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魔女の宴 

解読~ルーク~

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 開かれた、白くて優雅な城の、巨大な城門を抜けると、見たことの無いような花咲いている、華やかな庭園があった。
 赤や黄色、青、紫色など、花の形や大きさも色々で、種類別に区別されていて、管理されている。
 城へ続く道の両サイドに咲き乱れる花畑は、とても美しく、ココが魔女王の城とは思えないだろう。
「…綺麗な花畑だなぁ」
 ルークが思わず口にすると、リーンは苦笑いして答える。
「見た目はね。全部、研究用の花だから、毒を持ってたり、トゲに刺さると痺れたりするから、触れないようにしてね」
「…。」
 ルークはすっと青ざめる。
「それが、調合しだいで薬にもなるんだよ。高級な…」
「…。」
 そのための、貴重な植物を場内で魔女王は育てている。
 少し歩くと、城の入口への扉があり、その前に立つと、勝手に扉が開いた。
 中に入ると謁見の広場があり、その奧の一段高くなっている場所に、魔女王が椅子に座ってまっていた。
「久しぶりね。満月に訪ねて来るとは、私のベッドに入りに来たのか?」
 そう言う、魔女王は金髪碧眼の美女で、身体のラインを見せるようなピッタリとした、黒の刺繍のされたシンプルなドレスを着ていた。
「そんなわけ無いだろ。彼に掛けられている魔法がどんなもので、解読する方法が無いか聞きに来ただけだ」
 魔女王はリーンの横の、手を繋いだままのルークを見る。
「フードを取れ」
 ルークはリーンを見て、リーンが頷くと、手を離し、フードを取った。
 魔女王はじっとルークを観察し笑う。
「国には関わらなかったんじゃないのか?」
「色々と成り行きで…」
 魔女王が手をルークに向けてかざすと、ルークの身体がふわりと浮き上がり、壁にはりつけにされる。
「くっ…」
 ルークが顔を歪めると、ルークの回りに解読の魔法陣が浮かび上がる。
 しばらくすると、いくつもの文字が浮き出てきて、魔女王はそれをじっと見つめる。
「小さい頃から…封じられている。魔力が強いから、その身体が壊れないように、母親が魔法を掛けているわね…」
 ルークは目を見開いて、驚いている。
 確か、ルークの母親は、幼い頃に亡くなったと、聞いていたが…。
「溢れた魔力は、外へ、空へ溶け込んで、カザンナ王国を包んでいる」
「…。」
「解く方法は?」
「そうだな。…ふふっ。なんだこれは?…見えないものが見えるようになったら、少しずつ魔法が解除される…。かれるではなく、解除だそうだ」 
 解除と言うことは、けるように掛けられた魔法。
 少しずつと言うことは。
「段階的に?」
「そうね。複雑な魔法よ」
 ルークの母親は、魔力が強すぎるルークの魔力を封じて、いつかかれるように、施した。
 もしかしたら、もっと早く解除する予定が、ルークが幼い頃に亡くなったため、そのままの状態が継続されたのかも知れない。
 ルークの回りの光る魔法陣が消え、するずると壁伝いに、ずり落ち、地上に足付ける。
「使えるように、なるんだな」
 何処までも前向きなルークは、すっきりとした顔をして、魔女王に問う。
「見えないものが見えるようになったら、ね。ふふっ。これは記憶なのか、物なのか、人なのか、限定されていない。頑張って探すのね」
「ああ。見つけてやる」
「さて、対価はどうするリーン」
 魔女王はリーンに向き直って、微笑む。
 魔女王に解読をしてもらったのだから、大きな対価が必要になる。
 魔女王が一番必要な物。
「『天水球』が必要だろ」
 そう言って、腰に下げた袋から取り出した、『天水球』を魔女に見せる。
「よく分かっているわね」
 魔女王はにっこり微笑んで、手を差し出す。
 リーンはそれを持って、魔女王に近づき手渡す。
 魔女王はリーンの手首を引っ張ると、顔を近付けさせ、ささやいた。
「リーン。何があっても、森の管理者で有ることを忘れるな」
 そう言われて、リーンはじっと魔女王を見る。
 不要な事は、言わない事を知っている。
「何が見えた」
「そうだな、リーンにとって、予想外の事が起こるかも知れない。それが、リーンにとって、幸せな事なのか、私には分からない」
「…。曖昧だな」
 魔女王は楽しそうに笑う。
「ふふっ。私はリーンがどんな顔をするか、楽しみだ」
「…。」
 彼女が言うのなら、何かが起こることは確かだ。
 私の予想外の事…なんだろう…。
 ふと、リーンは思い出して、魔女王に訪ねる。
「まだ、地下水は戻ってこないのか?」
「…ええ。何処かにヒビが入って、流れ出ているとしか、思えないわ」
 数年前から、魔女の森の地下水か減ってきている。
 雨が降っても一定以上に水位が上がらない。
 その為、生活用水が激減し、地下に貯水槽を作り、森の外で『水球』を作り出し、持ってきては水を補充している。
 とはいえ、限界があるのだ。
 リーンの『天水球』は水を圧縮させているので、大量の水が入っている。
 それを魔女王なら簡単に使いこなして、魔女達の生活を守ることが出来るだろう。
「…嫌な感じだな」
「そうなの」
「だったら、『天水球』をもう少し、置いていく『物質保管庫』」
 リーンが手をかざし、ドーナツ状の魔法陣が現れ、中心の引き出しから、『天水球』を二つ取りだす。
 それを魔女王に渡すと、ルークの元に向かった。
 ルークはじっと二人の親しげな様子を見ていて、不機嫌そうに、顔を歪めていた。
「どうした?用事は済んだから、帰ろう」
「ああ」
 二人は魔女王に背を向けて、城の扉に向かった。
「リーン。気付けて帰りなさい。宴が始まるわよ」
「ありがとう。ソフィア」
 リーンはルークと共に、城の扉を出て、花の咲く庭園の道を歩く。
 空はいつの間にか、日が傾き影が長くなっていて、もう少しで日没。
 『魔女の宴』が始まる。
 少しずつ、明かりが灯され、時間が無いことを示していた。
「急ごう」
 ルークがフードを被り、城門を引いて外に出ると、そこには、魔女が三人待っていた。
「月が沈む前に、城を出た」
 リーンはハッとして、ルークの手を取り、空中に浮かんだ。
「『風霊』!!」
 リーンはルークを抱き寄せ、魔女の繰り出す拘束の魔法から逃れる。
「待ち伏せされた。狙いはお前だ!逃げるぞ!」

 
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