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魔女の森~対価~ *リーンの過去編です~
魔女の森の貯水槽
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『魔女の宴』の為の、『魔女の歌』が始まった。
魔女王であるソフィアは魔女の森の結界を解いて、全てを監視するため、お城の広場いっぱいに、巨大な魔方陣を描き、『魔女の歌』に誘われて入ってくる男達を監視していた。
リーンが『魔女の森』に入って、視線を感じていたのは、この為だったことが分かった。
リーンは、地下に作られた『貯水槽』の中にいた。
『魔女の街』には影響の無い、お城の側の森の地下に、まるで洞窟みたいな空洞を作り、鍾乳石で柱や周囲をコーティングして、自然の状態を保ちながら、水を貯水する場を作った。
リーンは最後の仕上げのために、『魔女の森』の結界が解かれるのを待っていた。
結界が有るために、リーンの魔法の力が半減してしまうからだ。
リーンは目を閉じ、自分に掛けてある、『保有魔力』を押さえる魔法を解く。
最後の仕上げは、この貯水槽全体に浄化の魔法を掛ける事。
巨体な『貯水槽』に入ってくる水を常に浄化し続け、溜まっている間も浄化している状態を固定させ、リーンがいなくても常に起動し続けるように組み込まなくてはいけない。
それを地上で使うことが出来るように、道を作り、それに接続出来れば、誰でも水を使えるようにも、しなくてはいけない。
慣れるまではソフィアが接続することに、なるだろうが…。
リーンは計画通り、浄化の魔法を張り付け、水の道を『構築』していく。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
全てを終える頃には、立っているのもやっとで、息も絶え絶えになっていた。
「…ちょっと…最近、…魔力を…使いすぎ?」
リーンはコーティングしたばかりの壁に寄りかかり、壁づたいにズルズルと、座り込んだ。
身体に力が入らない…。
ちょっとヤバイな…。
「ソフィアに…作ってもらった…『物質保管庫』に…比べれば、まだ、…単純な…魔法…なんだけどな…」
リーンは独り言を呟いて、目を閉じ、意識を失った。
ソフィアは『魔女の歌』が終わり、一旦、『魔女の森』の結界を元に戻した。
さすがに一日中、監視するのは疲れてしまう。
『魔女の宴』に集まった男は魔女達が、選んで宴の部屋に連れていく。
ソフィアはリーンの事が気になって、お城から『魔女の森』の地下に作った『貯水槽』への階段を、壁に設置された『明かり玉』に照らされなから降りていった。
ここにでは余分な魔法は使えない。
『貯水槽』だけの空間なので、滅多なことは無いだろうが、魔法を書き換えてしまう可能性があるからだ。
貯水槽の入口の扉を開けると、空気が変わった。
清浄な『浄化』の魔法、独特の張り積めた空気。
貯水槽の水が入ったとき、全体を見渡せる場所まで歩くと、リーンが壁に寄りかかって眠っていた。
リーンの側にしゃがみ込み、眠っている顔を覗く。
「今度は、私の事を受け入れてくれるかしら」
ソフィアはリーンに触れると、『移動』を使って自分の部屋のベッドに移動した。
リーンが目覚めると、貯水槽ではなく、見覚えの有る天井だった。
身体を起こし辺りを見回すと、天幕がありソフィアの部屋だと認識する。
そう言えば、『物質保管庫』や『貯水槽』の話になってから、ユキのいた小屋を使っていて、ここへは来ていなかった。
不意に人の気配がして、『移動』でソフィアが戻ってきたみたいだった。
「目が覚めたみたいね」
天幕の向こうからソフィアの声がする。
「ああ。…『貯水槽』予定通りは使えるはず。あとは、水が入ってみないと分からないかが…」
「そうね。ありがとう」
そう言ってソフィアが天幕を開けて、ベッドの上に黒色の下着姿で上がって来る。
「ソフィア?」
「『魔力の交合』…今度は、私を受け入れてくれるかしら」
「…受け入れるよ」
リーンは断ることは出来なかった。
魔力が少ないのはリーンの方だ。
『保有魔力』が同じくらいの者と、『魔力の交合』をすれば、確実に魔力が回復するのは、フールシアの時で実証済みだ。
「ふふっ。良かった」
ソフィアは微笑み、リーンに口付けた。
ソフィアのベッドで眠るリーンを起こさないように、そっと降りて、棚の上に置かれていた小箱を手に取ると、箱を開けた。
箱の中にはユキが付けていた、リーンの金色の耳飾りが入っていた。
ソフィアはそれを手に取ると、眠るリーンの側に来て、リーンの左耳に着け、魔法を掛ける。
「リーンに、ささやかな幸せを」
耳飾りが一瞬光り、月が沈み、『魔女の宴』の終わりを告げた。
朝日が昇る前に、リーンは『魔女の森』に来ていた。
『魔女の森』は、入って来た場所からしか、出られないのだそうだ。
色々と制約が有るらしい。
リーンが入って来たのは、山葡萄が整備された山側からなので、そこまでソフィアが送ってくれた。
「私に用事が有るときは、『物質保管庫』の一番右下に手紙を入れてくれれば、見るかもしれない。何年後かに…」
そう言って微笑む。
「だから、また、満月に来なさい。『貯水槽』の事も気になるだろうし…」
「出来たら、すぐに帰りたいけど…」
なかなか、魔女の森から出られないのは、さすがに困る。
「帰れたらね」
そう言って、ソフィアとは別れ、森の中に戻っていった。
あれから、何度か『魔女の森』に訪ねていき、『貯水槽』の稼働の状態を確認していた。
薬師の少女も少しは慣れてくれて、リーンの知らない薬草や、魔法の薬の本をくれたりした。
ただ、『魔女の森』の、香水のきつい魔女達には、リーンの方が慣れなかった。
だから、ソフィアはリーンにとって不利益になることは、しないと思っていた。
リーンの過信と、ソフィアの好奇心。
ソフィアの好奇心の方が勝ってしまったのだ。
『魔女の宴』が、始まろうとしていた。
魔女王であるソフィアは魔女の森の結界を解いて、全てを監視するため、お城の広場いっぱいに、巨大な魔方陣を描き、『魔女の歌』に誘われて入ってくる男達を監視していた。
リーンが『魔女の森』に入って、視線を感じていたのは、この為だったことが分かった。
リーンは、地下に作られた『貯水槽』の中にいた。
『魔女の街』には影響の無い、お城の側の森の地下に、まるで洞窟みたいな空洞を作り、鍾乳石で柱や周囲をコーティングして、自然の状態を保ちながら、水を貯水する場を作った。
リーンは最後の仕上げのために、『魔女の森』の結界が解かれるのを待っていた。
結界が有るために、リーンの魔法の力が半減してしまうからだ。
リーンは目を閉じ、自分に掛けてある、『保有魔力』を押さえる魔法を解く。
最後の仕上げは、この貯水槽全体に浄化の魔法を掛ける事。
巨体な『貯水槽』に入ってくる水を常に浄化し続け、溜まっている間も浄化している状態を固定させ、リーンがいなくても常に起動し続けるように組み込まなくてはいけない。
それを地上で使うことが出来るように、道を作り、それに接続出来れば、誰でも水を使えるようにも、しなくてはいけない。
慣れるまではソフィアが接続することに、なるだろうが…。
リーンは計画通り、浄化の魔法を張り付け、水の道を『構築』していく。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
全てを終える頃には、立っているのもやっとで、息も絶え絶えになっていた。
「…ちょっと…最近、…魔力を…使いすぎ?」
リーンはコーティングしたばかりの壁に寄りかかり、壁づたいにズルズルと、座り込んだ。
身体に力が入らない…。
ちょっとヤバイな…。
「ソフィアに…作ってもらった…『物質保管庫』に…比べれば、まだ、…単純な…魔法…なんだけどな…」
リーンは独り言を呟いて、目を閉じ、意識を失った。
ソフィアは『魔女の歌』が終わり、一旦、『魔女の森』の結界を元に戻した。
さすがに一日中、監視するのは疲れてしまう。
『魔女の宴』に集まった男は魔女達が、選んで宴の部屋に連れていく。
ソフィアはリーンの事が気になって、お城から『魔女の森』の地下に作った『貯水槽』への階段を、壁に設置された『明かり玉』に照らされなから降りていった。
ここにでは余分な魔法は使えない。
『貯水槽』だけの空間なので、滅多なことは無いだろうが、魔法を書き換えてしまう可能性があるからだ。
貯水槽の入口の扉を開けると、空気が変わった。
清浄な『浄化』の魔法、独特の張り積めた空気。
貯水槽の水が入ったとき、全体を見渡せる場所まで歩くと、リーンが壁に寄りかかって眠っていた。
リーンの側にしゃがみ込み、眠っている顔を覗く。
「今度は、私の事を受け入れてくれるかしら」
ソフィアはリーンに触れると、『移動』を使って自分の部屋のベッドに移動した。
リーンが目覚めると、貯水槽ではなく、見覚えの有る天井だった。
身体を起こし辺りを見回すと、天幕がありソフィアの部屋だと認識する。
そう言えば、『物質保管庫』や『貯水槽』の話になってから、ユキのいた小屋を使っていて、ここへは来ていなかった。
不意に人の気配がして、『移動』でソフィアが戻ってきたみたいだった。
「目が覚めたみたいね」
天幕の向こうからソフィアの声がする。
「ああ。…『貯水槽』予定通りは使えるはず。あとは、水が入ってみないと分からないかが…」
「そうね。ありがとう」
そう言ってソフィアが天幕を開けて、ベッドの上に黒色の下着姿で上がって来る。
「ソフィア?」
「『魔力の交合』…今度は、私を受け入れてくれるかしら」
「…受け入れるよ」
リーンは断ることは出来なかった。
魔力が少ないのはリーンの方だ。
『保有魔力』が同じくらいの者と、『魔力の交合』をすれば、確実に魔力が回復するのは、フールシアの時で実証済みだ。
「ふふっ。良かった」
ソフィアは微笑み、リーンに口付けた。
ソフィアのベッドで眠るリーンを起こさないように、そっと降りて、棚の上に置かれていた小箱を手に取ると、箱を開けた。
箱の中にはユキが付けていた、リーンの金色の耳飾りが入っていた。
ソフィアはそれを手に取ると、眠るリーンの側に来て、リーンの左耳に着け、魔法を掛ける。
「リーンに、ささやかな幸せを」
耳飾りが一瞬光り、月が沈み、『魔女の宴』の終わりを告げた。
朝日が昇る前に、リーンは『魔女の森』に来ていた。
『魔女の森』は、入って来た場所からしか、出られないのだそうだ。
色々と制約が有るらしい。
リーンが入って来たのは、山葡萄が整備された山側からなので、そこまでソフィアが送ってくれた。
「私に用事が有るときは、『物質保管庫』の一番右下に手紙を入れてくれれば、見るかもしれない。何年後かに…」
そう言って微笑む。
「だから、また、満月に来なさい。『貯水槽』の事も気になるだろうし…」
「出来たら、すぐに帰りたいけど…」
なかなか、魔女の森から出られないのは、さすがに困る。
「帰れたらね」
そう言って、ソフィアとは別れ、森の中に戻っていった。
あれから、何度か『魔女の森』に訪ねていき、『貯水槽』の稼働の状態を確認していた。
薬師の少女も少しは慣れてくれて、リーンの知らない薬草や、魔法の薬の本をくれたりした。
ただ、『魔女の森』の、香水のきつい魔女達には、リーンの方が慣れなかった。
だから、ソフィアはリーンにとって不利益になることは、しないと思っていた。
リーンの過信と、ソフィアの好奇心。
ソフィアの好奇心の方が勝ってしまったのだ。
『魔女の宴』が、始まろうとしていた。
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