95 / 462
魔女の宴
ソフィアの思惑 1
しおりを挟む ソフィアは驚いていた。
リーンが『満月の宴』だと言うのに、人を連れて訪ねてきたのだ。
たまたまとは言え、満月がどう言うものか分かっていて、連れてきたのだから、とても珍しい事だ。
どんな人を連れてきたのかと、入口近くの部屋で様子を見ていたが、警戒してフードを取らず、リーンと親しげに話をしている。
いつまでも待たせるわけにはいかず、城に来るよう伝言を伝え、城へたどり着くための迷路へ、使い魔の黒い蝶々を送り、リーンの案内をさせた。
リーンとその人は離れないよう手を繋いで、歩いてくる。
…あまり人と関わらないように、してきたリーンを知っているだけに不思議な光景だった。
城の中に入って来たリーン達を、謁見の広場で待ち構え、椅子に座ってまっていた。
相変わらず、出会った頃のままの、可愛い青年の姿のリーン。
「久しぶりね。満月に訪ねて来るとは、私のベッドに入りに来たのか?」
ソフィアは久しぶりに嬉しくて、そんな軽口を言うと、リーンは苦笑いして答えた。
「そんなわけ無いだろ。彼に掛けられている魔法がどんなもので、解読する方法が無いか聞きに来ただけだ」
そんな事を聞きに来るなんて、有り得ない…。
それは、人の未来を変え、関わり合うこと…。
ソフィアはリーンの横の、手を繋いだままの男を見る。
リーンより背が高く、マントの上からでも体格が申し分ないくらい好みだ。
「フードを取れ」
男はリーンを見て、リーンが頷くと、手を離し、魔力を隠すマントのフードを取った。
若い金髪の好青年ではないか!
外の魔女達が気付けば、きっと逃がしはしないだろう。
でも、どこかで見た顔立ち…。
…カザンナ王国…薬師の魔女を連れていった、あの王子にそっくり出はないか!?
ソフィアはじっと男を観察し笑う。
「国には関わらなかったんじゃないのか?」
「色々と成り行きで…」
リーンが苦笑いしていると、言うことは、そうなのだろう。
確か、第二王子は黒髪だったから…第三王子の方か…。
『解読』の魔法を使えば、すぐに分かることだが。
ソフィアは手を王子に向けてかざすと、王子の身体をふわりと浮き上がらせ、壁に磔にした。
「くっ…」
王子が顔を歪め、回りに解読の魔法陣を浮かび上がらせ、いくつもの文字が浮き出て来ると、ソフィアはそれをじっと見つめる。
「小さい頃から…封じられている。魔力が強いから、その身体が壊れないように、母親が魔法を掛けているわね…」
と、言うことは、魔法を掛けたのは王妃か…。
王子は目を見開いて、驚いている。
だけど、これだけの魔法を使えるのは…魔女の可能性がある。
だがそれは、問われていない。
「溢れた魔力は、外へ、空へ溶け込んで、カザンナ王国を包んでいる」
「…。」
「解く方法は?」
…解き方…文字で書かれている?
これも珍しい事だ。
「そうだな。…ふふっ。なんだこれは?」
暗号のような言葉。
「…見えないものが見えるようになったら、少しずつ魔法が解除される…。解かれるではなく、解除だそうだ」
解除と言うことは、解けるように掛けられた魔法。
「段階的に?」
リーンが不思議そうに訪ねてくる。
「そうね。複雑な魔法よ」
王妃は、魔力が強すぎる王子の魔力を封じて、いつか解かれるように、施した。と、言うことだろうか…。
王子の回りの光る魔法陣が消え、するずると壁伝いに、ずり落ち、地上に足付ける。
「使えるように、なるんだな」
王子は、すっきりとした顔をして、ソフィアに問う。
真っ直ぐな心…。
もしかしてリーンは、あの時のように、気付かない内に心を奪われているのか?
だから、危険なのを分かっていて、ココまで連れてきた?
「見えないものが見えるようになったら、ね。ふふっ。これは記憶なのか、物なのか、人なのか、限定されていない。頑張って探すのね」
もしそれが、リーンとの繋がりが関係しているのならば、この王子に掛けられた魔法は段階的に解除されていく。
「ああ。見つけてやる」
力が溢れんばかりの王子であれば、外の上級魔女は気付いているはず。
それに、リーンは気付くことが出来るだろうか?
…慌てる姿も見ていて楽しいが。
「さて、対価はどうするリーン」
ソフィアはリーンに向き直って、微笑む。
「『天水球』が必要だろ」
そう言って、腰に下げた袋から取り出した、『天水球』を見せて来た。
「よく分かっているわね」
今、一番欲しいもの…。
この魔女の森を維持していくための、水なのだ。
ソフィアはにっこり微笑んで、手を差し出した。
リーンはそれを持って、近づき手渡たして来たので、リーンの手首を引っ張り、顔を近付けさせ、囁いた。
「リーン。何があっても、森の管理者で有ることを忘れるな」
リーンはじっとソフィアを見つめる。
「何が見えた」
「そうだな、リーンにとって、予想外の事が起こるかも知れない。それが、リーンにとって、幸せな事なのか、私には分からない」
王子の中にリーンとの繋がりが見えた。
これが意味するもの…。
「…。曖昧だな」
ソフィアは楽しそうに笑う。
教えては、あげない。
「ふふっ。私はリーンがどんな顔をするか、楽しみだ」
「…。」
はっきりと何が起こるのかは、私にも分からない。
ただ、これが、ココが、リーンが変化するキッカケになるのだ。
リーンが『満月の宴』だと言うのに、人を連れて訪ねてきたのだ。
たまたまとは言え、満月がどう言うものか分かっていて、連れてきたのだから、とても珍しい事だ。
どんな人を連れてきたのかと、入口近くの部屋で様子を見ていたが、警戒してフードを取らず、リーンと親しげに話をしている。
いつまでも待たせるわけにはいかず、城に来るよう伝言を伝え、城へたどり着くための迷路へ、使い魔の黒い蝶々を送り、リーンの案内をさせた。
リーンとその人は離れないよう手を繋いで、歩いてくる。
…あまり人と関わらないように、してきたリーンを知っているだけに不思議な光景だった。
城の中に入って来たリーン達を、謁見の広場で待ち構え、椅子に座ってまっていた。
相変わらず、出会った頃のままの、可愛い青年の姿のリーン。
「久しぶりね。満月に訪ねて来るとは、私のベッドに入りに来たのか?」
ソフィアは久しぶりに嬉しくて、そんな軽口を言うと、リーンは苦笑いして答えた。
「そんなわけ無いだろ。彼に掛けられている魔法がどんなもので、解読する方法が無いか聞きに来ただけだ」
そんな事を聞きに来るなんて、有り得ない…。
それは、人の未来を変え、関わり合うこと…。
ソフィアはリーンの横の、手を繋いだままの男を見る。
リーンより背が高く、マントの上からでも体格が申し分ないくらい好みだ。
「フードを取れ」
男はリーンを見て、リーンが頷くと、手を離し、魔力を隠すマントのフードを取った。
若い金髪の好青年ではないか!
外の魔女達が気付けば、きっと逃がしはしないだろう。
でも、どこかで見た顔立ち…。
…カザンナ王国…薬師の魔女を連れていった、あの王子にそっくり出はないか!?
ソフィアはじっと男を観察し笑う。
「国には関わらなかったんじゃないのか?」
「色々と成り行きで…」
リーンが苦笑いしていると、言うことは、そうなのだろう。
確か、第二王子は黒髪だったから…第三王子の方か…。
『解読』の魔法を使えば、すぐに分かることだが。
ソフィアは手を王子に向けてかざすと、王子の身体をふわりと浮き上がらせ、壁に磔にした。
「くっ…」
王子が顔を歪め、回りに解読の魔法陣を浮かび上がらせ、いくつもの文字が浮き出て来ると、ソフィアはそれをじっと見つめる。
「小さい頃から…封じられている。魔力が強いから、その身体が壊れないように、母親が魔法を掛けているわね…」
と、言うことは、魔法を掛けたのは王妃か…。
王子は目を見開いて、驚いている。
だけど、これだけの魔法を使えるのは…魔女の可能性がある。
だがそれは、問われていない。
「溢れた魔力は、外へ、空へ溶け込んで、カザンナ王国を包んでいる」
「…。」
「解く方法は?」
…解き方…文字で書かれている?
これも珍しい事だ。
「そうだな。…ふふっ。なんだこれは?」
暗号のような言葉。
「…見えないものが見えるようになったら、少しずつ魔法が解除される…。解かれるではなく、解除だそうだ」
解除と言うことは、解けるように掛けられた魔法。
「段階的に?」
リーンが不思議そうに訪ねてくる。
「そうね。複雑な魔法よ」
王妃は、魔力が強すぎる王子の魔力を封じて、いつか解かれるように、施した。と、言うことだろうか…。
王子の回りの光る魔法陣が消え、するずると壁伝いに、ずり落ち、地上に足付ける。
「使えるように、なるんだな」
王子は、すっきりとした顔をして、ソフィアに問う。
真っ直ぐな心…。
もしかしてリーンは、あの時のように、気付かない内に心を奪われているのか?
だから、危険なのを分かっていて、ココまで連れてきた?
「見えないものが見えるようになったら、ね。ふふっ。これは記憶なのか、物なのか、人なのか、限定されていない。頑張って探すのね」
もしそれが、リーンとの繋がりが関係しているのならば、この王子に掛けられた魔法は段階的に解除されていく。
「ああ。見つけてやる」
力が溢れんばかりの王子であれば、外の上級魔女は気付いているはず。
それに、リーンは気付くことが出来るだろうか?
…慌てる姿も見ていて楽しいが。
「さて、対価はどうするリーン」
ソフィアはリーンに向き直って、微笑む。
「『天水球』が必要だろ」
そう言って、腰に下げた袋から取り出した、『天水球』を見せて来た。
「よく分かっているわね」
今、一番欲しいもの…。
この魔女の森を維持していくための、水なのだ。
ソフィアはにっこり微笑んで、手を差し出した。
リーンはそれを持って、近づき手渡たして来たので、リーンの手首を引っ張り、顔を近付けさせ、囁いた。
「リーン。何があっても、森の管理者で有ることを忘れるな」
リーンはじっとソフィアを見つめる。
「何が見えた」
「そうだな、リーンにとって、予想外の事が起こるかも知れない。それが、リーンにとって、幸せな事なのか、私には分からない」
王子の中にリーンとの繋がりが見えた。
これが意味するもの…。
「…。曖昧だな」
ソフィアは楽しそうに笑う。
教えては、あげない。
「ふふっ。私はリーンがどんな顔をするか、楽しみだ」
「…。」
はっきりと何が起こるのかは、私にも分からない。
ただ、これが、ココが、リーンが変化するキッカケになるのだ。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる