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魔女の宴
魔女の歌
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「来るなって言っただろ!」
雑木林の道無き道を、獣道を歩き出したリーンを、追いかけて来たルークに怒鳴る。
「連れ戻した、ガーディを馬車まで連れていくには、人手がいるだろ!それにどんな状態かも分からないんたぞ!」
「…。」
ルークのその言葉にハッとして、我に返る。
…落ち着け…冷静になれ…。
まだ、魔女の森には入っていない…。
「…分かったから…」
リーンはため息をついて、立ち止まる。
だったら、予防策の魔法を掛けとかなくてはいけない。
「ルーク。指輪を嵌めた手を出して…」
差し出されたゴツゴツした手をリーンは掴み、顔に近付け、『海の魔法石』の指輪に口付け、魔法をかけた。
もし、魔女に捕まっても、指輪を取られないように、私以外に勝手に外されない魔法だ。
顔を上げると、ルークは真っ赤になって、口をパクパクとさせ、動揺していた。
「…どうしたの?指輪が外れない魔法を掛けたんだけど…」
「…先に…言ってくれ…。心臓が幾つあっても足りない…」
「…?」
リーンは意味が分からず首を傾げる。
「それより、ガーディを探しに行こう。どっちに向かってる?」
ルークは気を取り直して、方向の分からない、雑木林の周辺を見る。
「…一端、街道に近道をして出る。それから、魔女の森に向かう道に入る」
そう言って、リーンは獣道を歩きだし、ルークもそれを追いかけた。
しばらく歩くと、普段通る馬車の街道に出て、道沿いに少し登っていくと、横に目立たない細い林道があり、その林道に入っていった。
「ココからは一本道。魔女の歌に誘われたのなら、この林道の途中にいるはず…」
「急ごう…」
そこから無言でひたすら歩いて、歩いて、一時間位、歩いた頃、前方に人影が見えた。
あれか?
近付くにつれ、その背中が、ガーディだと確信した。
足元はしっかりしているが身体がふらついて、時折、足を縺れさせながら、森の奧へと向かっていく。
「ガーディ!」
ルークが呼んでも、歩みを止めない。
「『蔦の拘束』!!歩みを止めさせよ!」
リーンがそう言うと、大地から『蔦』がシュルシュルと飛び出してきて、ガーディの足を止めさせる。
それでも動けなくなったガーディは、もがいていた。
このままでは、ダメだ。
ガーディには悪いが、強制的に眠ってもらおう…。
「…気絶させれる?」
「悪いな、ガーディ」
ルークはガーディの背後から、首裏に手打ちし、気絶させ、倒れてきた身体をゆっくりと草の上に寝かした。
リーンはホッとため息をつき、ルークを見た。
「当分、目覚めないはず」
「抱えては戻れないから、魔女の歌が終わって、目を覚ましたら戻ろう。…ただ、明日になってしまうが…」
「…ココに居ても危険はないのか?」
無いとは言えない…。
「…魔女に見つからなければ…」
リーンはこの先にある、魔女の森と、ミーネに言われた事を思い出す。
…この先の、魔女の森にいる…『シラミネの魔女王だったら、見えるかもしれませんよ』そう、ミーネは言っていた。
「…。」
「リーン?」
黙り込んだリーンに、ルークが不思議そうに顔を近付けてくる。
「…魔女の森の魔女王だったら、ルークに掛けられた魔法がどんなものか、解き方も、分かるかもしれない…。とても危険だが…」
シラミネの魔女王は、構築と解読が得意だ。
だから、解読できるかも知れない…。
「…魔法が、使えるかも知れないのか?」
ルークは目を見開いて驚く。
「確実ではない。あの人でも、解けないかも知れない。…今の『海の魔法石』の魔力だけで良いのなら、聞きに行く必要は無いけれど…」
生活には、困らない。
…けれどルークの、あの魔法剣を使おうと思ったら、保有魔力の解放が先決だ。
決めるのは、ルーク…。
「…行って!聞きたい!」
真剣な眼差しのルークに、リーンも決断する。
とても危険な賭けだ。
ルークの保有魔力に気付かれないよう、魔女王の元に行き、解読してもらう。
そして、魔女の宴が始まる前に、魔女の森から出る。
…これが一番、難しいが…。
「…一つだけ約束して欲しい。『名前』は、絶対に呼んではいけない。…『あなた』とか、『君』とかだけ。魔女の魔法陣に囚われてしまうから」
囚われてしまわなければ、何とか逃げきれる。
「わかった」
「後は、魔力を隠すマント…」
リーンは、『物質保管庫』を出し、引き出しからフード付きのマントを取り出した。
「フードをしっかりと被って、顔を見せないように」
「あぁ」
ルークはマントを着てフードを深く被った。
「ガーディは、どうする」
「このまま、姿隠しの魔法を掛けて、目覚めたら、あまり動かないように、小さい結界が発動するようにしておく」
リーンはガーディの足元に、幾つかの魔法を掛けていった。
その作業が終わると、リーンはルークを見る。
「…行こう」
ルークは頷き、魔女の森に続く道を歩き出した。
雑木林の道無き道を、獣道を歩き出したリーンを、追いかけて来たルークに怒鳴る。
「連れ戻した、ガーディを馬車まで連れていくには、人手がいるだろ!それにどんな状態かも分からないんたぞ!」
「…。」
ルークのその言葉にハッとして、我に返る。
…落ち着け…冷静になれ…。
まだ、魔女の森には入っていない…。
「…分かったから…」
リーンはため息をついて、立ち止まる。
だったら、予防策の魔法を掛けとかなくてはいけない。
「ルーク。指輪を嵌めた手を出して…」
差し出されたゴツゴツした手をリーンは掴み、顔に近付け、『海の魔法石』の指輪に口付け、魔法をかけた。
もし、魔女に捕まっても、指輪を取られないように、私以外に勝手に外されない魔法だ。
顔を上げると、ルークは真っ赤になって、口をパクパクとさせ、動揺していた。
「…どうしたの?指輪が外れない魔法を掛けたんだけど…」
「…先に…言ってくれ…。心臓が幾つあっても足りない…」
「…?」
リーンは意味が分からず首を傾げる。
「それより、ガーディを探しに行こう。どっちに向かってる?」
ルークは気を取り直して、方向の分からない、雑木林の周辺を見る。
「…一端、街道に近道をして出る。それから、魔女の森に向かう道に入る」
そう言って、リーンは獣道を歩きだし、ルークもそれを追いかけた。
しばらく歩くと、普段通る馬車の街道に出て、道沿いに少し登っていくと、横に目立たない細い林道があり、その林道に入っていった。
「ココからは一本道。魔女の歌に誘われたのなら、この林道の途中にいるはず…」
「急ごう…」
そこから無言でひたすら歩いて、歩いて、一時間位、歩いた頃、前方に人影が見えた。
あれか?
近付くにつれ、その背中が、ガーディだと確信した。
足元はしっかりしているが身体がふらついて、時折、足を縺れさせながら、森の奧へと向かっていく。
「ガーディ!」
ルークが呼んでも、歩みを止めない。
「『蔦の拘束』!!歩みを止めさせよ!」
リーンがそう言うと、大地から『蔦』がシュルシュルと飛び出してきて、ガーディの足を止めさせる。
それでも動けなくなったガーディは、もがいていた。
このままでは、ダメだ。
ガーディには悪いが、強制的に眠ってもらおう…。
「…気絶させれる?」
「悪いな、ガーディ」
ルークはガーディの背後から、首裏に手打ちし、気絶させ、倒れてきた身体をゆっくりと草の上に寝かした。
リーンはホッとため息をつき、ルークを見た。
「当分、目覚めないはず」
「抱えては戻れないから、魔女の歌が終わって、目を覚ましたら戻ろう。…ただ、明日になってしまうが…」
「…ココに居ても危険はないのか?」
無いとは言えない…。
「…魔女に見つからなければ…」
リーンはこの先にある、魔女の森と、ミーネに言われた事を思い出す。
…この先の、魔女の森にいる…『シラミネの魔女王だったら、見えるかもしれませんよ』そう、ミーネは言っていた。
「…。」
「リーン?」
黙り込んだリーンに、ルークが不思議そうに顔を近付けてくる。
「…魔女の森の魔女王だったら、ルークに掛けられた魔法がどんなものか、解き方も、分かるかもしれない…。とても危険だが…」
シラミネの魔女王は、構築と解読が得意だ。
だから、解読できるかも知れない…。
「…魔法が、使えるかも知れないのか?」
ルークは目を見開いて驚く。
「確実ではない。あの人でも、解けないかも知れない。…今の『海の魔法石』の魔力だけで良いのなら、聞きに行く必要は無いけれど…」
生活には、困らない。
…けれどルークの、あの魔法剣を使おうと思ったら、保有魔力の解放が先決だ。
決めるのは、ルーク…。
「…行って!聞きたい!」
真剣な眼差しのルークに、リーンも決断する。
とても危険な賭けだ。
ルークの保有魔力に気付かれないよう、魔女王の元に行き、解読してもらう。
そして、魔女の宴が始まる前に、魔女の森から出る。
…これが一番、難しいが…。
「…一つだけ約束して欲しい。『名前』は、絶対に呼んではいけない。…『あなた』とか、『君』とかだけ。魔女の魔法陣に囚われてしまうから」
囚われてしまわなければ、何とか逃げきれる。
「わかった」
「後は、魔力を隠すマント…」
リーンは、『物質保管庫』を出し、引き出しからフード付きのマントを取り出した。
「フードをしっかりと被って、顔を見せないように」
「あぁ」
ルークはマントを着てフードを深く被った。
「ガーディは、どうする」
「このまま、姿隠しの魔法を掛けて、目覚めたら、あまり動かないように、小さい結界が発動するようにしておく」
リーンはガーディの足元に、幾つかの魔法を掛けていった。
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「…行こう」
ルークは頷き、魔女の森に続く道を歩き出した。
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