98 / 462
魔女の森~対価~ *リーンの過去編です~
森の監視
しおりを挟む
リーンは初めて入る森に、不信を抱いていた。
結界が有った場所から森の中に入って直ぐ、誰かに見られているような気がして、しょうがなかった。
気配はない。
だけど、視線を感じる…。
リーンは奥へと進みながら、慎重に辺りを確認していった。
どれくらい歩いただろうか、山の斜面に綺麗に整備された、山葡萄の棚が作られていた。
棚は背丈ほどあって、小さな実が連なって並んでいる。
それが、幾つもあるのだから、この近くに住む住人が作っているのだろう。
そこから細い道が有り、少し進むと、山が下り坂になっていて、道なりに進んでいった。
道の両脇は木々で覆われていて、蛇行しながら下っている筈なのに、進んでいる気がしない。
「…。」
視線もまだ感じる。
リーンは思いきって『風霊』を呼び、『瞬脚移動』で一気に移動した。
時々、視線を感じなくなるが、すぐに追い付いて来る感じがして、やはり誰かに監視されているみたいだ。
結界が有った事といい、視線を感じる事といい、ここは、どこか違う種族の領域に入り込んでしまったのではないかと、思うようになってきた。
そんな事を思いながら、山を下っていくと、突然、茶髪の派手な黒いドレスを着た女性が姿を現した。
いや、出現したと言ったほうが良いのだろうか。
まるで、何処からか『移動』をしてきたみたいに…。
女性は目を見開き、頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「ソフィア様。可愛い、綺麗な男ですよ。私がもらっても良いですか?」
『捕まえれたらね。その男『移動』が出来るわよ』
何処からともなく、森全体に響く声が返事する。
「ふふっ。最高じゃないですか!!」
女性がフッと消えて、リーンの目の前に『移動』してきて、慌てて後ずさる。
「反射神経が、良いわね」
にっこりと微笑まれたが、きつい香水の匂いが鼻について、顔をしかめ、無意識にリーンは『移動』で、その場を離れた。
「何なんだ。ここは…」
リーンは『風霊』を使い空中に浮いて『移動』した。
彼女も面白そうに、『風霊』を使い空中に浮いて追いかけてくる。
捕まったら、イヤな予感しかない。
『ミヤ。街に追い込みなさい』
「はい。ソフィア様」
そんなやり取りを、リーンに聞こえるように話している。
…街が有るのか?
そう思っていると、森の木が無くなり、急に赤い家の屋根が目に入った。
…こんな所に街がある…。
赤い屋根と緑の木々が点在し、所々に広場や噴水が有り、多くの人影が見える。
と、言うか今、『移動』させられた?!
それだけの、魔力の使い手…。
リーンが振り返ると、シンプルで細目の白い城とさっきの女性が目に入った。
こんな所にお城が…。
「今夜は満月。『魔女の宴』からは、逃げられなくてよ」
女性が微笑むと、次々と、同じように黒いドレスを着た女性が近づいて来た。
箒に乗ったり、『風霊』を使って浮いていたり、使い魔だろうか、名前の知らない生き物に乗った者がリーンの回りを囲み始めた。
…魔女だと?!
魔女の事は話でしか聞いたことがなく、『魔女の宴』の事も噂には聞いていた。
…どうやって逃げる!
『一戦交えて、捕まえれそうに無ければ止めて置きなさい。魔力は弱くても、優しい男が待っているわよ』
また、空間を響かすような声が聞こえてくる。
魔女達は魔法陣を作り出し、拘束魔法を繰り出してくる。
『鉄の鎖』『水の檻』『見えない鎖』『蔦のネット』
リーンはそれらの全てを避けて、凍らせて砕き、切り裂き、魔女達の拘束魔法から逃れた。
ここは『魔女の領域』。
いつもみたいに、『風霊』『水霊』が上手く扱えない。
長期戦になればこちらの部が悪い…。
何とか気を反らして…。
「『断罪の十字架』」
「くっ?!」
急に背後から鎖で引っ張られ、いつの間にか出現していた、十字架に張り付けにされた。
今度は、簡単にほどけない!
見れば、目の前に、金髪の黒いドレスを着た女性が、空中に浮いていた。
何者だ!
他の魔女とは違って『保有魔力』が桁違いに違う…。
それも、隠そうとはせず、圧倒的な魔力…。
「今の貴女達には敵わないわ。彼、『保有魔力』を魔法で押さえている」
先ほどから、響いていた声の主だ。
それも、リーンの『保有魔力』に気付いている。
「ソフィア様」
「下で、優しくしてくれる男を探しなさい」
諦めきれない仲間の魔女に、優しく囁やくと、魔女達が地上に降りていき、彼女はリーンに向かって微笑んだ。
「久しぶりに楽しめそうね」
そしてリーンを張り付けにした『断罪の十字架』ごと、彼女は一緒に『移動』した。
結界が有った場所から森の中に入って直ぐ、誰かに見られているような気がして、しょうがなかった。
気配はない。
だけど、視線を感じる…。
リーンは奥へと進みながら、慎重に辺りを確認していった。
どれくらい歩いただろうか、山の斜面に綺麗に整備された、山葡萄の棚が作られていた。
棚は背丈ほどあって、小さな実が連なって並んでいる。
それが、幾つもあるのだから、この近くに住む住人が作っているのだろう。
そこから細い道が有り、少し進むと、山が下り坂になっていて、道なりに進んでいった。
道の両脇は木々で覆われていて、蛇行しながら下っている筈なのに、進んでいる気がしない。
「…。」
視線もまだ感じる。
リーンは思いきって『風霊』を呼び、『瞬脚移動』で一気に移動した。
時々、視線を感じなくなるが、すぐに追い付いて来る感じがして、やはり誰かに監視されているみたいだ。
結界が有った事といい、視線を感じる事といい、ここは、どこか違う種族の領域に入り込んでしまったのではないかと、思うようになってきた。
そんな事を思いながら、山を下っていくと、突然、茶髪の派手な黒いドレスを着た女性が姿を現した。
いや、出現したと言ったほうが良いのだろうか。
まるで、何処からか『移動』をしてきたみたいに…。
女性は目を見開き、頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「ソフィア様。可愛い、綺麗な男ですよ。私がもらっても良いですか?」
『捕まえれたらね。その男『移動』が出来るわよ』
何処からともなく、森全体に響く声が返事する。
「ふふっ。最高じゃないですか!!」
女性がフッと消えて、リーンの目の前に『移動』してきて、慌てて後ずさる。
「反射神経が、良いわね」
にっこりと微笑まれたが、きつい香水の匂いが鼻について、顔をしかめ、無意識にリーンは『移動』で、その場を離れた。
「何なんだ。ここは…」
リーンは『風霊』を使い空中に浮いて『移動』した。
彼女も面白そうに、『風霊』を使い空中に浮いて追いかけてくる。
捕まったら、イヤな予感しかない。
『ミヤ。街に追い込みなさい』
「はい。ソフィア様」
そんなやり取りを、リーンに聞こえるように話している。
…街が有るのか?
そう思っていると、森の木が無くなり、急に赤い家の屋根が目に入った。
…こんな所に街がある…。
赤い屋根と緑の木々が点在し、所々に広場や噴水が有り、多くの人影が見える。
と、言うか今、『移動』させられた?!
それだけの、魔力の使い手…。
リーンが振り返ると、シンプルで細目の白い城とさっきの女性が目に入った。
こんな所にお城が…。
「今夜は満月。『魔女の宴』からは、逃げられなくてよ」
女性が微笑むと、次々と、同じように黒いドレスを着た女性が近づいて来た。
箒に乗ったり、『風霊』を使って浮いていたり、使い魔だろうか、名前の知らない生き物に乗った者がリーンの回りを囲み始めた。
…魔女だと?!
魔女の事は話でしか聞いたことがなく、『魔女の宴』の事も噂には聞いていた。
…どうやって逃げる!
『一戦交えて、捕まえれそうに無ければ止めて置きなさい。魔力は弱くても、優しい男が待っているわよ』
また、空間を響かすような声が聞こえてくる。
魔女達は魔法陣を作り出し、拘束魔法を繰り出してくる。
『鉄の鎖』『水の檻』『見えない鎖』『蔦のネット』
リーンはそれらの全てを避けて、凍らせて砕き、切り裂き、魔女達の拘束魔法から逃れた。
ここは『魔女の領域』。
いつもみたいに、『風霊』『水霊』が上手く扱えない。
長期戦になればこちらの部が悪い…。
何とか気を反らして…。
「『断罪の十字架』」
「くっ?!」
急に背後から鎖で引っ張られ、いつの間にか出現していた、十字架に張り付けにされた。
今度は、簡単にほどけない!
見れば、目の前に、金髪の黒いドレスを着た女性が、空中に浮いていた。
何者だ!
他の魔女とは違って『保有魔力』が桁違いに違う…。
それも、隠そうとはせず、圧倒的な魔力…。
「今の貴女達には敵わないわ。彼、『保有魔力』を魔法で押さえている」
先ほどから、響いていた声の主だ。
それも、リーンの『保有魔力』に気付いている。
「ソフィア様」
「下で、優しくしてくれる男を探しなさい」
諦めきれない仲間の魔女に、優しく囁やくと、魔女達が地上に降りていき、彼女はリーンに向かって微笑んだ。
「久しぶりに楽しめそうね」
そしてリーンを張り付けにした『断罪の十字架』ごと、彼女は一緒に『移動』した。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる