いきなり二人の父親になるのか…。
リーンはもう一人の金髪の赤子を抱き上げる。
「なぁ、この子達、ここで育ててくれないか」
ルークはハッとして、リーンを見る。
「長くいすぎて、森に帰っていない。でも、この子達を連れていくわけにもいかない」
「出ていくのか?」
俺たちを置いて…。
「…帰ってくるよ。…なるべく。この子達の成長も見たいし、ルークもいるし…」
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