神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~海の魔法石~

無心に制作。

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 リーンが目覚めると、水上集落の見知った部屋に寝かされていた。
 大きなベッドに一人…。
 誰が一緒に眠っていた形跡はある。
 それも、左右に…。
 …ルークと、フールシアも一緒に眠っていたのか?
「…。」
 リーンは昨日の事を思い出して、赤面した。
 『魔力の交合』をして、魔力がちようとしている時に、別の…ルークの魔力を口にした。
 魔力の過剰摂取に成りかねないと分かっていたのに、抗えなかった…。
 どうして…何故…抗えなかったのだろう…。
 考えても答えが出るわけがないので、リーンは身体を起こし、裸のままだったので、脱ぎ散らかしたままの服を拾い、身に着けた。
 あの洞窟内を、丸ごと転移反転させたのか、服があって良かった。
 転移反転は全く同じ、部屋の物質、ベッドやテーブルなどを、そのまま入れ替える魔法。
 この部屋と洞窟の部屋は、ベッドの高さが違うけど、ソレ以外は全く一緒なので、そのまま入れ替えたのだろうが…脱ぎ捨てられて、ベッドの下に落ちた服まで転移してきているのだから、細やかな調整と魔力が必要だ。
 それも、ルークとフールシアを含めて、三人の移動も同時にするのだから…さすが竜人族と、言うべきだろうか…。
 起きたことに気付いたのか、扉がノックされ、魚人の女性が食事を持ってきてくれた。
 お礼を言って受けとり、部屋内で食事を取り、この後どうしようか迷っていた。
 …魔力はちた。
 いつもなら、後の事はフールシアに任せて、集落から出ていく。
 これ以上、私に出きることが無いから…。
 けれど、今はルーク達がいる。
 話が、水中都市とカザンナ王国の問題になり、今後、どうなっていくかは分からない。
 状況が分からなかったので、部屋の外に出て、側にいた風霊に声をかける。
「『風霊』フールシアとルークはどこ?」
 くるくると地上の集会所を示したので、二人とも話し合いになっているのだろうと察する。
 …おとなしく、話し合いに応じているみたいだな…。
 リーンは桟橋を渡り、馬車の有るテントの所へ戻って来ると、馬車を引いてくれた馬が一頭いなかった。
 …誰か出掛けたのかも知れない。
 しばらく考えて、湖に向かうと、『水球』と塩の結晶を作り、『天水球てんすいきゅう』を作った。
 あれこれ考えるより、必要になるストックを作っていた方が、気が紛れる…。
 リーンは、無心に成って作り始めた。



 話し合いが終わったのか、ルークとアオが、リーンのいる馬車のもとに戻ってきた。
「お帰り」
 リーンは微笑んで、二人を迎えた。
 …ルークから、強い魔力を感じる。
 これは…海の魔法石?
 フールシアがルークに渡したのか?!
 ソレは、竜人族の加護を受ける事と同じ…。
「海の魔法石。もらったんだね」
「ああ」
 ルークは複雑そうに困惑して、返事した。
 アオが夕食を作りながら、フールシアと話し合った事や、カザンナ王国にガーディを使者として書面を送ったこ事を聞かされた。
「…水中都市のフールシアの名代なんて、あり得ないよ…」
 あいつ、何考えているんだ!
 リーンは困惑してルークを見る。
「俺に言われてもな…。それが通行手形だと言われてしまえば、ソレ以上何も言えない…」
 ルークは肩をすくめた。
 ソレはそうだろう。
 相手は水中都市を統べるあるじであり、水上集落の守護神なのだから…。
 ここまで話が大きくなるとは思っていなかった。
 ガーディを使者として送っのだから、数日中にこの件に関しての使者がやって来るだろう。
 出来たら、会いたくはない。
 益々、国に関わってしまうから…。
 名代を撤回して貰わないと…。
 フールシアも、分かっているはずなのに…。
「…後で、フールシアの所に行ってくる」
「…ソレは、明日にしような」
 ルークが慌てて、リーンを引き留めた。
 …そうだな。
 もうすぐ、暗くなるし、水中都市の仕事も有るだろうから…。
「…わかった…」
 ルークは、ため息をつくと、海の魔法石について、どうしたらいいか、相談してきた。
「承認の証だと言われても、無造作に持ち歩くのも不安だし、失くしそうで…」
「…持ちやすいように…小さくしてもらう」
 きっと無造作に渡したんだろうな…。
 承認の証だなんて、きっと後から取って付けたみたいに考えたのだろう…。
 祭壇に飾るならまだしも、持ち歩くのに魔法石のままなんて、邪魔になるだけ…。
「そんなことしてもらって良いのか?」
 良いんだって!
 フールシアの気まぐれなんだから…。
「この際だよ。いろんな面倒な事をルークに押し付けたんだから、ソレくらいしてもらわないと!」
 フールシアは、リーンがソレをもって来ることを計算の上で、渡しているのかもしれない。と、思ったらイライラしてきた。
 …こっちの方が有り得るな…。
 そんなことを思っていると、ルークは苦笑いして答えた。
「俺は構わないんだが…。ソレで、水上集落の者達が平穏な生活が出きるなら…。貴重品の塩の結晶も手に入ることだし…」
 そう。塩の結晶の売買も絡んだ取引になって、カザンナ王国にとっても、有益な事柄だろうが…。

 水中都市の仕事として、と、言うのが気に入らないが、ルークが側にいる口実が出来たことに、リーンは少し嬉しかった。
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