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魔女の宴
魔女の値踏み
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リーンとルークは魔女の森に向かって、細い林道を歩いていった。
魔女の森に近付くと、別の場所から体格の良い男がフラりと姿を表し、森の奧に向かっていく。
「あれも、魔女の歌に誘われて来た男なのか?」
「きっと、そうだと思う。彼らまで、助けないよ…。そんな余力は無いから…」
二人は小声で話し、ルークが頷く。
森の奥地まで歩くと、小川が流れていて、木製の橋が掛けられ、その奧にバラのアーチが佇んでいた。
「あの奧は、魔女の領域。覚悟はいい?」
「ああ。」
ルークは頷き、リーンがルークの手を取った。
「リーン?!」
「はぐれると、魔女王の元に行けないから…」
「…だから事前に説明してからにしてくれ…」
ルークは頬を染め、リーンの手を握りしめる。
二人は手を繋いだまま橋を渡り、バラのアーチを潜った。
賑やかな魔女の笑い声が響き、彼女達が近付いてくる。
華やかで豪華な魔女の衣装に身を包み、甘い香水の匂いと、体臭がリーンは苦手だ。
「いい男」
「ちょっと、華奢よね」
「こっちの方が、身体の厚みがあるわよ」
彼女達は、値踏みしながら、訪れる男達の身体を触っていく。
「あら、リーンじゃないの?」
「珍しいわね」
リーンの事を知っている魔女達が、きつい香水の匂いを撒き散らしながら、ニコニコと近付いてくる。
「魔女王に会いに来た。会わせてくれないか?」
「ふふっ。満月に?」
魔女は楽しそうに、顔を近付けてきて、リーンはきつい匂いに顔を歪める。
「偶然だ。聞きたいことがあって来ただけだ」
「ふ~ん。こっちの部屋で待っていて」
魔女はじろじろとリーンを見て、リーンが手を繋いでいる、ルークの顔を覗き込もうと、うろうろしながら近くの部屋に案内された。
そして部屋に入ろうとすると、魔女がルークの腕を掴んだのでヒヤリとする。
「こいつは連れだ」
リーンは掴んだ魔女の手を引き離し、部屋の中に引き寄せる。
「…。」
魔女はチラチラとルークを見ながら、部屋から離れていった。
「…大丈夫なのか?」
ルークは不安そうに訪ねる。
「多分な…。フードは脱ぐなよ。この部屋も監視されている」
「…。」
ルークは脱ぎそうになったフードを慌てて被り直す。
「…ココは、女性ばかりだな」
「男性も居るよ。魔女が産んだ男は、殆んどが下働きをしていて、表に出てくることは少ない」
魔力を強く持っていれば別だが、魔女達の身の回りの事をしている事が多い。
「ここの魔女は、お前の事を知っているんだな…」
「初めてココに来たとき、派手に暴れたからね…。だから、付かず離れず、手は出してこない」
あの時は探し物をしていて、魔女の領域に入ってしまった事に気付かなかった。
それも満月の宴が始まる前で、逃げ回って、魔女王に捕まって、結局、その探し物は魔女王が所持していた。
そして、戻ってきた金色の耳飾り…。
無意識にリーンは、左耳の耳飾りに触れる。
「…だから、お前が危険なんだ…」
「…。」
「逃げる時は、入ってきたバラのアーチと小川を越えろ。その境界を越えれば追ってこない。そんなことに成らないことを願うが…」
リーンは苦笑いで、もしもの時のために、逃げ道だけは教えておく。
案内された部屋に椅子やソファーが有ったが、何が仕掛けられているか分からないので、二人は立ったまま、聞かれても差し障りのない、たわいもない話をして、一時間ほど待たされた。
「魔女王が、お会いになるそうよ」
部屋の様子を伺っていてのか、これ以上は待たせれないと、魔女が迎えに来た。
「案内は不要。道は分かっている」
「そうね」
魔女はやはりルークをじろじろと、見ていく。
ルークの保有魔力に気付いたのだろうか…。
「楽しみだわ」
そう言って魔女は部屋を出ていった。
少し不安も有ったが、用事を済ませて、さっさと帰ろう。
魔女王の城までは、複雑な道を歩く。
「道が動いているみたいだ」
ルークにはそう感じるだろう。
壁が動いて、道が切り替わって、建物が移動する。
「動いているよ。迷宮になっているけど、一本道だから」
「…道が見えるのか?」
「案内がいる。魔女王の使いだ」
ルークの目には見えないが、リーンには魔女王が寄越した黒い蝶々が見えていて、後をついて行ってるのだ。
でなければ、城へは辿り着けないだろう。
ココの魔女は、殆んど道を使わない。
すべて『移動』の魔法で、行きたい場所に行く。
だから、見せかけの道は迷路になっていて、案内がなければ、何処へも行くことは出来ない。
回りの景色が変わるのを無視して、案内の蝶々に付いていくと、突然、目の前に、白くて優雅な城が現れ、巨大な城門が閉ざされていた。
「ココが魔女王の城…」
ルークが見上げると、城門がゆっくりと開いた。
「行こう」
リーンは頷き前へ進み、ルークは後を追った。
魔女の森に近付くと、別の場所から体格の良い男がフラりと姿を表し、森の奧に向かっていく。
「あれも、魔女の歌に誘われて来た男なのか?」
「きっと、そうだと思う。彼らまで、助けないよ…。そんな余力は無いから…」
二人は小声で話し、ルークが頷く。
森の奥地まで歩くと、小川が流れていて、木製の橋が掛けられ、その奧にバラのアーチが佇んでいた。
「あの奧は、魔女の領域。覚悟はいい?」
「ああ。」
ルークは頷き、リーンがルークの手を取った。
「リーン?!」
「はぐれると、魔女王の元に行けないから…」
「…だから事前に説明してからにしてくれ…」
ルークは頬を染め、リーンの手を握りしめる。
二人は手を繋いだまま橋を渡り、バラのアーチを潜った。
賑やかな魔女の笑い声が響き、彼女達が近付いてくる。
華やかで豪華な魔女の衣装に身を包み、甘い香水の匂いと、体臭がリーンは苦手だ。
「いい男」
「ちょっと、華奢よね」
「こっちの方が、身体の厚みがあるわよ」
彼女達は、値踏みしながら、訪れる男達の身体を触っていく。
「あら、リーンじゃないの?」
「珍しいわね」
リーンの事を知っている魔女達が、きつい香水の匂いを撒き散らしながら、ニコニコと近付いてくる。
「魔女王に会いに来た。会わせてくれないか?」
「ふふっ。満月に?」
魔女は楽しそうに、顔を近付けてきて、リーンはきつい匂いに顔を歪める。
「偶然だ。聞きたいことがあって来ただけだ」
「ふ~ん。こっちの部屋で待っていて」
魔女はじろじろとリーンを見て、リーンが手を繋いでいる、ルークの顔を覗き込もうと、うろうろしながら近くの部屋に案内された。
そして部屋に入ろうとすると、魔女がルークの腕を掴んだのでヒヤリとする。
「こいつは連れだ」
リーンは掴んだ魔女の手を引き離し、部屋の中に引き寄せる。
「…。」
魔女はチラチラとルークを見ながら、部屋から離れていった。
「…大丈夫なのか?」
ルークは不安そうに訪ねる。
「多分な…。フードは脱ぐなよ。この部屋も監視されている」
「…。」
ルークは脱ぎそうになったフードを慌てて被り直す。
「…ココは、女性ばかりだな」
「男性も居るよ。魔女が産んだ男は、殆んどが下働きをしていて、表に出てくることは少ない」
魔力を強く持っていれば別だが、魔女達の身の回りの事をしている事が多い。
「ここの魔女は、お前の事を知っているんだな…」
「初めてココに来たとき、派手に暴れたからね…。だから、付かず離れず、手は出してこない」
あの時は探し物をしていて、魔女の領域に入ってしまった事に気付かなかった。
それも満月の宴が始まる前で、逃げ回って、魔女王に捕まって、結局、その探し物は魔女王が所持していた。
そして、戻ってきた金色の耳飾り…。
無意識にリーンは、左耳の耳飾りに触れる。
「…だから、お前が危険なんだ…」
「…。」
「逃げる時は、入ってきたバラのアーチと小川を越えろ。その境界を越えれば追ってこない。そんなことに成らないことを願うが…」
リーンは苦笑いで、もしもの時のために、逃げ道だけは教えておく。
案内された部屋に椅子やソファーが有ったが、何が仕掛けられているか分からないので、二人は立ったまま、聞かれても差し障りのない、たわいもない話をして、一時間ほど待たされた。
「魔女王が、お会いになるそうよ」
部屋の様子を伺っていてのか、これ以上は待たせれないと、魔女が迎えに来た。
「案内は不要。道は分かっている」
「そうね」
魔女はやはりルークをじろじろと、見ていく。
ルークの保有魔力に気付いたのだろうか…。
「楽しみだわ」
そう言って魔女は部屋を出ていった。
少し不安も有ったが、用事を済ませて、さっさと帰ろう。
魔女王の城までは、複雑な道を歩く。
「道が動いているみたいだ」
ルークにはそう感じるだろう。
壁が動いて、道が切り替わって、建物が移動する。
「動いているよ。迷宮になっているけど、一本道だから」
「…道が見えるのか?」
「案内がいる。魔女王の使いだ」
ルークの目には見えないが、リーンには魔女王が寄越した黒い蝶々が見えていて、後をついて行ってるのだ。
でなければ、城へは辿り着けないだろう。
ココの魔女は、殆んど道を使わない。
すべて『移動』の魔法で、行きたい場所に行く。
だから、見せかけの道は迷路になっていて、案内がなければ、何処へも行くことは出来ない。
回りの景色が変わるのを無視して、案内の蝶々に付いていくと、突然、目の前に、白くて優雅な城が現れ、巨大な城門が閉ざされていた。
「ココが魔女王の城…」
ルークが見上げると、城門がゆっくりと開いた。
「行こう」
リーンは頷き前へ進み、ルークは後を追った。
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