神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
87 / 462
人魚の泉~海の魔法石~

水人族風の正装

しおりを挟む
 湯浴みをして、着替えさせられたリーンは、神殿で豪華な椅子に座り、まず集落フールシアの住民にあがめられた。
 深い藍色の袖の無い長い服を着て、腰を金の糸で細かい刺繍のされた太いベルトで絞められ、同じように刺繍のされた靴を履き、首や腕に黒真珠のネックレスやブレスレットを付けられ、透ける薄布を腕から肩にかけて羽織らされ、何度も梳かされた髪には、黒真珠の髪飾りを付けられた。
 集落の魚人の女性達は、はしゃぎながら、飾り付け?をしていて、これでも、妥協してもらって、数を減らしてもらったのだ。
 フールシアが選んだ、水人族風の正装だそうだ。
 …一体、いつ着せるつもりだったんだよ!こんな派手なの!?
 確か、カザンナ王国の王子と、謁見…話をするだけ、だったよな…?
 リーンは仕方なく、豪華な椅子に座りながら、思い返していた。
 側にはダレスが控えていて、満足そうにリーンを見ている。
「後で、フールシア様にも、見ていただかなくては」
「…。」
 どうも、水中都市には連絡してあるみたいで、今は会議中の為、通信魔法に出れないそうだ。
 通信魔法は、この神殿に唯一ある水中都市との連絡網なので、戻って来次第、通信が繋がるそうだ。
 …もう、脱ぎたい…。
 集落の住民達から崇められ終ると、カザンナ王国の王子の元に、迎えが行った。
 豪華な椅子がもう一個用意され、到着を待つばかりだ。
 リーンがドキドキしながら、待っていると、突然、水中都市との通信魔法が繋がった。
『リーン!』
 神殿の側面にある、壁の鏡の中から、フールシアが叫んだ。
『美しいぞ!俺が選んだ衣装に間違いはない!もっと近くで見せてくれ!』
「…。」
 リーンがダレスを見ると、『さあ、どうぞ』と、言わんばかりに、促される。
 リーンは仕方なく、椅子から立ち上がり、鏡の前に立った。
『思った通り、白い肌が強調されて良い…。いつにも増して色気がある。化粧もしているのか?』
「…化粧はされた…」
『うん良い。艶のある赤い唇が、たまらない…。ダレス!着替えを手伝った者達に褒美を贈ろう』
 …着変えさせて、褒美?
「ありがとうございます」
 そう言って、ダレスは頭を下げる。
『ああ、このまま迎えに行って、連れ去りたい…』
「何言ってるんだ!仕事しろ!」
『恥じらいながら、頬を染め、脱がされるリーンが見たい…』
「フールシア!」
 リーンが頬を染めて怒鳴ると、丁度、カザンナ王国のローレンスとルークが入室してきた所だった。
「…。」
 リーンはため息をついて、椅子に座る。
 部屋に入ったローレンスとルークは無言のまま、立ち尽くしていた。
 動こうとしない二人を見て、鏡の方からフールシアが笑いなが声をかけてきた。
『リーンに見とれているのか?』
 その声に、直ぐに反応したのはルークだった。
「ああ。綺麗だ…」
 ルークにそう言われて、リーンは頬を染めた。
 どうしよう…ドキドキする…。
『その衣装はリーンが、持っていろ。俺の加護を受けていると証明するのに、有った方が良い。リーンの事を何も知らない集落では、その姿が効果的だ』
 加護を受けた証明が、この姿?
 …意味がわからない…。
「…また、着なくてはいけないのか?」
 リーンが、嫌そうな顔をすると、フールシアが笑う。
『俺の契約者だと威厳を示す為にも、着て欲しい』
「…わかった。どうしても着なくては、いけなくなったら着る」
 ココは協定の事もあるから、無下に出来ない…。
『そうしてくれ』
「それより、後ろで書類を持って、睨んでる魚人がいるけど…。仕事しろ!」
 通信魔法中のフールシアの背後に、側近か秘書がイライラとしている様子が、見えて気になっていた。
 フールシアは苦笑いして、手を上げた。
『またな』
 そう言って、通信魔法が切れた。
「…。」
 ダレスが咳払いをして、ローレンスを豪華な椅子に促した。
「こちらへお座り下さい」
 ローレンスが椅子に座ると、ルークが横に立ち、謁見…が、始まった。

 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして

ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...